東方頭文字D外伝 峠の白兎 --Rabbits dream of becoming HASHIRIYA-- 作:Atno108
第一シリーズ というものがあるとするならば 丁度話のキリがいいと思うのでここで話を閉めたいと思います。
思えば長々とした話になってしまいました。全部読んでくださった方がいたら ホントありがとうございます。ご愛読 ありがとうございました。
「たしかに 私は道に迷いました。私の魂は闇の中を彷徨い、飢えを覚え、求める物も分からず、底知れぬ暗黒の奥へと突き進んでいったのです。」
「しかし 私は恐れることを知りません。我が国籍は峠に在り、我が魂は走りによって生かされることを知っているからです。」
「主は言われました。『走りに依らずして 成ったものはない』と。私は速さと共にあり、我が速さは私と共にあります。ああ だがしかし、私は見てみたかった。あの先を。あの速さの先を。」
「だから 私はこう祈ることしかできません。 願わくば あなた方に「幸せ」がありますように。そして 」
「 速さと 共に あらんことを。 」
この作品は東方二次創作作品です。
キャラ崩壊、設定崩壊等にご注意願います。
この作品は作者の妄想で出来ています。
素人並みのクルマの知識、誤った情報等にご注意願います。
この物語はフィクションであり、
登場する人物・地名・団体名はすべて架空のものです。
車の運転は交通ルールを守り、
ゆっくり安全運転を心がけましょう。
モブ 「猿岸林道のチームがやられたようだな。」
モブ 「しょせん、あんなトコロK県の入口。」
モブ 「我ら函根の走り屋に比べたら」
幽香 「黙れザコ共。私のNSXドリフト同乗に付き合わされたくなかったら黙ってろ。」
モブ 「「「 ギャー! 」」」「「「 アリガトウゴザイマス!」」」
尾長峠 ダウンヒルドライバー 風見 幽香。
萃香 「ギャハハハ!! 来るわ!! ヤツラが!! 祭りになるわ!!」
カヤの湖スカイライン エースドライバー 伊吹 萃香。
ヤマメ 「キシッ キシシシシ!! いよいよだ・・・ ああ 楽しみだ、楽しみが増えるゥー!!」
元サザンカ峠 ダウンヒルドライバー 黒谷 ヤマメ。
お空 「パワー・・・ パワー・・・」
箱南峠 ヒルクライムドライバー 霊烏路 空。
勇儀 「オウオウ。 完全にみんな 気合入っちゃってるねえー。まだ 「ヤマビツ峠」で返り討ちにできるかもしれないのに。」
尾長峠 ヒルクライムドライバー 星熊 勇儀。
幽香 「そういえば、「ツブシ」、あそこは成功してるのよね。次、霊夢達とのバトルになるのは あそこかしら。」
勇儀 「イんや、おそらくD坂道の方が先になるんじゃないかな?っつう話だ。」
幽香 「D坂道?あんなトコチームなんてあった?」
勇儀 「最近できたんじゃないかな。」
幽香 「あそこには まだツブシいれてないわよね?」
勇儀 「近いうちに入れるだろうよ。さとり としちゃ 是非とも有効利用したいだろうからな・・・」
遠くを見据える 星熊 勇儀。
勇儀 「最近ウチに入ってきた・・・ 元D坂道のエース 西行寺 幽々子を。」
D坂道。寅丸星達が集まるコンビニに 今日は3台の車が乗り付けた。
一台は 黄色いHT81Sスイスポ 古明地こいしの車だ。だがこの日は 姉 古明地さとり を 助手席に乗せてきていた。
さとり 「 ・・・・。」
続いて入ってきた一台は 車体黒色で朱色のハードトップになっている NAロードスター。ドライバーは火焔猫 燐 だ。
そして もう一台は 西行寺幽々子のマシン パープルメタリックの33GTR スカイライン。
レティ 「な・・・ なんで 今更・・・!」
幽々子 「久しぶりね レティ。せっかくだから、ここでまた走りたいんだけどー」
穏やかながらも 威圧的な目で 星達 メンバーを見据える幽々子。
幽々子 「あなたのお仲間と、バトルさせてもらえないかしら?」
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第十二話 「 BREAKER 」
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太子 「・・・函根の同盟軍が 博麗霊夢達の侵攻に対し対策を打っていることは 前々から把握していました。」
屠自古 「それが 県下の弱いチームをバトルで負かし 隷属化させて そこのスポットに自分らの速いドライバーを配置して 守りを固めりゃいいって作戦か。随分と高慢な考え方だな。」
太子 「そもそも函根の連合チームというのが そういう考えのもと発展してきたんですよ。自分らと親しい人間をリーダー派遣して みんな仲良く 速いヤツがいるなら這いあがってくればいい。ドライバーの適正によってコースを割り振ってもいいし 効率的ではありますよ。」
天子 「この動き自体が周辺チームを刺激し 全体的なレベルアップにも繋がる・・・ 事実、「黒翼の怪鳥」が復活した。ウチらのチームに手を出さなかったのは何故なの?」
衣玖 「それだけ我々の腕を買っていた ということでしょう。とにかく速いヤツを並べればいいんですからね。そう考えると 負けてしまったのがちょっと申し訳ないですね。」
太子 「それよりも気になるのは、八雲 藍の動向です。」
衣玖 「・・・・。」
青娥 「あのバトルの後・・・八雲藍のチームは解散、いえ、崩壊しましたわ。 もともと藍のカリスマで成り立っていたチーム、ということもあるんですけど、八雲藍自身があの後、公の活動をしていませんの。」
屠自古 「目撃者の話だと・・・ どうやら一人で毎夜あらゆる峠を走り回っているようです。シロウト目にもわかる、危険なオーラを出しながら爆走している、と。」
青娥 「悪い噂を聞きますわ・・・ あれは、何かに取り憑かれたようだとも。何か しでかさなければいいのですが。」
屠自古 「申し訳ありません。仮に我々の手数すべて使っても、完全に動向を掴むことは・・・何しろ峠は広大ですから。」
太子 「いいえ、かまいません。無理に追う必要はありません。」
衣玖 「ただ・・・バトルが行われる日だけは 動向に注意してください。まあ、何もなければいいんですけど、ね・・・」
さとり 「ハイ ドーモ。函根のほうでチームまとめたりとかなんかしてるさとりんです。なんつって。ワタシ自身はギスギスしたのいやなんで みんな楽しくバトルしましょー。 HAHAHA。」
こいし 「んもー。おねえちゃん ウケてないよ。HAHAHA。」
村紗 「( ノリが 軽いっ )」
一輪 「(え? この人があの函根のまとめ役?)」
