ソードアート・オンライン 〜Dhampir Rosary〜 作:黒月ノ夜
翌朝、シエルが目覚めると右半身に違和感を感じた。目を開け違和感を感じた方へと目を向ける。違和感の正体はユウキだった。いつの間にかユウキはベッドから隣に移動しシエルによし掛かる形で寝ていた。
「……え?…どうして…こうなった?」
シエルは下手に動くとユウキを起こしてしまいそうでとても動く気にはなれなかった。
「……ユウキが起きるまで…このまま?」
シエルはユウキが起きるまで暇であることに気づきアイテム整理でもしようかとメニューを開いた。暫くの間アイテム整理をしていると、シエルの動きに反応したのかユウキが起きた。しばらくの間は寝ぼけているのか目をショボショボさせあくびをしていた。そこでシエルと目が合いユウキは状況を理解した。
「ふぁ?!シ、シエル!?こ、これはその…何というかあの…#/♪¥:=+|+€…」
ユウキは顔を真っ赤にして言葉にならない声を発していた。シエルは下手に刺激しない方が良いのかと思いつつ声をかける。
「……おはよう…ユウキ……」
「ふぇ?う、うん。おはよう………えっと…怒ってない?」
「……聞きたいことはあるけど…怒ってない。とりあえず、準備してご飯食べに行こう?」
「う、うんわかった」
シエルは立ち上がり、ローブや剣を装備し準備を進める。暫くして落ち着きを取り戻したユウキも剣を装備したりと準備を始めた。
「準備はいい?」
「うん、大丈夫だよ」
ユウキの返事を聞き、シエルはフードを被りながら扉を開けようとする。
「え〜また、フード被っちゃうの?」
「あまり、見られたくない」
「うーんしない方が良いと思うけどなぁ〜」
「………わかった……しない…」
シエルはフードを被ろうとしていた手を止め、ユウキと共に部屋を後にする。階段を降りチェックアウトを済ませる。
「ごめんね、宿代も払ってもらっちゃって」
「大丈夫。お金には余裕があるから」
「うん、ありがとう。それに、朝はごめんね」
「気にしてない。それより、朝ごはん食べよう?」
「うん、そうだね。何処か行きたいところある?」
「ユウキに任せる」
「そっか、じゃあ。昨日と別の所に行こう」
昨日とは違い店の外観は質素ではあったがヴィンテージか雰囲気があり、喫茶店の様な店だった。2人は店で朝食を済まし今回はユウキも払うと言うので割り勘にし店を後にした。時刻は9時を回った所だったので集合場所に向かうことにした。
10時になったので攻略者全員がボス部屋へと向かい移動を開始した。集合場所にはすでに多くのプレイヤーが集まっておりその中にはキリトの姿もあった。キリトはシエル達に気づき近くに歩いてきた。
「よぉ久しぶりだなシエル」
「うん、久しぶり。キリト」
シエルとキリトは軽い挨拶を交わした。
「にしてもお前の素顔、初めて見たな。いっつもお前、フード被ってて見れなかったからな」
「うん、色々あって今は外してる」
「そうか。んで、隣にいるのはシエルのパーティメンバーか?」
「うん、此奴は今パーティ組んでんるユウキ」
此奴という言われ方に反応したユウキが頬を膨らませながら言う。
「もー此奴って何さー。もっとマシな言い方できないの?」
「はは、2人とも仲良いんだな。シエルがこんなに心を開いてるの初めて見たかもな」
「うるさい、余計なことを言うな」
「はは、ごめんごめん。つい…な?」
「なになに〜シエルっていつもはこうじゃないの?」
「いつものシエルって言ったらほとんどしゃべr
「そう言うキリトだってパーティー組めたんだな。あと、キリト今度覚えてろよ?」
シエルがわざとらしくキリトの話を遮る。
「悪かったって。えっと隣に居るのは」
「アスナよ。よろしく」
アスナはキリトの言葉に繋がるような形で会話に入ってきた。彼女もまた、前のシエルと同じようにローブを着てフードを深くまでかぶっていた。
「よろしく」
「うん、よろしくね♪」
各々挨拶を済ませ雑談をしながら列について行く。道のりはかなり長く、途中モンスターの群れも来ていたようだが列の後ろの方にいたため4人は全くモンスターと戦うことはなかった。
ボス部屋の前に着くとディアベルが床に剣を刺し全員に聞こえるように話し始めた。
「聞いてくれ皆んな。俺から言うことはたった1つだ。勝とうぜ。よし、行くぞ」
ディアベルは扉をゆっくりと押した。すると、重々しい扉が開き中へと入れるようになった。
全員がボス部屋の中へと入る。部屋に入ると中は薄暗かった。全員が入りきってからだろうか、部屋の奥から赤く光るものが見えた。そして、部屋が明るくなり部屋の全体が見えるようになった。
赤い光りの正体はボスの目であることがわかり、ボスは大きな椅子に腰を下ろしていた。椅子から立ち上がるなやいなや大きくジャンプをし部屋の中央で着地した。
