ソードアート・オンライン 〜Dhampir Rosary〜 作:黒月ノ夜
注意書きに書き忘れていたと思ったのでこの場を借りて言わせていただきます。ユウキの容姿は現実世界ではなく、ALOの方を採用させていだだいています。
デスゲームが始まって3日経った日。ある黒髪の少年は始まりの街の次の街のすぐ近くにある森のダンジョンへと向かっていた。プレイヤーネームはKiritと書かれていた。少年は少し気にかかっていることがあった。それは、クエストを受けて街を出る寸前に情報屋のアルゴから聞いたことだった。アルゴが言うには、
「最近、紅い眼のプレイヤーかモンスターなのかよくわからないのが頻繁に目撃されるらしいんダ。キリ坊も気をつけろよ」
とのことだった。キリトはベータテスターだったがそんなモンスターは見たこも聞いたこともなく、少し疑問を抱いた。
「紅い眼……一体なんなんだろう…」
考えながら歩いているうちにキリトは森への着いていた。クエストの内容としては植物系モンスターのドロップするアイテムの回収だった。そこで、キリトはおかしな点に気を付く。モンスターと全く遭遇しないのだ。良く出現するスポットに行っても、全くいなかった。
まるで、絶滅でもしたかの如く。
「どうなっているんだ?ここまで来ればモンスターと会ってもおかしくないんだが」
奥へ進んで行くと金属音が聞こえてきた。キリトは戦闘でもしているのかと思い、聞こえた方向へと走っていく。そこには探していた敵モブが4体ほどいるなか、たった一人でローブを着たプレイヤーが戦っていた。
その眼は血の様に紅く鮮やかだった。キリトはその眼を見てこのプレイヤーが吸血鬼と呼ばれる者の正体だと感じ取った。そう思考を巡らせている間にもそのプレイヤーは確実に敵モブの攻撃をかわし、ダメージを与えていく。最後には敵モブの攻撃を1度も喰らわずに敵モブ4体を倒してしまった。戦いが終わり、プレイヤーはキリトと目があった。
「よ、よう。君、凄く強いんだな。ベータテスターか?」
キリトは何を話せばいいのか分からずぎこちない言葉を発してしまった。その言葉に少し戸惑った様な反応をしたが思いのほか早く返事が返ってきた。
「ベータテストはやってない。貴方の名前は?」
「あぁ悪い。自己紹介がまだだったな。俺はソロプレイヤーのキリトだ」
「そう、俺はシエル。…何か用?」
「いや、それなんだがクエストで来たんだがモンスターと全然エンカウントしなくてな」
「そういうことか……ごめん。多分俺のせい」
シエルが何故謝ってきたのか、キリトは理解出来ていなかった。
「なんで、君が謝るんだ?」
「………多分、周辺にモンスターがいないのは俺が狩り続けてたせい」
「ん?狩り続けてたってどれくらい?」
「え〜と三徹目だから……72時間くらい?」
「はぁ!!3日間寝てないのか?」
あまりにも馬鹿げた発言にキリトは声を張り上げる。
「お前……3日間も寝ないで狩ってたって飯とかはどうしてたんだ?」
「……え?ゲーム世界に飯なんて概念あるの?」
「街を歩いていれば普通に目にすると思うんだが……」
「俺…デスゲームになってからずっとここでレベリングしてたから街に行ったことないんだ」
「街にも行ったことないのか?!」
「え、うん」
キリトはあまりにもの無茶苦茶さに呆れを通り越して何も感じなくなってきていた。
「よくそれで武器の耐久値持ってたな」
「うん…そろそろ危ない。そういえばクエストってどんな内容?」
「あぁペナント系のモブがドロップする胚珠を入手してNPCに届けるんだよ」
「胚珠って…これ?」
シエルはメニューを開きアイテムを1つ実体化させキリトに見せてきた。
「そ、そうだ。それだ。」
「何個要るの?」
「一個で十分だよ。1人につき1回までしかそのクエスト受けれないからな」
「そう、ならこれを持っていけば良い」
「え?いいのか?これレアドロップだろ?」
「大丈夫。後30個あるから」
「なんでそんなにあるんだよ……」
「敵モブ倒してたら自然と集まった」