寅丸 「(もうちょっとヤバそうなヤツが出てくると思った。)」
鈴仙 「そか こいしちゃんて函根のチームの人だったんだ。」
こいし 「うん。ごめんね鈴仙おねえちゃん。K県でのバトルのレベルを上げるために これは必要なことなんだって。」
鈴仙 「うん。わかってる。走り屋として出会った以上、どっかでヤり合う可能性はゼロではないもの。気にしないで。」
こいし 「鈴仙おねえちゃんならそう言うと思ったよ。」
橙 「鈴仙さんも随分と有名になりましたねー。いつの間にか函根のチームの人と知り合いになってたんですか」
村紗 「うおっ!?橙?戻ってきてたのか。」
鈴仙 「あれっ 橙ちゃん?」
橙 「ご無沙汰です。ちょっと訳あって顔出せなかったんですけど、またしばらくこっちのチームにお邪魔しようと思います。」
てゐ 「じーー」
ナズ 「(あ そっか。藍のチームは潰れたから・・・。)」
てゐ 「鈴仙もモテモテだねえ。いつの間にか随分とファン付いてない?」
鈴仙 「 ・・・速くなれば 人との付き合い方がわかるんだ。私としては ただ 走るだけよ。」
こいし 「で、お姉ちゃん、この人が鈴仙さんだよ。」
さとり 「鈴仙・優曇華院・イナバ。なるほど。あなたが「狂気の白兎」ですか。」
鈴仙 「んっ? えっ? なにそれ?」
ナズ 「最近 鈴仙についた二つ名だよ。「狂気の白兎」。ホラ、この前交流戦でけっこう無茶やったから。」
鈴仙 「 ・・・・・。 もうちょっとカッコイイ二つ名の方がうれしかった。「インデジブル フルムーン」とか「ルナティック レッドアイズ」だとか。」
ナズ 「 ・・・えっ? 」
てゐ 「ごめんなさいこの子こういう子なんです。」
鈴仙 「そっか。あの勝負で勝ったから それなりには有名になったのか。じゃあてゐの名前も有名になったのかな?」
さとり 「てイ さん?」
こいし 「ホラ、ヒルクライムの方走った あのウワサの因幡てゐさん。」
てゐ 「フフン。」
さとり 「ヒルクライムの因幡てゐ? ああ、あのーー」
さとり 「交流戦でエンストかましたって伝説の。」
こいし 「うん。スタートで 2回もエンストさせたって 伝説の。」
てゐ 「ガクッ グサッ」
こいし&さとり 「「 あの有名な「エンストの」」」
てゐ 「ちょっと待って!? ナンデ!? なんでそこだけ話広がってるの!?」
ナズ 「いや~。だってあれは そりゃ話広がるだろうな って。ププッ 」
てゐ 「チクショー!」
ナズ 「それで やり合ってみて 勝った方がD坂道の代表として 霊夢達をここで迎え打とう って話かい?」
寅丸 「えっ ちょっと」
さとり 「話が早くて助かるわね。もうちょっと嫌がるかと思ったけど。」
ナズ 「速い方がより速いヤツと戦う。自明の理じゃないか。まあ、ウチらとしては 当然自分達の方が速いと思ってるわけだが。」
さとり 「ほう・・・?」
寅丸 「まあまあ。 そ、そしたらプラクティスやって 来週あたり交流戦ですかね?」
幽々子 「それには及ばないわ。ここは私の元ホームコースだもの コースはよく知ってるわ。今すぐにでも始めましょう? わざわざ先に連絡いれて こうして集まってもらったんだもの。バトルになる可能性も考えてたはずでしょう?」
寅丸 「(まあ。たしかにそりゃそうだけど。)」
ナズ 「(こいつら 相当あせってるな・・・ 無理もない。おそらく猿岸林道の次に霊夢達が手を付けるとすれば ここだろうしな・・・。)」
ナズ 「鈴仙。やれるか?」
鈴仙の方に目線を送るナズーリン。目をギラつかせながら それに答える鈴仙。
鈴仙 「・・・当然。こういう時の為に 私は練習を積んできたんだ。ヤるなら すぐにでも出れますよ。」
ナズ 「(・・・やる気があるのは結構だが、そのうち自制することを教えた方がよさそうだな。このままじゃ闇落ちしそうだ。)」
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二里塚の駐車場の前の すこし長いストレート。鈴仙の白いS15シルビアと 西行寺幽々子の紫色の33GTRスカイラインが 横に並べられる。
幽々子 「やるのは、こっから東行きね。よく走った区間だから覚えてるわ。バトルにはぴったりなんじゃないかしら。」
さとり 「なつかしいのかしら。このコースであの33Rで攻めてただなんて よくやるわね。」
幽々子 「この車は 踏んだ方が安定するんですよ。 この車は ここのコースに合う。 その思いがあったからこそ ここまで踏んでこれたんですよ。」
S15シルビアもそこそこ長めのクーペであるが、33GTRスカイラインはそれよりも長く デカイ。横に並べただけでもその機体から溢れ出すオーラで威圧されそうなほどである。
「ファガアアアン ガアアアアン」
響子 「カウントぉ! 始めます! 5ォ! 4! 3! 2! 1!」
「ヴワアアアアン ガアアアアン」
響子 「GOおぉ!!」
「ファガアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ガアアアアアアアアアアッ バガアアアアアアアアアア!!!」
出走する二台。勢いよく飛び出すS15。一方の33Rは、出だしこそ飛び出すような加速を見せたが、その後マトモにアクセルを踏まない。スローテンポになった33Rの横から S15が前へ出る。
鈴仙 「(先行け ってことか。まあ、可能性は高いと思ってたけど そういうことなら・・・)」
「ファガアアアアアアアアアアアアアア!!!」
S15先行。コーナーの先へ テールライトが消えていくのを見送る寅丸星達一行。
ナズ 「そうか・・・ 西行寺 幽々子が後追いか・・・ 鈴仙の実力を見たがるだろうから おそらく後追いを選ぶだろうとは思ってたが、これで一つ、こちらにツキが回ってきたな。」
寅丸 「でも、油断はできません。おそらくこの戦い方、後方から走り方を見て、隙をついて追い抜く算段なのでしょう・・・」
ナズ 「そうさ。あの33Rなら、それだけのこと、いつでもできる。西行寺幽々子はあの33Rを思い通りに操ることが出来、その上このコースも走り慣れている。はっきり言ってつけ入るスキはほとんどないだろう。だが完璧であればあるほど どこかしら油断は生まれるもんだ。」
ナズーリンの瞳が細まる。
ナズ 「このバトルの肝は、その油断をエゲツないほどに突く。そこにかかってるんだ。」
緩やかか左コーナーを抜け 右タイトコーナーからのS字コーナーへ突っ込んでいく二台。先行するシルビアのブレーキングに合わせ、33Rが後ろにはり付いたまま減速する。
「ファガアアアアアアア」
「ガアアアアアアアアアアア」
