ジャックとマスターの話   作:海沈生物

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本を巡って(7)

「……あっつ!おい、マスター。俺は熱いのが苦手なんだ。散々いつも言っているだろう?」

 

「ごめん、ごめん。氷持ってこようか?」

 

「いい。少し置いて冷ましておく」

 

「そう……」

 

暫し、無言が続く。目の前のアンデルセンは、ぼんやりお茶を眺めている。

そしてお茶から揺蕩う白煙が見えなくなったころ、彼はまた口を開いた。

 

「さてマスター。まずは助けてくれたこと、感謝する。そして同時に、よくも俺の休憩時間を潰してあんなことに巻き込んでくれたこと、怨嗟する。それはさておき、燃やした”人魚姫”の本はどこに?」

 

私は首を振った。

 

「実は燃やす手段が思いつかなかったから、イバラギンの宝具で燃やしてもらったんだけど…」

 

アンデルセンは呆れ交じりのため息を漏らした。

 

「あぁ、それ以上は言わなくていい。展開はもう読めた。それじゃあ、なぜさっきから俺の後ろでマッチ売りの少女の絵本を子供サーヴァントが読んでいるか、教えてくれ」

 

「えっと…幻覚作用がある薬品だったから”ページの中の世界にいる”と錯覚している間、”現実世界でも歩いていた”のはこっちに戻ってきて、青髪……アンデルセンが子供たちの部屋でうろついているって知って分か…」

 

アンデルセンはそこまで聞いて、私の顔間近まで手を突き出してきた。因みにだが、イバラギンは食べ物を渡したらご満悦で部屋に帰った。

 

「あぁ…マスター。すまない、もう大丈夫だ。自分がやったことは十二分に分かった」

 

アンデルセンは少し冷めてぬるくなったお茶を一気飲みし、立ち上がった。

 

「それじゃあ、俺は仕事の続きをしてくる。その絵本は俺の部屋から取ってきたのだと思うが…もうプレゼントしておいてくれ。あと、お前は子供サーヴァントを部屋に送ったら寝ろ。あの娘が復帰したときにマスターが寝不足だと気付いたら、無駄に心労をかけることになるぞ」

 

そう言い残すと、アンデルセンは食堂から出ていった。

 

後ろを振り向くと、”マッチ売りの少女”を読み終わったらしく、ジャックとナーサリーが感想を語り合っているのが見えた。

このまま暫く二人が語り合っている姿を見ていたいが、今はもう深夜のはずだ。

子供サーヴァントが起きているのをエミヤにでも見られたら、ジャックたち共々小一時間叱られてしまう。

 

「それじゃあ、ジャック、ナーサリー、部屋に帰ろうか」

 

「青髪の人、いなくなったの?」

 

「うん、大丈夫。いなくなったよ」

 

「うん、それなら帰ろー」

 

二人は絵本を閉じると、私の手を掴んだ。

 

「でも、おかあさん。まだ、ちょっとだけ怖いの。だから…今日だけでいいから、一緒に寝たいな?」

 

一緒に寝るスペースあるか怪しいが…最悪私が床で寝ればいいか。

 

「うん、いいよ」

 

「やったー!」

 

二人は楽しそうに、彼らの部屋へと私を引っ張っていった。

二人が一緒なら、きっと今日はよく眠れるだろう。




これで「本を巡って」終わりです。次は閑話。
全く関係ないですが、エレシュキガル用に三十連分ガチャ溜まりました。
今年こそエレちゃん出したい。
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