「そ、そうか。じゃあ有り難く貰うよ。悪いが礼はこれくらいしか……」
「別に良いよ。有り余ってたから」
「そうか、でもタダで貰うって訳には……」
キリトは暫くどうするかていたが何か閃いたのか勢いのよく顔を上げた。
「そうだ!ならクエストを紹介するよ」
「……クエスト?」
「あぁ。今、受けているクエスト何だがアニールブレードっていう片手剣が報酬なんだ。剣の耐久がもう無いって言ってたから丁度いいかなって思ってさ」
「……うん、丁度いい。じゃあキリトについてく」
シエルはキリトの後ろについて街へと歩いて行った。道中に何体か敵モブが出てきたが、ハッキリ言ってシエルが強過ぎたため。何の問題もなく街へと着いた。
「ここが街か3日ぶりだな」
「中々に凄い発言だな」
「いや、そもそも街にそんな便利な機能があると思ってなかったから」
「でも、夜は敵モブが多かっただろ?」
「うん、Lev上げに丁度良かった」
「はぁ普通はそんな考えにならんぞ。というか聞くのは失礼かと思うが今って何レベだ?」
「えっと……Lev8だな」
「Lev8…俺の倍以上かよ…」
そんな話をしながら歩いていると前からローブを着た小柄な女性らしき人物が近づいて来た。
「よぉキリ坊。無事だったんだな。隣の奴は誰だい?」
「あぁ、紹介するよ此奴は森で会ったんだけどシエルだ。んでもってシエル。こっちの小柄な奴が情報屋のアルゴだ」
「よろしく、シー坊」
「よろしく…アルゴさん」
「さん付はやめてくれ。アルゴで良いよ」
「わかった。よろしく…アルゴ」
「にしてもアルゴ。ちょっとシー坊って語呂が悪くないか?」
「そうか?まぁ何でも良いさ。それより吸血鬼には出くわさなかったかい?」
「あぁそのことなんだが……多分シエルのこと」
「……え?俺って吸血鬼って呼ばれてるの?」
「そうか、シー坊が吸血鬼の正体だったんだな〜」
シエルはその名前を聞いて少し恥ずかしそうにしている。
「それより、早くクエストを受けたい」
「そうだな。俺らはアニールブレードのクエストをやりに行くがアルゴはどうする?」
「俺っちはこれからやる事があるんだ。悪いが此処でお別れだな」
「そうか、わかった」
「そうだ。なぁシー坊、俺っちとフレンド交換しとかないか?情報の取り引きとかがしやすくなるぞ?」
「…わかった。交換しよう」
「そういえば俺も交換してないな。俺とも交換しないか?」
「うん」
3人はメニュー画面を開きフレンド交換を済ませると、アルゴと別れクエストの場所へと向かった。目的地は意外と近く直ぐに着いた。
「此処だぜ。アニールブレードのクエストが受けれるのは」
そういうとキリトはさっきシエルから貰った胚珠をNPCに渡し、剣を受け取っていた。
「シエルもやってみろよ」
「そうする」
シエルもキリトと同じ様にクエストを受け、元々持っていた胚珠を渡し、剣を受け取った。
「これで終わりだ。俺はこれから宿に行くけどシエルはどうするんだ?」
「……折角だから街でアイテムを揃える。要らない素材も多いから」
「そうか。じゃあまた会おうな」
そう言い残すとキリトは宿の方へと歩いて行った。
キリトと別れた後、シエルはアイテムショップで要らない素材を売り、回復アイテムや装備を整え再びフィールドへと向かっていた。そして、再びフィールドへ出てキリトと会う前と同じような日々を送っていた。少し変わった事と言えばダンジョンでマッピングもやり出したことくらいだろう。そして、デスゲームとなってから1ヶ月程経ちシエルは街へと買い出しに来ていた。すると、偶然にもショップでアルゴと再開した。
「おぉ〜!シー坊じゃないか。また、無茶をしているそうじゃないか。たまには休まないとダメだぞ?」
「……わかった。気を付ける」
「それよりもシー坊はトールバーナへは行かないのか?」
アルゴの質問にシエルは疑問符を浮かべていた。
「何で?」
「やっぱり知らなかったんだな。明日の午後3時にボス攻略会議が始まりの街であるそうだよ。キリ坊は行くって言っていたよ」
「明日の3時。わかった。ありがとう」
