漆黒の髪を靡かせ、粉雪のように優しい君は(俺ガイル)   作:みうみん

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比企谷八幡の独白


されど比企谷八幡は……

  心臓がとまるような、息ができないような……この感覚を感情を俺は知っている。

 

  いつの頃からだろう……

 

  この感情を偽りの何かだと胸の奥に縛り付けて見て見ぬふりをし始めたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  独り善がりで、一方的に幻想を押し付けて、勝手に傷ついて、自己嫌悪に至るそんなのはもう懲り懲りだ。

 

 世の中は欺瞞だらけだ……だから……そんな理不尽な世の中が嫌いだ。

 

 

  それでも……信じてもいいものがあると。失ってはいけないものがあるのだと……

 あの人たちから教わったじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――― ―――

 

  俺の大切な恩師は言った。

 

「なぁ、比企谷」

 

「優しい人になれ。優しさを恐れないで、素直に受け取れる人になれ。その優しさはおまえに向けたものだから、おまえの助けになるはずだから……そして、優しさを返せる人になれ。誰かがおまえの優しさをおまえに返してくれる。優しさを返してくれた人を大切にしろ。その人を失いたくないって。その人のことは信じてもいいって思えるくらいに……。その人が真正の本物のおまえを見てくれる。大切にしてくれる人だから。そうすれば……お前が欲する何かが手に入るはずだよ」

 

 

 

 

 

  堅実な天才はこんなことを言っていた。

 

「努力をしろ。努力してこれだけは誰にも負けない。譲れないというものを見つけろ。私は軽々しく『天才。天才』とすぐに自分と比べて一括りにするやつが嫌いだ。努力をしたか?どのくらいそれに打ちこんだ?それで何を失って、何を得た?そこまで考えて話しているのか?いや、話していない。そういう奴らはそこまで考えて発言していないさ。その領域まで達してすらいない。諦めた奴らに、そこで止まった奴らにとやかく言われる必要はないんだ。上に立つ者は上にいるためにそんな奴らの何倍もの時間を費やして努力しているさ。考えて踠き苦しんでそいつの今があるはずだ。上を見ないといけないから、下を見ることは許されないから……前に進むしか、道を造るしかないから。そうしないと上に居続けられないから。上に立つ者は示さなければならない。自分の存在を、自分がいた足跡を。自分の背中を追い求めている一人のために」

 

 

 

 

「『努力は報われない』と言う奴がいるが、報われる、報われないは結果でしかない。そこまでに行き着くまでの過程がある。そこを自分でどう考えてどう繋げるかだ。見てくれている奴は一人……たった一人だけでもいるはずだ。もし、その努力を認めてくれるやつがいなかったら、そんな……そんな世の中は理不尽だ。そんな社会はなくていい。だから、己が信じるものに突き進め。前を向くしかないんだ。努力して足掻いて苦しめ。そしたら……そうだな。『光』を手にするだろう。その光を大切にしろ。絶対に手放すな」

 

 

 

 

  お節介なまでに真っ直ぐなやつはこう言った。

 

「『光』を追い求めてください。その光はなんでもいいです。勉強でも、部活でも、人でも、物でも……私の光はとある人物です。その人はいつも真っ直ぐで自分を貫いて、私には眩し過ぎる。だけど追い求めて、背中を追い続けて、追い越したい……そんなことを思わせてくれる人です。想う気持ちがあれば人は強くなれる、前へ進めると私は思います。だから、皆さん。何か一つでも光を見つけてください」

 

 ――― ―――

 

  優しさは嘘だと決めつけていた…だけど信じてもいいものもあるのだと今の俺は知っている。

 

 

 

  俺に光なんてあるのだろうか……

 

  いや、気づいていた。わかっていたさ。

 

  でも、触れることなど許されないと思っていた、関わることなど許されないと思っていた。

 

  そんな彼女の……嘘偽りのない「本物」の彼女を知ってしまったから。この目で見てしまったから。

 

 

 

 

 

 

  俺の光は、俺のできないことを容易くこなしてしまう。俺よりも一歩も二歩も先を歩んでいる。どこか先を見ているのだとばかり思っていた。

 

 

  でも、違った……

 

 

 

 

 

  可愛いものが好きで、猫が好きで、おばけと高いところが嫌いで、自分が何者かなんてことに悩むような……普通の女の子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  彼女は何を思い、何を諦めたのだろうか……

 

 

 

 

  まだ俺は、彼女におまえは一人ではないってことをちゃんと伝えていない。

 

 

 

  俺は彼女のことを見ているようで見ていない。全然理解していなかった。

 

 

 

 

  でも、「いつか」なんて曖昧な、脆くて、今にも砕けそうな鎖は解けたから。

 

 

 

  今なら……「今」しかないから。彼女を……本物の彼女を今なら見れる。そう確信した。

 

 

 

  ある人は言った。「君は酔えない」と。

 

 

  確かにそうなのだろう。酔ったとしてもどこかに冷静な自分がいて、自分がどんな顔をしているのかまで見えてしまうのだ。

 

 

 

 

 

  けれど、一つだけ。俺にも酔えるものがある。

 

 

 

 

  これが俺の「答え」




あなたの光はなんですか?
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