黄金少女の英雄譚   作:Raina-lι

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最初はタイトルを偶像活動にしてたけどあまりに伸びたためたどり着かない事件


黄金少女の意識改革

それは、昔、というにはちょっと微妙な、80年ほど前のお話です。オークの集落では、人界を侵略する計画が立てられていました。オークという種族は、ほかの種族から虐げられており、ダークテリトリーのトップが一堂に会する十侯会議でも、立場が弱いものでした。そのため、侵略の第一陣という最も危険なことをオークにやらせようとしたのです。また、平地ゴブリンに次いで人界に近い集落が、オークなのであることも、白羽の矢が立ってしまった要因として挙げられています。ともかく、それにより村単位の人数が選ばれ、侵略軍…いいえ、死を決められた軍、まさに決死軍が作られてしまったのです。この軍に入ると、死ぬ事が分かっているため、オークの中でも上の地位に立つ者は、自分の代わりに、奴隷のオークを行かせることにしました。…トップのオークも、死ぬことは分かっていたため、このように、奴隷を代わりに行かせる制度を採用したとも言われています。その生贄となる奴隷は男だけではなく、女性や子供も入れていい、ということになっていました。そのため、とあるオークの奴隷の少女、ルミダもその軍として、死にに行くことが決まってしまいました。

 

その戦いは、戦いとも呼べない、完全なる蹂躙でした。人界とダークテリトリーを分ける厳しい山脈のところに、圧倒的な力を持つ、整合騎士が待ち構えていたのです。オークの軍は、人界に入る前に過半数を殺され、オークたちは命からがら逃げる事しか出来ませんでした。そして、逃げたオークの集団、かつての侵略軍として進み始めた時よりも大幅に減ってしまった生き残りの者たちが、この村を作ったのです。オークは、人界の土を踏むことはありませんでした。…ただ1人、ルミダを除いて。

 

ルミダは、整合騎士から逃げるときに、たまたま山脈の洞窟に入り込みました。その洞窟を抜けると、今まで感じたことのない、心地よい暖かな風や澄んだ空気、包んでくれるようなソルスの光を全身に受け取りました。そこは、まさしく彼女にとって、そして暗黒界(ダークテリトリー)に住むどの種族にとっての桃源郷だったのです。しかし、すぐにその考えは改められてしまいました。森の中を進み、川の魚を見ていた彼女の近くに、白い顔をした人間が現れたと思った矢先、整合騎士がルミダを追ってきたのです。彼女は必死になって逃げました。森を駆け、山を越え、転んだり、整合騎士の矢による狙撃を背に受け、傷だらけになりながら、もともと人界に入ってきた洞窟に戻ってこれました。しかし、その洞窟には、先程は気づかなかった先客がいました。その先客とは、とても小さい、今のアリスよりも小さく、細い体を有し、眼鏡をかけた少女でした。その少女は、その洞窟で、なにかを探しているようでした。ルミダは、その少女に気づいたとき、逃げ出そうとしました。しかし、洞窟の床にあった氷では、ルミダの体重を支えることが出来ず、それを割ることで音を出してしまい、その少女に気づかれてしまいました(ルミダの名誉のために説明するが、彼女はオークの中では小柄ではあった。あくまでオークの中では、であるが)。しかし、その少女は、オークを見ても、特に怖がると言った行動をとりませんでした。むしろオークと知った時には、ほっとしていたとも見えます。とにかく、その少女はルミダの整合騎士から受けた傷や、今までの転んだ怪我を一瞬で治してくれました。お礼を言い、名前を聞いたところ、助けるのは当たり前じゃ、と言い、結局ルミダは最後まで、名前を知ることはありませんでした。

(とあるオークの村の歴史、語り手 ルミダ 要約&補足あり)

 

アリスside

 

(だから俺を助けてくれたのか…てか絶対そののじゃロリって十中八九カーディナルさんだよね…)

 

まさに奇跡を感じざるを得ない。これが主人公、いや、ヒロイン補正の力か…と、俺は感動すら感じていた。まさしく、世界が、俺に味方している!俺はとてつもない幸福感を感じていた。

 

