東方頭文字D外伝 峠の白兎 --Rabbits dream of becoming HASHIRIYA-- 作:Atno108
東方頭文字D外伝 峠の白兎 --Rabbits dream of becoming HASHIRIYA--
この作品は東方二次創作作品です。
キャラ崩壊、設定崩壊等にご注意願います。
この作品は作者の妄想で出来ています。
素人並みのクルマの知識、誤った情報等にご注意願います。
この物語はフィクションであり、
登場する人物・地名・団体名はすべて架空のものです。
車の運転は交通ルールを守り、
ゆっくり安全運転を心がけましょう。
響子 「え、じゃあ鈴仙さんてゐさんの運転する車に乗って その峠いったんですか。」
ナズ 「まあな。だから今日はあの二人はこっちには来ないんじゃないかな。」
寅丸 「まあ、前も二人でどっか行く ってことはありましたけど。てゐさんの車にずっと同乗とは・・・ 羨ましいです。」
深夜。D坂道のいつものコンビニ。また寅丸星たちのチームが集まり談笑している。
村紗 「・・・前から思ってたけど、鈴仙も おとなしそうに見えてなかなかチャレンジャーだよね。」
寅丸 「え。皆さんだって速い人がいたら、その人の運転する車に同乗したいと思いませんか?」
一輪 「いや、でも。私たちがハンパな気持ちでてゐちゃんのアレ同乗したら、何がおこるか・・・」
チルノ「過呼吸?」
村紗 「コーナー三つで失神事件。」
響子 「 SAVE ME 」
寅丸 「あなた達一応走り屋のはしくれでしょう!?そんな弱気でどうするんですか!」
チルノ「恐怖で過呼吸マジ洒落にナラナイ。マジでシヌ。」
響子 「鈴仙さん・・・生きて帰ってきてくださいね。」
山の向こうの方を仰ぐ響子。その時、一行は D坂道をコンビニの方へゆっくりとあがってくる複数台のマシンの音に気付いた。
響子 「こっちへ・・・ なんかたくさん上がってきますっ!」
一輪 「なんか嫌な予感がするわね・・・・ あいつら一体・・・・・?」
レティ「・・・・・・・・・」
坂をゆっくりと上がり、次第に大きくなるエギゾースト音。緩やかなコーナーを超え、先頭の車が姿を現した。
オレンジの車体に黒いカーボンボンネット。禍々しいオーラを放つ 幅広のセダンの車体。ランエボⅦだ。
ナズ 「 !? なんで・・・ クソッ、何であいつがここに・・・・!」
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第七話 「 INFINITE WORLD 」
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「バアアアアアアアアアアアガアアアアアアアアアアアアア!!!」
深夜。T坂峠を一台の黒い車が登っていく。
黒いクーペデザインの車。4灯の丸目ライトが光る。セリカGT-FOURである。
はたて「ここがT坂峠・・・私たちのチームが遠征してきた時の為に、よく確認しておかなきゃ。」
右タイトコーナーを立ち上がってくるセリカ。その先はストレートではないが緩く道が曲がった高速セクションである。吼えるセリカ。
モブ 「うあっ! あの黒いセリカGT-FOURはまさか・・・」
モブ 「聞いたことがある・・・大清水峠のチームのナンバー3・・・姫街道はたて だ!」
モブ 「あいつら、まさかT坂峠を狙いにきたのか?」
高速コーナーを抜け、狭いブラインドコーナーへと突っ込むセリカ。
はたて「くっ、結構タイトね。このコースはヘアピンが一つもないけど、タイトコーナーは結構ある。」
「ガアアアアアアアン バガアアアアアアアアア」
上り坂のS字カーブを唸りながら駆け上がるセリカ。
はたて「普通に走ってればラクだろうけど、バトルになると話は別。高速セクションと中速セクションでの技の掛け合いになる・・・・ え?」
