「……あっつ!おい、マスター。俺は熱いのが苦手なんだ。散々いつも言っているだろう?」
「ごめん、ごめん。氷持ってこようか?」
「いい。少し置いて冷ましておく」
「そう……」
暫し、無言が続く。目の前のアンデルセンは、ぼんやりお茶を眺めている。
そしてお茶から揺蕩う白煙が見えなくなったころ、彼はまた口を開いた。
「さてマスター。まずは助けてくれたこと、感謝する。そして同時に、よくも俺の休憩時間を潰してあんなことに巻き込んでくれたこと、怨嗟する。それはさておき、燃やした”人魚姫”の本はどこに?」
私は首を振った。
「実は燃やす手段が思いつかなかったから、イバラギンの宝具で燃やしてもらったんだけど…」
アンデルセンは呆れ交じりのため息を漏らした。
「あぁ、それ以上は言わなくていい。展開はもう読めた。それじゃあ、なぜさっきから俺の後ろでマッチ売りの少女の絵本を子供サーヴァントが読んでいるか、教えてくれ」
「えっと…幻覚作用がある薬品だったから”ページの中の世界にいる”と錯覚している間、”現実世界でも歩いていた”のはこっちに戻ってきて、青髪……アンデルセンが子供たちの部屋でうろついているって知って分か…」
アンデルセンはそこまで聞いて、私の顔間近まで手を突き出してきた。因みにだが、イバラギンは食べ物を渡したらご満悦で部屋に帰った。
「あぁ…マスター。すまない、もう大丈夫だ。自分がやったことは十二分に分かった」
アンデルセンは少し冷めてぬるくなったお茶を一気飲みし、立ち上がった。
「それじゃあ、俺は仕事の続きをしてくる。その絵本は俺の部屋から取ってきたのだと思うが…もうプレゼントしておいてくれ。あと、お前は子供サーヴァントを部屋に送ったら寝ろ。あの娘が復帰したときにマスターが寝不足だと気付いたら、無駄に心労をかけることになるぞ」
そう言い残すと、アンデルセンは食堂から出ていった。
後ろを振り向くと、”マッチ売りの少女”を読み終わったらしく、ジャックとナーサリーが感想を語り合っているのが見えた。
このまま暫く二人が語り合っている姿を見ていたいが、今はもう深夜のはずだ。
子供サーヴァントが起きているのをエミヤにでも見られたら、ジャックたち共々小一時間叱られてしまう。
「それじゃあ、ジャック、ナーサリー、部屋に帰ろうか」
「青髪の人、いなくなったの?」
「うん、大丈夫。いなくなったよ」
「うん、それなら帰ろー」
二人は絵本を閉じると、私の手を掴んだ。
「でも、おかあさん。まだ、ちょっとだけ怖いの。だから…今日だけでいいから、一緒に寝たいな?」
一緒に寝るスペースあるか怪しいが…最悪私が床で寝ればいいか。
「うん、いいよ」
「やったー!」
二人は楽しそうに、彼らの部屋へと私を引っ張っていった。
二人が一緒なら、きっと今日はよく眠れるだろう。
これで「本を巡って」終わりです。次は閑話。
全く関係ないですが、エレシュキガル用に三十連分ガチャ溜まりました。
今年こそエレちゃん出したい。