ロクでなしの紅炎公(憑依)   作:紅ヶ霞 夢涯

40 / 50
 2020/10/14・日間ランキング14位。感謝です。


第40話 破壊

 

「見れば見る程、醜悪極まりないわね」

 

 蠢く怪物を空から見下ろし呟いた。

 

 所々で起こっていた爆発や閃光は止まっている。三分が経ったから、皆あの化け物から離れたのだろう。

 

 ならばーーー心置きなくやれるというもの。

 

「ジル=ド=レェ。貴方に人々の希望を束ねた、星の光なんてものはあげないわ。私が貴方にやれるのは、ただ………破壊を(もたら)す炎だけ」

 

 あの『青髭』はきっとこの世界の何者かが召喚した、してしまった存在なのだと思う。

 

 もしかしたらこの世界にいる誰かが、『青髭』と同じような末路を辿ったのかもとか考えもしたが………それにしては『セイバー』に対する反応が激的過ぎた。

 

 恐らく弱いと感じたのは、この世界において知名度による補正がないから。それくらいしか思いつかない。

 

 となると、マスターが気になるところだが。

 

(それは後でいい。今はこの場で確実に、『青髭』を仕留めることが最も重要)

 

 三分という時間を掛けて、体の魔力の乱れの一切を整えた。今ならば『青髭』………ジル=ド=レェという確かに人理に刻まれた一人の英霊を、聖剣の輝きでなく私の固有魔術(オリジナル)を以てこの世界から退場させることも可能だと確信する。

 

 左手を前に伸ばした。静かに口を開き、固有魔術を起動するための詠唱を始める。

 

 

 

 

「《No Blood》」

 

 

 

 

 其は、七つの王権の中で第三の王権に位置づけされしもの。

 

 

 

 

「《No Bone》」

 

 

 

 

 其は、破壊を司る王の証。

 

 

 

 

「《No Ash》ッ!」

 

 

 

 

 其は、暴力と破壊の象徴。

 

 

 

 

「顕現せよーーー【ダモクレスの剣(ソード・オブ・ダモクレス)】!!」

 

 

 

 

 

 

 

〈sideグレン〉

 

 巨大な、あまりにも巨大な剣だった。否、巨大な剣の形をした、純然たる魔力の結晶体だった。全体が真紅の輝きを放つそれは、形状で言えばリィエルの扱う十字の大剣に近い。

 

 それが突如、イヴの頭上に現れた。

 

「何だありゃ!?」

 

 思わず零した疑問に答えたのはアルベルトだった。

 

「イヴ=イグナイトの固有魔術、【ダモクレスの剣】。曰く、森羅万象遍く全てを破壊する、らしい」

 

「いや。確かにあんだけの質量をぶつければ、並大抵のもんはぶっ壊れるだろうけど………」

 

 それだけでセリカに勝てるとは思えない。

 

「うーん。詳しくは分からないけど………何でも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、って言ってたよ」

 

「………何だよ、それ」

 

 もし本当にセラの言う通りだとするならば、ヤバいなんてものじゃない。

 

 ありとあらゆる防御魔術も何もかも、文字通りに全てがイヴのあれの前では無意味となる。

 

「そんなことが、可能なんですか?概念さえ操る魔術なんて………」

 

 シノブ=コチョウの言葉に内心で同意する。反則技にも程がある。

 

「可能にしたからこその、固有魔術じゃろうて。ほれ、気になるならちゃんと見とれ」

 

 視線を再び空に向けると、イヴを中心に炎の如きオーラが球形になっていた。いや、炎のように見えるあれこそが、破壊の概念を形としたものなのか。それは段々と大きくなり、やがて怪物を飲み込む程に巨大となって止まる。

 

 その時、イヴの口元に得意げな笑みが浮かんだように見えた。

 

「燃やせ」

 

 そして、破壊が地上に落ちる。

 

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