私の足を握る白い二つの手はとても冷たかった。ただ、不思議とその手は私を安らがせた。
マシュのことで不安定になっていた私の心を、柔らかな慈愛で包み込んでくれているような。そんな感じがする。
……なんだか身体の力がだんだん入らなくなってきた。立っていられないほどの脱力感が私を包み込む。
意識もだんだん……曖昧……に……
「……何を快楽に身を委ねている、マスター」
光の光線弾が二発、私の足元の二つの手に命中した。二つの手がそろそろと私の足から離れる。
すると、二つの手から年老いた悪い魔女が痛みにのたうち苦しんでいる時のような、おぞましい叫び声が聞こえてきた、
「マタ…ワタシヲコロスノカ…サクシャヨ!」
アンデルセンに言っているらしいその声は、とても憎悪に満ちていた。
その言葉に彼は少し顔をしかめた。
「あぁ、もちろんだ。俺は既に過去の人間だ。”
彼は光線弾をまた撃ち、今度は二つの手をしっかり仕留めた。
手はサラサラと海底の砂の中へと消えていった。
「さて…マスター。突然だが、今お前が悩んでいる問題の答えを教えてやる。一度しか言わないから聞き逃すなよ?」
あれ、アンデルセンはマシュが倒れたこと知らなかったはずでは。うーむ、観察眼で見抜いたのだろうか。
「…”お前の思うがままに接してやれ”。今まで通りにしろなどとは言わん。それが彼女にとっての、一番いい”先輩”になりうるはずだ」
思うがまま……思うがまま……か。
「……うん、分かった。クヨクヨ悩んでいても、解決しないしね」
「あぁ、その勢いだマスター。お前は魔術師としては最低だが、少なくともサーヴァントの扱いに関しては一流だ。作家の俺が言うのだから間違いない。だから悩んでも燻ぶるな。前に進みながら悩め」
アンデルセンはそう言うと、一瞬微笑んだ。しかし、すぐにいつも顔に戻った。
「……はぁ。こんな性に合わない説教はやめだ。本来、俺なんかよりもシェイクスピアの方がこういうのは向いているんだ。さぁ、さっさと帰るぞ、マスター」
アンデルセンはさっさと帰ると口上では言いながらも、先程よりも遅めに歩いてくれた。
その善意を嬉しく思いつつ、類い稀な善意を無駄にしないように、私は彼において行かれないようなペースで歩き始めた。
最近寒くなってきたので、もうそろそろ毛布が欲しい。