響子 「スカイライン ってのもスゴイですけど 33GTRってのもまた珍しいですよね。あんな大きな車体を峠で走らせるだなんて・・・33Rにこだわりがあるんでしょうか?」
ナズ 「33にこだわってるだろうねえ・・・ まあ、普通に考えたら 33ってのは峠じゃありえねえ選択だしな。」
「ファガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
鈴仙のシルビア先行のままS字コーナーから飛び出す二台。立ち上がりの時点で 馬力のある33Rがシルビアのリアに接近する。
幽々子 「・・・・・。」
ナズ 「元来 33GTRってのは サーキット それもフジやスズカのような大きめのサーキットで存分に暴れさせることができるよう開発された車だ。 最高速と 中高速コーナーでの安定性をできる限り高めた一方で 小さいコーナーでの回頭性は犠牲になった。サイドターンやドリフトもまず出来ないし、ヘアピンでの操作性については最悪だと思うよ。
だからといって33Rが峠で絶対的に不利かというと 私はそうは思わない。どんなセオリーでも例外はあるさ。例えば、このD坂道やT山峠といったコース、ヘアピンが少ないこういったコースでは 逆に圧倒的な馬力と安定性で やたら速いと思う。」
寅丸 「そ、そうか、D坂道のコースはヘアピンが少ないから 33Rにとってはほとんど中速コーナーになるのか。安定した車体では グリップが逃げやすいD坂道のコーナーも得意だろうし。」
ナズ 「このコースで使う唯一のヘアピンは県境の谷間のあのカーブだけだが 東行きだと大外で走ればU字の右タイトコーナーになるからな。33Rの大きなウィークポイントにはならない。それ以上に他のコーナーでのアドバンテージがデカすぎる。」
寅丸 「と、なると 先行した鈴仙さんがずっとブロックして逃げ切るには あまりにも分が悪いですよね・・・。」
ナズ 「まあ それで勝てりゃ 苦労はしないんだろうが・・・」
目を細め 鈴仙達が走り去った方向を見つめるナズーリン。
ナズ 「 実は 重い33Rにはできないことが もう一つある。 」
二台は緩やかな左コーナーにさしかかるが、 アップダウンがあり見通しがきかない そのまま先行シルビアのままコーナーを超えると落ちるように下りのストレート。その先に 橋がある。
「ファガアアアアアアアアアアアアアア!!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
橋上のストレートの先にあるのは右への直角コーナー。ブレーキング。シルビアの減速に合わせるかのように光る33Rのテールライト。
幽々子 「(ここで ここまで減速するだなんて・・・。)」
その先の緩い左コーナーを駆け上がっていくシルビア。ピッタリ追従する33Rに まるで遅れる様子はない。
「ファガアアアアアアアアアアアアア!!」
幽々子 「(・・・なるほど。グリップが抜けやすいヒルトップのコーナーでも 特に大きく滑らすことなく堅実に走らせてる。)」
高速左コーナーに飛び込むS15。追う33R。
幽々子 「(・・・でも、コーナー入り口で まだ ためらいというか 突っ込みに迷いが見えるわね。所詮はその程度か・・・。)」
左コーナーを抜けたらストレート。すぐに右コーナーのトンネルへと突入する。爆音を響かせながら、二台がトンネル内を通過していく。
幽々子 「(レベルは見えた。この先のロングストレートまで付き合う必要は ない。)」
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
モブ 「おおっ シルビアが前だっ!!」
モブ 「あの33、ホンキで走ってねーな。俺はあの33Rが昔走ってるのも見てるからな。ありゃはえーぞ。ギャラリーしてる分にはまだ気楽だけど 対行から出てきたときゃそりゃ・・・」
モブ 「え? そんな危ないのか あの33R?」
モブ 「それがよお・・・消えるんだよ あの33R。目に写った時にはもう脇を通りすぎてる。あの33にとっちゃ、俺ら対向車すらパイロンなんだよ。」
モブ 「なんだよそれ・・・ 」
モブ 「それぐらいぶっ飛んでんだよあれは。すれ違った時にオーラを感じる走り屋は何人かいても、すれ違った瞬間にこっちの生死のキモっ玉まで握られてる感じがするのはあの33Rだけだぜ。俺だったらあんなヤツの前を走るだなんて まっぴら御免だね。」
ブラインド左コーナーを抜け 短いストレート。次に緩やかな左。その先にはU字の右コーナーが控えている。
鈴仙 「 ・・・・。」
左コーナーから切り返して タイトな右コーナーのU字コーナーへと突入していく鈴仙のシルビア。コーナーは後半から急な上り。シルビアが失速する。
「ファガアアアアアアアアア」
「ガアアアアアアアアアアアアア!!」
後ろから33Rが煽る。その先はシケインのようなクネクネ道。突っ切ってしまえばストレートだが 勾配が急で、シルビアの加速が遅れる。
幽々子「決して悪い訳じゃない。決して遅い訳じゃない。ただ・・・」
緩やかな左コーナー。左側IN側を占めるシルビアに対し、33Rが アウト側から抜きにかかる。
コーナー中盤からの立ち上がり。33Rがその馬力をフルに使い猛加速。シルビアが遅れる。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
幽々子「 ただ 競う相手を間違えただけよ。 」
抜きにかかる33R。33Rのボンネットが 脇からどんどん前へ出るのを見送る鈴仙。
鈴仙 「 ・・・・・。」
鈴仙 「 わざと抜かせる? 」
バトルが始まる数刻前。ナズーリンは鈴仙を呼び出し、作戦などを伝えていた。
ナズ 「ああ。どうあがいたとしても S15では33Rに敵わないストレートが 2か所ある。」
鈴仙 「うっ・・・」
ナズ 「こればっかりはしょうがない。S15も馬力上げてるとはいえ、パワー勝負仕立の33GTR相手では この分野ではとても太刀打ちできない・・・。」
ナズ 「ならば 一つ目のロングストレートは あえて捨てる。」
鈴仙 「・・・・。」
ナズ 「心配するな鈴仙。捨てるとかかってしまえば、実はやりようはいくらでもあるのさ。ただ、それで勝つためには 緻密な作戦を確実に実行する必要があるけどな。」
鈴仙 「・・・なんか、ナズーリン、あんたまさか 卑怯なこと考えてない?」
ナズ 「卑怯?まさか。これは心理戦だよ。それに この作戦を実行できるかどうかは あくまで 鈴仙のウデにかかってるしね。」
脇から追い抜かす33Rのテールライトを目で追う鈴仙。33Rが抜き切ると すかさず33Rのリア後ろへと飛び込む。
