ソードアート・オンライン 〜Dhampir Rosary〜   作:黒月ノ夜

10 / 10
ピーンポーンパンポーーン

注意!!このクソ小説には以下のことが含まれます。


ナメクジ投稿

下手糞な描写

急展開

拗らせた不治の中二病

オリジナルキャラクター

シリアスっぽい何か

滑り落ちたネタ

ご承知の方はどうぞお楽しみください。




悲壮な過去と非情な現実

 デスゲームが始まり月日が流れアインクラッドにも冬が来ていた。あと4週間もすればクリスマスである。そのためか、楽しげに街を歩くカップルも多い。しかし、キリトは46層にあるフィールドにいた。太陽は完全に沈んみ、フロアの間から差し込む月明かりが辺りをほのかに照らしている。そして、厳しい冬の寒さがキリトの身体を容赦なく蝕んで行く。

 キリトがここに、訪れた理由としてはここが効率の良い狩場だからだ。現在で知られている狩場の中でそこそこのポジションに位置付けている。巣穴から出てくる巨大なアリ型のモンスターは攻撃力がそこそこ高いもののHPと防御力が低いため倒すのに時間をあまり必要としない。スポーンのペースも早く、短時間に大量のモンスターを狩れるため経験値の獲得率が高いのだ。キリトはレベルを上げなければいけない理由があり、1日のほとんどをこの狩場で過ごしている。

 現在スポーンしてる巨大アリは残り2体。キリトは現段階で取得している最長連撃技の6連撃を半分ずつ叩き込み屠った。そしてキリトは次のスポーンの波が来る前に出口へと全力で駆け出した。約40mを5秒程度で走り抜けると凍っている地面へと突伏した。しばらくその状態でいると遠くから複数人の足音がした。どうやら、顔見知りの様だが挨拶するのも億劫だ。キリトは右手をノロノロと動かし先に行ってくれとサインを送った。すると、はぁという太いため息の後に錆びた声が聞こえた。

 

「ちょっとお前らとレベルの差がついちまったから、オリャあ今日は抜けるわ。いいな、円陣を崩さねぇで、両隣の奴のカバーを常に意識するんだぞ。危なくなったら遠慮しねぇで大声で呼べ。女王が出たらすぐ逃げろ」

 

 ようやく整ってきた呼吸を深く繰り返しながら、右手をついて近くの木の幹に寄り掛かった。ほれと飛ばされたポーションをありがたく受け取り、貪るように飲み干した。そして、顔を上げてポーションを投げ渡してくれた奴を見る。デスゲームであるSAOが始まってからの友人で悪趣味なバンダナの下に無精髭に囲まれた口をひん曲げて言った。

 

「いくらなんでも無茶しすぎじゃねぇのか。キリトよぉ。今日は何時からここでやってんだ?」

 

「ええと…夜の8時くらいだったかな」

 

「おいおい、今午前2時だから、6時間も籠りっぱなしかよ。こんな危ねぇ狩場、気力が切れたら即死ぬぞ」

 

「平気さ、待ちがいれば1、2時間は休める」

 

「間違いなけりゃぶっ通しなんだろうが」

 

「そのためにわざわざこんな時間に来てるんだ。昼間は5、6時間待たされるからな」

 

このバカったれがと舌打ちまじりに吐き捨てたクラインは腰からレア武器の刀を取ってキリトの前にどかっと座った。そのまま今のような会話を続け、ある話に着地した。今、このSAOに流れている噂だ。

 SAO開始から1年。2度目のクリスマスを目前に、とあるフラグボスの噂がアインクラッドを駆け巡っていた。各層のNPCがこぞって同じクエストのことを口にするようになったのだ。

 曰く、ヒイラギの月_つまり、12月24日の夜24時ちょうど、どっこかの森にある樅の巨木の下に《背教者ニコラス》なる伝説の怪物が現れるという。もし、倒すことができれば、怪物が背中に担いだ大袋の中にたっぷり入っている財宝が手に入るだろう_