S字コーナーを抜け一呼吸、その瞬間にはたては後ろからのヘッドライトに気が付いた。
はたて「一台来てる・・・いや、もう追い付かれてる!まずい!」
「ファガアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
長いストレート。フル加速するセリカ。後ろの白い車との差を一気に引き離す。
はたて「どうやら馬力はないみたいね・・・この先はきつい上りのタイトコーナーが続くセクション。引き離してやる。」
左、右と切り返しながら坂を上るセリカ。その間にすこしずつ距離を詰める白い車。
はたて「少しでもコーナーがあると差を詰めてくる!こいつ何者!?」
緩い右を抜けたその先はさらに上りがきつくなる区間。その手前に街頭がある。
反射的に、後ろの車をチェックするはたて。
はたて「!! あれ、カローラフィールダー!?」
「キアアアアアアアアアアア ファガアアアアアアアアア!!!」
T坂峠随一の上り坂セクションに入るセリカ。道はまっすくではなく、右に、左に振らないといけない。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
はたて「ふめっ!踏むんだはたて!ここで負けるわけにはいかない!」
全開のセリカ。しかし後続のダレカサンのカローラフィールダーとの距離は離れない
左ブラインドコーナー。その先に現れるのはU字のタイト右コーナーである。
はたて「っうくぅ!」
コーナー入口で減速した黒いセリカに、フィールダーが張り付く。縦に並んだ状態で、次の左コーナーを立ち上がっていく。
「ガアアアアアアンガアアアアアアアアア!!」
「ファガアアアアアァァァアアアアアアアアアア!!!」
はたて「っっっくそおおおっ!!」
「バガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
ストレートに出て、解き放たれたように速度を上げるセリカ。この先は、ストレートと緩いカーブしかない超高速セクションである。
はたて「はあっ はあっ はあっ はあっ」
後続の白いカローラフィールダーはもう追ってこない。ルームミラーの闇の中へ消えていく。
はたて「追ってこないか・・・勝てた気がしない!あんなヤツが宮ノ内地区にいるなんて・・・文には報告しといた方がよさそうね。警戒しないと。」
長いストレート。惰性に任せ橋を渡る白いカローラフィールダー。
てゐ 「やはり馬力の差はいかんともしがたいか・・・やっぱ上りは無理があるよな。あ~あ。結構いい線いってると思うんだけどなあ・・・・」
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D坂道のゆるいコーナーを抜けて てゐの白いフィールダーが上がってきた。そのままいつものコンビニの駐車場に入り 車を停めるてゐ。鈴仙や寅丸星ら他メンバーは既に到着し、何やら話し込んでるようである。
てゐ 「おいっす。こんばんわ。おつかれさま。」
寅丸 「あ・・・ てゐさん。お疲れ様です。」
青ざめた表情の寅丸星がてゐの方へ顔を向けた。硬い表情で一点を見つめるレティ・ホワイトロック。真剣な面持ちの鈴仙。怒りと申し訳なさとが入り混じった、複雑な表情をしている。
てゐ 「 ? 何かあったの? 」
鈴仙 「てゐ。大変よ。 この前 大黒天PAで会った、八雲 藍ってヤツ・・・ 私達が大地蔵峠へ行ってたあの日、このコースに来たみたい。」
てゐ 「 え? 来た って まさか・・・ 」
チームメンバーの表情を見渡すてゐ。黙って首を振って見せる一輪。レティは ごくっと生唾を飲み込むと、淡々と話し始めた。
レティ「一応、その場のメンバーの中で 一番馬力ある車乗ってたの私だし、私のスカイラインGTSで相手することにしたの。でも・・・ 全然駄目だったわ。ストレートでも コーナーでも突き放されて・・・ せめて、もうちょっと・・・・」
