黄金少女の英雄譚   作:Raina-lι

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黄金少女の夜間逃走

人界暦372年7月、3回目の休息日、その日の夜に家の窓から空を見上げる少女がいた。部屋の中には光源はなく、外の星の光だけが少女の体を照らし出す。明かりが少ない状況でも、その金髪はまるで自ら輝く夜空の星のように美しい出で立ちであった。その顔はどこか物憂げであり、落ち込んでいるようである。それもそのはず、その少女は…

 

(やらかした…俺のバカ、バカバカバカ!)

 

本気で落ち込んでいるのだから。

 

アリスside

 

(なーんでユージオ君飛ばないのさ、てか誰がこんなアホみたいな作戦考えたねん…俺だ俺だ俺だー!…はぁ…)

 

いつも通りアホなことを考えている俺だが、今回は真剣に考えていかなきゃならない。例の吸い込み大作戦が失敗に終わり、俺は元老に目をつけられたのだから。

 

(このまま明日が来たら…俺は整合騎士さんにハイエースされてドナドナやろ、そしたらなんかピエロみたいなやつに身体(脳)を弄ばれて俺の純潔が奪われると…絶対いやだ!)

 

俺の純潔とかちょっと臭いけどそんなことは言ってられない。ほんとに俺の人生、俺が俺として生きる人生に終わりを告げてしまう。

 

(まだだ…まだ終わらんよ。そうだ、やってきた整合騎士を倒すとかは?…いや、ないな。いくらSC権限が()()()()()()としても、やつらには神器やら心意とかあるし、ついでにリリリコもある。まじめに戦ったら確実に負けるだろうな…)

 

俺の今の実力では返り討ちにあう。そのことを冷静に分析した俺は、次の案を考える。

 

(なら逃げ出すとかは…?でも、どこに逃げるよ?だってどこに行ってもアド何とかさんの部下達に見つかるんじゃね?だってあの時変な白い顔のおっさんが顔出してたし…)

 

俺はダークテリトリーにすっ飛んで行ったときに現れたやつが、なんかブツブツと英語(神聖術)を唱えてたのを思い出す。やつらは人間じゃない(それを言ったら俺とキリト以外人間じゃないけど)ため、誤魔化し方を知っていたけど、あの状況では不可能であった。

 

だが、俺は思い出す。この詰みかけの状況を打破する、ある事実を。

 

(あれ、そういえばあいつ、俺の方を見てたけど、俺の近くじゃなくてキリト達の方にいたよな。そして、人間はダークテリトリーには入ることができない…つまり監視するのは人間界だけ?)

抜け穴、というよりは発想の逆転である。そう、逃げる場所をわざわざ人間界に考えていたけど、それは間違いであった。つまり、俺は…

 

(ダークテリトリーに行こう、そこで村とか支配して平穏()な日々を送るんや!)

 

とても物騒な作戦を立てたのである。

 

しかし、そのことを考えた瞬間…

 

俺の右目が疼いた。

 

 

俺は真夜中、キリトの部屋の扉を開ける。そもそも泥棒なんてアンダーワールド、というか人間界に存在しないため、鍵なんてついていない。こっそりとキリトの寝ているベッドに向かった。

 

(ふふふ、気持ちよさそうに寝てる…だけど起きてもらわないとね♪)

 

俺は神聖術を展開した。その神聖術は、風素を使う技である。ぶっちゃけ風素とか言ってるけど、これは空気を操る技であり、なんでも応用が利くすごい素因なのである。もちろん、普通の人は手から風を出すだけになるだろう。しかし、俺の秘儀、空間掌握と、人間の秘儀、義務教育にかかれば…

 

「キリト!!起きて!!」

 

キリトだけに音を伝えることも訳ないのである。

 

キリトside

 

「ぅおきてぇぇぇぇ!!!!」

 

と、耳元で大声で叫ばれた俺は飛び起きた。そのままベッドから転げ落ち、強かに床に頭をぶつける。

 