 この噂に普段は迷宮攻略しかしないトップギルドも食いついた。大量のコルにしろ、レア武器にしろ、迷宮を攻略するのであれば大きな手助けとなる。しかし、ソロプレイヤーであるキリトは最初この話は興味がなかった。無論、ソロで狩れるような相手ではないことは目に見えていたし、コルが特別欲しいというわけでもない。何より、無数のギルド、プレイヤーが狙っているフラグMobに名乗りを上げて無用の注目を受けるのはまっぴらだった。

 しかし、あるNPCが発した一言が競争の火をさらに激しく燃やさせ、キリトの考えを180度返させた。それ以降、キリトは今日のように狩場に入り浸っていた。大勢の笑い物になりながらも狂ったようにレベルを上げ続けていた。

 

「やっぱりあの話のせいかよ…《蘇生アイテム》の…」

 

「……あぁ」

 

「…気持ちはわかるぜ…まさに夢のようなアイテムだからな。【ニコラスの大袋の中には、命尽きた者の魂を呼び戻す神器さえもが隠されている】…。でもな、大方のやつが言っているようにこれだけはデマだと思うぜ。デマというか、普通のMMORPGとして開発された時の台詞がそのまま残っちまった…。つまり、本来はデスペナルティなしに蘇生させるアイテムだったんだろうさ。だが、今のSAOじゃあ、ンなことはありえねぇ。ペナルティが命そのものなんだからよ。思い出したくねぇけど、最初の日、茅場の野郎が言ってたじゃねぇかよ」

 

「…そんなことはわかってる…わかってるけど……やらないわけにはいかないんだよ…」

 

「そうか…やっぱり、キリト…お前ぇ、まだ忘れらんねぇんだな、前のギルドのことが……もう半年になるのによ…」

 

キリトはソッポを向き、言い訳のように吐き出した。

 

「それを言うなら、まだ半年だ。忘れられるわけが無いだろうが……全滅したんだぞ、俺のせいで…」

 

キリトは立ち上がると、不器用な刀使いが不慣れな慰めの言葉を言おうとする前に街へと歩き出した。後ろではクラインが呼び止めようとしているのかまだ何かを言っているのが聞こえる。キリトはそれを背中で受けながらもただ街へと足を進める。

 

「おい、キリト。俺がお前ぇの心配したのは、別に情報を聞き出すためのカマかけばっかりじゃねぇからなこの野郎。無理してこんなことで死んでも、お前ぇに蘇生アイテムは使わねぇぞ」

 

そのクラインの叫び声がキリトに届いた最後の言葉だった。しばらく森の中を歩き続けたキリトは何かに向けられたように月夜へ視線を向け、忘れられない記憶が再び、キリトの脳内を駆け巡った。

 

 

 

 

 

 

〜半年前〜

 

俺はあるギルドに所属していた。《月夜の黒猫団》それがギルドの名だった。ギルド間の仲は非常に良く、俺がこのイカれたゲームを本気で攻略しているのはこのギルドなのかもしれないと思う程だった。最初の出会いは黒猫団がゴブリン群戦い苦戦しているところに、偶然通りかかった俺が助太刀に入ったことだった。正直助けに入るかは迷ったがHPバーを見て助からない可能性は0ではないと判断し、

 

「ちょっと前、支えてましょうか?」

 

と声をかけた。

ビーターなのがバレると面倒なことに…いや、俺は怖かったのだろう。彼らが俺の事を蔑みの目で見るのが。そうして俺は初歩のソードスキルだけを使い、実力を隠しながらゴブリン群を全て倒した。そこからはあまり覚えていない。ただ彼らが割れるような歓声を上げ、勝利を喜び俺を囲んで大はしゃぎしていたのは覚えている。ソロで戦い続けていたのでそういうのには慣れていなかったがなんというか、助けに入って良かった、と思えた。

彼らはとても気持ちのいい奴らだった。俺が嘘を吐き実力を隠すような事を言うと『月夜の黒猫団』のリーダー、ケイタは俺の事をギルドに誘ってきた。前衛が足りないのだという。とてもにこやかに、楽しそうに笑い合っている彼らを騙しているということに気は引けたが、俺は罪悪感を感じながらこくりと頷いた。