寅丸 「レティさんは何も悪くありませんよ。こういう時だってあるさ ってことです。」
鈴仙 「負けたって・・・ 何かペナルティとかあるんですか?」
寅丸 「別に。ウチのチームは弱いって評価は広まるでしょうけど、それで寄って来る輩がいたらまた戦えばいいだけです。ただ・・・ ただ、アイツは言い残していきました・・・・」
あの夜の光景を思い出す寅丸星。愛車の白いR33GTSスカイラインの隣で 下唇を噛んで佇むレティ。踵を返し、ランエボⅦの方へ歩いていく八雲藍。
藍は マシンのドアに手を掛け、その黄色い瞳をギラつかせながら振り返り、こう言い放った。
藍 「あいつらにも きっちり伝えておけ。 もう橙には近づくな。そしてそのツラとダサイ車を大黒天で見せるな と。」
鈴仙 「 !! 何よそれ・・・・!! 」
てゐ 「・・・・・・・・・・・・」
レティ「ごめんなさい。私がもっとしっかりしてれば・・・」
鈴仙 「レティさんは悪くないですっ!」
ギリッと 歯を噛み締める鈴仙。
鈴仙 「私・・・ 私が言ってしまったんです・・・橙ちゃんがウチのチームに遊びに来ていること・・・ 私がその場にいれば・・・・!!」
てゐ 「その場にいれば って あの代車のパッソで何する気だったのよ?」
鈴仙 「シルビアが直ってたら・・・ 事故ってなければ・・・!!」
ちょうどその時、一台の車がコンビニの駐車場に入ってきた。白いセダンタイプのFFスポーツカー、FD2型のシビックタイプRだ。本来 ヨソモノのこの車が近づいてきた時点で 星のチームはこのマシンに注目すべきなのだろうが メンバーの大半は激高する鈴仙のなだめ役に回っていて この車に注意を払うものはいなかった。
布都 「ふっふっふ~~ ここがD坂道とか言う所かの~~。」
シビックRから降りてきたドライバーの名は物部布都。 挑発的な でもどこか恐ろしさが感じられない笑みを称えながらマシンから降りるが それを誰も見ていない。
寅丸 「鈴仙さん、悔しいのはわかりますけど、今はどうしようにも・・・」
布都 「良いコースじゃな~~ こんなコースをホームコースにするのもよいかもしれんの~~。 ちら。」
一輪 「鈴仙。今は仕方ないの。またこんな事が起きないようしっかり練習しなきゃ。」
布都 「我速いからのぅ~~ 我運転うまいし我のマシン速いからのぅ~~ このコースで最速になってしまうかもしれんのぅ~~? チラッ チラッ 」
一輪 「(星。なんか挑戦者が来たみたいなんだけど。)」
寅丸 「(この前のバトル結果聞いてホイホイ寄ってきたんじゃないですかね。あんま強い感じしないしほっときましょ。)」
布都 「(ぐぬぬ・・・何か我、軽くあしらわれてないか?ここは、一番遅そうなヤツから挑発して、無理やりバトルに引きずり込んでやる・・・)」
のこのこと駐車場を歩く布都。白い丸っこいステーションワゴンに狙いを定め、足を止める。
布都 「お?お?何じゃこの車は? は? カローラ? 何じゃ何じゃダサ派手なエアロ付けおって。ワゴン車にこんなもの付けとったって、都会のDQNでデブなミニバンと何も変わらんだろうが」
てゐの後ろ姿がピクンと動いた。
布都 「しかもわざわざホイールまでこんなのに変えて、恥ずかしくないのかのう? こんなのただのカローラじゃろう?こんなので頑張ったところでタカが知れてるだろうに。哀れじゃのう。一体どんなヤツが乗っとるのか、気が知れんわ。」
ゆっくりと布都の方に顔を向けるてゐ。ちらりと てゐの表情を見てしまった響子と星があわててフォローに入る。
響子 「あ・・・あの?てゐさん?」
寅丸 「あのですね、ここは穏便に・・・」
布都 「こんな恥ずかしい車で走り屋なんて、よくやれたもんじゃのう」
てゐ 「 よろしい。ならば競争だ。 峠と谷の狭間には 貴様の哲学では思いもよらぬ事があることを思い知らせてやる。 」