「なぁにこれくらいなら安いもんさ。他に聞きたいことはあるかい?勿論ここからは取引になるけどな」
「…今は良い。また今度頼む」
シエルはショップをあとにし始まりの街へと向かっていった。
始まりの街には夜に着いたが特にやることもなかったため、フィールドで敵モブと戦っていた。始まりの街周辺の敵モブは比較的弱いためシエルは適当にあしらいながら暇を潰していた。気がつくと夜が開けてきたので始まり街へと足を進めた。
午後2時半を回ったためシエルは暇を潰していた店から出て広場へと歩いた。広場には既に多くの人が集まっておりその中にはキリトらしき人影もあったがシエルは後ろの方の席に座り始まるのを待っていた。すると、隣から声をかけられた。
「ねぇ君。隣空いてる?他の席には少し座りづらくてさ」
声の方向を見るとそこには紫がかった黒い髪を腰の位置まで下ろし、前髪を髪紐で上げバトルドレスを身に纏い、主張の強いアホ毛のある少女の姿があった。
「……空いているから座って構わない」
「本当!ありがとう!」
少女は両手を挙げながら喜んびながら横に座った。
3時を五分程過ぎ、ボス攻略会議が始まった。
「は〜い。そろそろ始めさせてもらいま〜す」
青髪の男性プレイヤーが手を叩きながら声をかける。
「今日は俺の呼びかけに応じてくれてありがとう。俺はディアベル。職業は気持ち的にナイトやってます」
ディアベルのジョークに周りからちょっとした野次や笑い声が聞こえてくる。それをディアベルは両手を使い静め、真剣な顔つきで話し始めた。
「今日、俺たちのパーティーがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した」
その言葉に周りは驚きの声を出す。
「俺たちはボスを倒し。第2層に到達して、このデスゲームをいつかきっとクリア出来るってことを始まりの街で待ってるプレイヤーに伝えなくちゃならない。それが、今この場所に居る俺たちの義務なんだ。そうだろ?みんな!」
周りは少し悩んでから覚悟したのか拍手が上がる。無論、シエルの隣にいる少女もだった。
「オッケー。それじゃあ早速だけど。ボス攻略会議を始めたいと思う。まずはパーティーを組んでみてくれ。フロアボスは単なるパーティーじゃあ倒せない。パーティーを束ねたメイドを作るんだ」
その言葉にシエルはドキッとした。今までシエルはパーティーどころかろくにプレイヤーとも関わってきていなかったからだ。それこそ関わったといったらアルゴがキリトぐらいのものだ。シエルが悩んでいると隣から声がした。
「ねぇ君…あのさ。ボクとパーティー組まない?周りはもう組んじゃってるみたいだしさ」
シエルはどうしようか迷ったがシエル自身も組む相手がいなかったため、賛同することにした。
「あぁわかった……これからよろしく」
シエルはメニューを開きパーティー申請を出す。少女はOKボタンを押す。すると自分のHPバーの下に少し小さく少女のHPバーと名前が表示される。そこにはYuukiと書かれていた。
「よろしく…ユウキ」
シエルがそう言うとユウキは驚いたように言った。
「え?!何で名前知ってるの?」
ユウキは自分のHPバーの下に表示されていることに気づいていなかったらしい。
「HPバーの下に少し小さく表示されてる」
「え?そうなの?」
ユウキは頭の上に疑問符を浮かべながら左上へと視線を向けた。
「わぁ〜本当だ〜。え〜と君の名前は……クエル?」
「……シエル…」
「え、あ、あごめん」
ユウキは恥ずかしそうに顔を赤くして謝った。
「よ〜し。そろそろ組み終わったかな?じゃあ……」
「ちょうと待たんか!」
ディアベルの話に割り込むようにして後ろから声が聞こえた。そのプレイヤーは階段をジャンプしながら下りていく。シエルはそれを動きが重いと思いながら眺めていた。
「ワイはキバオウって言うもんや。ボスと戦う前に言わせてもらいたいことがある。こんなかに今まで死んでいった2000人に詫び入れなあかん奴がおるはずや!」
