東方頭文字D外伝 峠の白兎 --Rabbits dream of becoming HASHIRIYA-- 作:Atno108
てゐ「アレ違うんすよ」
てゐ「峠とかサーキット ガチで走ってる車はダメージとか燃費とか怖くて それ以外ではめっちゃゆっくり走るんスよ」
てゐ「中には折れたマフラー腹抱えて祈りながら保土ヶ谷バイパス帰るヤツもいるわけで。」
ナズ「最近GC8のマフラー変わったのはそれか」
~これまでのあらすじ~
鈴仙 「私、鈴仙 うどんげいん イナバ!
今絶賛売り出し中のきゅーてぃ&くーるな走り屋なの!」
てゐ 「うわあ。」
調子こいてヨソ様の峠で勝手に卍こく鈴仙。
鈴仙 「うらっしゃああああ勝ったあああ」
なんかすごいっぽい咲夜さんに勝っちゃったゾ。
咲夜 「チッ」
鈴仙 「YOU速いらしいじゃ~ん?ネーチャンと走ってみようか?グヘヘ。」
都合よく現れた天子さんに絡む 煽る。
天子 「ブチッ」
ああ ワケ分からなかったら素直に第一話から読んでね。
東方頭文字D外伝 峠の白兎 --Rabbits dream of becoming HASHIRIYA--
この作品は東方二次創作作品です。
キャラ崩壊、設定崩壊等にご注意願います。
この作品は作者の妄想で出来ています。
素人並みのクルマの知識、誤った情報等にご注意願います。
この物語はフィクションであり、
登場する人物・地名・団体名はすべて架空のものです。
車の運転は交通ルールを守り、
ゆっくり安全運転を心がけましょう。
鈴仙 「クラッチを焼いた!?」
てゐは木のベンチに腰掛け、頭と耳を垂らしてうなだれている。
てゐ 「・・・・どうしようもなかったんだよう・・・あの宿屋のある上りの急カーブで、完全にギアチェンジミスって、一気に回しちゃって・・・」
ナズ 「いままでオートマしか乗ってなかったヤツが、いきなりハイパワーなギア車乗るんだもん。まあ、そ う な る な (笑)」
てゐ 「なずさんなんでそんなウレしそうなの?」
鈴仙 「それで、いつ直るの?」
てゐ 「もう 即入庫だから 今週末には仕上がると思うけど・・・ あ~あ。」
顔を見合わせる 鈴仙とナズ。
鈴仙 「じゃあ、間に合うわね。」
ナズ 「間に合うな。」
てゐ 「・・・へ? 何のお話?」
きょとんとするてゐに ナズは言い放った。
ナズ 「二週間後にある交流戦、お前にも出てもらうことになったから。」
てゐ 「・・・あん?」
ナズ 「君に拒否権はない。今週の土曜に受け取れるなら、来週のレースには間に合うはずだろ? 問題はない。君には上りのエースとして 出場してもらうよ。」
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第九話 「 EARTHQUAKE SUPERSHOCK 」
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「ファガアアアアアアア ガアアアアアアアアアア!!」
鈴仙の白いS15が T山峠のコースの高速区間を下り方向へ走っていく。道の駅があるこの辺りは多少曲がりあり見通しが悪いとはいえ、ほぼ直線のベタ踏み区間だ。
天子 「気に入らない。ああ。気に入らないわね。」
目の前を走り抜けていく白いS15を眺めながら 比那名居 天子は呟いた。交流戦レース一週間前のこの日、天子たちはプラクティス、直前完熟走行の為に 鈴仙達にT山峠のコースを明け渡していたのだった。
しかし、天子がイライラしていたのはわざわざコースを明け渡さなければならない事でも、自分が走れない事でもなかった。目の前に現れるのが 鈴仙の白いS15 一台だけだったからである。
青娥 「そうカリカリしないで下さいまし。冷静さを欠いては 勝てる勝負も勝てませんわよ」
声を掛けられ 微笑んでいる青娥の方を見やる天子。青娥は常に微笑んではいたが その細目はめったに開かれることがなく 天子にもその感情を読み取ることは難しかった。
天子 「相変わらす何考えてるのかわからないわねアンタは。そもそもアンタの対戦相手なのよ、上りのアタッカーは。どんなヤツがくるか気にならないの?」
青娥 「あら、あのS15が上りかもしれないのに。」
天子 「走りみればわかるわよ。あれはダウンヒル重点的に練習してる。」
余計不機嫌になって顔を戻す天子。交流戦の練習である以上、ヒルクライム、ダウンヒル両方のアタッカーが姿を見せるべきなのだが、鈴仙の白いシルビアしか姿を見せないことに天子は疑念を深めていたのだった。
天子 「相手が 使用するマシンを隠すことによって生まれる利点は?」
青娥 「対策を立てられるのを防ぐ という事でしょうか。 よっぽどトンデモないマシンを用意してるとか ですかね? でもそれなら作戦をアウェイの地で立て 実行する訳ですからプラクティスは欠かせません。本末転倒ですよ。」
天子 「そうよね。下りならともかく上りではどれだけ馬力をあげて どれだけ振り回せるか検討しなくちゃ大馬力車はバトルで使えない・・・ そもそも、アイツらのレベルでそんなマシン用意できる気がしないのよねぇ。」
青娥 「単にマシントラブルで今日来られない とか。あるいはヒルクライムアタッカー用意できてないとか 初めからヒルクライムは捨ててるとかですかね。」
天子 「だとしたらバカにしすぎでしょ。あんなにタンカ切ってたのに。」
青娥 「まあ、私としてはいつも通り全力で走るだけですし。正直どんなのが来ようが かまいませんわ。」
天子 「・・・それぐらい言えるぐらいが頼もしいわ。じゃあ私はあのウサギさんとのバトルに専念させてもらおうかしらーー。」
ブラインド右コーナーをアクセルオンで抜けていく白いS15。そのまま次のゆるやかな左コーナーをアクセル全開で抜けていく。
「ファガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ナズ 「流石だな。これだけの速度域で躊躇なくマシンをコントロールできるとは。賞賛に値するよ。」
シルビアの助手席で 鈴仙の走りにアドバイスしているのはナズーリンである。
鈴仙 「・・・ありがとう。正直、コース覚えるのとか私苦手だから いろいろアドバイスもらえて助かったかも。」
ナズ 「自分の欠点を把握しておくのはいいことさ。なに、この程度でよければ力になってあげるよ。それに・・・ それに コースの情報で本当に必要な情報は 当日 本人にしかわからないからね。」
鈴仙 「・・・・ 路面 か。」
ナズ 「・・・ああ。特にこのT山峠の道 丸々全部使ったこの長いコースは 舗装の状態があっちこっち違うんだ。まあ、「峠」というのは大抵どこでも補修が入るから決して路面なんて一定じゃないんだかな。」
鈴仙 「穴のあいた所だけつるっつるの舗装になってたり、ほったらかしのザラザラのアスファルトだったり。一気に綺麗に舗装しなおされた区間があったり。」
ナズ 「「路面の感触」ってヤツは結局走ってるヤツにしかわからない。その上、それがまったく同じになる日なんてない。天候による変化も大きいが 路上に残ったチリ、タイヤの状態、運転手のクセや熟練度なんかも関わってくる。限界領域に近づけば危険性は増すし、攻めれば攻めるだけシビアになる・・・。」
鈴仙 「結局は 当日確認しながら走らなきゃダメってことか。」
ナズ 「そう気に病むことじゃないさ。それに鈴仙はもうラッキーアイテムを持ってるじゃないか。」
鈴仙 「 ? 」
ナズ 「「兎の足」さ。」
鈴仙 「・・・・。」
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一週間後。レース当日。
T山峠のコース一帯はギャラリーがそこかしこに出ていた。賑やか という訳ではないが見物人たちが要所、要所に立っている。この一帯では大きなバトルが行われることもなく、交流戦の話も珍しかった。それゆえか 今日 多くのギャラリーを集めていたのである。
咲夜 「お嬢様、まもなくバトルの時間です。」
コース途中の U字コーナーの近く 高速区間が急に終わり下りのタイトコーナーに入る地点。そこに十六夜咲夜と もう一人 レース観戦に訪れている人物がいた。
お嬢様 と呼ばれた人物が 咲夜に問いかける。
レミ 「・・・そう。それで鈴仙と言ったっけ、その子、勝てるのかしら。・・・あなた、彼女と戦ったんでしょう?」
レミリア・スカーレット。一見 幼女のような背格好をしているが 暗闇の中 彼女の水色の髪は淡く映え 咲夜を見やる真紅の瞳は鋭く タダモノではないオーラを出していた。彼女こそ十六夜咲夜というメイドが仕える館の主なのであるが、この日彼女がここにいるのは 彼女らが務めている別の役割を果たす為であった。
咲夜 「勝つか負けるかなど 試合前に述べても始まりませんね。でも 彼女が「速い」部類に入ることは違いないと思いますね。」
レミ 「・・・それが、彼女とヤりあった上での感想なのかしら。あなたがそれだけの評価をしながら、なお 勝負はわからないと?」
咲夜 「天子さんも この峠では長く「最速」とされてますから。」
レミ 「どこまでそう思っているのやら。ヒルクライムも無名のルーキーのようだけど?」
咲夜 「そちらについても、どういうヤツか あらかた見当はついておりますわ。今日の試合、個人的には十分楽しめると思いますの。」
レミ 「・・・私達は、今夜の結果を分析して 「あの二人」に伝えるだけよ、咲夜。もうK県エリアへの侵攻作戦は始まっているの。こんな序盤で手間取っている場合じゃないわ。」
一方、コース途中の別の観戦地点。
チルノ 「ふっふっふ~~。あたい特選の観戦場所は やっぱここよね!」
得意げにコンクリ製の 島のような形の分離帯の上に立つチルノ。ここはゴール近く、最終のロングストレートの入口付近にあるバス停である。
ルーミア「そーなのかー?」
チルノ 「ここからなら 手前のS字コーナーでの攻防も見れるし コーナーからストレートに入る立ち上がりのトコロが上りだから なんかこう・・・なんかこうダイハクリョクなヤツを見られるわよ!ゴール近いから白熱してるだろうし!」
ルーミア「そーなのかー。」
大妖精 「でもここ危ないよお・・・あっちのIN側いかない?」
チルノ 「それじゃS字までよく見えないじゃん!」
このバス停は珍しくバスの停車スペースが取られており、その停車スペースと2車線の道路の間にはコンクリ製の分離帯が設けられていた。チルノ達一行が立っているのはその上である。チルノは 自分の友達のルーミア、大妖精をつれて今日のレースを観戦しに来たようである。
チルノ 「まずはダウンヒルからやるって話だから、あっちのS字の奥から鈴仙のシルビアが こう ドン と来るはずよ!」
大妖精 「その鈴仙さんって人、速いの?」
チルノ 「ふふん、驚くなかれ。このチルノ様に勝った凄腕なのだ!」
ルーミア「そーなのかー。」
大妖精 「・・・それってすごいの?」
ルーミア「そーなのかー?」
大妖精 「 ・・・・。 あと、ダウンヒルってことは ヒルクライムもやる訳でしょ?チルノちゃんのチーム、ヒルクライムも速い人出るの?」
チルノ 「よく知らない。」
大妖精 「 え 」
ルーミア「そーなのかー。」
チルノ 「てゐ ってあの子、あたい走ってるのアンマ見てないモン。鈴仙達が一目置いてるのは知ってるけど、正直、パッとしないヤツだし。ま、なんとかなんじゃないの?」
大妖精 「 ・・・・ 」
ゴール地点付近。T山峠チームサイド。
