せっかくのクリスマスなのでアリスの過去、ほのぼのストーリーを書きました。
ただ全体で約1万文字になったので前後に分けます。
後編は12/25、0:00に投稿いたします。
人界歴368年12月23日
ルーリッド村にある、一番大きな教会の一室から、声が聞こえてくる。まだ空は薄暗く、皆が寝静まっている、もしくはぎりぎり起き出している時間帯である。冬も本番、厳しい寒さが肌を刺す季節の早朝ともなれば、人にとって過ごすのが辛いのは当たり前である。さらに言えば、7歳の子供にとってみれば…
「…すやぁ………」
「こら!アリス、起きなさい!」
眠くなるのも当然である。
アリスside
「…なんでいつもこんなに早いんですか、しすたーあざりあ…」
「…?あなたが早くしろっておっしゃったのでしょう?」
「それでも限度って言うのがあると思うのですが…」
「私も暇じゃないんですからね。さあ、無駄話してないで先に進みましょう」
「ふぇい…」
俺は手元の本のページをめくる。カタカナびっしり。俺の瀕死なやる気さんが無事死亡した瞬間である。
(カタカナ読みづらすぎて笑えん…大日本帝国憲法かな?)
漢字がない分ダブルパンチである。絶対7歳に読ませるもんじゃないだろこれ。7歳って言えば…1年生か。あれ?これ某眼鏡の探偵と一緒じゃね?しかも子供になってるとことか完全に一致してる。でも毎週毎週周りで人が死ぬとかはないから、俺の方が普通だな()
「ではアリス、これに答えたら休憩です。風素の起句は?」
「えありある〜」
特大のため息をつかれ、休憩に入った。
休憩といってもスマホもないし、テレビもないからやることもない。だからいつも、俺から世間話を始めるのである。
「シスターアザリア、クリスマスって何しますか?」
「…?すいません。なんと言いました?」
「クリスマスです。ク・リ・ス・マ・ス」
「…くりすます、ってなんですか?」
「えっ?」
「…えっ?」
「風素というものは、空気です。この部屋のここ、空中には何もないように見えますが、実は空気というものがあり…」
(クリスマスないのか…うちが夢も希望もないお家かと思ってたけど、まさか全国的にそうとは…予想guyデス)
「この空気は暖炉で考えると分かりやすいでしょう。火を点けたばかりのとき、火のところは温かいですが、部屋は寒いでしょう。しかし、時間が経ったら部屋全体が暖かくなっています。それは部屋全体の空気が温まっているためであり…」
(ラースさんなんで実装しなかったんやろ。お正月はあるのになぁ…たしかクリスマスってキリスト様の誕生日だったよね…)
「…と、これが空気の説明となります。質問はありますか?」
「キリスト様って知ってます?」
本の表紙でぶん殴られた。
「うう、さっむい。なんで空気を知るために井戸で水汲みよ。ただの罰やんけ…」
水を汲みながら、俺はそんなことをボヤいていた。頭が痛い(物理的に)。まあゆうて仕方ないことでもある。シスアザさんの話を全く聞いてないから自業自得だ。でも空気の概念とか知ってるし、こっちで勉強を始めてから学校ってやっぱ必要だなって感じるようになった。義務教育TUEEEE!!
(マジ寒い…桶もデカ過ぎ、というか俺がチビ過ぎなんだよなぁ…夜更かしし過ぎてるせいか?)
原作アリスのサイズが分からん(そもそも幼少期の話が出ない)からどんなもんだか知る由もないが、確実にこまいと思う。女の子の方が身長的には成長が早いと思うのに、2人の方が背が高いのである。ずるい、身長くれ。妖怪身長くれくれ幼女になってやる。
「あれ、アリス?おはよう」
「ふぇ?」
噂をすればなんとやら、顔を上げた俺の目の前に、桶を3つも持つユージオがいた。
「アリスがここにいるなんて珍しいね。しかもこの時間に…」
「えへへ…」
笑って誤魔化す。ユージオと井戸で喋っているこの状況、これがほんとの井戸端会議…そういえば、
「キリトは?ユージオが1人でやってるの?」
「あっ、えっと、交代制なんだ。今日は僕、昨日はキリトがやったんだよ」
「えっ、2人でやった方が効率良くない?」
「いや、キリトが毎日起きたくない!って言ってさ…」
「そっか…」
俺は彼の肩を優しく叩く。流石にキリットさんの現地妻は格が違った。キリットさんもどうかと思うけどね。1人寂しくお仕事するよりみんなで楽しく働く方が俺は好き。
「そういえばアリスの格好、その…すごい個性的だね…」
「えっ、そう?」
———
こにゃにゃちはー!
寒い日が続いてるけどみんな元気にしとったか?風邪は引いてないやろか?今週も大好評「ケロちゃんにおまかせ!」の時間がやってきたで!ほな、やっていこか〜。
今日紹介するのはアリスの
はたまた行くで、ケロちゃんチェーック!