 

「じゃあ……仲間に入れてもらおうかな。改めて、よろしく」

 

そこから俺は彼らのレベル上げを手伝いながら、深夜になると宿屋を抜け出し最前線に出てソロでレベル上げを続けていた。しかし、サチを盾剣士へと育て上げる計画は頓挫していた。それも、サチは怖がりな性格であったせいで、前線に出るとどうしても怯んでしまうのだという。

そんな中、サチは俺たちの前から姿を消した。

ギルドメンバーは大慌てで迷宮区へ向かい、俺は一人でフィールドの追跡不可能エリアを探した。索敵の上位スキル《追跡》を使用し、主街区の外れの水路の中でサチを見つけた。

 

「……サチ」

 

「キリト。……どうしてこんなとこが判ったの?」

 

「カンかな」

 

「……そっか」

 

そしてサチは俺に心の内を明かした。

死ぬのがとても怖いこと。

恐怖で最近あまり眠れていないということ。

ゲームから出られない、なぜ本当に死ななければならないのか、茅場はなぜこんなことをしたのか。

そんな問いに俺は考えて、考えて、答えを絞り出した。

 

「多分、意味なんてない……誰も得なんてしないんだ。この世界ができたときにもう、大事なことはみんな終わっちゃったんだ」

 

そして俺は、言ってしまった。なんの根拠もなく、ただ『可哀想な』彼女を安心させるためだけに、ただこの場を逃れるためだけに、俺のために嘘を吐いた。吐いてしまった。

 

「……君は死なないよ」

 

この言葉が後々、俺自身を深く傷つけることも知らないで。

 

翌日からサチは夜が更けると俺の部屋で寝るようになった。君は死なないという言葉を聞かないと眠れなくなってしまったのだという。抱く罪悪感が増す感覚の中で、俺はサチになんの中身もない薄っぺらい言葉をかけ続けた。

 

地下水路での夜から1ヶ月ほど経ったある日、ケイタはギルド資金を全て使ってギルドハウスを不動産仲介プレイヤーの元に買いに行った。ケイタの帰りを待つ中、メイサーのテツオが、

 

「ケイタが帰ってくるまでに、迷宮区でちょっと金を稼いで、新しい家用の家具を全部揃えちまって、あいつをびっくりさせてやろうぜ」

 

そして俺たちは最前線から3層下の迷宮区に向かった。俺はそのダンジョンがトラップが多く仕掛けてあることを知っていたが、それを伝えることはしなかった。そして俺はそれを後悔する。

探索の帰りに見つけた宝箱をシーフが開けようとするのを止められなかった。そして──

 

まずシーフが死んだ。宝箱を開けた途端、アラームが鳴り響き、集まってくる大量のモンスターに推し潰れるようにして消えていった。次にメイサーのテツオが死んで、槍使いも死んだ。俺はそこから何も考えることが出来ず、ただ滅茶苦茶に上位ソードスキルを振り回した。そんな中、最後に残ったサチはモンスターに囲まれHPが消えゆく刹那、俺の方へ手を伸ばし何かを呟いて、ポリゴンへと姿を変えた。

 

何とか生き残った俺は何も残らなかった部屋を後にし、宿屋へと向かい、もう戻らないメンバーの帰りを今かと待ち続けているケイタに全てを話した。俺の話を聞いたケイタは徐々に感情を失っていき、最期はアインクラッドの外周部で、俺の目の前で遥かな空へと身を投じた。

 

あの時サチは俺に向かって何を呟いたのだろうか?今となってはわからないが、とてもそれを考える余裕はなかった。ただ光を失ったその眼でケイタが消えていった皮肉なほど美しい空を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キリトは35層に転移し、ゲートから出ると、最前線の54層とは打って変わって静寂が広場を支配していた。中層プレイヤーの主戦場とも離れており、主街区もゲームで良くあるような農村のつくりだからだろう。しかし、ちらほらとプレイヤーが見える。そのためにキリトは人の目を避けるようにコートの襟を引き寄せ街区から足早に出た。