シエルはその言葉の意味を理解出来なかった。なぜなら死んでいった理由は当人の能力不足だと判断していたからだ。勿論周りも少しざわついていた。
「キバオウさん、君が言う奴らとはつまり、元ベータテスターの人達のこと…かな?」
「決まってるやないか。ベータ上がりのもんはクソゲームが始まったその日にビギナーを見捨ておった。奴らは上手い狩場やらクエストを独り占めして、自分らだけポンポン強なってその後はずーっと知らんぷりや。挙句の果てには森に吸血鬼とか言う訳の分からん者まで出おった」
吸血鬼が自分である事をこの前知ったシエルは少し動揺していた。
「こん中にもおるはずやで!ベータ上がりの者が!其奴らに土下座さして、溜め込んだ金や食い物を吐き出して貰わな、パーティーメンバーとして命は預けれんし、預からん」
「発言良いか?」
すると、1人のガタイの良い黒人男性が立ち上がり、広場の中央へと向かっていった。
「俺の名はエギル。キバオウさん、あんたの言いたいことはつまり、元々ベータテスターが面倒を見ないせいでビギナーがたくさん死んだ。その責任を取って謝罪、賠償しろ。と言う事だな?」
「そ、そや」
エギルは腰のポーチから手帳はどの本を出し、周りが見えるように掲げた。
「このガイドブック。あんたも貰っただろ?道具屋で無料配布しているからな」
「もらたで、それがなんや」
「配布していたのは元ベータテスター達だ」
その言葉に周りがどよめく。しかし、森にこもっていたシエルは当然そんな物を貰っていなかったため取り残された様に感じていた。
「良いか?情報は誰にでも手に入れられたんだ。なのに沢山のプレイヤーが死んだ。その失敗を踏まえて、俺達はどうボスに挑むか。それがこの場で論議されると俺は思っていたのだがな」
シエルは立ち上がり、キバオウの方へ軽くジャンプをし、着地した。動きが華麗だったため、一部のプレイヤーが歓声を上げた。そしてシエルは広場全員に聞こえる声で言った。
「俺は…あんたらの言う吸血鬼って奴だ。勘違いされたくないから言っておく…俺はビギナーだ…それと…森にこもって敵モブを狩り続けてしまってすまない……」
周りが少しざわつき始めたがシエルは気にせず続ける。
「だが…1つ言いたい…ベータテスターが居なくても…知恵を使い生きることは可能だったと思う……現にそのガイドブック…俺は初めて見た…だから責任をベータテスターに押し付けるのは間違っふていると思う……それだけだ…」
話が終わるとキバオウは不貞腐れた様に最前列に座った。エギルも元の場所へと戻っていったので、シエルもユウキのいる場所へと戻った。すると、ユウキが少し小さな声、話しかけてきた。
「シエルってあの吸血鬼だったんだね」
「うん…俺が…怖くなった?」
「ううん。むしろに逆だよ。そんなに強いんなら凄く頼りになるなって思って」
「そう…ありがとう……」
ユウキと喋っているとディアベルが 話を進めた。
「よし、それじゃあ再開して良いかな?ボスの情報だが、実は先程、例のガイドブックの最新版が配布された」
周りがざわついたが気にせずディアベルは続ける。
「それによるとボスの名前はギルファングザコボルドロード。それにルインファングセンチネルと言う取り巻きがいる。ボスの武器は斧とバックラー。4本あるHPバーの最後の1本が赤くなると曲刀カテゴリのタインワームに武器を持ち替え、攻撃パターンも変わる。と言うことだ」
「これで攻略会議を終わる。最後にアイテム分配だが、金は全員で自動均等割、経験値はモンスターを倒したパーティーのもの、アイテムはゲットした人の物とする。異存はないかな?」
その問いかけに周りからは賛成の声が上がる。
「よし、明日は朝、10時に出発する。では解散!」
ユウキとシエルは広場を後にした。しばらく歩くとユウキが聞いてきた。
「ねぇ、シエル。これからどうするの?」
「フィールドに出て、レベル上げ」
「えぇー!今からレベル上げ行くの?もう5時だよ?一緒にご飯食べに行こうよ」
「どこに店があるのか、知らない」
「え?シエルってご飯食べたことないの?」
