黄金少女の英雄譚   作:Raina-lι

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アリスちゃんはチート持ちではありません 念のため


木樵少年の思考回路

ユージオside

 

次の日、僕たち2人はいつも通り例の木を切って(叩いて?)いた。ただ一つだけいつもと違うのは…相棒(キリト)の機嫌である。

 

「全く、そんなに、否定、する、ことは、ないんじゃ、ないだろ!」

「…キリト、斧振ってるときに話してると舌噛むよ」

「怒、りを、この、木に、ぶつ、けて、いる、のさ!」

「…キリト、今何回?」

「分からん!」

 

僕の相棒は少し(だいぶ?)頑固なところがある。それが分かってるからこそ、僕やアリスは、キリトの意見に酷評こそすれども(アリスは評価することも少ない)、まるっきり否定する事なんてなかった。そもそもその意見も、禁忌や掟のスレスレではあっても、破ることはしないものなので、そう強く否定することもない。だからこそ、僕はアリスの今回の行動を疑問に思っていた。

 

(そこまで反対するってことは、絶対なんかあるよね…確かゴブリンって…)

「疲れた!交代してくれ、ユージオ」

「はぁ、全くキリトは…」

 

キリトは肩で息をしていた。大体昨日の午後からイライラを木にぶつけていたのだし、そろそろへばってくると思っていたら…

 

しかしキリトは斧を渡してくるときに、僕に話しかけた。

 

「でもな、ユージオ。別に禁忌も守ってるんだし、大丈夫なんじゃないのか?しかも今まで一緒に遊んできたのに…」

「うーん、でも今まではっきりと反対してこなかったっていうか、後ろからついてくるだけだったアリスがあそこまで言うのは変だよね」

「おっ、うーん、確かに…」

 

虚をつかれたかように、キリトはびくっと動き、そのまま腕組みをして考え始めた。こうなったキリトは何か思いつくまで動かない。僕はキリトと会話することを諦め、キリトから受け取った斧を握り直し、仕事に向かった。

 

いつものように腕に痺れるような痛みを感じつつ、僕もアリスのことについて考えていた。

 

(やっぱりゴブリンが怖かったのかな?…でもそんな未確定なことを怖がってるんじゃない気がしたんだよね…ほんとに行ったら確実に何かが起こるみたいな…そう、例えば…)

「あーもう!なーんにも思いつかない!ユージオ、変わってくれ!」

「えっ、ああうん、どうぞ…」

 

いきなり大声を出したキリトに驚きつつ、斧を渡した。…キリトの思考放棄は珍しい。

 

やっぱイライラ解消には1番だよな、と言いつつ、そのままキリトは力任せに斧を叩きつける。しかし狙い通りにはいかず、刃の入っていない幹に当たり、逆に弾かれ、後ろに倒れそうになった。

 

「キリト!」

 

僕が手を伸ばして、倒れるのを止めようとしたのだが…いきなり、一陣の風が吹いた。そしてその瞬間、キリトの体が空中で止まったのだ。こんな現象を起こせる人を僕は、僕たちは1人しか知らない。僕たちは振り返り、

 

「大丈夫!?キリト!」

 

駆け寄ってくる金の少女を見た。

 

 

 

「2人とも、ごめんなさい!」

 

と、大きく頭を下げるアリス。その姿に多少驚きつつ、僕はキリトの様子を伺う。キリトも困惑しているようだったが、

 

「こっちこそ、強く当たっちゃってごめんな」

「そうだね、僕たちも悪かったよ」

 

だから顔上げて、と言うとアリスはパッと顔を上げ、

 

「ありがとう!」

 

と、満面の笑みで答えた。

 

 

みんなでアリスの持ってきたお昼を食べる。

「お、今日はパイか、甘くてしっとりしてるのがいいんだよな」

「ふふっ、今日は仲直りも兼ねて焼いてきたんだよ」

「…もしかして許して貰えなかったらパイで釣るつもりだったのか?」

「…ソソ、ソンナコトナイヨ」

「ん、水が冷たい。どうやったのアリス」

「ふふん、熱素を水から離しただけよ?」

「…アリスがいれば氷いらなくないか?」

「確かに…いや必要よ。だっていつもやるのはめんど…えっと、そうそう、神聖術は大事な時しか使っちゃダメってあるし!」

「…そんなこと全く無視して使ってない?」

「…えへっ」

 

全く誤魔化しきれてないアリスに白目を向けつつ、僕たちは手を早める。パイはどうしても作る過程が長いため、足も早いのだ。急いで食べ終わった後、キリトはアリスに尋ねる。

 

「結局、アリスも行くってことでいいんだよな!」

「え、ええ。よろしくね」

 

よっしゃ、とガッツポーズ(アリスがそう言っていた)をとるキリトを横目に見つつ、僕はアリスに気になっていたことを尋ねた。

 

「なんであんなに否定したんだい?いつもは二つ返事じゃなかった?」

「おっ、そうだぞアリス。それに、例えゴブリンが出てもアリスなら瞬殺できるんじゃないか?」

 

2人に迫られて困っていたアリスだったが、キリトの言葉には否定しつつ、ぽつりと答えた。

 

 

「えっと、その…氷のおかげで貴方達が家からお弁当を持っていくようになったら、私いらなくなっちゃうかなって…」

 

 

 

頬を染め、下を向くその姿は青年一歩手前にある少年達の庇護欲を掻き立てるには充分過ぎるものであった。2人の少年はアリスの頭を撫で、アリスの必要性を必要以上に語ったという。

 

アリスの心情を知らないが故に。




一人称視点×日常回=伏線乱立
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