ソードアート・オンライン 〜Dhampir Rosary〜 作:黒月ノ夜
結論からいうと第1層のボスモンスターイルファング・ザ・コボルドロードの攻略は成功した。攻略による死者は1名。それは客観的に見れば犠牲は少なかった。いや、ほぼ皆無と言ってもいいだろう。しかし、攻略に参加したプレイヤーのほとんどが複雑な感情を抱いていた。第1層を攻略したという歓びは勿論ある。だが、それ以上に唯一の死者であるディアベルの存在が大きかった。ディアベルは攻略の指揮をとっていた要であり、場を和ませていたムードメイカーでもあった。そのディアベルの死がプレイヤーに大きな影響を与えていた。ディアベルの死の悲しみ。そして、このような攻略がこの先99回と続くのかという絶望。次は自分かもしれないという死への恐怖。その影響はこの2人にも及んでいた。第2層の主街区へと続く道を並んで歩くシエルと少女ユウキ。この2人の間の空気は重々しいモノになっていた。そんな中嫌気を刺したのか、はたまた心の整理がついたのかユウキが口を開いた。
「ねぇシエル……ディアベルさんの事、どう思う?」
「……最後まで仲間思いのお人好し」
「お人好しか…うん、そうかもね。ディアベルさんは凄く優しくていい人だったもん。最後は1人で突撃しちゃったけど…」
「最後の突撃はトドメのためじゃない」
「え、それじゃあなんのために」
「……ラストアタックボーナス」
「ラストアタックボーナス?」
「…最後の1人での突撃…あれは、ラストアタックボーナスのレアアイテム狙い。こいうゲームには付き物」
「それじゃあ…それをわざわざ伝えるためにディアベルさんは」
「……最初から死ぬ気でだった…ディアベルはボス攻略の定石…可能性…プレイヤーの欲…それを自分の命と引き換えに授けた」
「ディアベルさんはどうしてそこまでして……」
「……わからない……ハッキリ言って…ディアベルの思考は理解できない」
「シエルはディアベルさんが死んで悲しくないの?」
「……何も思わない…それよりもディアベルの死を無駄にしない方が良い」
「……うん、わかったよ。」
シエルは先程よりも少しペースを上げて歩き始めた。しかし、少し歩いたところでシエルはユウキのへ振り向いた。
「……そういえば。パーティーはどうする?街に着いたら解散する?」
「……ううん。ボクはこれからもシエルと組みたいな。それとも嫌…かな?」
「いや、問題ない。じゃあこれからもよろしく」
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第2層、主街区ウルバス。テーブルマウンテンをくり抜いた様に外周部だけを残し、その中に街が広がっていた。いかにも石の街。というように家の壁など、多くの物が石で造られていた。傾いてきた太陽の日が街へと入り街全体をてらしていた。
どうやら既にキリトが来ていたようで転移門は有効化され1層から他のプレイヤーも来はじめていた。そんな中、シエルの目にあるものが止まった。それは「《トレンブリング・カウ》のミルクを贅沢に使用した《トレンブリング・ショートケーキ》」と描かれた看板だった。
「どうかしたのシエル?いきなり立ち止まって」
シエルはどうやら無意識に立ち止まっていたらしく、ユウキが少し心配そうな目で見上げていた。シエルはローブの隙間から腕を出し、看板に指をさした。
「トレンブリング・ショートケーキが気になった」
ユウキに再び目を向けと今度は驚いた表情でシエルを見ていた。
「え、シエルって甘い物とかよく食べてたの?」
「…何でそんなに驚かれてるの?……うん、甘い物は好きだよ?」
「だって、シエルと初めてあった時は全然食べ物に興味なさそうだったから」
「……まぁ甘い物以外はあんまり」
「でも、1層にも甘い物とか結構あったよ?」
「ユウキ…今、何て言った?」
何故かシエルのオーラが変わり、鋭くなった目でユウキを見つめてきた。
「えっと…1層にも甘い物があった…と」
「ユウキ」
「は、はい!」
「今度…案内して」
「え?あ、はい。わ、わかった」
「ユウキ…どうかした?」
「それはこっちのセリフだよ!」
「…………?」
「何、その顔!急に怖い顔してきたのはシエルでしょ!」