「……ログインしてから1回も…」
「じゃあ案内するよ。だから、一緒に行こう?」
まだ、宿や飲食店に行ったことがなく、気になったのでシエルはユウキについて行くことにした。
「……わかった…よろしく」
「おっけー、じゃあご飯食べに行こ。美味しいところ知ってるんだ〜」
ユウキに付いて行くと香ばしい匂いを漂わせ、少しレトロな雰囲気を醸し出す店に着いた。
「此処だよ!少し高いけど美味しいんだ〜」
「そう…なら奢る…」
「え?いいの?此処の値段設定高いよ」
「問題ない…1か月寝ないで狩ってたらいつのまにか20万コル溜まってた」
「も〜体には気をつけてないとダメだよ?いくらVRだからって脳は動いてるんだから」
「……善処する」
店に入るとエプロン姿のNPCが対応を始めた。
「いらっしゃいませ。2名様でよろしですか?」
「はい、出来ればテーブル席で」
「かしこまりました。お席へご案内致します」
広めのテーブル席に案内され2人は向かい合う様に座った。
「こちらが当店のメニューなります」
NPCはメニューを渡すと他の客の方へと歩いていった。メニューを一通り見終わるとユウキが聞いてきた。
「ボクはこれにするけど、シエルは何にする?」
「……ユウキと同じので良い」
「わかった。じゃあそうするね」
ユウキがNPCの方へ声をかけるとすぐにNPCが対応にやってきた。
「じゃあこのパスタを2人分お願いします」
「かしこまりました。暫くお待ちください」
NPCはそう言い残し、厨房の方へ去っていった。10分くらいして、NPCが料理を運んできた。
「お待たせしました。注文の品になります」
「どうも〜」
NPCは料理を並べるとその場を後にした。並べられた料理は現実的世界のカルボナーラに酷似していた。
「いただきま〜す♪」
「いただき…ます」
ユウキは勢い良く口にパスタを頬張り幸せそうな顔をする。
んん〜此処のはやっぱり美味しい
「んん〜ほほのはやっふぁりおいひい」
「……飲み込んでから…話そう?」
ゴクンと音と共にユウキは話しだす。
「ごめん、ごめん。此処のご飯好きでさ」
「うん…たしかに美味しい…」
「でしょ?此処はボクのお気に入りなんだ〜」
「……ユウキってら何が好きなの?」
「う〜ん基本なんでも好きだけど最近はよくパスタ食べてるかなぁ。でもそれより、冷めないうちに食べちゃお?」
その後、2人は淡々と食べ続け数分後にはパスタの乗っていた皿は綺麗になっていた。
「あぁ〜美味しかった。また来たいなぁ」
「……うん、美味しかった…ダンジョンに籠らないでこういう事をするのも良い…」
「へへ、そうでしょ?他にも紹介するよ?」
「……うん…ありがとう……」
「でも、本当に奢って貰って良いの?」
「……大丈夫……ほとんど使いみちないから……」
「そうなの?ありがとう♪」
2人は会計の場所へと向かい、宣言通りシエルが全額払い店を後にした。周りはすっかり暗くなり時刻は7時を回っていた。
「もうすっかり暗くなっちゃったねぇ。もう宿に行く?」
「……うん…何処にあるか…知らないけど」
「じゃあ着いてきて」
広場に出て左に曲がるとあるらしい宿へ向かう。途中の広場ではディアベルやキバオウが軽い宴会を行なっていた。2人は気にせず宿へと足を進めた。宿は渋いレンガ造りで始まりの街とマッチしていた。中へ入りユウキが受付のNPCに話しかける。
「此処で一泊するので2部屋お願いしま〜す」
「すみません。現在、1部屋しか空きがございません」
「え〜。どうするシエル?1部屋しか空いてないって」
「…なら…ユウキが此処で泊まっていけば良い…俺は外で野宿するから…明日の朝に迎えに来る」
シエルは少し残念そうな顔で提案する。シエルは最悪寝ないでレベル上げでもしようかと考えていた。
「え〜それはダメだよ。そんなこと言って結局寝ないんでしょ?」
ユウキに図星を突かれシエルは何も言えなかった。
「やっぱり。じゃあ2人で泊まろうよ」
「……でも2人分の部屋はない」
「う〜ん。それじゃあ……一緒の部屋で……泊まる?」
「…………え?」