「ファガアアアアアアアアアアアアアア!!」
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
引き離そうとするかのように猛加速する33R。追従するS15。むしろ33Rに引っ張られるように加速していく。
幽々子 「(・・・? スリップストリーム? たしかにこのストレートでは空力 ラクにした方がついてこれるけど・・・)」
下りのロングストレートの先は緩やかな右コーナーがあって 再び上りのストレート。アクセル踏みっぱなしの33Rがリードしながら突っ走っていく。
幽々子 「(峠でスリップストリームの効果なんて限定的。そんな小手先の技じゃ この先ついてこれないわよ?)」
寅丸 「ぬ・・・抜かされました!ロングストレート手前の立ち上がりから一気に抜かれたそうです!」
響子 「あちゃーぁ。」
ナズ 「ま、そうだろうな。手前から上りになっている分、馬力あるほうがあそこは立ち上がりラクだろうし。」
寅丸 「でも、鈴仙さんも33Rのウシロぴったしくっついてストレート抜けてったそうです!まだまだ先はわかりませんよ!」
ナズ 「・・・・・。」
ナズ 「(・・・スリップストリーム か。成程。馬力で負けるS15では単純な直線勝負だったら引き離されてるだろうが、デカイ33Rの後ろに入れば それなりには効果があるか。
ただ・・・ スリップストリームを使えとは言ってないんだけどな。 ま、いっか。ユユコに警戒されなきゃいいけど。)」
上りきった先にあるのは直角右コーナー。33Rが突っ込む。対向車線も気にせず、大胆にINに切り込んでいく。
鈴仙 「(・・・流石。)」
鈴仙のシルビアも33Rのラインをトレースするかのように 後を追う。差は車一台分ほど。それが、立ち上がりで一気に広がる。
ナズ 「(今だから言えることだが、西行寺幽々子が始め後追いを選ぶだろうという推論は、ほぼ間違いないと私は思ってたさ。幽々子はこのコースを熟知していて自信もあり、マシンのスペックもデカイ。コース自体も長いし まずは後追いで鈴仙の実力を見極めようとするはずだからな。)」
次の直角左コーナーの突っ込みで シルビアは33Rのリアぎりぎりまで追いついた。そのまま2台続けて崖を回りこむようにコーナーを曲がっていく。
「キャキャキャキャキャキャ」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ナズ 「(だが、ここにまず相手につけ入るスキがある。あえて相手にミスリードを起こさせるんだ。その上で後からペースアップしてブチ抜く。リスキーなやり方だが、このバトルに限っては そのやり方が 後々生きてくるんだ・・・。)」
スネイクコーナー。どっしりとした33Rが まるで危なげなくコーナーを縫うように走る。
鈴仙のシルビアも そのリアを捉え続けながら続く。
幽々子 「離れない・・・? 一定の間隔でついてきている・・・?」
お燐 「中間地点からの報告です。33Rが先行 S15が後追いのようです。差がほとんどないとか。」
さとり 「ふうん・・・。」
スタート地点付近。別の一角で さとりら函根のチームの面々がレースの報告を聞きながら待機している。
さとり 「(33Rが前ってことは 幽々子さんがどっかでケリつけようと抜かしたんでしょう。けど、マージンがないってことがひっかかる。わざと抜かせた?何か仕掛ける為に?何かたくらんでるわね・・・。)」
ナズーリン達のほうをそれとなく見渡すさとり。
さとり 「(経験も理論も未熟な地元の悪ガキ集団かと思っていたけど・・・ ドライバーか? チームリーダーか? 変に頭が回るヤツがいる・・・!)」
お燐 「(・・・さとり様 考え事しだすとダンマリなんだもん。場がもたないよ~。)」
33Rを追い U字コーナーへと飛び込んでいく鈴仙のシルビア。コーナー入り口で減速する33Rに肉薄する。
幽々子「ただ単に コースに慣れてなかったのか それとも私のマネをすることで速くなってるのかわからない。 だけど 」
「バガアアアアアアアアアアアア!!」
「ファガアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
立ち上がりから上り。次ストレート。馬力のある33Rが突き放す。
次 左タイトコーナー。ブレーキングで再び33Rのリアに食いつくシルビア。
幽々子 「間違いない。このシルビア、抜かれてから一気にペースを上げてきている・・・!」
左直角コーナーをクリアしていく33R。立ち上がり やや膨らみ右側へと寄っていく33R。
鈴仙 「 ! 」
「キャキャキャキャキャガアアアアアアアアアアア!!」
後続のシルビアが 突如INへ飛び込む。シルビアが 立ち上がりIN側から鼻先を33Rの左横へとねじ込む。
幽々子 「 ! 」
ストレート。33Rに並ぶシルビア。次は左コーナー。鈴仙のシルビアの方がIN側である。
「ファガアアアアアアアアアアアアア!!」
幽々子 「 ・・・・・。 」
そのまま シルビアIN側のままコーナーを曲がっていく二台。幽々子の33Rは あっけなく先頭を明け渡す。
鈴仙 「(あっぶね。何とか前に出れた。)」
シルビア先頭で続く短いストレートを駆け抜けていく。そのまま二台は 崖沿いのスネイクコーナーが続くテクニカルセクションへと突入していく。
「ファガアアアアアアアアアアア!!」
ナズ 「アクセルってもんは ただ踏めばいいってもんじゃない。ハイパワー車ならベタ踏みすれば簡単に滑るから、立ち上がりの時なんかは特にじんわりと踏むのが重要なんだ。アクセルの開度を踏み分けるのに 凡人ならば5段階。理想なら10段階。走り込みをして コントロールの段数を増やしていく・・・。」
寅丸 「ええ。案外アクセルコントロールをちゃんと習得するのは大変ですよね。」
ナズ 「ところが 鈴仙は その考えをバッサリ否定したんだ。」
寅丸 「 えっ? 」
ナズ 「鈴仙が言うには アクセルは 管楽器のような 笛のようなものなんだと。笛を吹いて 息の量を調節して音の強弱をつける時 段階的に強める必要は ない。アクセルもそれと同じで 無段階で 流動的に調節するものだと。ブレーキに関してもそうだと言い切ったんだ。」
ナズーリンの脳裏によぎる S15を運転する鈴仙。前回の交流戦、天子とのバトルの前に ナズーリンはT山峠で鈴仙の運転するS15に同乗していた。
上り タイト右コーナーへと突入していく鈴仙のS15。
ナズ 「 ! 」
直感的に シルビアのケツが流れかかってるのを感じるナズーリン。だが しかし 鈴仙はそれ以上破綻させず 踏み返すと そのままアクセルを踏み込んだまま コーナーを曲がっていく。
