漆黒の髪を靡かせ、粉雪のように優しい君は(俺ガイル)   作:みうみん

3 / 4
ゲーガイル要素に一味つけ加えた感じです。


やはり私の青春ラブコメはまちがっていない。

  「由比ヶ浜さん。話があるの」

 

  「うん」

 

 

 

  私たちが今いるのは、私たち三人を繋げてくれた奉仕部の部室。

 

  でも、今ここに彼はいない。彼女と私の二人だけ。私は彼女と…いいえ。もう誰かに押し付けてはいけない。もうわかったから。だから、私自身と向き合わなければならないのだ。

 

  「本当に心配かけてごめんなさい」

 

  「全然!気にしないで!ていうか、あたし、なんもできてないし……」

 

  「いいえ。あなたには……救われているわ」

 

  「いやー、ほんとあたし、なにも……」

 

  「助けて、もらったわ。気づけばずっと……」

 

  「ゆきのん……」

 

  ずっと微笑みを浮かべていた彼女の表情が、ふと翳る。

 

  こんなことを言ってしまうのは、これから言おうとしていることは。きっと卑怯なのだと思う。けれど、こんな卑怯な私でさえも受け入れてしまうのだろう。彼女は。私の友達は。

 

  ただ、楽になりたいだけなのかもしれない。

 

  お互いに何となく察しているから、それを言葉にしてしまえば、きっと壊れてなくなってしまう。

 

  そして、彼女は言葉にできてしまえる人だ。素直で明るい、優しくて素敵な人だから。私とは、違う。私はずっと言葉にすることができなかった。

 

  だから、この話はこれでおしまい。告げずに済ませて、野に埋めて、私がハッピーエンドを見守って、それでおしまい。

 

  そのはずだったのに……

 

  「ねぇ、ゆきのん。あたしもね……、ずっと助けられてきたよ。最初からずっと、いっつも、……それに、最初に助けてもらったのはあたし」

 

  「なんか、あたしたち助けられてばっかりだね」

 

  「そうね…私はあなたにも比企谷くんにも甘えてばかり」

 

  「うん」

 

  「……いつの間にか、そんな風になっていた。自立しなければと、依存してはいけないと、戒めていた筈なのに」

 

  「……それでいいんじゃないかなぁ。依存ていうかちょっとめんどくさいっていうか、なんか重いっていうか……」

 

  「あたしも、ゆきのんも、……ヒッキーもさ。みんなお互いめんどくさいから。…… ……だから、気にしなくていいんだよ」

 

  「由比ヶ浜さん……」

 

 

  あなたは本当に優しい人。私が告げずに済ませて、野に埋めてしまえば、きっと彼女は悔やむのだろう。澱のように沈み込み、小さな棘となって、影を落とす。

 

  だから、彼女に罪悪感を押し付けたくはない。例え、結果がどうなろうと。失うとしても。甘えて、縋ったりはしたくない。

 

  「──欲しいものがあるから」

 

  「由比ヶ浜さん」

 

  「なぁに?」

 

  「私、比企谷くんが好き……彼のような人とは、きっと二度と出会えないと思う」

 

  「……うん」

 

  「……由比ヶ浜さん、その……ごめ」

 

  「ゆきのん、頑張って。あたし、ゆきのんが好き。二人が好き。……だから、頑張って」

 

  「……ありがとう、由比ヶ浜さん」

 

  「うん……」

 

  「バイバイ。ゆきのんこれからもずっと友達だよ。よろしく」

 

  彼女はそう言って頬を擦り付けながら私にしがみついてきた。

 

  「私こそ、よろしく。ゆっ、結衣」

 

  「え?今私のこと名前で呼んだ?ね、呼んだよね?」

 

  驚きと嬉しさが混じった表情で私を見つめ、しがみついている腕の力を強めてくる彼女。

 

  「えぇ。痛いわ。少し弱めて」

 

  「あっ、ごめん」

 

  「いいえ。大丈夫よ。それで…ダメ…かしら?その…名前で呼ぶのわ…私なりに頑張ってみたのだけれど。あなたは私の一番の友達だから。何か欲しいなと…」

 

  「ううん。ありがとう。ゆきのん。嬉しいよ!全然そのまま名前で呼んで!」

 

  「ゆっ、結衣」

 

  「もう一度、ハッキリと」

 

  「結衣」

 

  「うーーん。最高だよ!ほんとゆきのんは欲張りさんだよね!って私もか。えへへっ」

 

  「改めて、これからもずっとよろしくね。ゆきのん。それと、頑張って!じゃ、あたしは行くね」

 

  「えぇ。よろしく結衣。そして、ありがとう」

 

  「うん」

 

  橙色に染まる空を背中に見せる彼女の微笑みは曇りも淀もなく、どこか晴れていて美しく映えていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。