ジャックとマスターの話   作:海沈生物

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本を巡って(5)

サックサックと砂を踏み分けながら歩いていく。何も話さず、無言でゆっくりと歩いていく。

然して、一つ疑問が湧いてきた。

 

「ねぇ、アンデルセン」

 

「なんだ、マスター?」

 

「そういえば、どこに向かって歩いているの?王宮のあった方とは別の方向を歩いているけども」

 

「最初に言っただろ、出口だ」

 

いや、出口というのは分かっているのだけれど。

わざと言っているのか、わざと私を困惑させるために言っているのか。

 

アンデルセンは私なんかに目も暮れず、ただただ前へと歩を進めている。

本当にどこに向かっているのだろうか。気になる。

 

然して、それもすぐに杞憂に終わった。

れから数分後、彼は他の場所との大きな違いが感じられない場所で足を止めた。

 

「さぁ、着いたぞ。マスター」

 

「ねぇ、アンデルセン。本当にここに出口があるの?」

 

「あぁ、もちろんだ。そろそろ”頃合い”だからな」

 

「頃合い?」

 

そう尋ねた途端、海面から何かが落ちてくる音がした。

何事かと海面を見上げたが、そこには何も誰もいなかった。

ただ何かがいたらしい痕跡として、微かに泡が立っているのが見えた。

そして、その泡はまるで生きているかのように、私達のいる方へと近づいてきた。

アンデルセンはそれを強く睨みつけている。

 

「さて、マスター。あの泡に触れろ」

 

「触れる?危険なものではないの?」

 

「あぁ、あれは”人魚姫だったもの”だからな。あんまり躊躇していると、彼女の家族に俺たちの存在を勘づかれる可能性がある。早くその泡に触れろ」

 

「う、うん」

 

気が付くと、もう手を伸ばしたら届く範囲に泡が来ていたので、私は彼の指示通りに泡に触れた。

すると、私の身体が白く光り始めた。良くわからないが、これで本のページから脱出できるのだろう。

しかし、同時に泡も割れてしまった。

 

「アンデルセン、まずいよ泡が……」

 

「あぁ、()()()()()。この世界に俺が入ってきてしまった時点で、俺がこの世界から出られないことは直感的に気づいていた。それがどんな理屈や根拠なのかは分からないがな。妙に強く感じていた」

 

「直感的って何?どういうこと?」

 

「さぁ、それはさすがに作家の俺でも分からない。無辜の悪魔が関連しているのかもしれないし、神仏が関連しているのかもしれない……あぁ、そうだマスター。言い忘れていたが俺は」

 

身体が白い光にどんどん包み込まれていく。

待って、まだ彼の言葉は続いてる、せめてその言葉だけでも…と思ったが、白い光は待ってくれなかった。

私は入ってきた時と同じように、レイシフトでもしたかのような感覚に襲われ、意識を失った。




多分あと一話で「本を巡って」は終わりです。
ここまで書いて気付きましたが、今回の話全くジャック出てない。
次の話はジャック主体にする予定なので、タイトル軽く詐欺してるけど許して。
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