魔の霧立ち込めるロンドンの人理定礎修復が終了した後、ダヴィンチちゃんから貰った聖晶石を使い、新しい英霊を召喚することになった。
「それでは先輩。不肖ながら私マシュ・キリエライト、召喚の儀を取り行わせて頂きます!」
「うん、頼んだよ。マシュ」
彼女はニコリと微笑むと、彼女の盾を再度訪れたロンドンの霊脈に置いた。
途端に彼女の盾が白く光り輝き始める。
それと同時にピィピィと音が鳴り、ロマンから通信が入る。
「すまない、立香ちゃん。まずい事態になった」
「またワイバーン…って、ロンドンにワイバーンはいませんよね。ホムンクルスですか?」
「…いや、アサシンのシャドウサーヴァントだ。それも一人や二人じゃない。ざっと百人はいそう…って、わぁ!」
ロマニが誰かに吹っ飛ばされる音がする。どうやら犯人はダヴィンチちゃんみたいだ。
「急いでレイシフトをしてあげたいのだが、急いでもあと数十分はかかるんだ。それまでは今召喚中のサーヴァントでどうにか凌いでくれておきたまえ!」
ピィピィと音が鳴り、通信が切れてしまった。さて、どうしたものか。
「先輩、新しいサーヴァントが召喚されま…きゃっ!」
マシュが尻餅をつき、盾の上を指した。
そこにはつい何日か前にロンドンで敵として現れたアサシン、ジャック・ザ・リッパーの姿があった。
盾から降りて、私の方へと駆け寄ってくる。
「あなたが私のますたー?」
こくりと頷くと、えへへと笑顔を浮かべた。その可愛さに思わず、顔をだらしなくしてしまう。
「よろしくね、おかあさん」
「……はっ。よろしくね、ジャック」
横では妬ましそうな顔でマシュが私を睨みつけていた。…見てないふりをしておこう。
コホンとマシュがわざとらしく、大きな咳払いをした。
「マスター、新たなサーヴァントと親交を深めるのもいいですが、今は戦闘に集中しましょう」
いつの間にか盾を持ち上げていたマシュはツンツンしていた。
あとで一緒にお茶でもして、機嫌を取っておこう。
とにかくマシュの言う通りだ。戦闘に集中しよう。
「ねぇ、ジャック」
「なに?おかあさん」
「召喚して早々悪いんだけど、今沢山の敵に囲まれているんだ。だから…」
「おかあさんの敵を皆殺してくればいいんだね!わかった!」
そう言うと、目を輝かせながらロンドンの霧の中へと姿を消してしまった。
しかし数十秒後、刃物と刃物がぶつかり合う音と共に、そこかしこから悲鳴が聞こえてきた。
その声はなんだかジャックの声に似ているような気がした。
マシュは戸惑いつつも、私を守ろうと盾を構えて警戒していた。
しかし、それは杞憂に終わった。
数分後、ふわぁと小さく欠伸をしながらジャックが帰って来た。
「ただいま、おかあさん」
「おかえり、ジャック」
「おかあさんの敵、皆殺してきたよ。褒めて!褒めて!」
抱きしめて、よしよしと頭を撫でてあげるととてもジャックは喜んでくれた。ピィピィと通信音が鳴る。
「立香ちゃん、無事かい…ってあれ?あの大量のアサシンシャドウサーヴァントたちが消滅している!?」
ロマニが驚きすぎてポカンと口を開けている。
ジャックをまだ撫でている私を睨みつけながら、マシュが状況を簡単に説明した。
「ふむふむ…なるほどね。俄かには信じられないが、あのアサシン達が消えているのは事実だしね。とにかく、帰還の準備は出来たから、そちらの準備が出来たら言ってくれ」
「了解です、ドクター」
マシュが未だジャックを抱きしめている私をむすぅとした目で見てくる。
「先輩、帰還の準備が出来たそうです。早く帰りましょう、早急に。そして先輩の部屋でお茶しましょう、お茶」
「う、うん。分かった」
「私たちもおかあさんたちとお茶する!」
「ダメです。ジャックさんはフォウくんと遊んでいてください」
「そんなぁ…」
ジャックは顔を俯かせた。マシュは勝ち誇ったような顔をしている。
気まずそうにロマニがこちらを見ている。
「あ…それじゃあ、帰還させるよ?」
「はい、お願いします。ドクター」
身体の感覚が一時的に無くなり、意識が暗闇へと落ちていった。
二次創作は楽で楽しいなぁ。