 雑魚モンスターを相手にしている時間も精神的余裕もないため尾行者がいない事を確かめたキリトは全力で走り始めた。この1ヶ月間の無茶なレベル上げによりキリトの敏捷度パラメーターもかなりアップしていた。そのため、積もった雪を蹴る足は羽のように軽かった。並大抵のプレイヤーは距離を保つ事さえ難しいだろう。しかしながら、今までの体の負担は大きいようで、こめかみ辺りに鈍痛が疼き続けていた。だが、キリトはその痛みに少し感謝をしている。鈍痛のお陰か眠気が一切ないからだ。

 10分もかからないくらいでキリトは迷いの森の入り口に到着したいた。このフィールド・ダンジョンは無数の四角いエリアに分けられている。それぞれのエリアへと繋がるポイントがランダムに入れ替わる仕組みになっているのだ。そのため、地図を見る事なく踏破するのは不可能に近い。

 キリトはフィールドの地図を開き、要所にマーカを付ける。目的地とマーカを逆から辿りルートを確認する。キリトは地図を睨み付けてルートを頭に叩き込むと、深夜の真っ暗な森へと独り足を踏み出した。

 

 

 

 キリトはどうしても避けることのできない戦闘だけを行い、走り続けた。目的地前の最後のエリアに入り、次のワープポイントを目指し数m走った時だった。背後のワープポイントから複数のプレイヤーが出現する気配がした。ハッとして振り返ったキリトの目に写ったのは約10人のプレイヤー。その中心には侍がつけるような軽鎧に腰挿の長刀。頭にバンダナを付けたプレイヤー…クラインがいた。ギルド風林火山の主要メンバーは各々表情に緊張感を漲らせながらもキリトへと歩み寄る。クラインの顔だけをまっすぐと凝視し、キリトはしゃがれた声を絞り出した。

 

「…尾けてたのか」

 

クラインはバンダナで逆立った髪をガリガリとかきながら頷く。

 

「まぁな。追跡スキルの達人がいるんでな」

 

「なぜ俺なんだ」

 

「お前ェが全部のツリー座標の情報を買ったっつう情報を買った。そしたら。念のため54層の転移門に貼り付けといた奴が、お前ェがどこの情報にも出てないフロアに向かったっつうじゃねぇか。オレは、こう言っちゃなんだけどよ、お前ェの戦闘能力とゲーム勘だけはマジですげぇと思ってるんだよ。攻略組の中でもトップクラス…あのヒースクリフにも引けをとらねぇってな。だからこそなぁ…お前ェを、こんなとこで死なすわけにはいかねぇんだよ、キリト!」

 

真っ直ぐ伸ばした右手でキリトを指差し、クラインは叫んだ。

 

「ソロ攻略とか無謀なことは諦めろ!オレらと合同パーティを組むんだ。蘇生アイテムは、ドロップさせた奴ので恨みっこなし、それで文句ねぇだろ!」

 

「……それじゃあ…」

 

キリトはクラインの言葉が本当に友情から来るものなのだと信じることができなかった。

 

「それじゃあ、意味ないんだよ…俺独りでやらなきゃ…」

 

キリトは剣の柄に手を伸ばし、そして強く握った。狂熱にうかされている頭で考える。…全員斬るか。

 ここまで生き残ってくれたクラインという名の数少ない友人を斬るか。そこまでして得たものに意味はあるのか…無意味だ。と微かに叫ぶ声と無意味な死こそ本当に望んでいるものだと圧倒的な音量でもうひとつの声が喚き出す。

 少しでも剣を引き抜けば自分自身を抑えることは出来ない。キリトは右手を細かく震わせる。ギリギリの鬩ぎ合いを続けるキリトをクラインはどこか悲しげな目でキリトを見ていた。

 まさにその瞬間。第三勢力が姿を現した。しかも、10人なんて規模ではない。その3倍はある。キリトは愕然とその大集団を眺める。同様に呆気を取られて振り向いていたクラインにボソリと声を投げかける。

 

「お前らも尾けられてたな、クライン」

 

「……あぁ。そうみてェだな…」

 

