サブタイはもう止めます。そこまで考えるのメンドクセー…。
万能の願望器である聖杯。七人のマスターと七体のサーヴァントが、それを求めて殺し合う埒外の戦争ーーー聖杯戦争。
理由も過程もさっぱり分からないことだらけだが、私とヴァイオレットはマスターになってしまった。そして既に、英霊を召喚してさえいる。
(なら、勝ち抜かないと)
それも求めなければならないのは、ただの勝利ではない。
ヴァイオレットは勿論、彼女のサーヴァントとなった少女………シノンにも危険が及ばないようにする必要があるし、どこの誰にも聖杯を渡す訳にも行かない。
例えどこの誰がマスターとなり、どんな英霊を召喚しようとも、確実に勝ちを積み重ねないといけないのだ。
「………足りないわよね」
その為に必要な確かな実力が。圧倒的な戦力が。
アルザーノ帝国を裏から守護する特務分室。その室長を務める私が、まさか弱いなどという筈はない。というか誰が相手であれ、最終的に【ダモクレスの剣】を使えばほぼ問題ない。
言わば【ダモクレスの剣】は、初見殺しの反則技。破壊という概念そのものを操るのだから、防御など叶う筈もない。
が、それを以てしても必ず勝てると言えない人が、この国に一人だけいる。
「という訳で、その人を巻き込むことにします。何か異論はある、セイバー?」
「異論しかありません、マスター。既にサーヴァントを従えている者ならまだしも、貴女の言う『その人』はそうではないのでしょう?」
「知らないわ。直接会ってみないと、流石にね」
調査、討伐、探索、護衛にその他諸々。いくつもの様々な任務を短期間で強引に片付けた私は、そうして無理矢理に作った時間を用いてセイバーと共にフェジテに訪れていた。
「マスター。この異常な聖杯戦争において、戦力を求める貴女の気持ちは理解できる。ですがその行動は、貴女のサーヴァントである私を軽んじるものだ………私では、不足ですか?」
「そんな訳がないでしょう」
即答する。私が召喚した英霊が彼女であって不足だなどと、そんなことあり得ない。
ブリテンの騎士王ーーーアルトリア・ペンドラゴン。世界で最も著名と言って差し支えない、聖剣・エクスカリバーの担い手。最優のサーヴァントとして、これ以上ないカードとされる彼女が私のサーヴァントで、文句なんてある筈ない。
(ただ、それはそれとして………)
「けど。私もヴァイオレットもシノンも、貴女だけで守れる保証はどこにもないわ」
基本的に私は、フェジテに長く滞在しない。まして今みたいな状況でフェジテに引き籠もれば、「何かありますよ」と言っているようなもの。かと言って彼女らを常に私と同行させるなど、論外。
「私か、ヴァイオレットとシノンか。どちらかを優先すれば、当然どちらかが穴になる。それはセイバーも分かっているでしょう?」
「………だから、『その人』を巻き込むと?」
「協力を仰ぐだけよ。嫌な言い方しないで」
北セルフォード大陸において唯一存在する第七階梯の魔術師であり、元執行官No.21『世界』のセリカ=アルフォネア。
かつて私の特務分室には不要と断じたその人の力を、私は再び求めなければならなかった。