思わず 鈴仙の表情を見るナズーリン。鈴仙は構わず前を見つめたまま、コーナーを攻めていく。
その時、ナズーリンは気付いた。鈴仙がまったくハンドルをこじらず、ハンドルに掛けた手の位置がそのままのまま、コーナーを曲がっていることに。
ナズ 「 ・・・・。」
「キャキャキャキャキャキャキャ」
「ファガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
ナズ 「それを聞いた時 私はさすがに戦慄したね。おそらく 鈴仙は タイヤと路面の接地状況を瞬時に感じ取り どれだけ滑らせていいか どれだけ踏み込めばいいか 直感的に判断しながらアクセルを踏んでる。まるで足の感覚が タイヤと直結してるみたいなんだ。」
寅丸 「そ、そんな メチャクチャな・・・!」
ナズ 「ああ。これは相当高い能力さ。どんな状況でも武器になるラッキーアイテムになる。ラインを外しても 破綻しかけても 確実に地面を掴み 前へ押し出す。 それは「バトル」においては とてつもない力になる・・・!!」
ナズ 「・・・んで 私はそれを まさに「兎の足」だって言ってホめたんだけど、彼女どうも気に入ってくれなくて。」
寅丸 「そりゃそうでしょうよ。海外のお守りじゃあるまいし。生生しい。」
タイト左コーナー。アウトに思いっきり振ってからINへと一気に飛び込むシルビア。道路よりもIN側へ寄り、側溝の コンクリート製のフタをふみつつも コーナーをクリアしていく。続く33R。
「ガタガタガタガタガタガタガタ」
「ファガアアアアアアアアアアア」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
幽々子 「(やはりここはこのラインか・・・)」
響子 「峠って その峠独特の攻め方っていう物があるじゃないですか。ヨソ者からすると え? ここ通っていいの?って言いたくなるみたいな。道路のハシ ギリギリを使って緩やかなライン作ったり、溝にタイヤ落としたり。」
寅丸 「ええ・・・。」
響子 「このコースで言えば 中盤での連続タイトコーナーが出てくるテクニカルセクションですよね。見通しは悪いけど コーナー入口でアウトに振って コーナーの頂点でINのガケ ギリギリに寄せる。コーナーのIN側の側溝にはコンクリのフタがされてるから むしろそれを踏んでいくつもりで攻めないと わかってないと引き離されますよね。」
ナズ 「ああ。だが 西行寺幽々子はここをホームコースとしていた走り屋だ。そんなことは知っているだろうな。」
短いストレートの先に 再び左直角コーナー。シルビアが再び側溝のフタを踏みながら攻める。後続の33Rも それに続き、 フタを踏みながら追走していく。
「ガタガタガタガタガタガタッ」
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
寅丸 「あっ でも あのフタ 全てのコーナーのIN側にある訳ではないですよね。」
響子 「えっ?」
寅丸 「コース攻めてると、テクニカルセクションでは使えるんですけど、あとからに急にフタがないコーナーが出てくる っていうか・・・」
ナズーリンの口元が 怪しく ニッと笑った。
「ゴガッ ゴガッ ゴガッ ゴガッ」
テクニカルセクション終盤、下りきった所にある 右コーナーの橋を渡る二台。橋から上り。ウネウネしたコーナーが続く上り坂を シルビア先行で 後ろに33Rが喰らいついた状態で登っていく。
「ファガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
この時、幽々子は鈴仙の走行ラインをなぞることに固執していた。それがベストラインであり、速く走る上で必要だった為でもあり 絶体に逃がさないという意思表示でもあった。
鈴仙のシルビアのラインをトレースして 続けて立ち上がる33R。
その先 左タイトコーナー。鈴仙のシルビアが一気にINへ切り込んでいく。
幽々子「!? インカット・・・!?」
違和感を感じながらも つい そのままS15に追従して切り込んでいく幽々子の33R。
次の瞬間 幽々子は そのラインが 先ほどのコーナーで 側溝のフタを踏みながらINを攻めるラインと同じだと気づいた。だがしかし、脳内ではこれを強く否定していた。 幽々子の目の前で、シルビアのテールが、左へ、左へと寄っていく。
幽々子 「いや、バカな!この先の側溝にフタはないはずだ!」
ナズ 「・・・そうさ。D坂道の側溝には、全てにフタがあるわけじゃ ない。コース中盤 ロングストレートの手前 左に曲がり込むタイトコーナーのIN側 そこは フタが 消える。」
幽々子の脳裏に もう一つ可能性が浮かぶ。自分がいない間に改良工事がなされ 側溝にフタがある可能性だ。
幽々子 「(自分がいない間に いつの間にフタがされてるのか!? くっ こんなことで ブランクがネックになるなんて・・・!)」
コーナーを切り込んでいくシルビア。続いて切り込んでいく33R。幽々子の視線が、左下 シルビアのバンパーの下へと落ちる。
フタのない 黒い側溝と シルビアの後輪が見える。先が見えない。グリップポイントで さらにINへ切り込んでいくシルビア。
「グワアアアアアア」「くんっ」 「フッ」
シルビアの 左後輪が浮いた。
幽々子 「 何っ!? 」
車体左半分を浮かし INの側溝を フタのない側溝を飛び越えたS15。次の瞬間 コーナー出口付近で着陸すると そのまま一気に加速していく。
「ガゴッ ギュ ギュキッ」
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
幽々子 「くっ!」
後続の33Rはそれに続かなかった。とっさにアウト側へ車体を振り 側溝を避ける幽々子。ラインが崩れ 立ち上がりが乱れる。33Rにはそもそもできないのだ。33Rの安定第一の重い車体では とっさにコーナーで車体半分を浮かせるなんて芸当は。
「キャギャガガガガ」
「ヴァガガガガッ ガアアアアアアアアアア!」
ナズ 「・・・荷重移動の応用技としては、案外 最も簡単な技さ。左旋回する時、当然、遠心力で荷重は右側へ寄っていく。オーバースピードで左コーナーへ突っ込んで、車の荷重をすべて右フロントと右リアタイヤに乗せるんだ。」
寅丸 「いや、鈴仙さんのシルビアならオーバースピードになれば浮くかもしれませんけど、幽々子さんの33Rはそんなマネできないでしょ」
