「見れば見る程、醜悪極まりないわね」
蠢く怪物を空から見下ろし呟いた。
所々で起こっていた爆発や閃光は止まっている。三分が経ったから、皆あの化け物から離れたのだろう。
ならばーーー心置きなくやれるというもの。
「ジル=ド=レェ。貴方に人々の希望を束ねた、星の光なんてものはあげないわ。私が貴方にやれるのは、ただ………破壊を
あの『青髭』はきっとこの世界の何者かが召喚した、してしまった存在なのだと思う。
もしかしたらこの世界にいる誰かが、『青髭』と同じような末路を辿ったのかもとか考えもしたが………それにしては『セイバー』に対する反応が激的過ぎた。
恐らく弱いと感じたのは、この世界において知名度による補正がないから。それくらいしか思いつかない。
となると、マスターが気になるところだが。
(それは後でいい。今はこの場で確実に、『青髭』を仕留めることが最も重要)
三分という時間を掛けて、体の魔力の乱れの一切を整えた。今ならば『青髭』………ジル=ド=レェという確かに人理に刻まれた一人の英霊を、聖剣の輝きでなく私の
左手を前に伸ばした。静かに口を開き、固有魔術を起動するための詠唱を始める。
「《No Blood》」
其は、七つの王権の中で第三の王権に位置づけされしもの。
「《No Bone》」
其は、破壊を司る王の証。
「《No Ash》ッ!」
其は、暴力と破壊の象徴。
「顕現せよーーー【
〈sideグレン〉
巨大な、あまりにも巨大な剣だった。否、巨大な剣の形をした、純然たる魔力の結晶体だった。全体が真紅の輝きを放つそれは、形状で言えばリィエルの扱う十字の大剣に近い。
それが突如、イヴの頭上に現れた。
「何だありゃ!?」
思わず零した疑問に答えたのはアルベルトだった。
「イヴ=イグナイトの固有魔術、【ダモクレスの剣】。曰く、森羅万象遍く全てを破壊する、らしい」
「いや。確かにあんだけの質量をぶつければ、並大抵のもんはぶっ壊れるだろうけど………」
それだけでセリカに勝てるとは思えない。
「うーん。詳しくは分からないけど………何でも
「………何だよ、それ」
もし本当にセラの言う通りだとするならば、ヤバいなんてものじゃない。
ありとあらゆる防御魔術も何もかも、文字通りに全てがイヴのあれの前では無意味となる。
「そんなことが、可能なんですか?概念さえ操る魔術なんて………」
シノブ=コチョウの言葉に内心で同意する。反則技にも程がある。
「可能にしたからこその、固有魔術じゃろうて。ほれ、気になるならちゃんと見とれ」
視線を再び空に向けると、イヴを中心に炎の如きオーラが球形になっていた。いや、炎のように見えるあれこそが、破壊の概念を形としたものなのか。それは段々と大きくなり、やがて怪物を飲み込む程に巨大となって止まる。
その時、イヴの口元に得意げな笑みが浮かんだように見えた。
「燃やせ」
そして、破壊が地上に落ちる。