まずは手袋。ごっつい革手袋は作業をするアリスにとって必須級なんや。それと首のマフラーは狐の尻尾のモフモフを使ってるんやで。ほんでもって一番目を引くのはモコモコフードや。このフードを被るとなんと!クマの耳が付くんや。わいの耳みたいでキュートやろ。これ全部アリスが作ったんやで。ええなーわいの分も作ってくれんかな。
どうや?2ヶ月前から始まったアリスワールド。アリスの物語はこれからやで。わいもしっかり見ていかんとな、ほなな〜
———
「まあ、このフード、セルカのために作ったのにね…」
「そ、そうなんだ…」
可愛いと思って付けたものだが、まさか自分が着ることになるとは…
触っていい?と聞かれたので了承し、頭を傾けてユージオに耳を近づける。そのとき、俺の目線が水面に吸い寄せられる。そこには、金髪碧眼の、クマさんフードを被った少女がこちらを覗き込んでいた。…昨日ウキウキで針を操った自分を殴りたい。ついでに「めんどいしユージオたちとは会わんやろ」って考えてとらなかった今朝の俺もボコす。俺が唸ると、水面の少女も困った顔をする。クマったクマった。
百面相をしている俺の上からユージオが話しかけてきた。
「まあ、個性的ではあるけど、おかしいわけじゃないよ。むしろアリスに似合ってて、かわいいな」
「っ!」
なんやこのイケメン。そうゆうくさいセリフを吐くのは
俺はいたたまれなくなり、顔を伏せる。水面に映った少女の顔は…桶を揺らして見えないようにする。
「そういえばなんで水に顔が映るんだろう?そもそも鏡もなんで映るんだろ?」
「えっ…えっと、そう、光!光が反射するの、鏡はガラスに銀…晶素の板の上に鋼素を覆って反射させるの!水もそんな感じで光の反射で見えてるんだよ!」
俺は頭をフル回転させて知識を披露する。別のことを考えて、気持ちを払拭する、俺の常套戦術である。
…それにしても小学生の自由研究で作った望遠鏡の知識がここで役立つとは…数奇なものだなぁ。鏡の自作をしようとして調べて泣いた記憶がある。
「すごいな、アリスは物知りだね。誰に教えてもらったの?」
「えっ?…分かんない!誰かが言ってた!」
「アリス…」
俺は今までの7年間、前世の知識をひけらかすときの常套句である、誰かが言ってた、もしくは本で読んだを乱用してきた。流石にユージオも慣れてくれたのか、呆れながら話を変えてくれる。
「アリスの家は、鏡ってあるの?」
「いや、ないよ。高いから…鋼素と晶素になるものがあれば自作できると思うけど、そっちも普通に売ってないしね…」
水があればOKよ、とウインクを飛ば…そうとして両目を瞑る俺。ちなみにOKは俺が言いすぎたせいで余裕で伝わる。あとナイスとかNGとかも俺がみんなに伝授した言葉である。大体ラースの人はなんで英語禁止にしたんかね。太平洋戦争の日本じゃあるまいし、そもそも時代設定が大体中世ヨーロッパぐらいの生活水準なのになぁ…パンはまだしもスープが伝わるのが解せぬ。
やっと水を汲み終わり、桶を両手で抱え…ようとしても持ち上がらない。それもそのはず、俺のOC権限は驚異の7。箸しか持てない幼女なのである。…実はこの場面ではOC権限は関係なく、ただ単に俺の力がないだけである。…悲しみ。
(こういう時には神聖術…水を素因分解して…)
「大丈夫?持とうか?」
「ふぇ?」
その日のお昼、俺は弁当を持って冬空の下を闊歩していた。ちなみにお弁当はアザちゃんが渡してくれたもの、俺が作ったのはほんの一部である。
いつもの丘を越えると、例の木の幹が見えてくる。ギガちゃんは村からどこでも見える、すごい木なのだ。そのまま進むと、木を切る、というより木を叩く音とともに、—俺はこの音が好きだ—木の足元にいる彼らが見えてくる。そう、俺の友人達と…おじいちゃんである。
キリトとユージオが手を振ってくる。俺も手を振り返しつつ、木を黙々と叩いているガリッタさんに挨拶する。
「こんにちは、ガリッタさん!」
「おお、もうそんな時間か、休憩にしよう」
そう言いつつ斧を振りかぶり、叩きつける。それは俺が今日聞いた中で一番いい音だった。
「うん、今日も美味い!」
「そうだね。…相変わらずキリトは美味しそうに食べるね」
「当然だろ、飯を食うのが俺にとって一番の幸せだからな!」
「あはは、…僕たちと遊ぶのよりも?」
「…いや、どっちも一番だ」
「ふふ、そんな真剣な表情で答えなくても…」
…夫婦(夫夫?)の会話に入っていけない。手持ち無沙汰なので俺からガリッタさんに話しかけた。
「クリスマスって知ってます?」
「いや、知らないが…なんだね、それは」
「えっと、ご馳走を食べたり、いい子がサンタさんからプレゼントをもらう行事です」
「サンタ?はて…」
顎に手を当て考えるお爺さん。無駄にダンディだが、俺の目線はある一点に集中した。