30分後。
布都 「ば・・・馬鹿な・・・・・ こ、この我が、コーナー二つで千切られるなんて・・・・」
寅丸 「ああ。やっぱこうなるんですね。」
てゐ 「あー。で。カローラが何だって?」
ナズ 「大人気ない。」
てゐ 「なんか言った?」
寅丸 「てゐさんは黙ってて下さい。誰かさんのフィールダーに煽られたのがトラウマになって走り屋やめた人、私、少なくとも三人は知ってるんですから。」
てゐ 「え、なにそれ。私知らない。」
布都 「あ、あんなの、カローラの形をした別の何かじゃ。ブレーキングだとか立ち上がりだとかそんなレヴぇるじゃない。そのまんまのスピードでコーナーつっこんでいきおる・・・ バケモンじゃ。見てるこっちが寿命が縮む・・・」
村紗 「今は無理に理解しようとするな。そして決して真似しようとするな事故るぞ。ほら、コーヒーでも飲むか?」
布都 「カタジケナイ。」
寅丸 「決して気を落とさないで・・・走り屋やめないで下さいね? アレはアレでちょっとアレな存在ですから。」
鈴仙 「(あそこに被害者の会が出来てる・・・・)」
布都の車に目を走らせる鈴仙。FD2型の白いシビックタイプR。
鈴仙 「(この車だってFFのスポーツカーとして そこそこ完成度の高い車なのに・・・ てゐの速さは こんな車も軽くあしらうレベルだってこと? そんな・・・ あら?)」
シビックタイプRの後ろに回り込んだ鈴仙は、リアのトランク部分に数枚のステッカーが貼ってあるのに気付いた。
鈴仙 「あ。「宮の内」の峠ステッカー貼ってある。「T山峠」も。やっぱ集めてる人は集めてるんだなあ・・・ これは何だろ?「サルガン・アタッカー」・・・・?」
てゐ 「 え? 猿岸アタッカー? 」
鈴仙の言葉に てゐが反応した。
布都 「(げっ、マズイ・・・)」
てゐ 「ホントだ、貼ってある・・・ サルガン・アタッカーってこれあの猿岸アタッカーの事だよな?でも、まさか・・・」
真剣な表情で布戸に顔を向けるてゐ。
てゐ 「話してもらおうか・・・ このステッカーどうしたのか。お前、まさか「猿岸アタッカー」の仲間なのか?」
布都 「わ・・・我は知らぬ! そんなの! そのステッカーも貰い物だし!」
てゐ 「それなら尚更 誰からもらったのか気になるなあ? ん? 」
レティ「確かにこの子があの「猿岸アタッカー」だとは思えないわね。どういうことなのかしら?」
鈴仙 「あ・・・ あの、何なんです? その サルガンアタッカー って・・・?」
布都 「わ・・・我には出来ぬ!バトルで負けたからって仲間を売るだなんて、そんなこと・・・!!」
てゐ 「・・・・・・・・・・」
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宮の内湖の北側にあるワインディングロード、猿岸林道。宮の内ダムの管理用道路として利用されているため日中のみ通行可能で、夜間は通行止めとなっている。
日中は遅い一般車がヨタヨタ通る 一見すると平和な道路だが、このコースにも確かに走り屋はいる。一般車が少なくなる夜間の通行止めが始まる直前、どこからともなく速い走り屋達が現れ、限られた時間で全力の走り込み・・・ アタックを行うのだ。
「猿岸アタッカー」。そのグループはそう呼ばれている。
日が傾き、まさに一般車が消え 通行止めになる一歩前の刹那の時間に 猿岸林道の上側のコースの入口に一台のマシンが現れた。真っ白なセダンのアルテッツァ。ウイングがないためおとなしそうな印象を受けるが、側面のエアロパーツや足回りは決まっており、エンジン音を響かせながらゆっくりコース前のストレートを走ってくる。
屠自古「さあて、もう一般車は消えてるかな・・・・ 限られた時間の 限られたアタックだ。一本一本を無駄にしないようにしないとな。」
