東方頭文字D外伝 峠の白兎 --Rabbits dream of becoming HASHIRIYA--   作:Atno108

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「ハーイ、女児。  スポーツカーライフ、楽しんでる?」
「・・・・・・・」
「えーーっ 面白いのに。乗ろうよ。」
「そう言って 実はクソ維持費高いんだろ? 騙されんぞ 」
「いや、日本製のスポーツカーだったらめったなことじゃ壊れないと思う。みんなカッコイイ車は大好きだし、峠で乗り回せばたちまち人気者だぞ? どうよ?」
「面白そう。帰ってミリマス動画でも見るわ」
「待てや。 いいから これを・・・」
「私の財布!」
「返す代わりに グーネットで買え・・・ 買え・・・!」
「・・・・・・・」
「オウ・・・・  そんなに嫌な顔せんでも。 うわっ 素で引いてるw でも金出して速いマシンに乗れば誰だって速く走れるんだぜ 少しコツはいるけど」
「私でも速くなれる?」
「 えっ うん  スポーツカーはいいぞ 女児・・・  深いぞ・・・ 君も絶対ハマるから・・・ 」

「 俺と同じ燃費地獄の闇へと堕ちろ!!!」「イヤアアアアアァァァァァァァ!!!」



「彼女は死んだ。練度が足りなかったのだ。でもRX-7とか 今売られてる車より超えられない魅力があると思う。FDとかマジカッコ良すぎだろ。オススメ。」




第六話 「 COSMIC MAGIC SHOOTER 」

東方頭文字D外伝 峠の白兎 --Rabbits dream of becoming HASHIRIYA--

 

この作品は東方二次創作作品です。

キャラ崩壊、設定崩壊等にご注意願います。

この作品は作者の妄想で出来ています。

素人並みのクルマの知識、誤った情報等にご注意願います。

 

 

 

 

この物語はフィクションであり、

登場する人物・地名・団体名はすべて架空のものです。

車の運転は交通ルールを守り、

ゆっくり安全運転を心がけましょう。

 

 

 

 

朝靄が薄くかかる宮ノ内湖にかかる橋のたもと。上り勾配のあるカーブの隣にちょっとした駐車場がある。

 

そこに、一台の車がアイドリング状態で止まっている。くすんだ銀色のような、ガンメタの車体。

怪しく光るテールランプに 大きなリアウイング。GC8 セダンである。

 

その駐車場に 橋を越えて車が一台迫ってきた。白い ステーションワゴン。厳ついフロントマスク。カローラフィールダーだ。そのフィールダーは 駐車場に迷いなく入ると、GC8の隣に停まった。

 

 

GC8の持ち主が 運転席から降りて フィールダーの運転手に声をかけた。

 

 

 

清蘭 「おはようございます、てゐさん。 お待ちしておりました。」

 

 

 

 

 

 

 

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 第6話「 COSMIC MAGIC SHOOTER 」

 

 

 

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大黒天パーキングエリア。K県の沿岸部、輸出港にほど近い所にあるパーキングエリアである。

高速のジャンクションのど真ん中にあり 周囲を高架に囲まれたそのPAは本来であればただのPAであるが、土曜の夜ともなると一般車は消える。最高速、ドラテク、ルックス、サウンド。ここはアピールすることは違えど、昔からクルマ持ちの目立ちたがりが集う場所。毎週末が車の祭典となるステージなのだ。 

 

 

その駐車場のはずれの一角に 白い鷹目インプレッサワゴンが停まっている。魂魄妖夢の愛車だ。そこへ白いカローラフィールダーが近づいてきて すぐ隣に停めた。

 

妖夢 「こんばんはてゐさん。お疲れ様ーーーあれ?鈴仙さん?乗ってきたんですか?」

 

 

鈴仙と妖夢とてゐはこの夜 大黒天パーキングエリアで集まろうと約束していたのだった。だがしかし 鈴仙は自分の車の車で来たわけではなく、てゐの車に乗ってきたようである。

フィールダーの助手席から降りた鈴仙。その顔はどこか元気がない。

 

 

鈴仙 「うん。ちょっと。いろいろと・・・・あってね・・・・」

 

妖夢 「鈴仙さん、目が死んでますよ。」

 

てゐ 「うん。まあ。しょうがないっていうか。ちょっとそっとしておいてあげて。」

 

妖夢 「 ? 」

 

 

 

 

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かれこれ一週間ほど前のこと。

 

D坂道。いつもの練習コース。鈴仙が愛車、シルビアS15を飛ばして、峠を攻めていく。

 

 

 「ファガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

  「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

後を追うのは 白いスカイラインR33GTS4ドア。レティ・ホワイトロックの愛車である。

 

レティ「くっ、なんて速さ・・・・・コーナーでついていけない!」

 

 

S字コーナーを勢いよく回り込んでいくシルビア。後続のR33GTSも勢いよくコーナーへ侵入するが、ラインが膨らみ、立ち上がりで置いていかれてしまう。

 

レティ「流石ね・・・・あの走りならば、もしかしたら・・・・・・」

 

 

短いストレート。暗闇へと吸い込まれるように 先のコーナーへと曲がっていく白いシルビア。シルビアを見送り、レティはR33のアクセルを抜いた。暗闇の先を見つめながら、レティが呟く。

 

 

レティ「・・・とても私じゃ敵わないわね。ま、仕方ないか。・・・・あの子にはもっと上を目指してもらわないと。鈴仙。「本物」はとてもこんなもんじゃないわよ?」

 

 

鈴仙 「・・・・・・・・・・・」

 

 

  「ファガアアアアアアアアアアアアア・・・・!!!」

 

 

連続コーナーを猛スピードでクリアしていくシルビア。暗いD坂道の谷に、咆哮が木霊していく・・・・

 

 

 

 

 

 

しばらくして。 鈴仙とレティの車はいつものコンビニの駐車場にゴトゴトと入ってきた。

 

 

寅丸 「おかえり~。どう? 鈴仙さんなかなか速いでしょう?」

 

レティ「確かにね。私じゃ敵わないわ。完敗よ。」

 

鈴仙 「いえ、そんな・・・・」

 