「ガリッタさん、その手って…」
「この手か?冬だからな、斧を持って振るだけでもこうなるんだよ」
ほれ、と出してくれた手を、手に取ってまじまじと見る。その手は酷いあかぎれと斧による豆、ゴツゴツと節くれだった指、そして、
「わっ、冷たい!」
とっても冷たい手だった。
「さっきまで斧を握っていたからな、冷たいだろ。すまんな」
「いやいや!むしろ冷たいってことは、一生懸命働いたってことです!」
ちょっと手をお借りしますね、と言い、俺は腕を上げているガリッタさんの手を、両手で包み込む。
「あったかいですか?」
「ああ、ありがとう。でも大丈夫。アリスが凍えるだろう」
もう慣れたよ、と言いながら手を引っ込められる。
「その、手袋とかしないんですか?」
「いや、滑るし、素手で切ってきたから今更変えることもできんよ」
「そう、ですか…」
感覚のことを言われてしまえば、こちらとしては何も言えなくなる。
しかし、そこで俺に電流が走る。
「握るところが素手ならいいんですよね」
「まあ、そうなるが…どうした?」
まあまあ、と言いつつ、彼の手をもう一度触り、サイズを調べる。せっかくのクリスマスだ、俺がプレゼントをしてやろうじゃないか。…なにより可哀想だ。たまたま天職が木こりになったばっかりに、こうも労働環境が違うのは納得いかない。そりゃ
「あれ、この箱は?」
「あっ、それは…」
キリトが弁当の下の箱に気づいた。全く、がめついったらありゃしない。俺は箱を引っ張り出し、開ける。
「…これは?」
「クッキー!あの後焼いたんだ。ユージオにお礼ね」
ユージオにウインク(まばたき)をする。クリスマスといえばジンジャークッキーという偏見により、作成されたものである。持ってもらったし、多少はいい思いをね?
「はい、どうぞ。…キリトはだめだよ」
横から手を伸ばそうとするキリトの手をピシャリと叩く。悲しそうなその表情は、まさしく子犬が目の前でおやつを取られたときの表情と酷似していた。…罪悪感が半端ないが、ここは心を鬼にする。
「だって私を手伝ってくれたのはユージオだし、1人で水汲むの大変そうだったよ」
「待て待て!俺も昨日やったから!やってる労力一緒だから!」
「一緒にやればもっと楽に、早く終わるでしょうが!」
「いやいや、ユージオも賛成したし、なっユージオ?」
ユージオに助け舟を出したようだが甘い!ロリポップキャンディみたいに甘いぞ!(ロリだけに)
「ユージオは一緒にやった方がいいって言ったよね、ね?」
2人でユージオの顔を見る。そのユージオの解答は…
「えっと、2人でやった方がいいかな…」
戦術的勝利!すぐさまドヤ顔でキリトを見る。キリトは地面に崩れ落ちていた。NDK?NDK?…は嫌な奴か。
「というわけでキリトはなし!そこで反省…」
肩をトントンっと叩かれる。振り返ると、ユージオがそこにいた。
「どうしたの?」
「これ全部もらっていいんだよね」
「うん!ユージオのために焼いたんだからね」
「じゃあ、別にどう扱おうが構わないよね」
「うん!…うん?」
ユージオが歩いて行き、倒れているキリトの口にクッキーをねじ込む…ってちょっと待て。おかしいだろ。(お菓子だ(ry))…もしや!
「口に合わなかった…?」
嫌がらせに違いない!と思った俺だったが、
「いや、美味しいよ。でも、キリトも昨日頑張っていたし、今日は僕がたまたまアリスと会っただけ。キリトも今日みたいな場合だったら助けただろうし、僕だけがもらうのも忍びないよ。それに…」
そこで切ったユージオは、キリトを見る。キリトはゆっくりと起き上がり、
「うまい…」
「ほら、こんなに美味しいものはみんなにも食べてもらいたいと思ったんだ…ダメかな?」
…ぐうの音も出ない。ユージオは大人だ。俺のやっていた行為が、いかに幼いかをまざまざと見せつけられてしまったかのようだ。俺の後ろでガリッタさんが立ち上がる。
「アリス、こういうのはみんなで分け合うんだよ。もらえなかった人はもちろん、もらった人も気まずくなるだろう?もっと人の気持ちを考えられるようにならなきゃな…」
ガリッタさんにも諭された。恥ずかしい。顔から火が出てるのがはっきりわかる。
「うっ…」
「う?」
「うあぁぁぁぁああ!!」
叫びながら逃げ出した。頭の中でいろんなことがぐるぐる回る。恥ずかしいやら、情けないやら、クッキーを褒められて嬉しいやらでいっぱいだった。
少女は家に飛び込み、毛布にくるまる。そのまま寝ようとしたものの、叩き起こされるのは火を見るよりも明らかであった。
ケロちゃんはもう出ません(無慈悲)
天職決定後いきなり仕事っていうのはなんか不自然だと思ったので、天職確定が10歳、7歳で仮天職の決定をして、前任の人から仕事を学ぶ、と考えました。他の才能があることが認められたら天職変更ってことにすれば、矛盾はないよね?