芳香 「せーがー せーがー。もうすぐレース始まるんだろー? 支度しなくていいのかー?」
青娥 「私が出るのはヒルクライムですのよ。先にダウンヒル。ちょっと待たないとですわね。」
芳香 「うーがー。私も走りたかったぞー。」
青娥 「ヨシカちゃんのミラージュはエンジンブローしてるから。しばらく走れないでしょ。」
芳香 「うーがー。」
布戸 「うむ。ヨシカ殿の白いミラージュもメチャ早であったものな。走るの見てみたかったものじゃ。」
屠自古 「あのミラージュはどちらかというと猿岸向けだろ。まあヨシカはトんでるから どこでも速いだろうけど。」
ヒルクライムで出場予定の 霍 青娥 だけでなく、T山峠のチームと親しい関係にある猿岸林道のチームメンバー達も集まり やや賑やかになっていた。
衣玖 「それより やっと上りのドライバーが 姿を見せましたね。」
スタート/ゴール地点の近く 朱塗りの欄干の橋の上に いつのまにか ガンメタのGC8が並べられている。
青娥 「まさか GC8・・・!」
屠自古 「あれ初代インプレッサだよな?ちょい古そうだけども。」
青娥 「ええ。よりによって あんな時代遅れのポンコツを出さなくても・・・。いえ・・・。」
屠自古 「 ? 」
珍しく 感情的な発言をする青娥に違和感を覚える屠自古。
衣玖 「ていうか、あなた方二人は上で待機するよう言っておいたと思ったのですが。」
屠自古 「あれっ?そうなのか!? セイガからキョンシー預かっててくれって言われてたモンだからてっきり」
布戸 「あれ? あっ あーーー。」
屠自古 「コノヤロウ・・・・」
衣玖 「まあ、いいですけど。だとすると 上 神子さん一人ですねえ・・・・」
屠自古 「 えっ・・・ 」
スタート地点付近では。
神子 「また あなたに会うのも久しぶりですね。」
こころ 「そうか。この交流戦は お前のチームと鈴仙のチームのバトルだったか。」
顔を合わせているのは 豊聡耳神子と秦こころであった。秦こころはたまたまここに応援に来ただけであるが 二人は旧知の仲であった。
神子 「フフ。私の知り合いのチームのバトルなんですけどね・・・ そんなことより」
こころ 「うおっ!?」
がしっと こころの両肩を掴む神子。
神子 「よく来てくれたねぇ~こころぉ~ 話相手になってぇ~!!」
こころ 「 え? 」
神子 「ウチのチームのヤツらぁ 私一人残してみんな下行っちゃうんだもん! ここで一人解説呟く悲しい変人になりたくないの!」
こころ 「 いや お前 変人だろ 」
神子 「お願い そばにいて!」
こころ 「私は、鈴仙の応援をしたいという こいしの「つれ」としてここに来た。」
こいし 「鈴仙さーん がんばってー!」
ちょっと離れたところで鈴仙に声援を送ってる古明地こいし。
こころ 「つまり私は鈴仙サイド。お主の敵だ。」
神子 「あなたとこいしさんの所のチームのヒミツを大声でバらされたくなかったら」
こころ 「コーサンだ。カンネンする。ひとりボッチは寂しいもんな。」
宮ノ内湖の端。信号のあるT字路の近く。T山峠ダウンヒルのスタート地点は、湖にかかる橋の上にある、長い直線の上にある。一輪の指示で、二台の車が並べられる。
鈴仙の白いS15シルビア。
天子の蒼いRX-7 FD。
改めて天子のFDを眺める鈴仙。外装パーツだけでも ほぼすべて付け替えて軽量化 ワイドボディ化している感じだ。 フロントスポイラーを始めとした数々のエアロパーツが装備されている。その中で リトラクダブルヘッドライトだけは変更しなかったのか 誇り高くせり立ち前方を照らしていた。
村紗 「スタートの合図は響子がやる。長いコースだから集中力持たせるのが大変だろうけど、まあ、がんばってこいよ。健闘を祈る。」
鈴仙 「ありがとう。」
天子の方へ歩いていく鈴仙。FDに寄りかかる様に立っていた天子が ひょいと腰をあげ 鈴仙と向き合う。
天子 「とりあえず 逃げずに来たことは褒めてあげる、ウサギさん。でもね、ここが私達のホームコースである以上、簡単に勝てるとは思わないことね。容赦なんてしないわ。ブっ千切ってあげる。」
鈴仙 「・・・承知の上でのバトルです。だけど私は 負けるつもりも 負ける気もありません。せいぜい、「本気」で 走って下さい。」
天子 「ほう・・・ 言うじゃない。じゃあ見せてあげるわ。私の「本気」を。 せいぜい後悔しないことね。」
各自 自分のマシンに乗り込む両者。響子が二台の前に立つ。
響子 「それでは・・・ カウント 始めます!!」
「ブァン ブァン ブァン ブァン ブァン ブァン」
「ブガガガガガガガガガ・・・・・」
天子 「(フン・・・ まあいいわ。すぐにその鼻ッ柱、へし折ってやるんだから。)」
響子 「5ォ! 4! 3! 2ぃ! 1・・・ 」
鈴仙 「(・・・・・。)」
響子 「GOォォっ!!!」
「ファガアアアアアアアアっ ガアアアアアアアアアアア!!!」
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
発車する二台。FDがホイールスピンさせながらも猛烈な加速を見せ、一気に飛び出す。追従するシルビア。
FD先行。二台はそのままトンネルへ突っ込んでいく・・・
ゴール地点付近 レース進捗を把握しながら鈴仙の到着を待つ寅丸星とナズーリン。
寅丸 「スタートの時点ではFDの方が先行です。やっぱりスペック上ではFDの方が上ですし、軽さもあって加速では有利なんでしょう。」
ナズ 「いや、鈴仙後追いは私の指示だ。正直、この手のコースでは慣れてないのに先行はあまりに危険すぎる。」
寅丸 「・・・あとから追い抜く作戦ですか? たしかに序盤よりも後半の方がコーナーも増え、テクニカルにはなりますが。」