寅丸 「鈴仙さん、速くなってるんですよ。いつもマメに練習しに来てますし、もう私なんかより圧倒的に速くなっているでしょう。あ、知ってます?この前 私 レティさんとバトルしてみたんですけど、やっぱレティさんには敵いませんでしたね。」

 

レティ「ちょっとやめてよ。私だってお世辞にもこの広い峠の世界じゃ速いほうじゃないんだから。」

 

駐車場の片隅で談笑する三人。この日は金曜夜ということもあり、寅丸星、鈴仙、レティしか来ていない。てゐもこの日はD坂道に姿を出していなかった。

 

 

寅丸 「こんな日でも練習に来るの鈴仙さんぐらいですよ。そりゃ速くもなりますよ。人一倍がんばっているんですから。」

 

レティ「そうね。さっきの走りもなかなかのモノだったし。」

 

鈴仙 「・・・・・・・・・・・」

 

 

レティ「 このチームで一番速いのは 鈴仙なんじゃないかしら。このチームの代表選手は鈴仙で決まりね 」

 

 

鈴仙 「なっ・・・!  ・・・・・!!!」

 

 

急に言葉に詰まり、下を向く鈴仙。

 

寅丸 「 あ。」

 

レティ「 ? 急にどうしたの? 」

 

鈴仙 「いえっ・・・・ 何でもありません。 ちょ ちょっと走ってきます。練習しに。」

 

レティ「 え? じゃ 私も・・・」

 

鈴仙を追おうとしたレティの肩を掴み、引き留める寅丸星。振り返ったレティに 星は黙って横に首を振ってみせた。

 

 

  「ブガアアアアアアン、バアアアァァァァアアアアアアア!!」

 

 

D坂道の奥へ加速していく 鈴仙の白いS15シルビア。 見送る二人。

 

レティ「 あ、あのさ、私 なんか悪いこと言っちゃった? 」

 

寅丸 「う~ん 今のは彼女にはちょっと禁句だったと言うべきですか・・・ 鈴仙さんも抱え込み過ぎだとは思うんですが・・・ 」

 

レティ「 ショボンヌ  」

 

 

 

寅丸 「 鈴仙さんは鈴仙さんで 目指してるものがあるんですよ。 そこに手が届くまでは 何を言われてもうれしくないんです。 今 私達にできるのは見てることだけ。そしてホントにくじけそうになった時に 手を差し伸べることだけです。 」

  

 

 

 

 

 

  「キアアアアアアァァァァ   バガアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

暗闇の中 連続コーナーを攻めていく鈴仙のS15。トンネルを抜け、長いストレートに入り、一気に速度が上がる。

 

 

鈴仙 「(・・・・わかってる。 自分が 速くは なってること。でも足りない。まだ届いてない。アイツには・・・・!!)」

 

眼前に迫る左タイトコーナー。ブレーキングを行うシルビア。赤いテールランブが光る。

一瞬、鈴仙の目に浮かぶ、白いフィールダーのイメージ。先に、一気にコーナーに飛び込む。

 

 

鈴仙 「!!!・・・・くっ!!」

 

 

続いて現れるS字コーナー。なぞるように攻めていくシルビア。

 

 

鈴仙 「(・・・・なんで さっき何も言えなかったんだろう・・・ 悔しいのは てゐだから? それともフィールダーだから? 分からない・・・・  私も・・・私もあのカローラよりも遅いのを認めるのを 怖がっているんだろうか・・・ )」

 

 

S字コーナーを超え 右コーナーを抜けるとストレート。その先は林の木々に隠れた左のブラインドコーナー。

 

 

鈴仙 「(私が速くなりたいのは アイツに負けたくないから? それとも・・・それともカローラフィールダーに負けたくないから・・・? でもそんなの・・・・そんなの・・・・!!)」

 

 

勢いよくストレートを抜け、左タイトコーナーへと飛び込んだ、その瞬間、

 

 

鈴仙 「 !!!!!!!! 」

 

 

鈴仙は シカと 目が合った。

 

 

鈴仙 「 !!!! しまっ・・・!!!」

 

 

思わずサイドブレーキを引いた鈴仙。シルビアは 滑って思いっきりコーナー外側へと弾け飛んだ。

 

 

 

  「キイアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 

 

 

 

 

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てゐ 「 まぁ、自信過剰だと集中力なんて大概散漫になっちゃうからね。 実はあそこのコーナー、左っ側畑で右側は木切り払われてて、シカのいい餌場になってるんだよなー。周りは木がうっそうと生えてて完全にブラインドコーナーになってるし。」

 

鈴仙 「人の事故のハナシ勝手にペラペラと喋ってんじゃねーよ。」

 

妖夢 「でも!鈴仙さん!大丈夫だったんですか!?ケガとか!?」

 

鈴仙 「 え? ああうん。意外とケガとかはしなかったわ。失速しながらガードレール突っ込んだだけだったし。」

 

てゐ 「私はあそこでスイスポがヨコに転がってるのを見たことがある。」

 

鈴仙 「私は別に大丈夫だったんだけど、車がね・・・・ 星さんとレティさんがすぐ助けに来てくれて 事故処理はすぐ片付いたんだけど・・・ 」 

 

スマホをいじり、写真を出す鈴仙。

 

妖夢 「あ・・・ ボンネットが くの字に浮いちゃってるじゃないですか・・・ これ、前バンパーが・・・・ 」

 

鈴仙 「もう完全にボッキリよ。お店のひとが バンパーは余ったヤツがあるから大丈夫だって言ってくれたんだけど、問題はライトと骨でね。ヘッドライトってちゃんとしたの残ってるの少ないから 結構値段かかっちゃうんだって。」

 

てゐ 「鈴仙がシルビア買ったトコのお店って なんかシルビア専門のショップみたいなお店なんだよね。そこで修理とか改造とかも引き受けてくれるんだって。」

 

妖夢 「じゃあ、直して乗り続けるんですね。でもどれくらいかかるんです?修理に・・・」

 

 

鈴仙 「 ざっと 60万コース。 」

 

 

妖夢 「 え? 」

 

 

鈴仙 「妖夢、前に言ったことない? 前置きインタークーラに改造しないと 馬力上げられないって。せっかくだから、インタークーラーも改造することにしたの。前っ側の骨も直して、冷却系大改造とコンピューターも書き換えて60万。仕方ないのよ。」