「そんなに顔怖かった?」
「うん」
「なんか…ごめん。とりあえずあれ食べに行こう」
そう言うとシエルは看板の出ている店へと足を進めて行った。
店に入りメニューを見るとユウキは凄く驚いた表情になった。しかし、その一方でシエルは表情1つ変えずに店員のNPCを呼び出そうとしていた。
「ちょ、ちょっと待ってシエル」
「どうかした?」
「どうかしたじゃないよ。1個500コルだよ?500コルもあったら宿に2泊できるよ!」
「うん、そうだけど…?」
「ボク、そんなに持ってないよ」
「じゃあ俺が払うから良いよ。飲み物は何にするの?」
「シエルってあといくらくらい持ってるの?(汗)」
「んーと、あと2万コルくらい」
「な、何でそんなにあるの?」
「狩り」
「あーそういえば戦闘狂だったもんね」
「………戦いは楽しむものでしょ?」
「シエルの場合は楽しむのレベルが違うんだよ」
「……まぁいいや。ユウキは飲み物、何にするの?」
「あ、うん。じゃあボクはトロピカルジュースにする〜」
「わかった。じゃあそれね」
シエルは店員のNPCを呼び出し、注文を済ませ再びユウキへと目を向けた。
「シエルってさ、凄いね」
「…何が?」
「普通の人ならボス攻略の後にケーキ何て食べないと思うよ 」
「よそはよそ、うちはうちだよ、ユウキ」
「なんか適当に言いくるめられた気がするなぁ…」
「ハハッ、ソンナコトナイッテ」
「うわぁすごい棒読み!いや、いつもこんな感じかも…」
などと他愛のない話をしていると、2人の元にNPCが近づいてきた。
「お待たせ致しました、こちら『トレンブリング・ショートケーキ』でございます」
並べられたケーキの生クリームはきめ細かく、ケーキ全体に均等に塗られておりベリーのソースがかけられ、その上に苺とラズベリーがちょこんと可愛く盛り付けられていた。
「わぁ…美味しそうだねシエル!…シエル?」
「…(キラキラ)」
「シエ…ル?目がすごくキラキラしてる」
「気のせい…全然なってない(キラキラ)」
「いや、直ってないよ」
「ユウキ、早く食べよ」
ケーキのスポンジはマシュマロのように柔らかく、フォークがすんなりと入る。口の中でスポンジはスッと溶けてなくなり、生クリームの甘味とベリーのソースの甘酸っぱさが口全体に広がった。
「んっ〜美味し〜!!」
「久しぶりに甘い物を食べれた……」
「シエルってそんなに甘い物好きだったの?」
「うん、好き」
「それにしても本当に良いの?」
「何が?」
「ボクの分のケーキとか奢って貰っちゃってさ」
「うん…大丈夫だよ。ユウキの表情が戻って良かった」
「ふぇ?ボク、そんなに暗い顔してた?」
「会った時に比べると…暗かったよ」
「そうだったんだ。でも、もう大丈夫だよ。これ食べて元気が出たよ」
「そう。それは良かった。まぁお金は気にしないで良いよ。好きなだけ食べて」
そこからというもの2人は会話をしながらケーキを食べていたが気がついた頃にはケーキが綺麗に食べ切られており、紅茶やトロピカルジュースも残り僅かになっていた。
外を見ると傾いていた太陽も沈み月の光が街を包み込んでいた。
「いつの間にこんな暗くなってたの?」
「さぁ、時間の流れは怖い」
「そうだね。でも、これからどうする?ボク達この街に来てからまだケーキしか食べてないよ?」
「……確かに。でも、夕食は食べる気しないかな」
「うーんそうだね。ボクも何かケーキで満足しちゃった。それじゃあもう宿で休む?」
「賛成」
「それじゃあそうしよっか。じゃあお会計したら宿屋を探しに行かないとね」
「うん、わかった。じゃあもう行こっか」
会計を済まし、喫茶店を出た2人は宿を探しに周囲を探索していた。喫茶店から少し歩いた所に宿屋を見つけた2人はすぐさまチェックインを済ませ各々自分の部屋に入ると特にする事もなくベッドに横になると今日の分の疲れが出たのかすんなりと眠りに入る事が出来た。
もう1話出す予定したが間に合わなかったので近日中に投稿したいと思います。
後何か今回は色々詰め込もうと思ったのですが失敗して前半のシリアスが後半のせいで若干よく分からない方向になってしまってごめんなさい。次回の話は詰め込んで失敗しないように頑張ります。