アルテッツァを操るのは蘇我屠自古。「猿岸アタッカー」の一人である。この時間の走り込みに来たのだが、本気の走りで一般車においつくことを警戒し、徐行しながらテクニカルセクションまで進もうとしていた。
だがそれは同時に 他の車に追いつかれる可能性もある行動だった。屠自古はバックミラーに 一台の車のヘッドライトが写ったのに気付いた。
屠自古「ん・・・? 後ろから一台来てるな・・・ しかもウチラのチームの車じゃないな。 抜かそうとする訳でも 煽る訳でもなし。 なんだコイツ?」
長い緩やかな下りのコーナーへと差し掛かる二台。屠自古の白いアルテッツァに 白いカローラフィールダーが ゆっくりと近づいてくる。
てゐ 「・・・・・・・・・・・」
屠自古「ははん・・・ 私ら「猿岸アタッカー」目当てに勝負でも挑みに来たか。だがどれだけついてこれるかな? ・・・・「猿岸アタッカー」は 生半可な走り屋が相手できるほど 甘くはないんよ!」
緩やかな右コーナーの次は急な左コーナー。 長いコーナーの終盤で アルテッツァはゆっくりと速度を上げる。
「グガガァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!」
「ファガァァァァァァァァアアアアアアアアアアアア!!!」
追うように加速するフィールダー。次の崖沿いの左のブラインドコーナーが、眼前に迫る。
「キィギャアアアアッ ガアアアアアアアア!!」
「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」
てゐ 「くっ!やはり速い!」
屠自古「第一コーナー程度じゃ離れないか・・・本気を出すしかないな!!」
トンネルの長いいストレートを全開で飛ばす二台。アルテッツァが馬力のないフィールダーを突き放す。その先にはタイトな左コーナー。
てゐ 「くううっ!?」
左コーナーに飛び込み、一気に抜けるアルテッツァ。コーナー入口で躊躇し同じ速度で飛び込めなかったフィールダーは 次のトンネルのある短いストレートでさらに突き放される。
トンネル出口はゆるい右コーナー。すぐ続いて左のブラインドコーナーが迫る。
「キアアアアアァァァァガアアアアアアアアア!!!」
屠自古のアルテッツァがわずかに減速した左コーナーに 今度は思いっきり飛び込むフィールダー。アルテッツァとの距離が僅かに縮む。だがしかし、そのすぐ後の右コーナーを抜けるとストレート。先にフル加速を掛けるアルテッツァが大きく前へ出る。
屠自古「ふうん・・・ それなりにはやるようだな。離すことはできるが、離し切れてる感じはしない・・・!」
てゐ 「・・・アルテッツァ相手でも単純な速度勝負じゃまるで敵わないか・・・ 当然だよな。コッチはフィールダーだし。」
ストレート。緩い左コーナー。短いストレート。また緩い左コーナー。アルテッツァのリードが大きくなる。追いすがるフィールダー。二台は丘のようなアップダウンを超え、緩い左コーナーへと入っていく。
てゐ 「相手も本気だ。後半のテクニカル・セクションでどれだけ詰められるかに懸けるしかない・・・!」
緩く長めの右コーナーを一気に飛ばすアルテッツア。その先は壁に向かってのタイトな右コーナー。崖が迫る急コーナーでアルテッツァは一気に速度を落とすと、重そうにコーナーを曲がっていく。
屠自古「くっ、突っ込みすぎたか。」
コーナーで減速したアルテッツァに フィールダーが差を詰める。だが詰め切れていない。ワンテンポ遅れてタイトコーナーを抜けるフィールダー。
「キアアアアアアァッ ガアアアアアアアアアアアア!!!」
てゐの目に 瞬間的に映るアルテッツァの後ろ姿。間髪入れず次の左コーナーへと飛び込んでいく。続くアップダウンのあるS字コーナー。踊るようにクリアしていくアルテッツァ。フィールダーも一歩遅れて果敢に追いすがる。
「アアアアアアガアアアアアアア!!!」
