東方頭文字D外伝 峠の白兎 --Rabbits dream of becoming HASHIRIYA-- 作:Atno108
東方頭文字D外伝 峠の白兎 --Rabbits dream of becoming HASHIRIYA--
この作品は東方二次創作作品です。
キャラ崩壊、設定崩壊等にご注意願います。
この作品は作者の妄想で出来ています。
素人並みのクルマの知識、誤った情報等にご注意願います。
この物語はフィクションであり、
登場する人物・地名・団体名はすべて架空のものです。
車の運転は交通ルールを守り、
ゆっくり安全運転を心がけましょう。
かつて 伝説があった。
その伝説は 今も若者達を峠へと誘い、走りへと駆り立てていた。
今日もまた 彼らは走り続ける ひたすらにーー
「グアアアアアアアッ グアッ グアッ ガアアアアアア!」
「ギャアアアッ キキッ キキィッ」
「ブボアッ!パン!バアアア!」
ブラインドコーナーを立ち上がり、一気に加速するスカイラインR33が二台。
先行するR33は紫色のGTRクーペであるが後をつけるのは白いGTS4ドアである。
モブ「は、速いっ!やっぱスカイライン二台は迫力が違うぜ!」
モブ「でも、このままじゃこの先のコーナーで・・・!」
そのままあまりスピードを殺さずコーナーに突っ込む紫色のR33。トラクションを掛け、じわり、ジワリと しかし確実に 中速コーナーを立ち上がっていく。後追いのR33はそれができず、離されていく。
「キアアアァァァアアアアアアアア!」
レティ「くっ!あいかわらずっ・・・!!」
ここで二台の差は大きく開いた。先行する紫のR33はペースを落とさず、どんどん暗闇の先へ消えていく・・・
「ブガアアアアア・・・・」
「キキッ キキイィ 」
「ガアアアァァァァァ・・・・・」
ここはD坂道。かつて「走り屋達の聖地」と言われたK県と隣県との間に位置するが、知名度はイマイチで、通りすがりか 地元の走り屋しか寄り付かないマイナーなコースである。
そのD坂道の途中。「二里塚」と彫られた岩が置いてある、車5台ぐらいを止められるちょっとした駐車場がある。先ほどのR33二台がゆっくりとその駐車場に停車した。
白いスカイラインR33GTS4ドアから出てきたのはレティ・ホワイトロックである。
レティ「はあ。あいかわらずとんでもない速さで飛ばすんだからアンタは。」
レティはやや憔悴しているように見える。対して紫のR33GTRから優雅に降り立ったのは 西行寺幽々子である。
幽々子「あら、レティだって頑張ってきてるじゃない。その車で前半私についてこれたんだから。」
レティ「それ褒め言葉じゃないからね」
白いGTSをまじまじと見る幽々子。佇むレティ。少し会話が途切れた。車通りはなく 近くの川の音が静かに響いていく。
レティ「やっぱり、行くの?」
幽々子「うん。ここでできることは一通りやったつもり。」
レティ「函根?」
幽々子「函根。」
函根。走り屋達が目指してやまない走り屋の聖地。いまやそこは 腕に自信がある走り屋の猛者たちが集まる一大スポットになっていた。
幽々子「今日負けたならまた考え直したかもしれないけどね。でも行ってみたいの。通用しないかもしれないけど・・・それでもしばらくは粘ってみるつもりよ。」
レティ「・・・・・寂しくなるわね。」
幽々子「そんなことはないわ。きっと私の後にももっとすごい奴は現れるわよ。夏になれば峠もまたにぎやかになるわ。」
レティ「 ・・・・・ 」
幽々子「そのときのために、もっと練習しなくちゃね。」
レティ「わかってる。幽々子もがんばってね。」
しばらくして。夜が更けていく中、2台のスカイラインのエキゾーストが それぞれ反対の方向へ響いていった・・・
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第一話 「 DREAMIN'GIRL 」
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てゐ 「ふ~んふ~んふ~ん ふふ~ふふ~ん ふふ~ん」
鈴仙 「ずいぶんご機嫌じゃないのよてゐ。」
てゐはだらりと足を延ばし スマホで何か見ている。一方鈴仙はバカバカと薬品のビンのようなものを箱詰めしていた。