ナズ 「まあな。簡単には前に出してもらえないだろうが そのための作戦もある。だが、その前に 前半での「駆け引き」で どこまで出来るか だろうな。」
寅丸 「 えっ? 」
ヘッドライドをギラつかせながら、FDへと肉薄する鈴仙のS15シルビア。
ナズ 「アクセルは踏み抜け。鈴仙。決して手を抜くな。もう バトルは始まっているんだ。」
「ガコッ・・・」
3速から4速へシフトアップする鈴仙。アクセルを踏みぬき、加速へ意識を全集中させながら、目線は目の前のFDのテールから離さない。
鈴仙 「! 速い・・・!」
4速から5速へシフトアップ。メーターは160を超えている。橋上のS字コーナー。構わず突っ込んでいく2台。
神子 「峠のバトル ってヤツは大抵ヘアピンだとかS字だとか タイトなコーナーをいかに速く攻めるかに勝負が行きがちです。」
こころ 「まあな。ストレートでアクセル煽るだけで勝負が決まるんじゃあ面白味もない。」
神子 「コースも そういうバトルが出来るコースが好まれます。速度域はせいぜい40キロあたりから140キロ。180キロのレブに当たることなんてことは そうないんですよ。」
S字を抜け、ストレート。跳ね上がるFDの回転音。
神子 「だけど、この序盤ステージでの天子さんのFDの最高速は210キロを超えます。高速域に慣れてない走り屋を容赦なくケ落とす。それが天子さんのやり方であり、このコースの第一の関門と言えるんですよ。」
コーナーを抜けると長いストレート。舗装もしっかりしたストレートに飛び込むや否や、FDがさらに加速する。
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
鈴仙 「・・・・。」
みるみる離れていくFDのテールを目で追う鈴仙。鈴仙もシルビアのアクセルを踏み込むが 離される。
ナズ 「スタートからの超高速セクション。はっきり言って鈴仙のシルビアに勝ち目はない。あのFDはこのスピードが出やすいT山峠のコースに合わせて高速域で安定して走れるようにセッティングされてるだろうし、鈴仙のシルビアも高速バトルを行うような仕立じゃない。」
寅丸 「そうですよね。でも後半のテクニカルセクションで逆転すればいいんですもんね!」
ナズ 「ああ、だが、私は、あの高速セクションで、鈴仙がFDに後れをとるようだったら、正直 勝ち目はないと思っている。」
寅丸 「 えっ? 」
ナズ 「そういう戦いなんだ。ただ 走りやすい道だからといって ナめてかかると置いて行かれる。相手はその何枚も上を行くんだ。このバトル、前半のせめぎ合いこそが、勝敗を決めると言っていいかもしれない。」
ゆるやかなコーナー。FDの加速が緩む。シルビアが近づく。またストレート。FDの猛加速。再び両車の間が開く。
鈴仙 「・・・・むかついた。そこまで踏み込まなくてもいいだろうに。こんな所で勝負は決まらない、けど、こっちだって馬力は上げてるんだ。置いてかれてたまるか・・・!」
両側に見える山の尾根がだんだんと狭まってくる。二台はトップスピードのまま 宮の内湖の南端へと近づいていく。
神子 「高速区間を抜けた先、急に下りのテクニカルセクションへと突入します。そこの突っ込み方が問題なんですよ。もし、天子さんのFDに追いついていたとしても、考えもなしにFDと同じスピードであのタイトコーナーに突っ込めば オーバースピードで外へ吹っ飛んでいきます。」
こころ「じゃ、じゃあ、間をあけて、自分のペースでコーナーに突っ込めば・・・?」
苦笑いする神子。
神子 「余計 ダメでしょうね。 最高速からいきなり低速セクションへ突入するんですよ? 慣れていなければ 頭でわかっていても 突っ込み方がわからない。安全マージンをとって大きく速度を落とすのが定石でしょうが、それではコースを極めた天子さんに突き放されてしまうんです。」
こころ「うっ・・・ それは厳しいな・・・」
神子 「あそこで突き放されたら あとから挽回するのは難しい・・・。あそこのブレーキング勝負で天子さんについていけなかったら 勝ち目はありませんよ。」
「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」
いよいよ南端に迫り、二台はT山峠と書かれたバス停付近へと近づく。このバス停付近を過ぎると、平坦な超高速区間が終わり、道は一気に下り坂になる。
鈴仙 「(もう高速区間は終わり!下りコーナーへの突っ込みがカギなのはわかってるんだ!逃がすものか!)」
レミ 「来るわよ・・・」
下り勾配区間に入ってからのタイト右コーナー。その脇には 十六夜咲夜とレミリア・スカーレットが観戦している。FDとシルビアは甲高いエキゾーストが もうすぐそこまで迫っている。
高速で手前のコーナーから飛び出す二台。シルビアは追いすがっているが 車体二つ分ぐらい間が開いている。
鈴仙 「まだ踏まない!? どこだポイントは!?」
視界の下を バス停付近の横断歩道が猛スピードで通過する。両側崖の 下りはじめの緩やかな左コーナー。FDはパッとテールライトだけ光らせるが そうスピードを落とさず突っ込む。
「ファガアアアアアアアアアアアアア」
かまわず できるだけ速度を落とさず左コーナーへ突っ込む鈴仙。 FDは次の右タイトコーナーとのわずかな合間 短いストレートで急制動。FDのテールランプが 鈴仙の眼前に飛び込む。
鈴仙 「くっそおぉぉぉおおおお!!」
FDのケツへと飛びこんでいくシルビア。一気に距離を詰める。
鈴仙 「死ぬ気で突っ込め!!」
シルビアのブレーキング。からのコーナーリング。くるんと素直に ベストラインを外さず曲がったFDに対し、シルビアはやや外に振り気味。
「キャキャキャキャキャキャ!!」
