ソロモンの冠位時間神殿を前にして、ロマンから私とマシュに対して、お茶のお誘いが来た。
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「突然呼びつけて悪かったね、立香君、マシュ」
ロマンに指定された部屋に行くと、焼きたてらしいクッキーと紅茶がテーブルに置かれており、椅子の一つにはすやすやと穏やかに眠っているジャックの姿があった。
「いえ、私も先輩も気にしていませんのでドクター。それより突然お茶なんて、何の御用なんですか?」
彼は少し苦虫を噛んだような顔をして、とりあえずそこの椅子に座ってくれと言ってきた。
指示通りに、私はジャックの隣の椅子に座った。マシュは私の隣に。
すると、ロマンは手を組み、私とマシュの顔を交互に強く見つめてきた。
「……実を言うとね、特に重要な用はないんだ。ただ、敵の本拠地を前にして緊張しているであろう君たちに肩を緩めてほしくてね。ただのお茶会さ」
ロマンはあの優しげで儚い、にんまりとした笑顔をこぼした。
私たちは拍子抜けして、軽く息を漏らした。
「もう、あまりにドクターが真剣な表情をしているので、てっきり何か問題でも起こったのかと思いました」
「ごめん、ごめん…調整とかでしっかり伝える時間がなくてね。本当にこの通りだ」
ロマンはペコリと頭を下げた。マシュと私は顔を見合わせて、半笑いした。
マシュが気にしていませんよと言ったが、ロマンは本当にすまないと言って、また謝ってきた。さすがにこのままでは会話が進まないので、マシュは話題を変えようとした。
「そ、そういえばドクター。どうしてジャックさんがここに?」
「えっと…別に彼らは招いてはいなかったんだけど、”おかあさんが来る気がする!”って言い張って、そこの椅子を占領してしまったんだ。それで仕方なく、別の空き部屋から椅子を取ってきて帰ってきたら…こんな感じに」
幸運の値も特別良くないはずなのに雰囲気で私が来るの察知するなんて、怖いような嬉しいような複雑な感情だ。マシュは私の横で「私もそのぐらい察知できるように…」とブツブツ言っている。普通に怖いよ、マシュ。
「それじゃあまぁ…遠慮せずに好きにクッキーを食べてくれ。僕はほら…疲れてて、お腹空いてないからさ」
「…はい!それではお言葉に甘えて、不肖マシュ・キリエライト、先輩より先にいただかせてもらいます!」
ハムっと美味しそうにマシュはクッキーを食べると、満面の笑みを浮かべた。
きっと、とても美味しかったのだろう。私も続いてハムっと食べる。
…うん。口の中に優しい甘さが広がって、とても美味しい。
ただ、この味はエミヤなどのカルデア料理人たちの味ではない。
よく試作品をもらって食べているので、なんとなく分かる。
「ロマン。もしかしてこれ…」
「あぁ、僕の手作りだよ。タマモキャット君にみっちり仕込んでもらったんだ。良く分ったね」
「伊達に毎日食堂のご飯を食べているわけじゃないからね」
自然と自慢げな顔を零すと、二人は顔を見合わせて、なぜか笑いあった。
むぅ、そんなに私の顔がおかしかったのだろうか。喜んでくれたし、別に構わないけど。
むぅついでに、私は寝ているジャックの顔を見つめることにした。
小さな口で安らかな呼吸をしている。整った顔立ち、細い腕、あぁ、全てが愛おしい。
サラサラなジャックの頭を撫でると、気持ちいいのか「えへへ」と声を漏らした。
つんつん、と頬をつつくと「ん…」と眠たげな声を漏らし、小さな瞼を開けてしまった。
「おはよう、ジャック」
「…おはよう、おかあさん」
後ろからマシュの羨望という名の圧力を感じながら、私はジャックに対し、慈愛に満ちた笑みを漏らした。
ロマンってぐだーずのこと○○君呼びしてたのを、さっき初めて気づきました。
今回から…と言っても、もう数えるほどしか話数はありませんが、ロマンが他の人に対して名前呼びするときは君つけるようにします。