ロクでなしの紅炎公(憑依)   作:紅ヶ霞 夢涯

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 かき混ぜてくぞー。



第44話 帰還

 

〈sideシノブ〉

 

「今日はお疲れ様、シノブちゃん。気分が悪くなったりとかはしてない?」

 

「いえ、大丈夫ですよセラさん。ご心配ありがとうございます」

 

 そう言っていつものように私は微笑した。それから辺りを見回して、姉さんとセイバーという使い魔?がいないことに気づいた。

 

「あの、イヴさんは?」

 

「イヴなら使い魔を連れてどっか行ったぞ。俺らには報告書を仕上げるように言ってな」

 

 気怠げに伸びをするグレンさんに「そうですか」と言葉を返し、ふと自分も報告書を書いた方がいいのか気になった。何せ私が特務分室の任務に同行するのは、特務分室専属医となって初めてだったから。

 

(まぁ、一応は提出しておきますか)

 

 もしかしたら今後も、彼らの任務に同行できるかもしれない。

 

 ………そしたらきっと、姉さんとも。

 

 そう考えながら目を閉じると、瞼の裏に鮮明に浮かぶ。姉さんが腹に穴を開けたまま、平気の顔で私の治療を受けるその姿。どうやってか止血は自力で済ませていたけど、それでも痛みはあった筈なのに。

 

「ところで、セラさん。私の目にはイヴさんが無茶してたように見えたんですけど、私の気のせいでしょうか?」

 

「イヴは………そうだね。普段から無茶してるところはあるよ。何度も言ってはいるんだけどね」

 

 つまりとっくに慣れてしまっているのだろう。自分が傷を負ったとしても、痛みを感じても気にしない程に。

 

 そして多分それは、姉さんに限ったことじゃない。

 

「シノブちゃんも、イヴのことが心配?」

 

 当然だ。だって何の関係もなかった私を、ここまで育ててくれた人だ。どんな形でも良いから恩返しがしたい。とにかく姉の側にいたい。

 

 だから、心配するのは当たり前の筈だ。

 

「そっか。ならイヴの傷も心配だし、様子を見に行こうよ」

 

 けれど私はそういう口実でもない限り、自分から姉さんに会いに行ったことはない。そんな自分が情けなく思える。

 

(………姉さん)

 

 もしこれから先も無茶をするつもりなら、絶対に止めて欲しい。医師として、妹として、そう思う。

 

 だけど、それを口にする勇気は私にはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

〈side???〉

 

 ーーーーーー数時間前。

 

「あれ?」

 

 不思議そうに首を傾げる一人の男がいた。彼は自らの左手を持ち上げてそこに刻まれていた三画の紋様を通じ、自由に行動させていた己の使い魔が消えたことを感じ取る。

 

「あーあ、ジル殿は死んじゃったのかぁ。悲しいなぁ、折角新しく出来た友達だったのに」

 

 声音が悲哀を帯びる。虹彩の瞳から涙が零れる。だが布を隔てて控えていた側付きが「どうかされましたか、教祖様」と尋ねると、声から悲哀は消え去り涙はあっという間に乾いた。

 

「いやいや、何でもないさ。ちょっと神のお告げが聞こえた気がしただけでね」

 

「それは………お邪魔をして申し訳ありません」

 

「気にしないでいいよ。でも少し集中したいから、外に出て貰っていいかな?」

 

 短く返事をして、側付きは退室した。それを気配を探って確かめた後、白橡色の髪を揺らしながら彼は立ち上がった。そして床の隠し扉を開き、地下へと移動する。

 

「さて、と。次は一体どんなのが呼べるのかなぁ?」

 

 楽しみで仕方ないとでも言うかのようにそう言って男は、地下室の床に真っ赤な何かで描いた魔方陣に魔力を流した。

 

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