だが ケツが少し振り出し気味の状態から 鈴仙は決して破綻させない。アクセルワークを調整して 車を 前へ 前へ出す。次 左のU字コーナー。FDに喰らいついたまま、シルビアも追従してコーナーへ飛び込んでいく。
「バガアアアアアアアアアア!!!」
「キャキャキャキャキャキャキャキャキャ・・・」
スキール音とタイヤ臭を残して、あっという間に二台は咲夜達の前から姿を消してしまった。まだ二台が走る音は聞こえるが それもすぐに遠くなってゆく・・・
レミ 「少し アナタの言っていたことが分かったような気がするわ。」
咲夜 「 と 言うと? 」
レミ 「あのFD、速い。完成された速さってモンを持ってる。でも、あの後追いのシルビアはまるで「不完全」ね・・・・。」
咲夜の口元が ニタリと笑った。
レミ 「 不完全なのに 貪欲に相手に喰らいつく狂気を感じる。あれは、化けるわ。速くなるわね。もっと。」
闇を見つめるレミリアの瞳が 険しくなる。
レミ 「おそらく アイツ まだまだ何かしでかすわよ。」
寅丸 「今 報告が入りました! 高速コーナーの終わり 天子さんのFD先行で、二台続けてクリアしていったようです!」
ナズ 「よーし、よしよし。ここまでは上々だな。」
寅丸 「え、大丈夫なんですか? さっき 勝負のカギは前半にあるって・・・」
ナズ 「いや、ついていけてされいれば 十分それでいーんだついていけてれば。もし、鈴仙のやる気スイッチがOFFになってたらどーしたもんかと思ってたが。さて、こっからだな。」
寅丸 「コースはシケインみたいにウネウネうねっていますが、この先も基本高速コースです。鈴仙さん、大丈夫でしょうか?」
ナズ 「今はついていけてればいい・・・ 向こうのペースの乱れが出るとすれば後半だ。だが、そのチャンスを掴むには 常にいい位置にいないとダメなんだ。気おくれしているようでは このバトル 勝てないぞ。」
かなり下り勾配のついた シケインのようなクネクネ道。カードレールを掠めるかのように ギリギリのラインで疾駆していく 天子の蒼いFD。 追うシルビア。 要所 要所でシルビアの動きをトレースし しっかりグリップポイントを押さえて追従する。
だがしかし 詰め切れきれていない。
「バガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
鈴仙 「(プレッシャー掛けたいのに、どうしても車体一つ分 間があく・・・ くそ、互角なのか、追い切れてないのか!? あせるな これ以上差をつけられないよう 集中しろ・・・!)」
シケインのようなうねりから、一気に飛び出す二台。 勾配は急なまま 少し短いストレート。その先にゆるい左コーナー。
「ファガアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
スピードをほとんど殺さず 猛然とコーナーへ突っ込んでいくFD。一歩出遅れるシルビア。
鈴仙 「くっ・・・!?」
内心ビビリながらも なんとかほぼ同じ速度でコーナーをクリアしていく鈴仙のシルビア。間は空いたが、まだFDのテールランプを眼前に捉え続けている。
「キアアアアアアアアア」
次の右コーナーは速度が乗る分きつく感じるが それでも十分高速コーナーだ。そのままの速度で突っ込むFD。シルビアも続く。
天子 「コーナーを「速く」曲がる。」
少しストレートがあって 再びS字。天子のFDが 踊る様に左コーナーへと吸い込まれていく。
天子 「常人では理解できない領域で コーナーを速く 曲がる。 それを「狂気」という言葉で片づけてしまえば簡単なのだろうけど、私はそうは思わない。私がそこまで速く突っ込めるのも アイツが速く抜けられるのも ワケがある。」
追従するシルビア。S字コーナーを抜けても天子のFDからそう離れてない。車体一つ分ほど間を開けながら 次の緩やかなコーナーへと入っていく。
天子 「どこまで攻め込んだとしても 車はタイヤのグリップの限界には抗えない。だけど、本当に、タイヤの限界領域を引き出しているかどうかは話が別よ。」
その先にあるのは少し長いストレートなので FDとの差はさらにドバっと広がった。しかし、その先はタイトな左コーナーからのS字。
ブレーキング。FDに再びシルビアが追いすがる。
鈴仙 「(まだ決しておいていかれてる訳じゃないけど・・・ 完全に引っぱってもらえてるからついていけてるだけだ! 気を抜いたらおいてかれる!!)」
モブ 「やっべーっ! ついてってるよあのシルビア!!」
モブ 「あの天子さんが、このコースでここまで追い込まれたことなんてなかったぜ・・・!」
モブ 「でもあれ何とかついてけてるだけだろ? 後半失速すんじゃねーの?」
モブ 「天子さんのFDは格別だからな 前突っ走られたら普通追いつけねえよ・・・ ましてや抜かすだなんて ムリダナ(・×・」
神子 「天子さんのFDの何がすごいか というと 馬力をあげつつトータルバランスを重視してチューニングを行っていること なおかつ それがこのコースの特性に合っている ってことでしょうね。」
こころ「やはりあのFD相当いじってるのか。あのエアロ、あめみ・・・某ロータリー車専門チューンメーカーのエアロ、一式つけてるんじゃねえか?」
神子 「まあ つけて終わり って訳じゃなかったですけど。天子さんワガママですからね。あーでもないこーでもない って四六時中いじり回してますよ今でも。」
こころ「パワーも凄そうだもんな。」
神子 「普通にターボ関係全部入れ替えましたからね。社外のシングルタービンのターボキットに付け替えて 高回転域での馬力強化。だいたい450馬力ぐらいでてるとか。」
こころ「またそりゃ。でも シングルタービンにすると立ち上がり少し遅くなる って聞いたけど・・・」