そうしていると、クラインの隣に居た風林火山のメンバーが、クラインに顔を近づけ、小さく低く呟いた。

 

「あいつら、《聖龍連合》っす。フラグボスのためなら一時的オレンジ化も辞さない連中っすよ」

 

その名はこの場にいる全員ならよく知っているだろう。《血盟騎士団》に並ぶ名声を誇る、攻略組中最大ギルドである。

 今度こそ、キリトは背中の剣を引き抜こうと思った。しかし、クラインの叫び声が、キリトの剣を抜かせなかった。

 

「くそっ!くそったれが!!」

 

クラインはキリトよりも先に刀を引き抜くと、キリトに背を向けたまま怒鳴った。

 

「行けっ、キリト!ここは俺らが食い止める!お前は行ってボスを倒せ!だがなぁ、死ぬなよ手前ェ!俺に前で死んだら許さねェぞ、ぜってぇ許さねェぞ!!」

 

「………」

 

ボスが出現するまでそう時間は残されていなかった。キリトは、クラインに背を向けると、礼の言葉ひとつ言わず最後のワープポイントへとその一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時計が零時になったと同時にキリトの耳にはどこからか鈴の音が届いていた。キリトはその音に釣られ梢の天辺を見つめていた。

 上層フロアの底を背景に二筋の黄色い光が延びていた。それに対して目を凝らすと鹿の様な四足歩行の奇妙な化け物に引かれた巨大なソリだった。

 モミの木の真上に来たと思うと今度は黒い影がソリから飛び降りてきていた。着地した風圧でキリトは数歩後ずさる。盛大に蹴散らされた雪落ち着くと、ようやくキリトの目がボスの姿を確認した。その背丈はキリトの3倍近くあるであろう痩せこけた人型の怪物だった。しかし、その腕は異常に長く、姿勢が前屈みのせいなのか地面に手が擦れている。せり出した額の影からは赤い眼が輝き、鼻下から伸びた歪な灰色の髭は下腹部まで届いていた。

 サンタクロースの衣装を着てはいるものの、右手に握られている手斧と、左手にぶら下げている赤い染みのついた大きな頭陀袋がグロテスクさを刺激している。

 台詞でも喋ろうとしたのか怪物が髭を動かすと、キリトは遮る様に言った。

 

「…うるせぇよ」

 

キリトは背中の剣を抜くと右足で思いっきり雪を蹴り、ボスへと突撃していった。

 

 

 

 

 キリトとボスが打ち合いを始めて40分ほどが経っただろうか。ボスの一撃一撃は重く、回復をしないで5発耐えるかギリギリなラインだった。また、キリトのHPはイエローゾーンに突入していた。

 ボスは体を大きく捻ると左手の頭陀袋でキリトに下段攻撃を仕掛けた。キリトは大きくジャンプすることで下段攻撃をかわし、空中からのカウンターを放とうとスキルを発動した。しかし、それが致命的なミスだった。ボスは右手の手斧でスキルを発動すると、キリトの直線状にスキルを放った。キリトはヴァーパル・ストライクを発動し、直線状に突進攻撃を放っているため回避することができなかった。キリトは死を覚悟しながらもただ、手斧に向かって進むことしかできなかった。

 すると、何もなっかったはずのキリトの右隣には自分と同じくらいの影が姿を現した。ソレはキリトに向かって体術スキルの蹴りを繰り出し、キリトをステージ端まで吹き飛ばしてしまった。HPバーは辛うじてレッドで止まった。かなりスピードが乗っていたらしくキリトはステージ端の木に寄り掛かる形で座っていた。

 当然ながら、ボスのヘイトはキリトに向いてはいなかった。さっき、虚空から現れたプレイヤーと闘っている。キリトは獲物を横取りされるわけにはいかないと、身体に鞭を打ち立ち上がろうとする。しかし、足どころか指にすら力が入らない。キリトは注意深く自分の身体を見渡すと左肩に1本のナイフが刺さっていることに気付いた。そのナイフからはスタンエフェクトが出されており、HPゲージの上にはスタンのマークが表示されていた。

 

「クソ!…なんなんだあいつ…」

 