 

妖夢 「ま・・・ またそれは すごいですね・・・・」

 

鈴仙 「もう決めたことだし。部品とか届くのに時間かかるから、しばらくは車なしだし。さあ、こんな話より あっちの方見にいかない? 」

 

 

駐車場の真ん中の方へ足を向ける鈴仙。てゐと目を見合わせる妖夢。黙って肩をすこし上げて見せるてゐ。

駐車場の真ん中の方では、ひときわ華やかなカスタムカーの集団が集まってきていた。

 

 

  「グアアアアアアン  ガリッ ガリッ ガガガガガガッ・・・」

 

 

てゐ 「おうおうおう 擦ってる擦ってるw」

 

鈴仙 「よくあそこまで下げられるよね。ここで引っかかるの分かってるのに。」

 

 

大黒天PAの駐車場では 真ん中を広めの歩道が通っている。その歩道は車道よりも一段高く造られていて、車道を進んできた車は一段高い歩道を乗り越えて進まなくてはいけない。一般車ならば難なく乗り越えられる段差だか、ギリギリまで車高を下げている車では できるだけ擦らないようナナメに車を突っ込んでも、段差にエアロがひっかかりゴリゴリ音を出してしまうのだ。

 

 

妖夢 「ルックス重視だとはわかってますけど ベッタリ下がってる車見るとやっぱカッコイイと思っちゃうんですよね。あれ、シルビアだ。オープンカー・・・?」

 

鈴仙 「ヴァリエッタ ね。S15シルビアはオープンカーモデルも作られてたの。それがヴァリエッタ。もちろん数は少ないハズだけど・・・」

 

妖夢 「でもシザーズドア(開くと縦に上へ上がるドア)じゃなかったでしょう? これ改造してつけたんですかね?」

 

一行は 蒼いS15シルビア ヴァリエッタの前で止まった。妖夢の言う通り、ドアがシザーズドアになっており上に跳ね上げられている。GTウイングやサイドエアロもついていて、屋根はオープンにしてエンジンルームが見られるようボンネットも開いて展示してあった。

 

てゐ 「わぁお。ナカすっごいキレイ・・・」

 

妖夢 「ホント。これエンジンとか降ろして塗りなおしとかしないと無理じゃないですか?まっぶしいぃ・・・」

 

鈴仙 「ねえ・・・・ あそこに置いてあるの、橙ちゃんの車じゃないかしら?」

 

てゐ 「 ん? 」

 

 

鈴仙は 蒼いヴァリエッタの2,3台先に、見覚えのある赤いRX-8が停まってるのを見つけた。ちょうどその時、助手席に頭を入れてゴソゴソと荷物をいじっていた車の持ち主が頭を出した。橙だ。

 

 

橙  「 ふう。 」

 

鈴仙 「 あ。やっぱり橙ちゃんだ。」

 

橙  「(!! げえっ!?)」

 

 

橙は思わぬ面会に内心動揺しつつも、それをおくびにも顔に出さず笑顔で応えた。

 

 

橙  「あ、鈴仙さんじゃないですか。き、奇遇ですね。こっちにも来るんですか?」

 

てゐ 「 じーー 」

 

橙  「やだなあてゐさんそんな目で睨まないで下さいよう。あのゲームも勝ったんでしょう?橙は信じてましたよ。てゐちゃんは絶対負けたりしないって。」

 

てゐ 「どうだか。」

 

鈴仙 「橙ちゃんはよくここに来るの?」

 

橙  「 え? イヤ、たまにですよたまに。」

 

そういいながら視線を逸らす橙。その視線の先には、隣に停まっていたランエボⅦがいた。

車体はオレンジ色だか、カーボンボンネットとトランクが黒色になっている。派手なGTウイングと大きなフロントカナード。吸気孔が大きいフロントバンパーも純正品ではない。車高も決まり一目でかなり改造されていることが分かるランエボⅦであったが、それ以上に そのランエボは強い強者のオーラを放っていた。

 

 

妖夢 「わーー。このランエボも なんかすごい気合入ってますね。」

 

橙  「 ム。 と、当然ですよ。この車はサーキットのコースレコードも出した車なんです。ファクトリー製作のデモカーで、そんじょそこらの改造車とは訳が違うんです。」

 

鈴仙 「 え? 橙ちゃんこのランエボの持ち主と知り合いなの? 」

 

橙  「 え  あ  いや、知り合いというかなんというか。」

 

ランエボⅦに回り込み、中を覗き込む妖夢。

 

妖夢 「うわ。ドンガラ2シーターになってる。私も4WD乗ってるけど、やっぱ重たい感じは否めないからなあ やっぱりこれぐらい思い切っていじっちゃった方がいいのかな?」

 

てゐ 「リアシート外した程度じゃあまり重量減らないって聞いたけどね。4WDで幅デカイ車軽量化するのはやっぱり大変なんじゃないかなあ。」

 

鈴仙 「でも馬力は十分以上あるんじゃないの? 車が重くてもそれを上回るパワーがあれば、やっぱり速くなれるんじゃない?」

 

てゐ 「う~ん。そうなるとやっぱりコーナーでどう曲がるか ってのがカギになるのかな 結局ドライバーのウデ次第 ってことになるんだろうなあ。」

 

鈴仙 「どう曲がるか ねえ・・・・  てゐはさ、やっぱ意識してるの?あの走り方。」

 

妖夢 「すごいですよね。あのコーナーの曲がり方。あの走りって4WDでもできるんですか?今度私の車乗って教えて下さいよ。」

 

てゐ 「それは無理だよ。私マニュアル車乗れないし。」

 

 

ふーっ と深呼吸するてゐ。一呼吸おいて話始める。

 

 

てゐ 「意識してることはあるよ。前輪が駆動するクルマだったら多分通用する話だし、重い4WDでもできると思う。FR車でもできなくはないんじゃないかな? でもそれが 絶対的に速い走らせ方だとは思えないし、間違ったやり方かもしれない。」

 

妖夢 「でも現状、てゐさんはそのやり方で私達なんかより圧倒的に速くなってるじゃないですか。もったいぶらないで教えて下さいよ。」

 