神子 「まあたしかに ヘアピンみたいにオーバーに速度落とすトコロじゃ立ち上がり遅いでしょうけど。だけど、このコースに限ってはその弱点も 弱点にはならないでしょう・・・。」
ほくそ笑む神子。
神子 「ヘアピンらしいヘアピンがないんですよ。このコースには。一度前に出てしまったら あとは踏みっぱなし。天子さんが前へ出てしまったら あとは突っ走るだけです。」
鈴仙 「すこし前までは ほんの少し前までは 車の音を聞くだけで満足していた。」
鈴仙 「珍しい車を見るだけで 素晴らしい車が全力疾走しているだけで興奮していた ところがどうだ?」
鈴仙 「アクセルを踏まずにはいられない。追いかけずにはいられない。何の・・・何の為に?」
鈴仙 「飢えている・・・ 一体 何で?」
鈴仙 「 今 私は何を求めている? 」
「ファガアアアアアアアアアアアアアアアア」
下り勾配のきつい左コーナーをぬけていく二台。ストレートに突入し、またFDの速度が跳ね上がる。
鈴仙 「アクセルを ぬいた方がいいんじゃないのか 」
ストレートの後は緩い右コーナーのあと きつい左コーナーだ。
鈴仙 「もっと速度を落とさないと 次のコーナーですっ飛んでいくんじゃないのか 」
FDを追走する鈴仙に 不安がよぎる。
鈴仙 「ここで無理をしなくても 後半のタイトコーナーで追いつけるんじゃないのか・・・!?」
「ファガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
鈴仙 「 だめだ。 」
一瞬、鈴仙の脳裏に映るフラッシュバック。トンネル内で、黒いR32にプッシュされるS15。そして、銀色のFCを追い抜き、前へ出るS15。
鈴仙 「これは バトルなんだ。アクセルは 抜かない。それに ついていけなかったら「あの作戦」は使えない。離されないだけでいい。意地でも食らいつく!!」
きつい左。FDに追従する鈴仙のシルビア。間はだいだい車一台分。INへ突っ込んでいくFD。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
追従するシルビアはややラインが膨らむ。だがしかし 踏みとどまってFDを捉え続ける。
「バガアアアアアアアアッ ガアアアアアアアアアッ!!」
次の なだらかな下りのS字カーブへと差し掛かる二台。
天子 「こいつ・・・追いかけてきてる! 追いついてきてる! 私のツッコミを見て 合わせてきてる!」
コーナー出口から立ち上がってストレート。その先は右のブラインドコーナー。入口からは見えないが 途中から急な下り勾配が付くタイトコーナーだ。
立ち上がりからストレート。コーナーに備え踏み切れてないFDに シルビアが迫る。
天子 「くっ!」
FD先行で右コーナーへ突っ込む。シルビアはほぼ真後ろ。右コーナーを抜けると 急な下りのままでストレート。その奥には左のタイトコーナー。落ちるように加速しながら、2台に聳え立つ崖が迫る。
ブレーキング。FDにつんのめるように迫るシルビア。
「キアアアアアアアアアア」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
立ち上がり 追いすがるシルビア。短いストレートで FDの尻に喰らいつく。
天子 「 ! 」
その先にある左コーナー。くの字型のこのちょっとしたコーナーは 普通に通りすぎる分にはそんな大したことのない曲がりだ。
だが シルビアを意識し INをとることに固執した天子は ここでラインを少しタイトに取り過ぎた。
「くんっ」 「キュキキィッ キッ」
天子 「 !? 」
「キュガアアアアアアアアアアアアア!!」
右へケツが流れるFD。天子はすぐ立て直す。速度は大きく落ちてない。シルビアとの差に変化はない。
しかし、鈴仙ははっきりと感じていた。これはミスであると。
鈴仙 「・・・今、少し、滑らせた・・・!」
ブレッシャーをかけ続けた効果を感じた鈴仙。しかし、次のストレートの先の右コーナー。高速で下りへ向かうコーナーでFDは車幅中央に陣取り、シルビアに抜かせるスキを与えない。
「ファガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
コーナーを抜けるとストレートの下り。そして上り。その先には、再び崖が迫る左タイトコーナー。
ブレーキング。今度はIN側を占めるFD。シルビアはアウト側から肉薄するが、入り込むほど攻め切れない。
鈴仙 「 入れない! 」
立ち上がり。一気に加速するFDに 鈴仙のシルビアも負けじと追走する。
寅丸 「報告入りました。FD先行シルビア後追いのまま、コース中盤地点を過ぎたようです。」
ナズ 「なるほど。ついていけてるようだな。」
ゴール地点付近。鈴仙達の到着を待つ寅丸星たち。
寅丸 「しかし、いくらついていけてても、抜かせないと勝ちにはなりません。その上、ストレートでは抑えられるし、コーナーでは抜く余裕がないこのバトル、やはり勝てないんじゃあ・・・」
ナズ 「果たしてそうかな?」
寅丸 「え?」
ナズ 「ゴールの近く・・・ 最終のロングストレートに入るコーナーの出口の地点、そこで並ぶことができれば、鈴仙にも勝機がある。」
寅丸 「で、でも仮にコーナーでドンズメまで詰めていたとしても、ラインを譲られでもしない限り、頭ねじ込むことすらーー」
ナズ 「それが、できるんだよなあ・・・ 実は鈴仙にはもう教えてあるんだ。最終盤、ロングストレートに入る立ち上がり、そこで頭を取れればこちらの勝ちだ。」
寅丸 「な、何のこと言ってるんです?あんなとこ、何もーー」
ナズ 「ポイントは、ライン。その手前のS字カーブのラインなんだ。先行する車をブチ抜くための地元スペシャルのラインが このT山峠には ある。」