てゐ 「もう休憩時間だよー。それに浮かれるべきは鈴仙のほうじゃないかなー。」
鈴仙 「わかってるわよ。ここの仕事を終わってから。」
鈴仙は箱を持ち上げるとドタドタと奥へ運んでいく。
てゐ 「まったくー。納車日ぐらい仕事休みでもいいのにねー。」
鈴仙 「うるさいそれは私のセリフだ。私の車の納車日だ。」
鈴仙は車を買ったのだ。その車を取りに行くため、車をもっているてゐにドライブをお願いしていた。しかし納車日を土曜日にしたのは失敗だった。見事に仕事が入ってきたのだ。
てゐ 「 イイナー 鈴仙 車イイナー 」
鈴仙 「あんただって車買い替えるんでしょう?」
てゐ 「もうアレも13年たつからねー」
てゐの車は知っている。NZE-121。銀色のカローラセダン。前期型。中古で買ったそうだが前職は営業車だったことが判明している。
てゐ 「オートマだし109馬力だしヨタバネだし。ホーントうらやましいよシルビアが」
鈴仙 「ありがとう。」
てゐ 「S15シルビアかぁ~。クーペでターボだもんなあ。225馬力出るんだっけ?」
鈴仙 「250馬力よ。カタログ数値そのままならばね。ノーマルだし」
鈴仙はようやく椅子に座った。
てゐ 「むしろ今のご時世ノーマルのシルビアターボが出てくること自体マレじゃないの?」
鈴仙 「うん。私もびっくりしたのよ。ネット見てたら何もいじってないシルビアがでてきたから。 いいなーって思って。」
てゐ 「いじってない方がいいんだ。」
鈴仙 「車持つなら自分で初めからいじりたいじゃない。」
てゐ 「オオウ。」
鈴仙 「その点よかったと思うわ。割と手ごろな値段で買えたし。てゐはどうするのよ?」
てゐ 「ん?」
鈴仙 「次の車。買い替えるって言ってたじゃない。」
てゐ 「 あー うーん。やっぱ古いから買い替えるってのも一つにあるし、最近の車かなー。」
鈴仙 「新車とか?」
てゐ 「中古でもいいんだけどネー なんつーか最近の車 とくにスポーツカーはいい車ない気がして。」
鈴仙 「あー。」
てゐ 「現行WRXは手ぇ届かないし。ロドスタはオシャレすぎるし。新86はなんか『スポーツカーならこれじゃないといけない』って押し付けられてるようでイヤなんだよね。」
鈴仙 「う~んどうなんだろそれ。」
永琳 「鈴仙。この後上の書類棚の整理でしょ。休憩終わったらさっさと行ってらっしゃい。」
鈴仙 「あっ は~い。」
八意永琳は彼女らの仕事場の上司であり師匠である。鈴仙はこのセリフが「今すぐ行ってこい(命令形)」という意味だと知っている
鈴仙 「じゃ行ってくるわね」
てゐ 「いてら~」
バタバタと部屋から出ていく鈴仙。見送るてゐのそばに、永琳が立った。
永琳 「で、どうするの?」
てゐ 「え?」
永琳 「次の車。」
てゐ 「え、えっと、まだ検討中というか・・・」
永琳 「てゐ。」
てゐ 「ハイ。」
永琳 「裏で話があります。」
てゐ 「ま、小一時間のグチ兼説教を要約すると、保証と維持費がいいから新車にしなさい、仕事で使えるようワゴンにしなさい、と まあそんなトコさね」
仕事が終わって てゐは鈴仙をのせ、カローラセダンを運転している。車は日暮れの中、片側二車線の国道を渋滞に巻き込まれながらゴロゴロと進んでいく。
鈴仙 「ふ~ん」
てゐ 「ふ~ん じゃないわよダレカサンがいきなりクーペ買うからこっちに風当たりが強くなってるのよ。」
鈴仙 「とは言われてもねえ」
てゐ 「う~ん まあ別にとやかく言うつもりはないけど。私もああいうの 好きだし。」
鈴仙 「別にトランクもあるし、新86とかでも使えると思うんだけど。」
てゐ 「まあね~ クーペとか せめてセダンカナー。ワゴンはなー。」
鈴仙 「ワゴンってもステーションワゴンならいいんでしょ?レヴォークとかは?」
てゐ 「あれ上品すぎ。高い。フロント不自然に低すぎ。あれならS4とかWRX欲しくなる。」
鈴仙 「ハイハイ」
てゐ 「いちおカローラのワゴンも最新作が出てるからね。フィールダー。ちょっとツラ変わったヤツ」
鈴仙 「ふ~ん」
てゐ 「でもさ、1.5リッターエンジンと1.8リッターエンジンとあるとさ、1.8の方欲しくなるじゃん。」
鈴仙 「うん。」
てゐ 「んでさ、いちお見積りもらったんだけどさ。1.8のにいろいろつけると新86と並んじゃうんだよね。値段。フィールダーの1.8はCVT車しかないし。」