橙  「・・・・・・・・」

 

 

てゐ 「うん。まあ。でも私が意識してるのって、結局はコーナーでどうフロントに荷重移動させるか、ってことだと思うんだよね。」

 

 

妖夢 「あ。それは聞いたことあります。スローイン、ファストアウト。ブレーキを踏めば荷重は前へ移るから、ブレーキを残してコーナーへ侵入して、ブレーキングしながら切り込んで・・・ 」

 

てゐ 「 ん? それなんか違うな。コーナー入ってからはブレーキングなんかしちゃ駄目だよ。コーナリング中は前輪が駆動した状態じゃなきゃ。」

 

妖夢 「 え? 」

 

てゐ 「う~ん、なんて言えばいいのかな、横向きの力を作るっていうのかな。FF、っていうか前輪が回る車なら、前輪を切った状態で うまくアクセルで力を加えて、横向きへ蹴り込む力を作ることができる。」

 

妖夢 「たしかに前輪が回ってればその力を曲げるのに使いたいのはわかりますけど、そう簡単にいくものですかね?そもそもアクセルオンしたら、車体は後ろへ傾いて、フロントタイヤの荷重は抜けてコーナーで滑りやすくなるんじゃないですか?」

 

 

てゐ 「そう。そこが難しいトコロなんだよね。う~ん、すべては感覚だ、って言っちゃえば終わりなんだけど。シビアだけど、ブレーキ状態でも、加速状態でもダメなんだよ。

つまりその曲げる力を生み出す時は 前輪に適度に荷重が載ってないといけないんだよね。フルブレーキしてるような状態じゃ、載りすぎてて前方向へ滑っちゃう。加速してる状態じゃまったく載ってないしね。ストレートからコーナーに入る地点、ブレーキちょっと入れて、放してふっと何かが自由になった瞬間、舵角とアクセルを入れてあげれば、車は面白いように曲がる。」

 

妖夢 「え・・・?そんなもんなんですか?」

 

橙  「そんなことしたら、普通コーナー外へすっ飛んでいきそうですけど。大体そのやり方があのフィールダー以外で使えるかなんてわからないんでしょ?」

 

てゐ 「まあね。4WDなんて乗ったこともないし、本当にウチのやり方が通用するかわからないウサ。いずれにしろ、練習することだね。その曲げ方だってやろうとすれば難しいことわかるだろうし、クルマによって、なんていうか・・・前輪に荷重かける感覚も変わるし。私なんか7年間 カローラセダンで・・・」

 

 

 

?  「 橙。 そこで何をしている。 誰と話している? 」

 

 

橙  「!!   ・・・・藍様・・・・!!!」

 

 

鈴仙 「・・・? 橙の知り合い?」

 

鈴仙が声の方向へ目を向けると、声の主が一団を引き連れ、こちらに歩いてくるのが見えた。背の高い、金髪のショートヘアに狐耳。九尾の大きな尾。鋭い眼差しの蒼い瞳。 八雲 藍だ。

 

 

鈴仙 「あ・・・ えっと、はじめまして。橙の、えっと、走り屋仲間の、鈴仙と申します。」

 

藍  「走り屋仲間?」

 

橙  「( げえっ しまった・・・!)」

 

眉を顰める藍。

 

藍  「橙。どういうことだ。」

 

鈴仙 「あ、あれ?聞いてませんか? 橙ちゃんとはD坂道で時々ご一緒させてもらってるんですけど・・・」

 

藍  「・・・・フン、なるほどな。最近姿を見せなくなったとは思っていたが、峠なんぞに遊びに行っていたのか。」

 

鈴仙 「(峠・・・なんぞ?)」

 

 

橙  「すいません藍様。橙は、すこしでも自分の見聞を広げたくて、ちょっと峠の方で修業してただけなんです。」

 

藍  「橙。お前の積極性は十分褒めるべきだろう。だがな。そんなことは必要ない。」

 

妖夢 「・・・・・・・・・・・」

 

 

 

藍  「本当に速い走り屋は 本当に速いマシンを乗りこなせる者のことをいうのだ。たかが一般道で、「それっぽい車」に乗って、イキがってるバカ共と一緒にいると、間違ったことばかり覚えるぞ。」

 

 

 

鈴仙 「!!」

 

妖夢 「なっ・・・・!!」

 

てゐ 「・・・・・・・・・・・・・・」

 

 

妖夢に目線を移し、言葉を続ける藍。

 

 

藍  「お前は何に乗っておるのだ?」

 

妖夢 「う・・・ インプレッサワゴン・・・・ 鷹目のインプワゴンですけど・・・」

 

藍  「解せんな。せっかくの4WD車なのに、何故あんな無駄に膨れた重たいワゴン車など買うのだ? あんなの買うぐらいなら、せめて同世代のWRX STIセダンでも買うべきだ。ああ、金がなかったのか。お前は?」

 

 

反論の余地も与えず、今度は鈴仙に尋ねる。

 

鈴仙 「シルビアS15 ターボです。」

 

藍  「S15? ホイールアーチが長くて小回りが利かず、ドリフトするぐらいしか能がないあれか?2駆だし パワーもないし話にもならん。写真でも撮って飾っとくんだな。お前は?」

 

てゐ 「・・・・・・・・・・・」

 

鈴仙はこの時、自分の車がどう言われようがどうでもよかった。鈴仙は青ざめた顔でてゐの方を見た。てゐはランエボⅦのタイヤを見つめ、黙っている。

 

 

藍  「おい お前だよお前。お前は何に乗っているんだ?」

 

てゐ 「 ・・・・フィールダーだよ。 」

 

藍  「 ? ふぃいるだあ・・・・? 」

 

 

てゐの車を聞いて、藍の後ろに控えていた取り巻き達もぼそぼそと騒ぎ始めた。

 

モブ 「え?フィールダーって言ったか?」

 

モブ 「え、えっと、カローラのワゴンモデルだよな?」

 

モブ 「カロゴンかよ。よりにもよって。」

 

 

早苗 「は~い、早苗知ってます~。フィールダーって、カローラのことですよね。最近のおっさん臭いヤツ。まさかそんな車でこの時間の大黒天きたんですかぁ?おっかしいな~。この時間はココ一般車なんて出入りしないはずなのに~。」