鈴仙 「・・・わかってはいたことだけど そう簡単に前へは出してもらえないか・・・。」
鬱蒼とした木々に囲まれたストレート。続く左への高速コーナーをFDが駆けていく。FDのテールランプを睨みつける鈴仙。
鈴仙 「仕方ない・・・ 「 アレ 」やるか・・・!」
その先の右高速コーナー。FDに続き猛スピードでコーナーへ侵入するシルビア。
鈴仙 「聞いた時には正直ムチャクチャだと思ったけど・・・ もう、アレにかけるしかない!」
その先、すこしストレートがあって その先に見通しの悪いS字コーナーがある。
その手前側の右コーナーだけ一瞬下り。シルビアが FDのケツに張り付く。
ナズ 「 「アレ」をやるには、手前のS字コーナーで ベストラインよりも一気にINに切り込む必要がある。つまり、一度仕掛けたらもう修正は効かない。失敗すれば縁石とキスだが・・・」
次の上りの左コーナー。
シルビアのノーズがFDの真後ろから逸れ 左へ IN側へ切り込み始める。
ナズ 「「狭き道から入れ。走りに至る道は狭く その道は険しい。」 鈴仙ならば あの狭いコースを突っ切れる 腕がある。」
後続のマシンのライトが横に逸れていくのを感じる天子。
天子 「(ここに来てベストラインを外す!? な、一体何を考えて・・・!?)」
そのままINに向け 真っ直ぐ突っ込んでいくシルビア。回転音が上がる。
「バギャアアアアアアアアアアアアア!!!」
鈴仙 「ここ!!」
天子 「馬鹿な!?その先は歩道・・・いや、違う!?」
天子の視線が 歩道の縁石がぷっつりと切れてるのを捉える。
脇に逸れていくシルビアのライトが、チルノ一行の姿を照らす
大妖精 「いっ!!?」
チルノ 「こっち見てるぞおおおお!?」
ルーミア「死ぬのかーー。」
そのまま右に逸れ続け、加速するシルビア。
天子 「しまった。そこはーーー」
チルノ達が立ち尽くす 島状のコンクリの分離帯。その両側はたしかにアスファルト。
大妖精 「あ・・・あ・・・あ・・・・」
身動きもとれず、パーフェクトフリーズ状態のチルノ達の 両脇を シルビアとFDがフル加速で通過する。
天子 「バス、停留所ーーー!!」
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
猛スピードでバス亭のスペースを通過するシルビア。
大妖精 「ひううっ・・・・!」
遅れてくる風圧。風で煽られるように、大妖精はぺたんと座り込んだ。
天子 「なっ・・・並ばれたっ・・・!しまった!?ブーストがっ!?」
天子の目の前にあるのは、最終版のロングストレート。FDは再度ベタ踏みフル加速するが、ターボラグが出て一歩出遅れる。
天子 「負けない!抜かせない!前へ出させない!!」
ナズ 「・・・もう一つ。 あそこでバス亭のスペースを走るのは、相手の意表を突き、鼻ズラをねじ込ませる という効果もあるけど、もう一つ 大事な理由があるんだ。」
寅丸 「へっ?」
ナズ 「 路面さ。 あまり車が通らないバス亭のアスファルトは 痛みが少なく修理されてない。古いザラザラのアスファルトがそのまま残ってるのさ。フル加速するシルビアのタイヤが 抵抗のデカいデコボコの路面とかみ合えば・・・」
「バガアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ナズ 「 一気に ロケットのように加速する! 」
弾け飛ぶかのようにバス停のスペースから踊りでるシルビア。思わずアクセルを緩め左へ逸れるFD。IN側を抑え、ボディ先端がわずかにFDよりも前へ出る。
天子 「嘘でしょ!?」
長いストレート。出遅れたFDを威圧するかのように シルビアがじりじりと前へ出る。
「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ファガアアアアアアアアアアアアアアア!!」
天子 「!・・・・!!」
ストレートの終わりは 左のタイトコーナー。ブレーキング。鈴仙のシルビアの方がアウト側だったが、先にブレーキングポイントに達したのはシルビアだった。
「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」
そのままコーナーへ滑り込んでいくシルビア。FDはあっけなくシルビアに先行を明け渡す。
寅丸 「まさか、そんなことが・・・!」
ナズ 「本線のアスファルトがキレイに打ち直されてるからなおさらだな。ま、こういうことが出来なきゃ、勝てる相手じゃなかった ってことなんだけど。」
「キアアアアアアアア!!」
「ファガアアアアアア ガアアアアアアアア!!」
少しストレートがあって その先はタイトなS字コーナー。FDが シルビアのケツに張り付き、思いっきりプレッシャーを掛けながらコーナーを通過する。
だが もうどうすることもできなかった。
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!」
そのまま 先にゴールラインを通過するシルビア。
「ファアアアアアアアン アンンンンンンン・・・・・」
ナズ 「勝ちは勝ちさ。 さあ、 ヒルクライムの用意をしようか。」
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あれは 確か 衣玖と初めて 走った夜。
私は 全て理解できなかった。T山峠の下りで 私は完全に置いてかれた。
車がどうとか そんな話じゃなかった。あっという間に消えた。
その後 私は 暗闇の中を 延々と走り続けた。
天子 「バッカじゃないの?」
やっとゴールまで走り切り、衣玖のインテグラの後ろに車を並べる天子。
衣玖 「前半で勝負きまっちゃいましたね。」
