ようやく主人公登場ですが、本当に登場しただけです。そして何故かセリカの要素が強くなってしまいました。
というわけで、次回こそグレンを書きます多分。
でもグレン出せれただけでも誰か褒めて?
グレン=レーダス。それはこの世界、「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」の主人公の名前。
特務分室に入ることになった彼は、保護者のセリカさんが連れて来る筈、なのだけど………。
「来ないわね」
私は《業魔の塔》入り口付近に立って待っているのだが、約束の時間はかなり過ぎている。立ったままなので結構辛い。
セリカさんがその気になれば、転移とかして一瞬で来れると思ってたけど、流石にいくら彼女でもそんなことはできないらしい。
………………できないよね?
「ん?」
その時馬車が来るのが見えた。それはあっという間に近づいてきて、私の前で止まる。
御者をしていたのは妙齢の女性だった。
袖のない漆黒のドレスを身に纏い、その谷間は大胆に開いている。しかし下品さは微塵もなく、ただ圧倒的な華がある。両腕には肘まで覆う黒いレースの手袋。頭には赤い薔薇の髪飾りを付けていて、その綺麗な金髪は腰まで届くほどに長い。
セリカ=アルフォネア。この大陸唯一の
彼女は笑顔を浮かべて私に話し掛けてきた。
「よ、待たせて悪いな。イヴ」
「お久しぶりですね、セリカさん。それで、其方が?」
「あぁ、私の弟子のグレンだ。ほらグレン、挨拶しろ挨拶」
そう言って彼女が誇らしげに視線を向けたのは、まだどこか幼さの残る魔術学院の制服を着た少年だ。
彼が
「初めまして、グレン。私はイヴ=イグナイトよ。気軽にイヴと呼んで」
私はそう言って片手を差し出した。おずおずといった様子のグレンと握手を交わす。
「よ、よろしくお願いします」
「固いわねぇ。別に敬語じゃなくていいのよ?」
そう言うとグレンは明らかにホッとした。多分敬語を使うのに慣れていないのだろう。
「そりゃ助かるわ。俺はグレン=レーダス、知ってるだろうけど」
「おいおいグレン。一応最低限の礼儀くらいは払っておけよ?そいつはお前の上司だからな」
「は?上司?」
セリカさんの言葉に不思議そうに私を見つめる彼に、改めて自己紹介する。
「改めて初めまして、グレン=レーダス。今代の
「え、マジ?」
「マジもマジ」
腕組みして頷くセリカさん。キョトンとした表情をするグレン。
「見た感じ同い年くらいでしょう?気にしないでいいわ。それじゃあセリカさん、グレンは預からせていただきます」
「ああ、頼む」
彼女はそこでグレンの頭をクシャリと撫でる。
「それじゃあ私は行くが、グレン。頑張れよ」
そう言って再び馬車を走らせる彼女を、私たちは見送った。見送った後に、私はグレンを彼の部屋へと案内する。
大きめの窓が取り付けられ、机と椅子、そして壁には時計とベッドがある。それから部屋の奥にはちょっとしたシャワー室という、やや広めの一人部屋だ。
少し殺風景なものだけど、まぁ内装くらいいくらでも変えてくれればいい。実際ほとんどの人は自分好みに改装している。
「ここが貴方の部屋よ。そこのベッドの上にあるのが特務分室のコートとシャツ、それからズボンね。多分サイズは合っている筈だけど、一応確かめて合わなかったら言ってくれて構わないわ」
それから着替え終えたら言うように伝えて、私は部屋の扉を閉めた。そのまま壁に背中を預ける。
その場で煙草を手にとって火を付けた。
少し苦みのある煙を吸い込み、そして吐き出す。
「どうしろってのよ………」
嫌な気分だ。
グレンの目は、あまりに純粋だった。これから自分は『正義の魔法使い』になるのだと、そう自分の夢を信じて疑わない子供の目をしていた。
けれど彼の行く末を知っている。憧れの『正義の魔法使い』になれないことに絶望し、大切な人の一人も守れず、魔術というものを心の底から嫌うようになる。
(けどまぁ、そこまで原作に沿うつもりなんてない)
部下は守る。それは彼らの上司である私には当然のこと。
それに子供の夢を応援するくらい、別にやってもいいだろう。
まぁ、とりあえずは。
「グレンと友達になるところから始めますか」
<sideセリカ>
「寂しくなるなぁ……」
私、セリカ=アルフォネアには血の繋がっていない息子がいる。名前はグレン=レーダス。
グレンの魔術特性は「変化の停滞・停止」。そのせいもあって魔術師としては三流とされる
そんな魔術師としてあまりに恵まれてない奴だが、グレンは誰よりも魔術師だと私は思っている。けど大多数の者はそう思わないというのも分かってる。
だからグレンの将来を心配していた。
「しっかし、宮廷魔導師団から声がかかるとはな」
だがもう心配はしていない。ただ胸中には誇らしさがある。
宮廷魔導師団特務分室。
そこはかつての私の職場だから、それを聞いたときは数奇なものだと思った。
そして安心した。
「なにせイヴの所だ」
イヴ=イグナイト。今の特務分室において室長を務める女性。代々特務分室の室長を務めるイグナイト家の娘で、確かまだグレンと同い年の筈だ。
そしてかつてこの私に、大陸唯一の第七階梯である魔術師に膝を付かせた女。
彼女が居るなら問題ないと、この時の私はあまりにも楽観的な思考をしていた。
折を見てセリカとの話も書こうと思っています。