ナズ 「できないだろうねえ。そういうことやる車じゃないし、少なくともとっさには無理だろうなあ。」
寅丸 「ちょっと、幽々子さんが側溝にタイヤ落として事故ったらどうするんです?」
ナズ 「まあまあ。あのレベルのドライバーならそれぐらい避けれるだろ。正直、避けてもらわないと困る。 なぜなら この作戦は 幽々子がラインを逸らすことで 始めて成功するからな。」
アウト側へ車体を振り 側溝を避けた幽々子。ラインが崩れ 立ち上がりが乱れる。しかし、幽々子は次の瞬間 このワナの真の意味を理解した。
幽々子 「 あっ・・・!? 」
コーナーの先 だだっ広い下りのストレート。33Rが立ち上がり失速した分 シルビアとの差ができていた。 前方を シルビアが快走していく。
ここは ナズーリンが言っていた 33Rがシルビアを抜けるであろうとしていた 二つ目のロングストレート。
幽々子 「しまったっ・・・! こんな所でっ!! こんなっ! 肝心な所で! アンダーをっ・・・・!!」
アクセルを踏み込む幽々子。吼える33R。強力な加速でシルビアに追いすがる。次のコーナーまでになんとか車間を詰める が 到底追い越せるモノではない。
左タイトコーナー。鈴仙のシルビアが先行を制したまま、コーナーをクリアしていく。
ナズ 「シナリオが必要だったんだ。ただ、前を走ってるだけでは走行ラインには注目してもらえない。抜かれて 抜いて 意識してもらった上で、じゃないとできない芸当さ。」
下った先にある右ヘアピン。鈴仙のシルビアが回り込むその後ろで33Rが吠える。
ナズ 「だが、成功したとしても、おそらくそれでやっと五分だ。鈴仙にとって本当のバトルはこれからさ。」
鈴仙 「分かってはいたけど この後がやばいな・・・」
シルビア先行。33R後追い。その構図は変わっていない。しかし、力関係は完全に変わっていた。
幽々子 「 ・・・・。 」
橋を渡ったら再び上り。鈴仙のシルビアに33Rが肉薄する。
鈴仙 「ミラーなんか見なくたって バチバチにプレッシャー掛けられてるのが分かる・・・! あせるな 抜かせない走りをするんだ・・・!」
上り切った所にある右タイトコーナを切り込んでいくシルビア。
ナズ 「一言で後追い と言っても 正確には三つの段階がある。車一台分ほど開けて走る場合 相手のケツギリギリを舐めるように走る場合 もう一つはブレーキを踏まなければ相手のケツへめり込むのではと思うほど追いつめている場合だ。」
鬱蒼とした木々に包まれたテクニカルセクション。縫うように走っていくシルビア。
幽々子 「 くっ 」
シルビアのすぐ後ろを追う33R。車体の距離はそれほど離れてないが アクセルを踏み切れない幽々子。
ナズ 「車一台分ほど間があいてる状況では 追いついているようで追いついてない。ケツギリギリの状態でだいたい五分だ。だが ケツへめり込むのではと思うほど追いつめている場合、もう戦いの主導権は後追いの方が握っている。」
左コーナーの先に間髪入れず右コーナー。キリ返しの瞬間にもまったく速度を落とさないシルビアが、消えるようにコーナーの先へと吸い込まれていく。
幽々子 「このスネイクコーナー区間の先に もう一度 最後 上りになるんだ! そこに すべて賭ける!」
右コーナーをクリアすると ストレートの橋が現れる。渡った先からコースは上り。崖沿いの タイト左コーナー。
鈴仙 「 ! 」
鈴仙の目に 崖が迫る。かまわずコーナーへ突進するシルビア。続く33R。
ほぼ速度を落とさずコーナーに突入するシルビア。追う33R。飛び込んで、上りコーナーのグリッピングポイントでアクセルを踏み込む瞬間、幽々子は 一瞬 タイヤがずれるように グリップを失うのを感じる。
「ギュ キ キ 」
幽々子 「何っ・・・!?」
構わず踏み込む幽々子。一瞬立ち上がりが遅れるが、33Rはそれでもはじかれるように全開加速を始める。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
上りの左コーナーを全力で駆け上がる鈴仙のシルビアが 幽々子の33Rにあっという間に食いつかれる。次 そのまま急な上りのまま右コーナー。鈴仙のシルビアが右 IN側へ移動し、ブロックしたままコーナーを駆け上がる。
幽々子 「・・・・・。」
その上りのままストレート。緑色のトラス橋の上。左へと膨らんでいったシルビアの右側から 33Rが 鼻先を入れる。
「ファガアアアアアアアアアアアアアアア!!」
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
徐々に シルビアを追い上げる33R。じりじりと 33Rの鼻先が シルビアの車体半分ほどまで追いすがる。
しかし
幽々子 「・・・・だめか。届かないか・・・・。」
その橋の終わりが ゴール地点。33Rはシルビアを抜けきることができず、鈴仙のシルビアの鼻先が 先にゴールを割った。
「 ガアアアアアア ア ア ア ア 」
幽々子 「・・・・手玉に取る、って言うのは こういうことを言うのかしらね。完全にしてやられたわ。」
ゴール地点の近く 十字路交差点で道が広くなっている所で 2台縦に並べて車を止める鈴仙と幽々子。
幽々子 「このコースには自信があったんだけど、それを まんま逆手にとられた気分だわ。特に あなたが側溝を飛び越えたコーナー その先のストレート・・・ あそこで勝負を決められるとは思わなかった・・・。」
鈴仙 「正直、幽々子さんをあそこのストレートで抑えるには、アレしかなかったんです。その場しのぎで 最終盤抜かされるかも とか思いましたけど・・・」
幽々子 「そんなことはないわ。」
鈴仙 「 ? 」
幽々子 「最後・・・ 上りコーナーの駆け上がり あの時後輪のタイヤがダメになってて 私は全力で駆け上がることができなかった。あの時 側溝を避けようと無理にラインを変えた時、タイヤに余計なダメージを与えていたのね。
タイヤがグリップ領域を外れ、無理に滑らした時のダメージはかなりデカイ。それが最後の最後に響くなんて・・・ まさか、そこまで考えてたなんて。」
鈴仙 「(・・・そこまで考えてたのか。)」
鈴仙の脳裏に浮かぶ ナズーリンのしたり顔。
幽々子 「思えばあの時もう勝負はついていたのね。負けたわ。でもね、私 不思議と満足してるの。 このコースで こんなバトルができる日が来るとは思わなかった。これなら任せられるわ・・・ このコースのエースドライバーとして、次の ヤツらとのバトル、堂々と戦って頂戴。」
鈴仙 「・・・ありがとう ございます。」
お燐 「さとり様・・・ 今 連絡が入りました・・・ 幽々子さんの 負けです。」