鈴仙 「あー。」
てゐ 「それだったら断然新86の方がいいでしょ、ってなるよね。」
鈴仙 「意外ね。その二台がだいたい同じ価格になるだなんて。」
てゐ 「86がそれだけお手頃に販売されてるってことだろうね。もっと高かったら迷ったりしなかったんだけど。 他のスポーツカーは高くつくもんね。やっぱ86だな。うん。86なら現実味あるよ。」
鈴仙 「てゐ。最近スマホいじって調べてるのってそういうこと?」
てゐ 「いいじゃん。鈴仙だっていいの乗るんだし。」
鈴仙 「まあ。うん。」
車は国道を折れ、片側一車線の道をゆるゆると進んでいく。
てゐ 「イイナー。やっぱ峠とか走りこむの?」
鈴仙 「たぶんね。やっぱああいうのに憧れて買ったってのもあるし。『走り屋』に。」
てゐ 「そうするといいよ。私もたまに走りとか行くけど楽しいし。近いとこだとT山峠とか宮ノ内湖のまわりとかオススメかな。ちょっと奥いけばD坂道もあるし。」
鈴仙 「え」
てゐ 「何?」
鈴仙 「てゐ・・・この車で 峠 攻めてるの?」
ちょうどその時 段差でカローラセダンはバインバインと跳ねた。
てゐ 「・・・・」
鈴仙 「・・・・」
てゐ 「たしかに馬力ないし サスはそのまんまだし ロールしまくりだけどできることはあるもん。」
鈴仙 「・・・・・ごめん。」
カローラは狭い道を進み、目的地の車屋の前で止まった。車屋というよりは、ガレージ、いや、車庫のような倉庫のようなプレハブ小屋があり、その隣に車2,3台ほど止められる程度のものである。 小さな看板だけがそこがお店であることを告げているが、散乱した車のパーツや積まれたバンパーで そこが車関係の場所であることが一目でわかる。
てゐ 「うわ、ここかあ・・・」
いちお住宅地のはずれに位置しているのだか、奥からは広大な田んぼが広がっている。
鈴仙 「あ。」
白いS15シルビアがその前に止まっていた。ボンネットを開き、店員が中を覗いている。
てゐが田んぼの横っ腹にカローラを止めている間、鈴仙は店員に声をかけ、最後の手続きを行った。
店員 「はい、こちらに。カギと必要書類はナビシートに置いてます。」
鈴仙 「ありがとうございます。」
てゐ 「うおおやっぱすごいなあ なんていうか存在感が。」
鈴仙 「幅はそんなにでかくないはずよ。5ナンバーで収まってるし。ホイールアーチはちょっと長いハズだけど。」
運転席に座り、ギアの動かし方を確認する鈴仙。助手席に座るてゐ。
てゐ 「うげ。座高が全然違う。」
鈴仙 「シルビアS15 SpecRターボ。前乗ってた人がどんな人か知らないけど、内装も痛みないし、ほんといい状態だわ。」
てゐ 「エンジン。エンジン掛けてみてよ。」
「ブロロロン ブロロロ ブゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」
てゐ 「うわお。でかい。エンジン音が。重量感が。」
鈴仙 「いろいろと走りに行きたくなるけど、まずは様子みながら慎重に走らないと。慣らし運転みたいに。」
てゐ 「まずは燃料補給だよ。納車されるときって大抵ガソリンいれてないから。ほら。さっき曲がったところのカドにガソスタあったからちょうどいいじゃんあそこで入れれば。」
鈴仙 「え。あそこセルフだったような。」
てゐ 「?」
鈴仙 「私、セルフなんて入ったことない。」
てゐ 「慣れろ。だいたいセルフの方が安くなるし出先じゃそんなの選べないんだから。ちなみに私のはたっぷり入ってる。一人で行ってきな。」
鈴仙 「ちょっとてゐ~~ ここで別れるって言うの~?」
てゐ 「やかましい。モニターのお姉さんが優しく教えてくれるから大丈夫だよ。」
そそくさとシルビアを降りるてゐ。
鈴仙 「てゐ」
てゐ 「ん?」
鈴仙 「今日はありがとうね。ちゃんと慣らし終わったら 峠 一緒に走りに行きたい。」
てゐ 「あんな車でも?」
鈴仙 「まあね。」
てゐ 「そか。楽しみにしとく。」
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2か月後。
てゐ 「どこじゃここは?」
てゐと鈴仙が車を止めたのはOK霊園と書かれた門の前。行き止まり。相当な山の上で ここまでどう見ても生活道路にしか見えない細い道を登ってきた。鈴仙のシルビア先行で。
