息を切らせつつ、彼の部屋へと走る。
何度かレオニダス・キャンプを経験させられた為に多少は体力を持っているが、それでも最大出力で走っているのでかなり呼吸が辛い。肺が潰れてしまいそうで、口呼吸が強いられるために口内がとても渇き、足も棒のようになっており、痛い。
しかし、もし歩いて行ったならば、マシュとすれ違いになってしまう可能性がある。
それだけは避けたい。
「……はぁ、はぁ、はぁ……着いた!」
彼の部屋の前に着くと、なぜか自動ドアが少し開いており、中からマシュと誰かが話している声が聞こえてきた。
恐る恐るバレないようにドアの隙間から中を覗くと、そこにはマシュとジャックの姿があった。
そう言えば、あの祝賀会会場でジャックが見えなかったことを思い出した。
…それにしても、異色な組み合わせだ。私が仲介している時ならまだしも、マシュとジャックが二人で話しているなんて。引き続きバレないように警戒しつつ、二人の話している内容に耳を澄ました。
「…ジャックさんは先輩…えっと、”おかあさん”といて楽しいですか?」
「うん!おかあさんはいつも私たちに優しくしてくれるし、大好きだよ!」
「そうですか……それじゃあ、ジャックさんは”おかあさん”が誰か他の人と話していて、何か…感じることはありますか?」
「うーん……ちょっとだけ寂しいと思う……かな。でも、おかあさんが私たちのおかあさんであることは変わりないから、私たちは気にしないよ!」
マシュは目を伏せて、「おかあさんが私たちのおかあさんであることは変わりない…」と小さな声で復唱した。
復唱し終わると、すぅはぁと深く呼吸をして、ジャックに向かって「ありがとうございました、ジャックさん!」とだけお礼を言い、なんとドアの方…つまり、私の隠れている方へと走ってきた。
走ってどこか死角なりに逃げようにも、先程走ってきたことにより、私にそんな体力は微塵も残されていなかった。
「……せ、先輩!ど、どうしてこんなところに?食堂で皆さんと一緒に祝賀会を楽しんでいたんじゃ…」
突然私と鉢合わせしたマシュは驚きと戸惑いで、顔を真っ赤にしていた。
「あっ!おかあさんだ!」と言って、部屋の中からジャックも出てきた。
「えっと…まずはジャック、後で私たちも行くから、先に食堂に行っておいてくれるかな?」
「うん、分かった!待ってるからね!」
ドタドタ足音を立て、ジャックは食堂の方へと走っていた。
「それじゃあ、マシュ。…少しだけ話をしない?」
後で一話で終わる…かな?不安になってきた。