 

 

藍  「早苗か。お前こそ 人のこと言えるのか新入りめ。」

 

早苗 「やだなあ。私のだって銀色のV35型のスカイラインクーペですけど、400馬力にしたんですよお。何より、わきまえてます。私だったら恐れ多くて藍様のこのランエボⅦの前で、この車が速いかどうかなんて、無粋な話はしませんよ。」

 

 

思わず後退りして、オレンジ色のランエボから離れる妖夢。

 

藍  「で、えっと、カローラだったか?まあ、おそらく親の車かなんか借りてきたのだろう。そんな車で飛ばすんじゃないぞ。刺さってたら哀れ過ぎる。」

 

取り巻きのモブから笑い声が漏れた。

 

 

てゐ 「私はそんな飛ばさないよ。別に走り屋って訳じゃないし。」

 

 

藍とは視線を合わせず、歩き始めるてゐ。

 

 

てゐ 「 鈴仙。行こう。 」

 

鈴仙 「ちょ ちょっとてゐ・・・!」

 

 

橙の方を見やる鈴仙。橙は借りてきた猫のように縮こまって押し黙っている。

 

妖夢 「鈴仙さん行きましょう。」

 

立ちすくむ鈴仙の腕を妖夢がとった。そのまま鈴仙は、元居た方向へと引っ張られるように連れられていった・・・・

 

 

 

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鈴仙 「ちょっとてゐ!何で何も言い返さなかったのよ!」

 

てゐ 「言い返す?あの場で「自分の方が速い」とでも主張する気?無駄だね。どんないい車並べたとしても、それを主張できるのは走らせた時しかできない。」

 

鈴仙 「でも、あんなの悔しいじゃない。あのまま引き下がるなんて・・・・!」

 

てゐ 「 鈴仙。」

 

てゐは振り返り、鈴仙はてゐと目が合った。その瞬間、てゐのドス黒い瞳に 鈴仙の背筋は凍り付いた。

 

 

 

てゐ 「ただ並べるだけで 「この車は速い」と証明できる方法があるなら 是非とも私が知りたいね。」

 

 

鈴仙 「・・・・!!」

 

てゐ 「それにね、あの人は、おそらく相当速く走る走り屋だよ。あのランエボ・・・。鈴仙、本物のよく走り込んでる走り屋の車を見分ける方法って、何だと思う?」

 

 

鈴仙 「え、えっと・・・」

 

妖夢 「確かにいいマシン乗ってても速く走るかどうかは別ですし、いいチューンパーツつけててもルックスでつけてる人も 気休めでつけてる人もいますもんね。案外外見だけで見分けるのは至難技かも・・・ 」

 

鈴仙 「まさか カンとか言わないでしょうね?」

 

てゐ 「タイヤだよ。あのランエボ、タイヤ幅が280超えてたのに つんつるてんだった。」

 

妖夢 「 え? それって単に・・・・」

 

てゐ 「ただ変えてないから そうなってるんだと思ったら大間違いだよ。細かい擦り傷に 熱ダレした跡の細かい皺。タイヤは嘘はつかない。あの車は相当タイヤを酷使して飛ばしてる。あの幅のタイヤをあれだけ消耗させるってことは それだけ速いってことだ・・・」

 

 

 

ナズ 「ふうん。流石じゃないか。タイヤに着目してそこまで分析できるだなんて。」

 

 

てゐ達一行が自分達の車の近くまで戻ってきた時、ひょっこりとナズーリンが顔を出した。

 

 

鈴仙 「あれ、あなたは・・・」

 

てゐ 「おま・・・お前もここによく来るのか。」

 

ナズ 「たまたま見覚えのある車を見つけてね。待ってれば戻ってくるだろうと思って待ってたのさ。その、なんだ、あまり顔を合わせたくない連中もいるしね。」

 

ナズーリンは今度は鈴仙に向かって挨拶した。

 

 

ナズ 「君が鈴仙だね?寅丸 星から話は聞いているよ。なんといえばいいか、車のことは災難だったね。こんなものしかないが・・・見舞いの品だ。良かったら受け取ってくれないか?」

 

鈴仙 「え・・・ あ、ありかとう、ん?何これ? 」

 

ナズ 「D坂道の峠ステッカーだよ。D坂道の真ん中の宿屋で日中売ってるんだか、夜D坂道に来る君はめったに買えないだろうと思って余分に買ってきたんだ。とりあえず一式な。関東中心に有名な峠はデザイン共通でステッカー出てて、それぞれの峠へ行くと買えるんだ。興味がでたら峠めぐりして集めると面白いと思うよ。」

 

てゐ 「(なずりん・・・こういうの好きそう。)」

 

鈴仙 「 へ~~ 」

 

妖夢と一緒にステッカーをまじまじと眺める鈴仙。

 

 

ナズ 「橙のグループのあの大将、八雲 藍というんだけどな、てゐ、お前の読み通り、アイツは速いよ。サーキットであのランエボⅦを駆ってコースレコードを出したこともあるんだ。その名声であのグループに入るヤツもいる。でもな、私はどうもあの性格が性に合わなくて、距離を取ることにしてるんだ。」

 

てゐ 「それに関しては同感だな。て、ことはヤツのホームコースはサーキットか。」

 

ナズ 「たまにW岸線やらS都高周回とかもやってるらしい。リミッター開放は言わずもがな。あと、あまり峠を走ってる、って話は聞かないな。どうも峠の連中を毛嫌いしているようだ。」

 

 

妖夢 「あれ?これもう一セット入ってますよ・・・「大地蔵ライン」・・・・?」

 

ナズ 「ああ、それな。Y県に「大地蔵ライン」っていう峠道があってさ、そこの店でもその峠ステッカーを販売してたんだか、店主が入院して長期休業になってさ・・・ それで今「大地蔵ライン」の峠ステッカーもD坂道で売られてるんだよ。ついでに買ってきた。」

 

鈴仙 「う~~ん。でも行ってない分の峠ステッカーまでゲットできちゃうのは何かな~ 」

 

てゐ 「あれ~~ そいえばわたしの分は~~?」

 

ナズ 「知らん。自分で買ってこい。」

 

鈴仙 「あれ? てゐもこの峠ステッカー 集めてたりするの?」

 

