ロクでなしの紅炎公(憑依)   作:紅ヶ霞 夢涯

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 ようやく主人公登場ですが、本当に登場しただけです。そして何故かセリカの要素が強くなってしまいました。
 
 というわけで、次回こそグレンを書きます多分。

 でもグレン出せれただけでも誰か褒めて?



第7話 グレン=レーダス・セリカ=アルフォネア

 

 グレン=レーダス。それはこの世界、「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」の主人公の名前。

 

 特務分室に入ることになった彼は、保護者のセリカさんが連れて来る筈、なのだけど………。

 

「来ないわね」

 

 私は《業魔の塔》入り口付近に立って待っているのだが、約束の時間はかなり過ぎている。立ったままなので結構辛い。

 

 セリカさんがその気になれば、転移とかして一瞬で来れると思ってたけど、流石にいくら彼女でもそんなことはできないらしい。

 

 ………………できないよね?

 

「ん?」

 

 その時馬車が来るのが見えた。それはあっという間に近づいてきて、私の前で止まる。

 

 御者をしていたのは妙齢の女性だった。

 

 袖のない漆黒のドレスを身に纏い、その谷間は大胆に開いている。しかし下品さは微塵もなく、ただ圧倒的な華がある。両腕には肘まで覆う黒いレースの手袋。頭には赤い薔薇の髪飾りを付けていて、その綺麗な金髪は腰まで届くほどに長い。

 

 セリカ=アルフォネア。この大陸唯一の第七階梯(セブテンデ)

 

 彼女は笑顔を浮かべて私に話し掛けてきた。

 

「よ、待たせて悪いな。イヴ」

 

「お久しぶりですね、セリカさん。それで、其方が?」

 

「あぁ、私の弟子のグレンだ。ほらグレン、挨拶しろ挨拶」

 

 そう言って彼女が誇らしげに視線を向けたのは、まだどこか幼さの残る魔術学院の制服を着た少年だ。

 

 彼がグレン=レーダス(主人公)

 

「初めまして、グレン。私はイヴ=イグナイトよ。気軽にイヴと呼んで」

 

 私はそう言って片手を差し出した。おずおずといった様子のグレンと握手を交わす。

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「固いわねぇ。別に敬語じゃなくていいのよ?」

 

 そう言うとグレンは明らかにホッとした。多分敬語を使うのに慣れていないのだろう。

 

「そりゃ助かるわ。俺はグレン=レーダス、知ってるだろうけど」

 

「おいおいグレン。一応最低限の礼儀くらいは払っておけよ?そいつはお前の上司だからな」

 

「は?上司?」

 

 セリカさんの言葉に不思議そうに私を見つめる彼に、改めて自己紹介する。

 

「改めて初めまして、グレン=レーダス。今代の紅炎公(ロード・スカーレット)、そして宮廷魔導師団特務分室の室長、イヴ=イグナイトよ」

 

「え、マジ?」

 

「マジもマジ」

 

 腕組みして頷くセリカさん。キョトンとした表情をするグレン。

 

「見た感じ同い年くらいでしょう?気にしないでいいわ。それじゃあセリカさん、グレンは預からせていただきます」

 

「ああ、頼む」

 

 彼女はそこでグレンの頭をクシャリと撫でる。

 

「それじゃあ私は行くが、グレン。頑張れよ」

 

 そう言って再び馬車を走らせる彼女を、私たちは見送った。見送った後に、私はグレンを彼の部屋へと案内する。

 

 大きめの窓が取り付けられ、机と椅子、そして壁には時計とベッドがある。それから部屋の奥にはちょっとしたシャワー室という、やや広めの一人部屋だ。

 

 少し殺風景なものだけど、まぁ内装くらいいくらでも変えてくれればいい。実際ほとんどの人は自分好みに改装している。

 

「ここが貴方の部屋よ。そこのベッドの上にあるのが特務分室のコートとシャツ、それからズボンね。多分サイズは合っている筈だけど、一応確かめて合わなかったら言ってくれて構わないわ」

 

 それから着替え終えたら言うように伝えて、私は部屋の扉を閉めた。そのまま壁に背中を預ける。

 

 その場で煙草を手にとって火を付けた。

 

 少し苦みのある煙を吸い込み、そして吐き出す。

 

「どうしろってのよ………」

 

 嫌な気分だ。

 

 グレンの目は、あまりに純粋だった。これから自分は『正義の魔法使い』になるのだと、そう自分の夢を信じて疑わない子供の目をしていた。

 

 けれど彼の行く末を知っている。憧れの『正義の魔法使い』になれないことに絶望し、大切な人の一人も守れず、魔術というものを心の底から嫌うようになる。

 

(けどまぁ、そこまで原作に沿うつもりなんてない)

 

 部下は守る。それは彼らの上司である私には当然のこと。

 

 それに子供の夢を応援するくらい、別にやってもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 まぁ、とりあえずは。

 

「グレンと友達になるところから始めますか」

 

 

 

 

 

 

 

<sideセリカ>

 

「寂しくなるなぁ……」

 

 私、セリカ=アルフォネアには血の繋がっていない息子がいる。名前はグレン=レーダス。

 

 グレンの魔術特性は「変化の停滞・停止」。そのせいもあって魔術師としては三流とされる第三階梯(トレデ)。恐らく今後も位階が上がることはないだろう。

 

 そんな魔術師としてあまりに恵まれてない奴だが、グレンは誰よりも魔術師だと私は思っている。けど大多数の者はそう思わないというのも分かってる。

 

 だからグレンの将来を心配していた。

 

「しっかし、宮廷魔導師団から声がかかるとはな」

 

 だがもう心配はしていない。ただ胸中には誇らしさがある。

 

 宮廷魔導師団特務分室。

 

 そこはかつての私の職場だから、それを聞いたときは数奇なものだと思った。

 

 そして安心した。

 

「なにせイヴの所だ」

 

 イヴ=イグナイト。今の特務分室において室長を務める女性。代々特務分室の室長を務めるイグナイト家の娘で、確かまだグレンと同い年の筈だ。

 

 そしてかつてこの私に、大陸唯一の第七階梯である魔術師に膝を付かせた女。

 

 彼女が居るなら問題ないと、この時の私はあまりにも楽観的な思考をしていた。

 




 
 折を見てセリカとの話も書こうと思っています。
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