「おい、マスター。さっさと起きろ」
「ん……」
もの気だるい身体をなんとか起こして目を開けると、そこは海底だった。
海面を仰ぐと魚達が群れをなして泳いでいるのが見え、前方には遠くの方に王宮らしき建物があるのが見えた。
「起きたか、マスター。全く…なんてことをしてくれたんだ」
アンデルセンは不機嫌そうに着ている白衣の乱れを直しながら、私を睨みつけてきた。
「ごめん、まさかあんな綺麗に薬品が飛んでいくとは思ってなくて…」
「…ふむ、まぁいい。そんなことより、早く帰るぞ」
「帰れるの?」
「もちろんだ。俺を誰と心得る?
その瞬間、アンデルセンの後ろに何かが通る姿が見えた。魚の尾ひれのようなものが見えたような気がするが、もしかしてこの世界は……
アンデルセンは不機嫌そうな顔で、フンっと息を漏らした。
「ここは、俺の書いた――人魚姫の世界だ」
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アンデルセンの代表作である人魚姫は、王子に恋をした人魚姫が色々あって海の泡となって消えてしまう悲劇だ、
子供の頃に読んで、悲しくて泣いてしまった記憶がある。
……悲劇と言えば、薬品を使う前にアンデルセンが悲劇には薬品を使うなと言っていたが、何か悪いことでもあるのだろうか。アンデルセンを追って歩いている間、何も話さないのは退屈だし、少し聞いてみようか。
「ねぇ、アンデルセン」
目の前で気だるそうに歩いているアンデルセンが歩きながら、「なんだ、マスター?」と言った。
「悲劇には薬品をかけるなって言っていたけど、どうして?」
はぁとアンデルセンは深くため息をついた。
「常識的に考えて見ろ。あの薬品はこの通り、あの薬品をかけたページの世界に放り込まれるという効果の代物だ。喜劇に使うならいいが、人がバシバシ殺されてしまうような悲劇のページにでも使って入ってみろ。一応、ページの世界に侵入するという形態を取るのだから、俺たちまでもが殺されかねないぞ。いくら幻覚とはいえ、名目上は死ぬんだ。精神にかなりの傷が残ることはほぼ間違いない」
なるほど、アンデルセン賢い。というか、私が不注意だっただけか。
「…ふむ。まぁ、そんなことはどうでもいいんだ。休憩時間が一秒でも惜しい。早く行くぞ」
アンデルセンはプロ競歩選手のような速さでぴゅーんと先へと急いでいった。
「あっ、ちょっ!」
置いて行かれないように、彼を走って追いかけようとした。
……しかし、なぜか足が動かなかった。
海藻にでも絡まったのかと足元を見てみると、そこには真っ白な二つの手が私の足をキツく握っている姿が見えた。
レイドQP美味しかった。