てゐ 「峠行った先で時間があったらちょこちょこね。でもあんま集まってないんだよな~。D坂道でてたのも知らなかったし。五丸峠でシリアルナンバー入りのヤツたまたま買ったぐらいで・・・」

 

妖夢 「ああ、あの峠ステッカーシリーズって五丸峠が一番初めで、100枚ほどシリアルナンバー入りのが出たんでしたっけ。」

 

ナズ 「当時はここまで広がるとは誰も思ってなかったから見向きもされてなくて 後から人気出て 「幻の100枚」とか言われてるよな。てゐのは何番なんだ?」

 

 

 

てゐ 「 999番 」

 

ナズ&妖夢 「 え!? 」

 

妖夢 「そ・・・それ 111番から999番まで9枚しか出なかったとかいうマボロシのゾロ目シリアルナンバーステッカーの ラストナンバーじゃないですか何で持ってるんですかそんなの」

 

ナズ 「発売初日10分で完売したって聞いたぞ!?どうしたんだよそれ!?」

 

てゐ 「え、えっと? 朝早く峠道途中のお茶屋さんに立ち寄ったら、なんか一枚寂しく売れ残ってたからつい」

 

妖夢 「 つい!? 」

 

 

鈴仙 「あの~~ 盛り上がってる所申し訳ないんだけど~~」

 

てゐ 「お、おう、鈴仙。タスケテクレアイツラコワイ。」

 

鈴仙 「てゐはこの「大地蔵ライン」って所も知ってるの?」

 

てゐ 「うん?まあ場所はだいたいわかるけど行ったことはないかな。」

 

鈴仙 「ちょっと頼みがあるの・・・ 今度の週末さ、てゐの車で、この「大地蔵ライン」って所、連れてってくれない?」

 

てゐ 「 へ? また何で・・・・?」

 

戸惑うてゐの後ろで、二人が大きく頷いた。

 

妖夢 「なるほど。いい気晴らしになると思いますよ。」

 

ナズ 「車がないからといってじっとしてモンモンとしてたら気がめいってしまうからな。てゐ。せっかくだから連れてってやれよ。」

 

鈴仙 「ステッカーだけ持ってて峠道いってない っていうのはやっぱおかしいと思うの。もちろんてゐ次第だけど・・・」

 

てゐ 「ふ~む まあまだ行ったことない道だし 一回行ってみるのも悪くないか・・・」 

 

 

てゐが納得して大地蔵ラインまでのルートに思いを巡らす中、鈴仙は、てゐの姿を見つめながら考えこんでいた・・・

 

 

鈴仙 「(これで、てゐの運転を真横で 峠で、見ることが出来る。さっきの話もそうだけど、てゐの運転には てゐ独特の感覚を使った手法が多すぎる。ちゃんと見て、ちゃんと覚えなきゃ・・・ 少なくとも、間近で見れば、何かわかることがあるはず・・・!)」

 

 

 

 

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その一週間後。

 

 

鈴仙はてゐの操るフィールダーに揺られながら 前をゆっくり走るステップワゴンのテールランプをぼんやり眺めていた。

 

 

鈴仙 「( う~~~ん )」

 

てゐ 「ツイてないよね~~ 出てからここまで遅い車に捕まってばっかりだもの。」

 

てゐは鈴仙を拾った後、峠道を選んで山二つ超えてここまできたが、どうもこの日の日曜朝はレジャー客が多かったらしく、ほぼ全区間で遅い車に追いついてしまっていた。てゐも煽らず抜かさずのままだったので、トロトロスピードで大地蔵ラインの入口まで来てしまったのである。

 

 

 

てゐ 「もうすぐ大地蔵ラインの入口近くなんだけど、このままノロノロ走るんじゃ楽しくないしなー。車停めてまってみるか、折り返してからもう一度走るか・・・ この先のバタ山村役場の信号で曲がってくれればいいけど・・・ あ、曲がるのか。」

 

鈴仙 「・・・!」

 

 

 

 

前を走るステップワゴンがウインカーを出した。クリアになった車線を、信号を超えて快走するフィールダー 。

 

てゐ 「よ~しよ~し。メインデッシュの大地蔵ラインはストレスなく攻められそうだな。」

 

 

  「ファガアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

鈴仙 「(・・・やっと前走車が消えた・・・ てゐがホンキで走り始める・・・・! それにしても・・・ )」

 

 

隣のてゐの姿に 目を走らせる鈴仙。

 

 

鈴仙 「(さっきからずっとワンハンドステア・・・ これはてゐのスタイルなの? ワンハンドステアはギア操作を常に行えるって点で有利だとは聞いているけど・・・)」

 

 

緩やかな右コーナーをクリアしていくフィールダー。てゐは左手はそのままで 右手だけでハンドルをひょいと切り、コーナーを曲がっていく。

 

 

鈴仙 「(この車はCTV車でギア操作はそんないらないし、てゐが乗ってたのはAT車だけのはず・・・ ワンハンドステアなんて意味あるの?)」

 

 

  「ファアアアアアン アン ガアアアアアアアア」

 

左コーナーへと迫るフィールダー。てゐは一瞬コーナー入口でアクセルを緩めると、すかさず踏み足し、同時にステアリングを切ってコーナーを曲がっていく。

 

 

鈴仙 「今の・・・・ 一瞬アクセル抜いたのはエンブレ掛けたってこと? あれだけで前方へ荷重移動したってこと?」

 

てゐ 「 そ。 わかりにくいからブレーキ軽くかけた方が荷重移動させやすいけど、荷重移動の感覚さえ分かればアクセル操作だけで前輪に荷重乗せられるんだよ。私なんかはへたっぴだからカーブの途中でアクセルオンオフ繰り返して 途中で抜けた前輪の荷重を無理やり乗せたりするんだけど。えっと・・・こんな感じかな?」

 

 

緩やかなコーナーの途中で 踏み足しながらコーナーを抜けていくてゐ。

 

 

てゐ 「本当なら一度コーナー入口で態勢作って侵入したら、踏み足さずに緩やかにアクセル開けて抜けてくのが キレイで速いんだろうけど。それにはコーナー形状完全に暗記してないといけないし、やっぱもっと精進しないとなあ。」