キリトはそのプレイヤーに憎しみを抱くもただ見ていることしかできなかった。そのプレイヤーはと言うと、キリトなど目にも留めずただ正確にモンスターの攻撃を捌く。そして、生まれた隙を逃さずクリティカルポイントに攻撃を当てていた。キリトはソレほどの実力なら名の知れたトッププレイヤーかと思いアバター名を確認する。確認してどうしたかったのかはわからないが、ただ何も知らずに終わるのだけは嫌だった。そして、アバター名を見るために目を凝らす。だが、そこにはHPゲージ以外に表示されなかった。たとえモンスターだとしても名前が表示されないことはないはずだ。しかし、そのプレイヤーらしき者の名前は見れなかった。

 そうこうしている間にもソレは手を止めることなくボスのHPを刈り取っていく。ほんの4分前までは3本あったはずのHPゲージは残すところあと1本だった。そして、ボスのHPがレッドゾーンに入りソレはボスに向かって凄まじいスピードで距離を詰めていく。おそらくキリトのスピードの 1.5倍ほどのスピードだろう。ここでボスは最後の足掻きと言わんばかりに右手の斧を振りかざした。しかし、そのプレイヤーは今までとは違い回避をする素振りなくそのまま走り続けている。案の定、ボスの斧はプレイヤーを捉え残りのHPを消しとばした…そのはずだった。気が付くとそのプレイヤーはボスの背後にいた。まるで瞬間移動でもしたように。ボスもそのことに気づき振り返ろうとした。しかしその頃には遅く、ボスのHPはなくなり、体は無数のポリゴンとなり消滅した。

 プレイヤーはウィンドウを開きドロップアイテムを確認していた。その頃にはキリトのスタンも終わり動けるようになっていた。しかし、キリトは動かなかった。蘇生アイテムを手に入れることはおろか死ぬことすら許されなかった。キリトはあのプレイヤーを憎んでいるはずだった。恨んでいるはずだった。全てを踏み握ったあのプレイヤーを。しかし、その感情よりもキリトを支配していたのは絶望だった。おそらくソレが自分の動きを止めているのだろうとキリトは察した。ただ、遠くを見つめ、絶望に打ち拉がれていた。

 気がつけば、先程のローブを着ていたプレイヤーが目の前に立っていた。キリトは反射的に剣を強く握った。フードの下をよく見るとどうやら仮面をつけており、口から上を隠していた。額からは2本の角が生えており、目の部分は影になっており闇の中から赤い目がキリトを見つめていた。暫くの沈黙が続き、仮面のプレイヤーが口を開いた。

 

「……そんなにこのアイテムが欲しいならあげるよ…」

 

キリトはその言葉に唖然とした。剣を握る手からは力が抜け、ただ、茫然と仮面のプレイヤーを見つめていた。そんなことは気にせずプレイヤーは目の前にアイテムを投げて続けた。

 

「…それが蘇生アイテム。でも、それはキリトの願いを叶えられない…俺の望みも叶うことはない…期待が外れた…」

 

ここでキリトは声に聞き覚えがある気がした。ぼんやりとしていて声の主が思い出せない。しかし、ふわりとした風がキリトをすぎた時、ハッと我に戻った。辺りを見渡してもそこには誰もいなくなっていた。あるのは自分の足跡とまた別の出口へ向かっていく足跡だった。そして、キリトは何かに気がついたように小さく呟いた。

 

「……シエル」

 

 

 

 

 

To be continued…




Key「いや遅くなってほんとにごめんなさい課題マジでやばかったんです」

ノ夜「いや〜ダメでしょKeyさんよぉ〜今回は全面的にそっちが悪いよねぇ〜?(ニヤニヤ)」

Key「ぐっ…」

ノ夜「どう落とし前つけてくれんの?ほらほらほら」

Key「(イラッ)」

ノ夜「ほれほれどうs」

Key「シエルさーん!!!」

ノ夜「ちょっおま」

ノ夜さんがログアウトしました

Key「いやー助かりましたよシエルさ」

Keyさんがログアウトしました

シエル「…くだらないことで呼ぶな」



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