「敵もしつこいにゃー……」
比較的原型を残た廃屋の中を満たす静寂を破ったのはIDWだった。疲労困憊といった様子で肩を落としながら、ぐでっと壁に寄りかかっている。
「敵の勢力圏なのですから、仕方ありませんわ……」
IDWと同様に疲労の気配を滲ませながらも宥めるSIG-510。二人とは反対の側に積み上げられた古いガスボンベに腰掛けている417は、敵である鉄血の動きについて考えていた。
鉄血部隊によって繰り返される幾度かの追撃から逃れ、417たちは壁と天井が残る廃墟へと潜伏していた。数度の戦闘による消耗を把握するためというのと、疲弊を紛らわせるためだ。
幾ら戦術人形が人間よりも遥かに頑強であるとはいっても、精神面での消耗は人間並みに存在する。指揮官の指揮下であればその負担もある程度軽減されるが、今のSIG-510とIDWは大まかな指針に従って自己判断で行動している状態だ。戦闘を重ねれば当然ながら負担は大きくなる。故に、彼女らは幾らかの休息を必要としていた。
とはいえ、ただ休んでるわけではなく残弾数の情報共有などを行い、行動再開への備えをしながらだが。壁によりかかりながら腰をおろしているIDWは引き抜いたマガジンの中を覗き込んだ。
「残り9発、貧しいにゃ……510はあと何発にゃ?」
「私は残弾5発ですわ。417さんは?」
510の残弾はIDW以上に乏しかった。全部急所に当てて、五体やっと倒せるといったところか。割と深刻に絶望的な状況だ。可能な限り戦闘は避けなければなるまい。そう考えながら、SIG-510は少し離れた場所に居る417へと話をふった。
「7.62mmが1マグと5発、焼夷手榴弾が一つですね」
「リッチだにゃあ……」
乏しい弾薬状況の中、417は残弾数は頭一つ抜けて多かった。それは単に彼女は弾薬を持てるだけ持った状態で合流したからで、節約して使っているとかの話ではない。故に、Manticoreのような装甲標的が相手となれば側面や背後を狙え無い限り弾を節約して仕留めることはできない。それなりに弾薬を必要となる。結局のところ想定される敵に対して、弾薬が乏しいことに変わりはなかった。
417は自らのチェストリグに付けられているマグポーチの中から細身のマガジンを一つ取り出しIDWへと差し出す。417が差し出したのは、彼女がサイドアームとして装備しているUSPの弾倉。フルメタルジャケットの9mmパラべラムを腹いっぱいに抱え込んでいる。
「サイドアーム用の9mmです。たぶん使えると思うのですが」
「おおっ、ありがとにゃー!」
「はい、どういたしまして」
IDWは、417から受け取ったマガジンの弾を嬉々として自分のマガジンへと移し替え始める。それを見て、ボソリとSIG-510が小声で言葉を溢す。
「こういう時、汎用弾ではないのを惜しく思いますわ……」
「んん、何かにゃ?羨ましかったのかにゃ?」
「ちっ、違います、単に戦術的観点からですわっ!いちいち、そんな事にまで反応しないでくださいっ」
「私の猫耳は地獄猫耳だから難しいにゃー」
本人からすれば誰にも聞こえないような声で呟いたつもりだったからそれを耳ざとく拾い上げ、にんまりと笑ってからかうIDWに、顔を赤くしながら反論するSIG-510。
そのやり取りを見守りながら、417は自分の中での彼女らと居る今について考えていた。コミュニケーション経験の少なさ故にこの状況が心地よいものなのか判断はつかない。だが、離れたいと思わないということは、そういう事なのだろうと逆説的に解釈をつけて結論を出す。
二人を無事に脱出させよう。417は改めて決意する。ヘリアンから与えられた命令であるということだけでなく、自身の電脳が彼女らの無事を願っていたからだ。
「んんっ! そろそろ休憩を終わりにして本題に入りますわよ!」
IDWからの追撃を断ち切ろうとするように咳払いをしたSIG-510は、多少強引に話題を切り替える。出された内容が内容なだけに、今まで彼女をからかっていたIDWも緩んだ空気を引っ込めて真剣な目つきになる。二人を眺めていた417も例外ではなく、腰掛けていたガスボンベから離れてSIG-510の広げた街全体の地図を覗き込む。
「まず、私達は追撃を受けていますわ。交戦のあった地点は―――」
これまで通ってきた経路上のいくつかの箇所にバツ印がされていく。鉄血の部隊と交戦のあったポイントだ。特に規則性などはないが、どれもが此方の移動経路を完全に読んだ上で潰してきていた。敵は自分達の位置を把握しているとしか考えられない。
「――結論から言うと、私達の位置は把握されてますわ。恐らくは、Manticoreを迎撃したあとからずっと」
「私も同感だにゃ。あの部隊と交戦してから追撃が増えてるにゃ」
追撃の増加は全員の感じるところであった。言葉を発さなかったが417もそれは同じ考えで、敵はどうやって把握しているのかを考えていた。
広げられたマップを見る限りレーダーサイトと言ったものの存在は確認されてなかった。それに、レーダーがあるならば照射される波長から感じ取ることが出来るだろう。動体検知機という可能性も捨てきれないが、市街地全体に配備されてるとなると最初に417達が待ち伏せに成功したことの説明がつかない。
「部隊に偵察要員を同伴させていたのでしょう。それが我々を今も尾行しているのかと」
「でも近くの偵察は抜かりなくやってるにゃ……ハンドガンタイプほど見渡せないけど、少しだって気配を感じないのはおかしいにゃ」
「恐らく、空ですわ。偵察ドローンを使っているのでしょう」
途中から417と同様に思案にふけっていたSIG-510は最も可能性の高いものを口にした。今まで誰も警戒していなかった上空、其処から監視されて居るというのならば納得がいく。
「そうなると、外に出たところで再度監視をされる事になりますね。流石に、交戦はあと一回が限度ですよ?」
監視の目が続くのであれば、敵の追撃部隊とは確実に戦闘になる。手持ちの弾薬は心もとないことの懸念を417は口にして、間接的にSIG-510の考えを問う。
「私達は監視の目の届かない場所を進みますわ」
SIG-510は心配無用と微笑んだ。
短めな気もするけど区切りが良かったので投稿。
低体温症は今日からですね。
皆さん堀の用意は済ませましたか?
神様にお祈りは?
物欲センサーに震えて眠る準備はオーケイ?
とりあえずG28を一人と、発情ウサg……FIve-seveNは三人ほしいのて二人は確保したい所存なりけり。