 

鈴仙 「・・・ハンドルは 切ったら一定なのね・・・ 」

 

てゐ 「うん。切ったら極力そのままかな。あとはアクセル操作だけで曲げるイメージ。とはいってもやっぱそれも理想論で、実際には切り足しちゃう時もあるんだけどね・・・」

 

鈴仙 「ふ~ん。理想論、ねえ・・・」

 

 

鈴仙 「(・・・やっぱり、てゐの言う「荷重移動の感覚」っていうのがキモなのかしら・・・ それを完全に覚えられれば、どんな車でも速く走らせられるの?どんな車でも・・・ そう、もし・・・・)」

 

 

 

再び黙り込みフィールダーの揺れに身を任せる鈴仙。フィールダーは大地蔵峠の最高点へ向けて加速していった。

 

 

 

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カローラフィールダーは大地蔵ラインの最高点を超え、コースの終盤へと差し掛かっていた。

 

鈴仙 「ここら辺まで降りてくると、随分道もリッパになってるわね。コーナーは大振りだし、道幅も広いし。」

 

てゐ 「最近になって付け替え工事やったんだろうなー。もう麓近いけど。」

 

民家も並ぶようになった道の先、コーナーの向こう側から白いセダンが姿を現した。正面に大きい黒いグリル。がっちりした車体。新しく、颯爽とコーナーを曲がってくるマシン。ランエボXだ。

 

鈴仙 「今の・・・・・」

 

鈴仙が ランエボXが対向車線をすれ違うのを確認してからぼつりとつぶやいた時、てゐはブレーキを踏んだ。

 

 

てゐ 「ちょうどいいや。ここで折り返そう。」

 

鈴仙 「え」

 

 

脇道があるT字の交差点。空いたスペースをうまく使っててゐは車をUターンさせる。

 

鈴仙 「ちょ、ちょっと、てゐ!?」

 

てゐ 「この先下ってっても大地蔵ラインはすぐ終わっちゃうし、見所ないし。ここらへんで引き返そうと思ってたんだよね。」

 

鈴仙 「そうじゃないでしょ!?アレなんだか分かってるの!?」

 

てゐ 「あん・・・ぎゃらん?」

 

鈴仙 「どうみてもランエボXでしょ!?引き返したら上りなのよ?敵うわけないでしょ!?」

 

てゐ 「別に敵うとか追いつくとか関係ないし。まあ鈴仙がランエボXだっていうなら追いついて確認してもいいけどね。」

 

鈴仙 「はあ!?」

 

てゐ 「あーー・・・ 気付かれちゃった。向こうもその気みたいだし、ダメモトでやってみるかなー」

 

 

 

白いランエボXは上りの緩やかなコーナーであるにも関わず、速度を落とし、てゐらの乗るフィールダーを待ち構えている。

ランエボXに縦に並ぶフィールダー。ランエボXの後ろ姿が眼前に迫る。

 

鈴仙 「や、やっぱこれらんえぼ・・・」

 

てゐ 「こうなっちゃった以上、もう後には引けないでしょ。乗りかかった船?うん?すこし違うかな?」

 

コーナーを抜け、短い上りのストレート。ランエボXが緩やかに速度をあげ、咆哮を上げ始める。それに追従し加速するフィールダー。

 

 

鈴仙 「だいたいてゐ、この道初めてなんでしょ!?」

 

てゐ 「逆方向走ったからだいたいパターンはわかってる。

大きなS字コーナーが続く上り前半は道幅が広く お互い走りやすいだろうけど、上り後半は道幅が狭くカーブもきつくなる。たとえ上りで追いつけなくても その先にはテクニカルな下り区間が長々と続く・・・」

 

鈴仙 「 え 」

 

猛スピードで上りのS字コーナーの橋に差し掛かる二台。長い、緩やかな右コーナーを ランエボXは加速しながら駆け上がっていく。じわり、じわりと2台の差が開く。

 

 

てゐ 「あー・・・ やっぱ馬力の差は大きいか・・・向こうは安く見積もっても280馬力。こっちの2倍はあるからなー。 重いは重いんだろうけど。」

 

鈴仙 「(馬力がどうとかそんな問題じゃない!てゐ!どういうツッコミ方してんの!?なんでっ・・・なんでコーナーで全開で抜けられるのよ!?)」

 

 

実際、その時フィールダーは全開走行をしていた。踏み足しながら ボティをロールさせ、タイヤをきしませながらの全力走行。しかし、敵わない。ランエボXの上りには敵わない。二台の差はどんどん開いていく。

 

鈴仙 「てゐ・・・アンタはスゴイわよ。だから・・・」

 

てゐ 「鈴仙。悪いけど、追いつけないかもしれない。今日は隣に鈴仙乗ってるし、ムチャなトライはしないつもり。 でもね。」

 

次第に遠くなるランエボXの影。次第に見えなくなる時間が増えていき、ついに視界から完全に消えた。

 

 

 

てゐ 「まだ できることはある」

 

鈴仙 「!?」

 

コーナー中盤でアクセルを踏み足すてゐ。しっかりとコーナー中心へと力を受け、加速しながら曲がるフィールダー。

 

  「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

てゐ 「私の速さが怖くなったら、うん なんかに掴まっていて。」

 

鈴仙 「 ヘルプ って言ってもスピード緩める気はなさそうね。」

 

てゐ 「この先のトンネルを抜けたら、急にタイトなコーナーが現れる・・・その先は道幅のせまい低速、中速区間。あのランエボXはどこまで飛ばせるかな・・・?」

 

 

トンネルに突っ込み、その出口でブレーキングを行うフィールダー。次のタイトな右U字カーブをテンポよく曲がる。

 

  「ブガアアアアアアアァァンアアアガアアアアアアアアアア!!!!」

 

てゐ 「私はどんな相手だろうと 勝とうと負けようと全力で勝負してきた。」

 

短いストレートで 咆哮を上げて加速するフィールダー。その先は左のヘアピン。一気に突っ込むフィールダー。鈴仙の目の前で ドアミラーがガードレールのギリギリを掠める。

 

鈴仙 「 ひっ! 」

 

  「キアアアアアアアァァァァガアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 

てゐ 「カローラの前じゃ、誰だろうと どんなマシンでも強敵だもの。」

 

 

タイトコーナーを飛び出し、続く右直角コーナーを一気に抜ける。

 

 

てゐ 「できることはやる。全部やって負けてやる。」

 

その次は 二連続のヘアピン。一気に切り込みながら、てゐは容赦なく攻めていく。二つ目の左のヘアピンを飛び出し、右の緩いコーナーを抜けるとストレート。

 

  「ファガアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

てゐ 「こんなマシンでも、ここまでこれる。」

 

鈴仙 「 !? 」

 

ストレートの先にいたのは ランエボXの後ろ姿。

 

 

てゐ 「それを貴様に見せつけるために ここまできた。」

 

次の右コーナーの為減速するランエボXに フィールダーがノーブレーキで接近する。ゆっくりとランエボが曲がる右コーナーに フィールダーは思いっきり切り込む。その次はタイトな左U字コーナー。フレーキングを行うランエボXにフィールダーが張り付いた。

 

 

鈴仙 「おっ・・・追いついたっ・・・!?」

 

 

重苦しそうにU字コーナーを曲がるランエボ。コーナーを抜けると頂上地点のストレート。ランエボXがフル加速して引き離しにかかる。追従するフィールダー。

 

てゐ 「う~ん? ちょっと早いな。上りで追いつけるとは思ってなかったしな。もしかしらアレ本当にギャランかも。」

 

鈴仙 「 は!?この後に及んで何言ってるの!? 」

 

 

引き離されながらもランエボXに続いて頂上地点を超えるフィールダー。下りの一つ目のコーナーで またランエボに追いつく。

 

鈴仙 「どう見たってランエボXでしょ!? あのラベルが見えないの!?  あああ・・・なんか「ファイナルエディション」のマークまで入ってるし・・・」

 

てゐ 「えー だってー イマドキマークだなんていくらでもネットで買って両面テープで貼れるんだよー あれギャランのお尻をそれらしくしてるだけでしょ。ああ・・・なんか下り入るとコーナーの処理とか遅いし。」

 

鈴仙 「あんたっ・・・アンタが滅茶苦茶なだけでしょ! エアロとかウイングとかギャランをランエボ仕立にしようとしたらいくらかかると思ってんの!?」

 

てゐ 「あ。離された。ストレートでどばっとか。やっぱターボってスゴイナ。」

 

鈴仙 「だからってノーブレーキでコーナー突っ込まないで!あたる!あたる!ランエボにあたる!もう相手のSAN値だって残ってないんだからいい加減にしなさい!」

 

 

結局。てゐは大地蔵ライン終りまで鈴仙と言い争いをしながら、ランエボXの真後ろを走り続けたのだった。

 

 

 

 

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それからしばらくして。

 

日が沈み、あたりが暗くなり始めた頃、てゐは休憩のために車を止めた。

ここはT坂峠の道の途中、崖沿いの空き地である。

 

 

てゐ 「う~ん 結構遅くなっちゃったかな?」

 

てゐが運転席から降りて伸びをする。鈴仙も車を降り、外の空気を吸って深呼吸する。

 

ここから先はT坂峠をただ下って国道に入り家に帰るだけである。鈴仙はてゐのカローラフィールダーを見やり、ため息をついた。

 

 

鈴仙 「(あのランエボXですらてゐは負かした。ホントにすごいのはてゐ自身なの?この車なの? もし私が・・・私がてゐのように、シルビアをあんな風に運転できれば 本当に速くなれるの?)」

 

てゐ 「あ~あ。でもあのギャラン、登りやっぱり早かったな~ やっぱ馬力ないと困るな~。」

 

鈴仙 「(わからない・・・ すこし気が晴れるかもと思ったけどそんなことない。もしも、もしもてゐが・・・)」

 

てゐ 「280馬力もいらないけどさ、やっぱ200馬力ぐらいほしいなって。でもさ。ターボとかスーチャとかつけるのにさ、 100万でも付けられないっていうんだから。」

 

鈴仙 「ああ。うん。そんな話してたわね。」

 

てゐ 「だからもう こいついじろうにも限界が有るんだよな どうせいくら速く走れても オートマだってのもあるし。」

 

鈴仙 「(もしも、てゐが、もっと早いマシンに乗り換えたら どうなってしまうの?)」

 

 

 

 

 

 

 

てゐ 「もう一台買おうかな。マニュアルの練習用に。」

 

鈴仙 「!?」

 

 

 

 

 

 

鈴仙 「 え ちょ ま てか金は!?」

 

てゐ 「車の修理に60万つぎ込んだヤツに言われたくないよ。」

 

狼狽する鈴仙を気にもせず、てゐは言葉を続けた。

 

てゐ 「ま、あくまでマニュアルの練習用に買うわけだし、」

 

てゐはフィールダーに目を移した。暗闇が迫り、街頭の明かりが照らす中、フィールダーは静かに佇んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

てゐ 「あんまし ハデハデなのは ヤだなあ。」

 

 

 

 

 

 

 

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携帯 「ピロピロピロピロピロ。ピロピロピロピロピロ。」

 

寅丸 「あ、聖ですか。どうですか。ランエボXの様子は。えっ!?走り屋を降りる!?何いってんですか!? は!?大地蔵ラインで上りで白いフィールダーに追いつかれた!?まさかそれって・・・ いあいあ待ってください!それはソイツが特別なだけで!自信なくすのわかりますけど! むしろ自分のことのようにお察し申しあげますけど!! 待って!ランエボ売らないで下さい!やめて!バイクに転向しないで! まったりハーレードライバーに転向しないでーーー!!」

 

響子 「次回は「 INFINITE WORLD 」です。」

 

村紗 「ゴーヴィゴーヴィゴーヴィwwww」

 

寅丸 「TEWI勢め!許さねえからなーーー!!」

 

 

 

 

 




・てゐさんのフィールダーは140馬力ほどです。

・峠ステッカーについては「ジャパン峠プロジェクト」で検索して下さい。

・よいこのみんなは峠はゆっくり安全運転で走行しましょう

質問等あれば気楽に質問下さい。指摘あればどんどん御寄せ下さい。何か・・・何かコメント・・・下さい・・・・。
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