しかし、肝心なことが聞けていない。俺が聞きたいのは、そう…

 

「おばあちゃん、結局なんで私避けられてるの?」

 

 

 

(はぁ…どうしようかねぇ…)

 

俺は家で掃除をしていた。と言っても俺は椅子から全然動いていない。風素を操ることで、擬似掃除機を編み出しているためだ。ダークテリトリーは素因が少ないといえど、流石に空気はがっつりあるため、全く支障はない。俺は、おばあちゃんに言われた言葉を考えていた。

 

(その戦いで、人間は怖いものだって思われてるって言ってたな…そんなに怖いかな、俺)

 

俺は持ってきていた髪留めを変換して、鏡にする。…いつでも鏡にできるなんて、ほんとに持ってきてよかったと思ってる。キリトとユージオからのプレゼントだ。自分じゃ全然覚えてないが、俺が鏡の作り方を2人に話したみたいで、欲しがっているのではないか、と思ったらしい。安物だよ、と謙遜していたけど2人の手持ちじゃ辛かっただろうとは簡単に想像できる。…ぶっちゃけ俺は自分でこういう女子力アップグッズとか、いらない買わない作らないの、ないない三拍子だったので無縁だと思ってたから、2人が渡してくれたことに多少の驚きと、ませてんなー、という感想、そして自分を誤魔化しきれない嬉しさの感情が溢れ出したことを、今でも覚えている。別に嬉しくないわけじゃないんだからね!(即堕ち)

 

(楽しかったな…寂しい。会えないなんて…じゃなくて!)

 

俺は鏡で自分の顔を見る。ぼおっとしてたときの顔は、いかにもアホそうな、ヒロインがしちゃいけないような顔をしていた。ちなみに右目の布は眼帯状に作り変えた。治すことも考えたんだけど、人体の目に匹敵する素因を有するものを持っていなかったため、その案はお蔵入りした。俺はもとのアリスがキリッとした顔(キリトだけに)をしていたのを思い出し、俺も真似してキリッキリッとする。そうしたらアホみたいな思考が一切見えない、しっかりしゃっきりした顔を作ることに成功した。

 

(うん。こんな感じだった…ってこれでもなくて!ちゃんと考えねば…そうだ、2人と仲良くなったときは…えっと…)

 

やゔぁい、思い出せない。なんとなく友達になったような気がするし、めっちゃ喧嘩してたような気もする。あの頃はまだ若かったぜ…あまり思い出したくもないので、俺は回想を打ち切る。

 

(万策尽きたんじゃね、これ…どうしよ、助けて〜カディえも〜…)

 

…それだ。そう、助ける。ここはダークテリトリー、不毛な地だからこそ、困ってることを沢山あるはず。そして俺は今までこっそり神聖術で生活を便利にしてきた…つまり、

 

(まさか手を抜くために考えた術式がここで成り立つとは…塞翁が馬、人生何が起こるか分からないじゃん。アゼルバイジャン)

 

 

俺は鏡をまた髪留めに戻して、髪を留め…ようとして、俺にはその技術がないことを思い出し、仕方なくポケットにしまう。いつもマイシスターセルカにつけてもらっていたのが、ここに来て響いている。…マジで俺の女子力低いな!

 

「よし、そうと決まれば…出陣じゃー!」

 

頭の中で某暴れん坊な将軍様のBGMを流しながら、俺は外に出て行った。

 

 

…雑巾掛けを忘れていることに気がつくのは、家に帰ってきてからであった。

 

 

(チラチラ見られてる…貴様!見ているな!…はぁ)

 

冴えた考えだと思って外に出たはいいものの、まるで変わっていない。そもそも困ってる人なんていないし。平和だし。警戒されてるから変なことできないし。一度子供に神聖術で芸を見せようと思ったら、唱えてるときに逃げられる、といったことがあったため、迂闊に声も発せられない。これも地味に辛い。…俺の脳内BGMが某ご隠居様のテーマに変わった。人生楽ありゃ楽しいなっと…

 

結局ぶらぶらとお散歩になっていた。空は日が出てるのになんとなく暗いとかゆうわけわからん気候であり、なんとなくみんなの顔も暗い。誰そ彼だっけ、と思いつつ俺はいつもの場所にたどり着いてしまった。