「あっ!ごめんキリト!大丈夫!?」

「ちょっとアリス、黙って…」

 

何か知らないけど、神聖術を使っていることは確実だ。普通の声でも大きく聞こえて頭がガンガンしている。アリスもそれに気がついたようで、すぐに神聖術を切った。…切るときも響いてうるさかったが。

 

「で、どうしたアリス、こんな夜中に…」

 

と、俺が呟くがすぐにその真意に気づく。なぜなら、アリスがしっかりとした外出用の服、つまりはズボンや長袖シャツを着ていたためだ。だから、つまり…

 

「一緒に逃げ出してほしいの、お願い、キリト」

 

俺はアリスに、そう、頼まれた。

 

 

「えっと、どこに向かうんだ?そもそもなんで俺だけ…」

 

俺はアリスに手を繋がれ、夜道を歩いていた。どこに向かう道かも俺には分からない。しかしアリスは、しっかりとした足取りで、ガンガン進んでいた。

 

「えっと、ダークテリトリーに…痛っ…あっちの方!」

 

そうアリスが指した方角は、今日の昼に向かった方、つまり例の洞窟があるところである。

 

「大丈夫なのか、あっちに行って…」

「一緒に来てくれるって言ったのはキリトじゃない、もう…」

「まあ、そうなんだけどさ…うん」

 

俺たちがアリスに禁忌目録を破らせたのは確実である。いきなりの強風に煽られたときに、あの中で一番軽いアリスを守らなかったのは、俺たちの責任だ。だからこそ今はアリスについて行ってるのだが…

 

「でも、ユージオも呼んだ方がいいんじゃないか?嫌がるとは思うけど、責任とか感じてるだろうし、戦力としては…」

 

そう俺は提案した。正直2人でダークテリトリーに行くとかは、怖いし、辛いものもある。だからこそ、俺の相棒を呼ぶことを提案したのだが…アリスは足を止め、俺の手を両手で握り、上目遣いで俺の顔を見た。

 

「私はキリトがいいの。キリトは私と一緒じゃ、いや…?」

 

その瞬間、俺の頭は真っ白になった。かつてここまで俺の幼馴染を可愛いと思ったことはなかった。頬が上気し、どこか不安そうに揺り動かす瞳、俺のことを伺うように見上げ、首をかしげるその仕草、そして俺の手を胸の真ん中で抱きしめる姿は、まさに天使のようであった。だからこそ、俺は言ってしまった。

 

「そ、そんなことないさ。一緒に行こう、アリス」

「うん!」

 

 

俺はアリスに連れられ、例の洞窟を抜け、午後に来たダークテリトリーの前までついた。全然迷わないアリスに理由を尋ねたら、星読術の基礎、位置把握だよ、と言っていた。…やはりアリスは才女である。そんなアリスを村から逃げ出させることになったのは、俺たち、いや、俺のせいである。俺は落ち込んで謝ったが…

 

「ううん、キリトと一緒にずっと居られるようになるんだし、私は嬉しいよ」

 

そう返してくれた。この娘はいつまで俺の心を離さないのだろうか…

 

「ここからがダークテリトリーね…」

「ああ、いよいよだな…」

 

そして、一歩を踏み出そうとするアリス。しかしアリスは急に右目を抑え始めた。

 

「うう、やっぱ痛い…」

「どうした、目を痛めたのか!?」

 

慌てる俺にアリスは左手で制す。

 

「この程度、痛いのは分かってる…後は私の心意気だけ…」

 

アリスはブツブツと独り言を呟く。そして…

 

「ああっ!」

 

と叫び、アリスの右目が()()()

血をダラダラ流すアリスに、俺は寄り添う事しか出来なかった。しかしアリスは…

 

 

「お願い、キリト…連れて行って…」

 

 

俺は、アリスを背負い、ダークテリトリーへと歩き始めた。

 

 

アリスを守る、その信念も背負って。

 




小悪魔系幼女アリスちゃん
…11歳を幼女と呼ぶのはどうなんだろうかと最近悩み始めた
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