「グガァァァァァァァァッ!」
ボスは大きく吠え、同時にHPバーと取り巻きのセンチネルが現れた。
「攻撃っ開始ーー!!」
ディアベルの掛け声により、攻略者全員は与えられた役目を果たそうと持ち場に着く。シエルとユウキの役目はキリトとアスナと同様にセンチネルの一掃でだった。
シエルとユウキは次々と入れ替わりほとんど被弾せずセンチネルにダメージを与えていく。
「ユウキ、スイッチ」
「はいよ〜」
シエルがセンチネルの攻撃弾き返し怯ませたところでユウキとスイッチを行う。ユウキの放ったソードスキルによってセンチネルのHPバーがなくなりセンチネルは無数のポリゴンとなった。
「OK〜これで3体目だね」
「ボスの残り体力は……後3本かまだまだだな」
「まぁいいじゃんそれまで倒し続けよう!まだまだ余裕あるからね」
「そうだな」
シエルは一番近くにいたセンチネルに狙いを定めソードスキルを放つ。不意を突かれたセンチネルは防御が出来ず、シエルの攻撃をもろに喰らう。すると、センチネルの首が切断されると同時にMAXまであったセンチネルのHPバーが即座に無くなりセンチネルは無数のポリゴン片となり消滅した。
「首を飛ばした方が効率が良い」
「わかった!首だね?」
「うん、なるべく」
シエルはセンチネルを正面から攻撃を仕掛ける。勿論、センチネルはその攻撃を防いだ。シエルとセンチネルの鍔迫り合いになる。その隙を逃さずユウキは背後からセンチネルの首にソードスキルを放った。センチネルはユウキの攻撃を対処出来ずポリゴン片へと変わっていった。
一方でキリト達はスイッチを繰り返しセンチネルを淡々と倒していた。コボルドへ攻撃している者たちはタンクがパリィを行い、その隙をアタッカーが攻撃する。それを何度も繰り返していた。
気がつけばボスのHPバーは残り一本に減っておりあと少しで赤ゲージへと減らせそうであった。そうこうしている内にコボルドの硬直時間が終了し、アタッカーが退く。コボルドから攻撃を繰り出されたがタンクが再びパリィを決め隙を作った。アタッカーの追い打ちにコボルドは成す術無くHPが減らされていった。コボルドのHPバーはついに赤ゲージに達したところで、コボルドは大きく後退しバックラーと斧を投げ捨てた。
「情報通りみたいやな」
「退がれ!俺が出るっ!」
ディアベルはコボルドの前へ出てソードスキルを溜める。だが、持ち替えた物はタルワームではなくノダチだった。
「タルワームじゃなくてノダチ!?」
持ち替えた物が違うことに気づいたキリトがディアベル達に向かって大声で叫ぶ。
「ダメだっ!全力で後ろに飛べっ!」
だが、その声は遅かった。ディアベル達が動く前にコボルドのソードスキルが溜まったのだ。コボルドはディアベルに向かってソードスキル、幻月を放つ。ディアベルはかわす事が出来ずまともに喰らってしまう。その後もコボルドは攻撃の手を緩めず他のプレイヤーへも攻撃を開始した。キリトは急いでディアベルの元へと駆け寄った。
「ディアベル!何故1人で?」
キリトは声を描けなながらポーションで回復しようとした。だが、ディアベルはポーションを受け取らなかった。
「お前も……ベータテスターだったら…わかるだろ?」
「ラストアタックボーナスのレアアイテム狙い。お前もベータテスターだったのか?」
「……頼む……ボスを…ボスを倒してくれ……皆んなの……ために……」
ディアベルは最後の言葉を残すと無数のポリゴン片となり消えていった。キリトは覚悟を決めた目でボスを見つめ立ち上がった。
「私も行く」
声を掛け、隣にやって来たのはアスナだった。2人はコボルドの方へと駆け出した。
「手順はセンチネルと同じだ!」
「わかった」
2人の動きに気づいたコボルドはスキルを溜め突進攻撃を繰り出す。キリトはソードスキルによりコボルドの攻撃を弾いた。
「スイッチ!!」
キリトの声と共に横からアスナがコボルドに向かって攻撃を繰り出そうとした…が、コボルドはノダチをアスナの方へと再び振った。
「アスナ!!」
コボルドの攻撃はアスナのローブを破壊しただけで済み、アスナはコボルドへと突き攻撃を繰り出した。キリトは一瞬、ローブの中から現れたアスナに目を取られたが剣を強く握りアスナが作った隙を見逃さず攻撃を繰り出す。アスナも再び攻撃当てていく。コボルドも負けじとノダチを振るい攻撃をしようとする。コボルドの攻撃をキリトは防ぎそのまま斬撃戦へと持ち込む。しばらくキリトは打ち合っていたが此処で致命的なミスをしたためキリトの剣は大きく後ろに弾かれてしまった。
「しまった!」
コボルドの攻撃をくらい直線上にいたアスナもろとも数メートル吹き飛ばされた。2人は地面に横倒れそこにコボルドがトドメを刺そうとノダチを振るった。アスナはダメ押しで剣を片手で構えた。だが、コボルドの攻撃を受ける前に金属音がし、目を開くとそこには数メートル後退したコボルドの姿と剣を構えたユウキとシエルの姿があった。