 

「おや、アリスちゃん。今日はおうぢにいるっで言っでなかっだだね」

「ううん、掃除終わったから出てきちゃった。私も手伝うよ」

「そうかい、そんならばお願いするだ」

 

俺はおばあちゃんの出店(?)に入っていく。なぜ(?)がついているかと言うと、厳密には売ってはいないからだ。この村にはお金がなく、所謂配給制(ちょっと違うけど)を採用している。この前ランさん(ランダパルさんがそう言っていいって言ってくれた)が狩ってきた肉をみんなの家庭ごとに分けているのだ。昔はそれぞれの家を回っていたらしいが、大変だということで今の体制になったらしい。ただ、みんなが来るのを待つのはいささか暇なので、その間の時間を使い、狩った動物の毛皮で色々作っているのである。裁縫は任せろーバリバリー(裁縫バッグを開ける音)

 

「みんな取りに来た?」

「まだ全然だよ。はだけもだいへんな時期だもんな、しかだないだよ。天命には余裕があるだ。ゆっくりでいいだよ」

「うん…」

 

この肉は、天命を保護するために加工をしている。簡単に言えば干し肉にしているのだ。ただぶっちゃけあんまり美味しくない。…そんなところにこだわるんだったらアイテムストレージくださいよ菊何とかさん…

 

「痛っ、おっとと、やっちゃった…」

「大丈夫かね、アリスちゃん」

「ううん、問題ないよ。すぐ治るし、私裁縫得意だから!」

 

考え事をしていたら、針を人差し指に刺してしまった。真面目に裁縫は得意な方なんだけど、やっぱり片目は辛い。全然距離感が掴めないのだ。独眼竜とかあったらしいけど、俺には無理だ。はっ、もしかしてこれは片目を吹き飛ばすことで、剣を使い辛くするという孔明(アドさん)の罠なのでは…

 

(って、外に出たのはおばあちゃんを手伝うためじゃなくて、おばあちゃんじゃない、別の人(人じゃないけど)を助けようとしてるんだった…そうだ)

 

「おばあちゃん、困ってることってない?」

「困っでるこどねぇ。わだしは足腰もまだまだ元気だし、どくにはないだ。…どうかしだかい?」

「いや、えっとね。みんなと仲良くなりたいから、人助けができればいいかなって思って…だけど何にも思いつかないの…」

 

おばあちゃんは手を止め、俺の顔をじっと見つめてきた。その澄んだ瞳が俺を指す。大きく、彫りが深いため威圧感を与えるような顔、しかしお鼻のブタさん部分がどこか笑いを誘ってしまい、むしろ可愛く見えてくる。俺は恥ずかしくなり、ちょっとだけ目を逸らした。断じて笑いそうになった訳じゃないです、ハイ。

 

「…アリスちゃん。それは違うだよ」

「えっ…」

「仲良くなるだめに人助けをするんじゃないだ。だすけるっでこどにもくできを持っちゃいけない。報酬をもどめだら、それは交渉や取引と変わんないだよ。手助けは優しさだけじゃないどいけないだ。…アリスちゃんは私を手伝うどき、どう思っでだだい?」

「えっと、特にはなにも考えてな…いや、暇だったし、その…」

「無理に理由を考えなくでいいだ。理由がないのが正解だよ。アリスちゃんは優しいから大丈夫だど思っでだだ」

 

 

 

テキ屋のような様相のある建物、その中で、年老いたオークに、この暗然たる暗黒界においても決して色褪せない黄金の髪を有する少女は、その髪を手櫛で梳かれていた。オークはその大きな顔いっぱいに笑顔を浮かべており、少女は俯き何かを考えているようだ。これは、異種族が手を取り合う、まさしくこれまでのアンダーワールドを考えると、奇跡とも呼べる瞬間であった。しかし、その幻想的な時間は泡沫の間である。黄金少女は顔を上げ、オークを見上げる。

 

「ありがとう、おばあちゃん。目が覚めたよ」

 

その少女の左目には、決意が満ちていた。




アリスのLVは19です(大嘘)

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