ロクでなしの紅炎公(憑依)   作:紅ヶ霞 夢涯

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 前回の前書き詐欺になってしまい申し訳ない。自分にはグレン視点とか書くことは無理でした。許して下さい。
 
 だって、ほら。入隊したてのグレンの口調とか分かりませんし?だからしょうがないんです。
 
 それから少し時系列がおかしいかもしれませんが、どうか目を瞑っていただきたい。

 それではどうぞ。



第8話 吸血鬼編

 

 アルザーノ帝国に数多くいる外道魔術師の一人、ワーテルロ卿。彼の下から逃げ出した人工吸血鬼の成功個体、『カーミラ』を追うこと早数日。

 

 私はジャティスと昼間から王都に居た。

 

「あの『カーミラ』ってのが王都に来たのは分かっているんだけど………探すのは骨が折れそうね」

 

「だけど人工とはいえ吸血鬼。この時間帯だし、日の当たらない路地裏にでも潜んでいるんだろう」

 まぁ、君なら分かってるとは思うけどね。

 

 彼の言うように、そんなことは分かっている。つまり王都の路地裏を探せばいいのだが………。

 

「広いわよ」

 

「知ってる」

 

 前々から目を付けていた飲食店で、少し遅めの昼食を食べながら言葉を交わす。

 

 ていうかそもそも、どうしてこうなっているんだっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 あれから、グレンが特務分室のメンバーになってから、もう一年と少しばかり経つ。

 

 私はその間の彼の育成をバーナードに一任した。

 

 というのもグレンの魔術師としての腕、位階を上げるのは土台無理な話なので、ならば戦い方を覚えて貰おうと思ったからだ。

 

 いくらグレンの固有魔術(オリジナル)ーーー《愚者の世界》が魔術師相手に対する鬼札とはいえ、それだけでは外道魔術師にとって脅威足りえない。

 

 なので最低限のレベルまでバーナードに鍛えさせた。そのおかげで言い方は悪いが、グレンはそこそこ使える駒くらいには育ってくれた。

 

(こんな考え方してるからかしら?)

 

 グレンとの仲が良好とは言い難いのは。

 

 いや別に心底嫌われているってわけじゃないと思う。思いたい。ただまぁ、友達と言えるほど仲が良いとも言えなくて………。

 

 この一年私は何してたのやら。

 

 軽い自己嫌悪に陥りながら手を動かす。

 

 ちなみに今日私は、《業魔の塔》の職務室で溜まりに溜まった書類仕事を片付けている。

 

 定期的にこうした時間を設けないと、普通にヤバいのだ。

 

 そして本来なら私しかここには居ない筈なのだが、どういうわけか一人の姿がある。

 

「アンタねぇ。折角くれてやった休暇なのに、どうしてこんな所に居るのよ」

 

「別に。それこそ僕が休暇に何処に居ようが勝手だろう、イヴ。それにしても自分の職場をこんな所呼ばわりとはね」

 

 執行者No.11《正義》のジャティス=ロウファン。

 

 銀縁の眼鏡を掛けてシルクハットを被っている。手には上質な杖を持ち、その装いは休日だというのに、黒を基調とした特務分室の軍用コート。

 

 彼は少し、いや結構な度合いで頭のネジが飛んでいる。

 

 そんな彼に任務、特に外道魔術師を討伐する系のものをやらせると、かなり過激な結果になるが………まぁ、それでもしっかり結果を出してるし、私的には文句はない。

 

 そして確かに休暇のジャティスが何処に居ようが行こうが勝手なのだけど、こうも目の前でのんびりされると少々思うものがある。

 

(休暇取り下げてやろうかしら?)

 

 そんなことを考えたときに、通信用の魔導器が鳴った。アルベルトからだ。

 

「何?」

 

『任務の報告だ。ワーテルロ卿の件についてな』

 

「……ちょっと待って」

 

 えーと、何だ。確か人工の吸血鬼だかを研究してる外道魔術師だっけ。そのワーテルロ卿ってのは。

 

 幾つもの書類の中から一つの資料を取り出した。……普通にあったわ、ワーテルロ卿。

 

 そういえば彼の討伐をアルベルト()セラ(女帝)、そして執行者No.0《愚者》となったグレンに任せていた。

 

 メモを机に置き筆立てからペンを手に取る。

 

「ご苦労様。それじゃ簡単に頼むわね」

 

『分かっている』

 

・対象の始末は完遂

・遺体も研究内容も回収 

・犠牲者は365名

・救出者は0名

 

『以上が今回の任務の最終報告だ』

 

 ………こいつホント簡単にまとめやがった。相も変わらず真面目なことで。

 

「大成果じゃない。あの凄腕ワーテルロ卿相手によくやったわ」

 

 改めて資料を見ると、既に何人もの軍人、魔術師がワーテルロ卿に殺されている。魔術師としての技量が高いのだろう。

 

 それをたった三人で倒すとは。やらせておいてあれだが、素直に凄いと思う。

 

 アルベルトによると人工吸血鬼、しかも成功個体が一体逃げたらしい。だが、今回の成果に比べれば些細なことだ。

 

「後の引き継ぎはやっておくから、早く戻ってきて少し休みなさい」

 

 しかし彼らには非常に悪いが、まだまだ任務が山ほどある。だから休めるときにしっかり休んで欲しい。

 

『………そのことだが』

 

 いつもならこれで通信を終えるのだが、何故か今日は珍しくアルベルトが遠慮がちに言葉を紡いだ。

 

『俺とセラは構わない。グレンを多めに休ませてやれないか?』

 

 彼の頼みにさして驚くでもなく、ただ頭を抑えて深くため息を吐いた。

 

「まさか、また(・・)なの?」

 

『あぁ。今の奴は精神的に疲弊している』

 

 救出できた者はいないと聞いたときから、グレンは恐らくそうなっているだろうとは思っていた。

 

「“結局、一人も救えなかった”、か」

 

 グレンが言いそうな台詞を言ってみる。何やらアルベルトが驚いている気がしたが、まぁ気のせいだと思う。

 

「何度も言ったのにねぇ。生存者なんて、最初から期待できない状況だって……」

 

 それが分からなかったのではなく、ただ期待せずにはいられなかっただけだろう。

 

 まだ生きているかもしれないと。まだ助けられるかもしれないと。

 

 グレンにやらせた任務はとっくに二桁を越えた。

 

 そのほとんどの任務で、それなりの数の犠牲者が毎度出ている。しかしグレンが嘆くように、決して一人も救えなかったわけじゃない。

 

 そのことにグレンは気づいていない。

 

 馬鹿と言いたいわけじゃない。けれど、グレンは。

 

「ホントに不器用よね、あいつ。勝手に抱え込んで潰れるくらいなら、私のせいにした方が楽なのに」

 




 こんな感じでいいんですかね。
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