さとり 「そう・・・・。」
短く オリンの報告に答えると 寅丸星達の方へと歩いていく古明地さとり。
さとり 「負けました。この峠はあなた方に任せます。」
ナズ 「あら、潔い。」
さとり 「素直に 幽々子さんに勝てたことは賞賛しましょう。ですが、決して油断はしないでくださいね。
・・・博麗霊夢 と 霧雨魔理沙、彼女らが かの「伝説」の再現を行おうとしていることは明らかです。私は それを 阻止したい。その為の力があるかどうか 私は見定めに来たのです。協力してくださいますね?」
ナズ 「・・・私らとて、めそめそと負ける気はないさ。だが、また随分な言いようだね。そんなに彼らが有名になるのが気に食わないのかい?」
さとり 「別に ひがんでいる訳ではありません。しかし、今、新たな「伝説」を生み出すわけにもいかないのです。「 峠 」を 守るために。それはあなたもわかっているはずでしょう?」
ナズ 「・・・・・。」
さとり 「もう すぐでしょう 彼女達が来るのは。ご健闘をお祈りしていますよ。」
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そして 1週間後。
寅丸 「・・・みなさん、今日、「彼女ら」が来ます。この 峠に。」
D坂道。いつものコンビニの駐車場。寅丸星は神妙な面持ちで報告する。
村紗 「マジか・・・ 本当に来るのかよ 信じらんねー。」
寅丸 「こうなった以上 覚悟を決めるしかありません。今度はD坂道で ヒルクライム ダウンヒル 両方のバトルをやることになります。また ダウンヒルは鈴仙さん、ヒルクライムはてゐさん で迎え撃とうと思います。」
鈴仙 「・・・・。」
ナズ 「相手の情報も掴んでいる。ダウンヒルのドライバーは博麗霊夢。使用車種はAE86 スプリンタートレノ。
ヒルクライムのドライバーは霧雨魔理沙。使用車種はFDだ。
かねてから多くの峠で勝ち星を挙げ有名ではあったが 先日 衣玖達のチームに圧勝したことでその強さは実証された と言えるだろう。まさに峠遠征の スペシャリストチームだ。」
鈴仙 「うん。わかってる。ただのバトルにはならないわよね。」
ナズ 「いいか。負けてもともと なんて考えは捨てろ。連勝連覇の彼女らに勝てば 私達のチームの名は一気に売れるんだ。これはチャンスだ。
私達は 全力で この挑戦に勝利する。それしかない。」
鈴仙 「・・・・で、てゐが 今日遅刻っぽいんだけど。」
ナズ 「・・・・。」
寅丸 「・・・・。」
鈴仙 「「仕事」だって。」
寅丸 「・・・とりあえず鈴仙さんのダウンヒルからバトルするよう交渉しましょう。」
プラクティス中の G県遠征チーム。
「ファガアアアアアアア!!」
S字コーナーを抜け、上りストレートへの立ち上がり。雷光の如く、黄色いFDが加速する。
レミ 「 ・・・・。」
「ファアアアアアアン ガアアアアアアアア・・・・」
レミリア達が待機する駐車場横を駆け抜けてくFD。レミリア・スカーレット達のサポートチームが付いていた。駐車場で待機する霊夢のAE86の周りにはサポートカーのバンが4台。それぞれ、タイヤや工具など遠征で必要な物を乗せている。
レミ 「よし。一回練習を中断して 意見をまとめましょう。」
吼える 赤と黒のツートン塗装の AE86トレノ。
「ファガアアアアン バアアアン」
レミ 「ステイッ ステイッ!!」
「ブアアアアアウン ガッガッガッガアアアアア・・・・」
駐車場に入ってくるFD。
霊夢 「走ってみた感じとしては まず、起伏が激しいってことかしらね。どちら向きで走っても 上り 下りが 交互に出てくる感じ。」
レミ 「となると ツクバやウスイ峠みたいな?」
霊夢 「またちょっと違うわね。ストレートとコーナーのメリハリが こっちのほうがシビアな感じ。ウスイは起伏が少なく コーナーが多いからあまり速度上がらないけど こっちのほうがストレートがあるから。かといってツクバよりはコーナーがタイト。あまり他の峠は参考にならないわね。」
魔理沙 「かといって、道なりにただ走るだけじゃ おそらく負けるぜ。結構トリッキーなコースだと思うよ。ストレートエンドでのブレーキングは、コーナーが半端な分読みづらいし、一見狭いコーナーでもライン取り次第でいくらでもできそうな感じだ。何か仕掛けてくるかもな。」
霊夢 「少し長いからコース覚えきれないのよね。似たようなブラインドコーナーとかあるし。」
レミ 「車のセッテングとかは大丈夫かしら?」
魔理沙 「路面は思ってたより綺麗だが 勾配やちょっとした段差で結構跳ねるんだよな。上げすぎず、落としすぎず、って所か? まあ、八方ヶ原とかよりはマシだよ。」
レミ 「サポートカーにタイヤはもちろん、今回はガソリンも多めに持ってきたわ。よく走りこんで もっと問題点を洗い出して頂戴。」
マリサ 「(ここガソスタ遠いもんな。)」
レミ 「ウチのガレージが協賛してるんだもの。サポート面はしっかりやるわ。ここの試合の後には「函根」が控えてる。こんなところで負けてられないわよ? 」
十字路交差点 西行きスタートライン付近。
村紗 「うへえ。今日はこっちが千客御礼だな。」
先に行われることになった東行き 下りではこちらがゴール地点となる。村紗たちが用意を始める前に、すでに結構ギャラリーが集まり始めていた。
ナズ 「まあ、当然だろう。相手チームは度重なる連勝で今一番有名な走り屋チームだ。今でこそ対戦予定を公表してないが、おっかけ達には筒抜けだろうさ・・・・。」
ナズーリンの脳裏によぎる 前回の試合の最後の 古明地さとりの言葉。
さとり 「新たな「伝説」を生み出すわけにもいかないのです。「 峠 」を 守るために。」
ナズ 「 ・・・・。」
ナズ 「(たしかに ヤツらは有名になりすぎた。こうして集まるギャラリーの中に「当局」の関係者が紛れ込んでてもおかしくない。名が売れることは走り屋としちゃ本望だが、有名になれば当局の目に留まり 潰される。このジレンマの中で チームそれぞれでルールを決めモラルを守り、細々と生き延びてきたんだ。気に入らないのはよくわかる。だがな・・・)」
? 「ナズーリン!村紗!よかった!こっち来てたんですね!」
ナズ 「 !? 」
村紗 「あっ・・・」
坂の下のほうから、一人 背の高い長髪の人物が歩いてくる。かつて 寅丸星達の仲間であった 聖 白蓮 だ。
一輪 「聖もいらっしゃってたんですか? お久しぶりです。」
ナズ 「あ、ああ。聖、久しぶり・・・。」
聖 「お久しぶりです。みんな元気にやっていますか?」
