ジャックとマスターの話   作:海沈生物

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フォウ・フォウ・フォウ(7)

「危ない!おかあさん!」

 

ジャックが咄嗟に懐からナイフを取り出して、”ナーサリーライム”の攻撃を防いでくれた。

 

「あ、ありがとうジャック」

 

とりあえず、”ナーサリーライム”から距離を取り、彼女をよく観察してみる。

赤く目を光らせた”ナーサリーライム”は、どこかいつもの彼女とは異なる雰囲気を帯びていた。

まるで、全く別のサーヴァントにでもなったかのような、そんな雰囲気を。

でも、反転…オルタ化した、と言った感じではなかった。

ふとマーリンの姿を見ると、ぼんやり椅子に座って私たちを見ていた。

千里眼で何かしらの未来でも見た故の行動なのだろうか。考えても分からないし、今は放っておこう。

それよりも眼前の”ナーサリーライム”だ。

 

「……ねぇ、おかあさん」

 

ナーサリーと睨みあっているジャックが、ふと声をかけてきた。

 

「どうしたの、ジャック?」

 

「…なんかね、あれから私たちと同じ感じがするの」

 

「同じ感じ…?」

 

「うん、良く分らないんだけどね」

 

同じ感じ…つまり”生まれられなかった子供たちの怨霊”が”ナーサリーライム”の中に混じっているのだろうか。

そんなこと、有り得るのだろうか。というか、根本的になぜ怨霊が憑いているのだろうか。

 

「マーリン、どういう…」

 

「…立香ちゃん。薄々君も感じているだろう?”いくらなんでも、有り得ない展開が多すぎる”という事実に」

 

確かに、朝なのに誰もご飯を食べに来ていない食堂、既に処分されてとっくにないはずであろう脅迫状、そしてこんな緊急事態なのになぜかロマンが緊急時用のアラームを鳴らさなかったことなど、沢山有り得ないことはあった。しかし、それがなんだと言うのだろうか。

 

「つまり…どういうこと?」

 

「……これは君の夢だ。いや、正式に言えば”君の記憶や思いから作られた夢”だ」

 

「えっと…普通の夢ではないの?」

 

「あぁ、君自身の成長の為に私が用意した夢だ」

 

成長の為の夢、と言われてもいまいちピンと来ない。どこに私を成長させる要素があったのだろうか。

マーリンの目を見つめると、はぁとため息をつきながら私の方に近づいてきた。

そして一言、こう言った。

 

「例え彼ら英霊が座に帰ってしまったとしても、その”記憶”は君の中に残るんだ」

 

そう言うと、私の頭をクシャクシャ撫でた。

 

「今までの君たちの旅だって、実質”なかったこと”だ。歴史が修正されれば、全て消えてしまう。でもね、”記憶”は君の中に残るんだ。…既にカルデアの二人の碩才のどちらかが言ったかもしれないがね」

 

「でも、そんなの…残された側はずっと寂しいだけで…」

 

「ずっと…ではないさ。人は移ろいやすいからね、いつかそんな胸焦がれる思いも色あせていくさ。だからね、立香ちゃん…君は…………」

 

マーリンが何か言おうとしたその瞬間、忽然と目の前が真っ白になった。




エレシュキガル爆死しました。
心が萎れました。
課金したいけど、そんなにお金ないので諦め。
病みそう。

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