「全く。2人とも無茶はダメだよ?」
「全くだな」
「シエルは人の事言えな〜い」
シエルとユウキは軽い言葉を残した後、怯んだコボルドへと走りだした。シエルがコボルドの攻撃を弾きそこにユウキが剣をたたき込む。シエルとユウキの周りにはいつの間にかエギル達も集まっていた。コボルドが攻撃の構えを取ったのを見てシエルは後退し、エギルに声を掛けた。
「エギル、頼む」
「任せろ」
エギルを含むタンクはコボルドの攻撃をパリィし他のアタッカーがコボルドへ攻撃を叩き込む。しかし、コボルドも負けじとアタッカーの攻撃を全ていなし側にいたプレイヤーをまとめて吹き飛ばしトドメを決めようと跳躍しスキルを溜める。
「危ない!」
立ち上がり、剣を握っていたキリトがスキルを溜め、コボルドの攻撃を阻止を狙う。
「届けぇーー!!」
攻撃は見事にヒットし、阻止に成功する。キリトは綺麗に着地しキリトはシエル、ユウキ、アスナに声をかける。
「3人とも、最後の攻撃。一緒に頼む」
「わかった」
「任せて!」
「了解!」
シエルとユウキは先制しコボルドに攻撃をし、終わったと同時にスペースを空けるため横に跳ぶ。そこにアスナが攻撃入れ、最後にキリトが2連撃を繰り出す。その怒涛の攻撃にコボルドのHPは成す術無く削りきられた。コボルドのHPバーは消滅し、無数のポリゴン片となり消滅した。すると空中に大きく《Congratulation》と表示された。その文字を見てしばらく沈黙の時間が続いたがプレイヤーが一層をクリアしたことに気づき完成が上がる。4人はその場に力が抜けた様に座り込んだ。そこにエギルが近づいてきた。
「見事な剣技だ。Congratulation。この勝利はあんたらのもんだ」
エギルの言葉に続いて周りのプレイヤーからも歓声が上がった。
「なんでやっ!!」
歓声の奥からキバオウの震えた、しかし力強い声が響き渡った。キバオウの叫び声によって一瞬にして辺りが静まり返った。
「なんで…なんでディアベルはんを見殺しにしたんや」
「見殺し?」
キリトの弱々しい声がキバオウの元へと返ってくる。
「そうやろが!自分はボスの使う技、知っといたやないか!最初からあの情報を教えていればディアベルはんは死ななかったんや」
キバオウの言葉で周りのプレイヤーがざわめき出した。すると、キバオウの隣にいたプレイヤーが言った。
「きっと奴、元ベータテスターだ。だから、ボスの攻撃パターンを全部知ってたんだ。知ってて隠してたんだ!他にも居るんだろ?ベータテスターども、出てこいよ!」
その言葉により、周りのプレイヤーは疑心暗鬼となり自分以外のプレイヤーを疑いだした。
すると、ざわめき以外が聞こえなかったボス部屋で笑い声が響いた。
「ハハハッ。フハハハハハハ」
プレイヤー全員が声の方へと視線を向けた。声の主人はキリトだった。
「元ベータテスターだって?俺をあんな素人連中と一緒にしないで欲しいな」
「な、なんやと!」
「ベータテスターに当選した殆どはレベリングもまともに知らない初心者だった。今のあんたらの方がまだマシさ。でも俺はあんな奴らとは違う。俺はベータテスト中に他に誰も到達出来なかった層まで行った。ボスの使う刀スキルを知ってたのはずっと上の層で刀を使うモンスターと散々戦ったからだ。他にも色々知っているぜ?情報屋なんか問題にならないくらいな」
「な、なんやそれ。そんなんベータテスターどころやないやんか…もうチートや!チーターや!そんなん!」
周りからもキリトを罵倒する声が上がる。「そうだそうだチーターだ!」「べータのチーター。略してビーターだ!」
「ビーター…いい呼び名だな、それ。そうだ。ビーターだこれからは元テスター如きと一緒にしないで欲しい」
そう言い残すとキリトはLABで入手した黒いコート。(コートオブミッドナイト)を装備し奥へと去って行った。アスナはキリトの跡を追うようにその場を後にした。
アスナがさって5分くらいした頃だろうか。ユウキは俯いたままシエルに問いかける。
「……キリト…なんであんなこと言ったのかなぁ?」
「……大体の考えは読める。でもまぁあんまり良い気分には慣れそうもない。もう暫くしたら俺らも第2層に行こう」
「うん……わかった」
後ろでまだ、キバオウ達が話してはいたが、2人とも聞く気になれず第2層を目指して歩いて行った。
前書きにも書きましたが、今回は攻略前夜とビーターをまとめて出してしまおうと思ったわけですが、思ったより長くなったので分けることにしました。次回は第2層からになりまずがリアルな方が忙しいため投稿が遅れる可能性大ですが楽しみにまっててくださると幸いです。