鈴仙 「おかしいな。ナビ通り進んだはずなのに。」
てゐ 「いあいやいや。さっき明らかに幹線はずれてたでしょ。OK湖とかOKダム目指してたのに。一度きたトコだから大丈夫だって言ってたの誰よ。」
鈴仙 「後付けのナビがなんかおかしくって・・・」
てゐ 「ナビに頼りすぎなんだよ。だいたい国道入ったらまっすぐ行くだけじゃん。」
鈴仙 「てゐはいいわよねえ カローラナビないのに迷わずいろんなトコ行けるもんね。」
てゐ 「うん ググル地図あれば自分の場所わかるし後はカンで・・・じゃなくて どうすんのこっから!?」
鈴仙 「とりあえずここで転換して降りる?」
てゐ 「げ。この狭い場所で?」
鈴仙 「ホントバックは苦手なのね」
てゐ 「誰のせいでぇ~~ ちょっと先 車どけてよね。こっから私の車先行で案内するから。」
鈴仙 「面目ない」
スマホを取り出しいじりだすてゐ。
てゐ 「まずOKダム横の駐車場でいいのよね。そのあとM姫峠で。」
鈴仙 「わかる?」
てゐ 「だいたいわかった。私の車じゃ遅いかもしれないけどイライラせずついてきてね。目いっぱい走るから。」
鈴仙 「てゐこの道初めてなんでしょ。あまりムチャしないでよ。」
てゐ 「だいたい目の前のコーナーみればどう走ればいいかわかるわよ。大丈夫。M姫峠までいけば迷うことはないから鈴仙先行で大丈夫でしょ。」
鈴仙 「上りよ。大丈夫?」
てゐ 「おいてった時は上でまってて。」
鈴仙 「まあそうなるか」
てゐのカローラセダンがおずおずと下りへ向きを変えるまでその後十数分。
2台はOK地区の山奥へ進んでいくのであった・・・
その 約5時間後。
暗がりの中、二台並ぶ S15シルビアとNZE121カローラ。鈴仙はその前にぼんやり立っていた。
ここはてゐや鈴仙の仕事場の駐車場だ。OK湖周辺のツーリングが終わった後、てゐが用事があると言ってここに寄ったのだ。
てゐは建屋の中に入っていったが、鈴仙は車のそばで、今日のツーリングのことを思い返していた。
先行で走っても いくら直線でフカしても コーナーで張り付いてくるカローラ。
後追いになると オーバーにロールしながらも コーナーをすり抜けるように加速していくカローラ。
鈴仙 「(ついていくのがやっと・・・いや、ついてこれるように手加減されてた。この車が・・・)」
シルビアは250馬力。カローラは1500ccの109馬力。そんなことはわかっている。
鈴仙は自然とカローラに近づき、そっと手を触れる。
鈴仙 「(負けてたわね。完全に。)」
鈴仙は押し殺すように 自分に言い聞かせた。それは、認めたくなかったが、今 認めなければいけないことだと思ったからだ。
てゐ 「あれ?鈴仙。 まだいたの?」
てゐが建屋から出てきた。中の自販機で買ったのだろう、手には野菜ジュースを持っている。
鈴仙は、別に先に帰ってもよかった。でも何となく待っていたのだ。
じゅるるるると 野菜ジュースを啜るてゐに 鈴仙は顔を向ける。
鈴仙 「ねえ、てゐ、この車・・・
・・・いや、何でもない。 ・・・また明日ね。 おやすみ。」
てゐ 「ん。 おやすみ。」
この二か月後、てゐはカローラセダンを降り、新しいマシンに乗り換えた。鈴仙は この時まだ
てゐが何に乗り換えるか知らなかった。
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てゐ 「みなさんはトウゲニウム欠乏症という言葉ををご存知だろうか?
形成されていくドラテクと夢見がちな幼稚性が交じり合った、恐ろしくも愛すべき病で
特に用もないのに峠に走りに行かないと落ち着かなくなったり、
週末峠へ走りに行くことに頭がいっぱいになり仕事が手につかなくなったり
寝付いても峠を走り込む夢でうさなれまったく寝れなかったり」
鈴仙 「次回、「 TIGER DANCE 」」
てゐ 「このように素で悶え死にそうになる恐ろし~い病なのである」
鈴仙 「いや、それ 普通にダメだろ」
ご閲覧ありがとうございました。
語彙力そっちのけの台本形式投稿ですが、雰囲気等感じ取っていただければ幸いです。
コメント等にはできるだけ答えたいと思います。用語等、わかりにくい所あればご質問下さい。第二話は一か月後ぐらいに投稿予定です。