村紗 「元気してるよ。今、星や響子達はスタートの準備やってるから あっちの方いっちゃったんだけど。あとでチームメンバー紹介するよ。」
一輪 「ホラ、ナズーリンも、一時期に比べたら随分と丸くなって。」
ナズ 「うっ・・・。 まあ、こっちはボチボチやってるよ。エボテンの調子はどうだい?なんか星がこの前やたら心配してたけど。」
聖 「降りる事考えてるから欲しいかどうか みたいな話 したからですね。大丈夫、今もちゃんと乗ってますよ。ここにも乗ってきたんですから。そうそう・・・」
「ピロピロピロピロピロ。 ピロピロピロピロピロ。 プッ。」
鈴仙 「もしもし?てゐなの?だいぶ遅刻してるわよ?」
一方のスタート地点付近。こっちでは鈴仙や寅丸星らが、もう下りスタートの準備を進めている。
てゐ 「イヤー ごめん鈴仙。ちょっとヤボ用があってさ。鈴仙のスタートには間に合いそうにないや。」
鈴仙 「ちょっと。あんたねえ。」
てゐ 「わかってるわかってる。ヒルクライムのスタートには間に合うようにするからさ。」
鈴仙 「何言ってるの?てゐ、今どこ?」
てゐ 「絶対いくからさ。鈴仙勝ってよね。」
鈴仙 「え」
「プッ」
てゐ 「・・・・。」
電話を切ると 物鬱げに目線を落とすてゐ。一呼吸おいて、自分のGC8に乗り込む。
ここはT山峠の麓のコンビニ。てゐのGC8が ゆっくりと発進する。
寅丸 「え、今のてゐさんです?」
鈴仙 「はい。てゐだったんですけど・・・何だったんだろ。キミワルイ。」
星と鈴仙の会話を遠くから見つめる橙。橙は、この前のレースが終わった後の、てゐとの会話を思い返していた。
鈴仙と幽々子とのバトルが終わり、皆が盛り上がる中、橙はてゐを離れたところ、皆から話が聞こえないところへ連れ出していた。
てゐ 「なんだよ話って。」
てゐに背を向けたまま、黙りこくる橙。おもむろに口を開く。
橙 「・・・おそらく 近いうちにD坂道で霊夢さん達のチームとバトルになるでしょう。おそらく その日 藍様は T山峠の下で待ち伏せをします。」
てゐ 「 ・・・・。」
橙 「ねらいは、てゐさん、あなたです。藍様はてゐさんがいつもD坂道に行くときにT山峠を通ることを知ってます。 だから」
てゐ 「そうかい。ありがとよ。T山峠行きゃいいんだな。」
橙 「 え 」
思わずてゐの方を見る橙。
橙 「ちょ、ちょっと!わかってるんですか!?今の藍様は普通じゃないんです!てゐさんに狙いを定めてて、こ、殺しに来るかもしれない!危険だから別の道を通って」
てゐ 「 それは、できないなあ 」
橙 「な!?」
てゐ 「橙。なぜ藍がお前にそのことを言ったか知らないけど、藍にとっては私に情報流れることぐらいオミトオシだろ。これは、私に対する挑戦状なんだよ」
橙 「でも・・・」
てゐ 「『 走り屋は、走りの挑戦を受けたならば答えなければならない 』」
橙 「 ! 」
てゐ 「大丈夫だって。私はうれしいんだよ?走り屋として、走り屋の挑戦を受ける。それだけのことなんだよ。」
橙 「(言ってることはわかります・・・・ てゐさん、でも私は てゐさんに何事もなく峠に来てほしい・・・ どうか 愚かな選択はしないで下さいよ・・・・)」
ナズ 「おい、本当なのかい!?それは!?」
聖 「えっ ええ さっきここくる途中 T山峠の麓らへんに止まっていましたよ。
・・・オレンジ色と黒のランエボⅦ。」
村紗 「そ、それって藍のランエボじゃないか!?どうしてまた・・・?」
ナズ 「そうだ・・・・どうして・・・・T山峠?・・・・・まさか・・・・まさかあいつ!!」
猛然と自分の車へと駆け寄るナズーリン。
村紗 「ちょっと!?ナズーリン!?どうしようってのさ!?」
ナズ 「ムラサ達はレースの進行を続けててくれ!私は・・・私はあのバカ迎えに行ってくる!!」
ヴィッツを発進させるナズーリン。
「バガアアアアアアアアアアア」
T山峠のコースに入ってすぐ。左コーナーを立ち上がるてゐのGC8。次の右コーナーとの間に短いストレートがあるが、道幅が広がり その左脇にバス停のスペースがある。
てゐ 「 ・・・・。」
そのバス停に ランエボが停まっている。怪しく光るオレンジ色の 藍のランエボ。
藍 「・・・来た・・・・!」
目の隅でランエボの姿を確認しながら 右コーナーへ侵入していくてゐ。ランエボが、後を追うように走り出す。急加速して、右コーナーを抜けた先のストレート。そこにはGC8が待ち構えるように ゆっくりと走っていた。
GC8のすぐ後ろにつける藍。藍のランエボのヘッドライトに照らされ ガンメタのGC8がドス黒く光る。藍の目の前で光る GC8のテールランプ。
藍 「・・・ 生きるか 死ぬかだ 鋼鉄の車よ・・・! 上げるんだ パワーを 私に合図をくれ!!」
D坂道 ダウンヒルのスタート地点。 崖沿いの道に 二台のマシンが並べられた。
一台は 鈴仙の 白いS15シルビア
もう一台は 博麗霊夢の 赤と黒のツートン AE86 スプリンタートレノ
二台の前 それそれの車のヘッドライトが照らす中、それぞれのドライバー二人が歩み寄り、挨拶を交わす。
霊夢 「・・・博麗 霊夢よ よろしく・・・。」
鈴仙 「・・・鈴仙 優曇華院 イナバです。 宜しくお願いします。」
それぞれ 簡潔に名前を告げ、握手をする二人。
モブ 「(え、そ、それだけかよ!?)」
モブ 「(もうちょっと言うことあるだろ!?)」
寅丸 「(・・・・成程。もはや 言葉など不要 ということですか・・・)」
しっかりと睨み合い、手を握る両者。
寅丸 「(はっきり見える、あの二人のオーラ・・・ 霊夢さんも相当ですが、それに並び立つまでになった、鈴仙さん、あなた・・・)」
ふっ と目を閉じる寅丸星。少し深呼吸し呼吸を整える。
寅丸 「響子さん、カウント、お願いします。」
響子 「はい。」
気のせいか 響子の声にも 少し張りがある。
響子 「 準備は いいですか? 」
二台の前に立つ 響子。
「 ファガアアアアン ファガアアアアアン 」
響子 「カウント 始めます!!! 5ぉ!! 4!! 3!! 2!! 1・・・ 」
シルビアのライトに照らされ 手前の峠道の路面が白く輝くが その先は深い闇。
その奥を見つめる鈴仙の瞳が 紅に 輝き始める。
響子 「 GOォォッ!!! 」
「ファガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ガアアアアアアアアアアアアン ガアアアアアアアアアアアアア!!!!」
「ファガアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ガアアアアアアアアア ガアアアアアアアアアアア・・・・・・」