天子 「だったらアクセル緩めればいいじゃないの!あんなトばす必要ないでしょ。あんた一体何の為に走り屋続けてるのよ?」
衣玖 「 何の為? 」
天子 「そうよ。目的よ。あんたがずっと走ってるのは知ってるけど イマ一つ名は売れてない。 なのに こんなどうでもいい勝負でも全開でトばす。野望もなければ、チームの為に走ってる訳でもない。 あなた 一体何が目的で 走り屋やってるの? 」
衣玖 「フフフ 目的 目的とはねえ・・・」
ほくそ笑む衣玖。
衣玖 「極論してしまうならば 総領事様、我々に「目的」など存在しないのですよ。
ただ、走ってるヤツがいれば後を追う、ミラーにライトが写れば地の底までアクセルを踏み込む。 相手が誰だろうが どうなろうが 知ったこっちゃない。」
天子に構わず 言葉を繋ぐ衣玖。
衣玖 「ただ 競走の為に。狂走の歓喜を無限に味わう為に。次の 次の狂走の為に。チームの願い?野望?己の夢? いいえ、いくら峠で速く走ろうが イキようが そんなもの かなえられる訳ないんですよ。
逆に言えば 何の変哲もない「追いかけっこ」が 私達にとっては命を懸けるのに事足りてしまうんですよ。そう・・・」
天子に 微笑みかける衣玖。 その表情はどこか悲し気であったが その瞳だけは怪しく赤く輝いていた。
衣玖 「 私達は 存外そういう 「愚かな人々」 なのですよ。 」
FDから降りる天子。白いS15シルビアの傍らに 鈴仙が佇み 自分を待っているのが見える。
少し頭をかき、鈴仙の方へと歩き寄る天子。
天子 「・・・負けたわ。 言い訳はしないつもり。あの無茶も あそこまでカンペキにやられちゃ 責める気もおきないわ。アンタ・・・。」
鈴仙の顔を じっと 睨みつける天子。
天子 「一つだけ聞かせて。もし あそこで「散って」いたら、どうするつもりだったの?」
散る。それは走り屋達での隠語で、事故を起こすことを意味する。 鈴仙の追い抜きコースは 天子からしてみても かなり無茶苦茶なコースであった。
鈴仙 「実は、自分もやる前は いろいろと怖かったですよ。でも、いざとなってみると なんか どうでもよくなったんです。」
天子 「・・・随分と無責任な発言ね。」
鈴仙 「そうかもしれませんね。 でも 行きたい と思ってしまったんですよ。
リスクとかいろいろひっくるめて でも行ける 行きたい そう思ったら アクセルを踏む。走りって 案外そういう単純なもんなんじゃないかな って。」
天子 「・・・・え?」
鈴仙 「ようやく 分かり始めてきたんですよ。ずっと 不思議で仕方なかったんです。私には 何か本気で超えたい目標がある訳でも 特別速い自信もなかった。 こんな私が走り続けていいんだろうかって。
でも 多分 走る理由ってのは もうちょっと単純でいいような気がしてきたんです。」
天子 「・・・・!」
鈴仙 「 私は 走るのが好き。 ただ 走り続けたい。 勝っても 負けても 死んでも。 もう それだけでいいんじゃないかなって。」
唖然とする天子。気を取り直し 天子が次の言葉を繋ぐまで しばらく間があった。
天子 「・・・そう。あなたは そっちっ側へ イっちゃったってことね。」
鈴仙 「 ? 」
天子 「なんでもないわ。」
踵を返し 自分の車の方へと歩き始める天子。
天子 「楽しかったわ。今日のバトル。また今度、ウデを上げたら 挑ませてもらうわ。」
一方 バス亭 チルノ御一行。
大妖精 「あ・・・あは あはは・・・・」
チルノ 「す・・・ すごい!鈴仙!まさかこのバス亭につっこんでくるなんて!」
ルーミア「そーなのかー」
チルノ 「それよりすごいのはあたい達よね!?だって、文字通りレースのど真ん中で観戦できたんだから!ん?ちょっと違うかな?とにかく、猛スピードでレース中の2台の真ん中で観戦したなんて話、聞いたことないし!あたい達さいきょーー!!」
大妖精 「あは あは あは」
ルーミア「一人耐えられていないのかー 大妖精が壊れかけなのかー。大ちゃん、気をしっかりもつのだー。」
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モブ 「オイオイオイ、天子負けたぜ。」
モブ 「どうなってんだよ 地元チームが新参に負けたってのか?」
モブ 「これ 次のヒルクライムあるのかな・・・? もうメンツは潰されちまった訳だろ?」
モブ 「ざわ・・・ ざわ・・・」
屠自古「(確かに・・・。ここのダウンヒル最速を名乗り、チームリーダーでもある天子が負けたんだ。ヒルクライムで勝っても意味はない。意味は。)」
険しい表情で視線をセイガに移し、問いかける屠自古。
屠自古「どうする?この状況でヒルクライムやってもただの消化試合だ。気分が乗らないなら降りても」
青娥 「あら、わたくし、もう交流戦の勝敗が決まっていたとしても 次のバトルを降りるつもりなんてありませんわ。」
即答する青娥。
屠自古「(だろうな。チームだの交流戦だの体裁を作った所で 案外こういうバカしかいないんだ。・・・ホント走ることしか頭にないヤツらしか。)
青娥 「ワタクシ、是非とも教えなければ と思いますの。」
暗闇の中、自分のマシンへと向かう青娥。その表情は 相変わらず怪しい微笑みを湛えていた。
青娥 「 あの車に乗るということが どういうことなのかを。 」
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チルノ 「イクサに臨むハシリヤにとって アイサツとは神聖不可侵な行為。アイサツはされれば 返さねばならない。」
布戸 「アイエエエエ!ハシリヤ!ハシリヤナンデ!?」
ルーミア「次回「 SENN WO KOETE 」」
チルノ 「草木も眠るウシミツアワー。荘厳なる鳥居は 壮絶なイクサの 開始点と化す・・・!!!」