「……」
意識を取り戻すと、私はアンデルセンの寝ていた本の山の上にいた。
山の上からはシェイクスピアは未だ悠々と眠りこけている姿は見えたが、アンデルセンの姿はどこにも見当たらなかった。
本当にあのページの世界に取り残されてしまったままになっているのだろうか。
「……」
絶句していても仕方ない。彼に「思うがままに生きろ」と言われたのだ。
ならば、私は”思うがまま”に生きるだけだ。
「……よしっ!」
本の山の上を見ると、ちょうど最後のページが開かれた”人魚姫”の小説があった。
取り上げて中身をサラッと読んでみると、人魚姫が沈んで泡になってしまってバッドエンドで終わりのはずが、その先に一列空けて、こんな言葉が書かれていた。
【コノホンヲモヤセ】
現状、この本の最後のページの中にはアンデルセンがいるはずだ。
もし、この本を燃やしてしまったら、アンデルセンは死んで……死ぬ?
「あっ」
アンデルセンは最初、薬品のことを「一種の幻覚作用がある薬らしい」と言っていた。
でも、現状この部屋の中にはアンデルセンの姿は一切ない。
あんなに寝たがっていたので、自分の意志でわざわざほかの部屋に行った可能性も低いだろう。
ならば、答えは一つだ。やるべきことを理解した私は食堂へ向かった。
@
食堂はとても静かで、誰もいなかった。エミヤぐらいならいると思ったが、用事で席でも外しているのか分からないがいなかった。まぁ、いてもいなくても大して問題ないが。
一応まだ夜なので音をあまり立てないように注意して歩きつつ、キッチンの中へと侵入した。
@
キッチンの内部設備についてド忘れしていた。そういえば、ここのコンロはオール電化だった。
どうしようか、これだとこの本を燃やすことができない。
マッチとかもさすがにないだろう。必要性があまりないし。
ライターも同様か。うーむ本当にどうすれば。
そんな感じで悩んでいると、食堂のドアが開く音がした。
誰だろうかと思いドアの方を見て見ると、そこにはイバラギンとジャックとナーサリーがいた。
「あれ、ジャックたち。どうしたの?眠れないの?」
私の姿に気づいた二人は泣きながら私に抱きついてきた。
イバラギンはふぅと疲れたようなため息を漏らした。
「良く分らぬが、小童どもの部屋に”珍妙な声を漏らす背の低い男”が現れたらしい。余りの怖さに盗みぐ…少しお菓子が落ちていないか探していた吾の後を無言で付いてきてな。後ろにいられてはつまみぐ…お菓子捜索が出来なくて困る。それで、どうにかする為にマスターを探していたのだ」
背の低い男……うん、なるほど。これで確証が持てた。ついでに、本を燃やす方法も思いついた。
「ねぇイバラギン。お菓子あげるから、少し頼みを聞いてくれない?」
今回で「本を巡って」完結と思いましたが、思ったより書くことあったのであと一話続きます。すいません。