とりあえず、セイバーも連れて《業魔の塔》へ帰還することにした。任務は一応完了したことだし、一面の荒野じゃあ落ち着いて考え事もできない。
帰りもジャティスの天使に馬車を運んで貰う。案の定霊体化ができなかったセイバーは、私とジャティスと一緒に御者台に座っている。
「馬車が空を飛ぶとは。マスターのお仲間は、随分と多彩な魔術をお使いになるのですね」
「えぇ、そうね」
「………マスター、今は貴女の拠点に向かっているのでしょうか?出来れば今後について、二人だけで話し合いがしたいのですが」
「えぇ、そうね」
「………………マスターのお仲間である魔術師も頼りになるのでしょうが、しかし巻き込む訳にはいかない。如何に優れた魔術師であっても、私達のような存在には敵わない」
「えぇ、そうね」
「………………………あの、マスター?先程から聞いていますか?これからの、聖杯戦争についての話がしたいと言っているのですが」
「えぇ、そうね」
「マスター!」
私とセイバーのやり取りを見かねたのか、隣のジャティスが深々とため息を吐く。呆れを孕んだ視線を隠すことなく、「いい加減にしなよ」と言ってきた。
「使い魔がここまで自我を持つのは珍しいけど、君の使い魔なんだろう?だったら君がどうにかしなよ」
「悪いけど今、考え事してるの。ジャティスもセイバーも、話は後にして」
それきり会話はなくなった。これ幸いとばかりに目を閉じ思考する。
(やっぱりセイバーと私は魔力のパスで繋がってる。令呪は本物で、多分セイバーも私の知ってる“あの”セイバー………それは後で確かめるけど、ほぼ確定ね)
英霊が確かに存在し、それと契約した証と言っていい令呪がある。それは、つまり。
(この世界で、聖杯戦争が開幕するということ)
どうか『青髭』以外は、頼むからまともな精神の英霊であって欲しい。いや本当に切実に。民間人に対して被害がない限りは、多分だけど特務分室として動かなくて済むから。
(それにしても、どうして私は“この”セイバーを召喚できたの?イメージはしたけど、それが触媒となり得る筈も………ん?もしかして)
召喚時の状況そのものが、触媒として作用した?
サーヴァント・キャスター、ジル=ド=レェが古い城のある深い森にいて、それと交戦している真っ最中。可能性としては高い方、だと思う。
(ってことは、それっぽいシチュエーションを整えれば、狙った英霊を呼び出せれるの?)
いや、それは早計に過ぎる。また今度に考えよう。早急に対処すべきは『青髭』のマスターの捜索と、聖杯ないしそれに準ずるものの確保。『青髭』のマスターが何者かは分からないが、別のサーヴァントと再契約する可能性もある。
「あー、もう」
いっそ聖杯戦争の舞台を破壊してしまおうか。聖杯がどこかにあるとして、それを私が確保さえしてしまえば、【
(全く持って、嫌になる)
ただでさえ特務分室の室長をやっているのに、加えて聖杯戦争に参加するなんて想像したくもなかった。