ユウキの予想外な提案にシエルは少し思考が止まった。それもそうだろう今まで人と全く関わらなかったのに初対面の人と同じ部屋で泊まることになったのだ。しかも相手が同性ならまだ精神的には楽かもしれないが相手は異性だ。その2つの問題が重なり、シエルは放心状態になっていた。だが、そんなことに気づかずユウキはNPCと手続きを続け部屋を借りていた。
「おっけー。借りたよ〜シエル行こう。シエ…ル?」
放心状態のシエルに気づいたユウキが軽くシエルの揺らす。するとシエルは放心状態から戻った。
「……結局どうなったの?」
「え〜聞いてなかったの?同じ部屋で泊まることになったじゃん。ほら302号室だって。行くよ」
ユウキはシエルの手を引き、半強制的に部屋へ連れて行く。3階に登り、一番奥に302号室はあった。扉を開けて中を見ると部屋は思いの他広く1人用のベッドさらにはソファーがあった。
「……思ったより…広い…」
「そうだね。ボクもこんなに広い部屋は取ったことないなぁ。でも、やっぱりベッドは1つしかないんだね」
「……ユウキが使えばいい…俺はソファーで寝る…」
「え〜でもいいの?ボクが独り占めしちゃって?ご飯も奢って貰っちゃったのに…」
「……別に良い…何処でも寝れる…」
「でも、やっぱり悪いよ。シエルが使って」
「……女の子をソファーで寝かせる訳にはいかない……」
「じゃ…じゃあ2人で寝るのは?」
「それにしては狭いし、ユウキには案内してもらったりもしたからベッドでゆっくり休んで欲しい」
「わ、わかったよ。ボクがベッド使う」
ユウキは少し気がのらなそうに同意した。
「うん…それで良い…」
シエルは部屋の中央へと進み剣を外しソファーに腰を下ろした。ユウキも隣に剣を下ろして座る。
「……こんなにゆっくりするのは久しぶり……」
「一体今までどんな生活送ってきたの?」
「……フィールドに籠ってレベル上げ…アイテムが無くなったり武器の耐久が無くなって来たら街に行ってた」
「ご飯と睡眠は?」
「……ノータッチ…」
「はぁ…いくらここがゲームだからってあんまり無茶しちゃダメだよ?」
「……?…必要無い物を省いてレベル上げとかダンジョン攻略をした方が効率が良い……」
「ご飯と睡眠だって大切だよ」
「……ゲーム内だから食べても栄養化は取れない…睡眠は……そうかも…」
「だったら、せめて睡眠くらい取りなよ?」
「……気をつける……」
「うん、よろしい♪」
「…何でそんなに気にかけてくれるの?」
シエルの質問にユウキはキョトンとした顔で答えた。
「え、だってパーティーメンバーだから。それにシエルを見てると少し心配だよ。いっつも無茶してる話しか聞かないもん」
「……そうかも」
ユウキは頷いてから目の色を変えて聞いてくる。
「ねぇねぇ。それもりもさ。ローブ。取らないの?」
「……え?……何で?」
「え〜だってご飯の時と取らないで食べてたし。攻略会議の時だって一回も取ってないじゃん」
「……素顔を見られたくない…から」
「大丈夫だよ。現実だったらそんな格好してないでしょ?」
「してないけど……」
「じゃあ良いじゃん」
「……わかった……とるよ…」
シエルはユウキに対して根気負けし、メニューを開らき装備画面でローブを外した。
「わぁ〜シエルの体って案外細いんだね。もうちょっとしっかりしてるのかと思ってた」
「…地味に酷くない?…」
「ごめんごめん。別に馬鹿にしてる訳じゃないよ。でも、何でそんなにローブを取りたくなかったの?」
「……言わないとダメ?…」
「ううん。無理には聞かないよ。ボクの方こそまだ会って1日なのにごめんね」
「……別に謝らなくて良い…それより…もう遅い…から寝よう…」
「あ、本当だもうこんな時間!」
時刻はすでに10時を回っていた。どうやら会話に集中し過ぎていたらしい。
「じゃあ、悪いけどボクベッドで寝かせて貰うね?」
「うん、そうして」
ユウキは電気を消し横になった。シエルはそのまま座った態勢のまま眠りについた。2人とも疲れていたのか五分後には2人とも寝ていた。