「ファガアアアアアアアアアアアア!!!」
山裾をなぞる様に 緩やかな右 緩やかな左とコーナーが続く。容赦なく攻めるアルテッツァ。フィールダーとの差が開く。
てゐ 「・・・・ッツ!! ダメか・・・・!!!」
屠自古「 ・・・・・・・・ 」
トンネル手前のタイトな右コーナー。 減速したアルテッツァに 少しだけフィールダーが差を詰める。だがその先は 長いトンネルのストレート。全開で突っ切っていくアルテッツァ。後追いのてゐのフィールダーに勝ち目はなかった。
猿岸林道の下側の終点付近では 道の脇に待避所のようなスペースがあり ちょうど車をUターンさせるのにぴったりな場所がある。その折り返し地点へ向け、長い下りの緩やかな右カーブを 減速しながら下っていくアルテッツァ。
屠自古「なんとか勝てた。引き離せはしたが・・・なかなか「デキル」奴だったな。 この折り返し地点で折り返してついてくるかな? というかこんなヤツいたか?一体何乗ってるんだ?」
後続の車もウインカーを出し、後へ続く意思を見せる。折り返し地点で車をUターンさせる屠自古。後続車の方へ視線を走らせたその瞬間、トジコは初めてその車の車種を確認した。
屠自古「 え!? な、なんだあれ!? 」
白い ステーションワゴンのフィールダーの姿が、一瞬だけアルテッツァのライトに照らされる。冷静にアルテッツァを進ませながらも トジコは思考を回していた。
屠自古「(冗談じゃない・・・ あんなの、峠で振り回していい車じゃない!!あんなの、本物のただのカローラじゃねえか! まだ年代モノのスポーツカーに追い回された方が合点がいく・・・・ いや、問題なのはそこじゃない・・・・!)」
アルテッツァと同じようにUターンして アルテッツァの後ろへ続くフィールダー。フィールダーのヘッドライトが再びアルテッツァを照らす。
屠自古「(こいつ・・・・ 本当にこの車であのペースで飛ばしてきたのか!? ストレートでのパワーの差を考えたら コーナーで・・・ コーナーでどんだけ攻め込んでんだよ、あの車で!?)」
緩やかな坂道を上がりきると ぽっかりとトンネルの入り口が開いている。そこから先は長いストレート。本来であれば 猿岸林道のコースのスタートはこのトンネルの入り口からである。しかし、アルテッツァはトンネルに入ってからも速度を上げなかった。
てゐ 「 ・・・・! 」
むしろ、さらに速度を落とし、停まるかどうかのギリギリまで速度をさげてゆっくりと進み始めた。トンネル内に アルテッツァの砲筒のようなマフラーから発せられる不気味なエンジン音が反響する。
「 ブオ ブオ ブオ ブオ ブオ ブオ ブオ ブオ ブオ 」
屠自古「 フッ・・・クククッ・・・面白い・・・・ やってやんよ・・・ だったらやってやんよ! 試してやる・・・この先のテクニカル・セクションだけで その車で どれだけついてこれるか見せてみろ!!」
てゐ 「イヤミだぜ・・・・ コーナー勝負に絞って実力を試そうっていうのか。だが勝ち目はない。あのスピード、あのコーナリング・・・ 無理についていこうとすれば、コーナーで縁石に突っ込むだろう・・・ どうする? 今からでも降りるか?」
二台は縦に並んだまま、長い一つ目のトンネルの終わりへとゆっくり進んでいく。トンネルをでるとすぐ右のタイトコーナーがあってまたすぐ二つ目のトンネルである。
てゐ 「二つ目のトンネルは途中から緩やかな左コーナーになってて、そのトンネルを抜ければいきなりコーナーなんだ。このパターンならばおそらく勝負を始めるとすれば、なだらかなコーナーを抜けたその立ち上がりからだ・・・!」
二つ目のトンネルにゆっくりと侵入する二台。その左コーナーに差し掛かったアルテッツァがハザードを出し始めた。
てゐ 「・・・・っ!ハザード・・・やっぱこっから・・・・!!」
トンネル内、ゆるい左コーナーが終わり ストレートに入る瞬間 アルテッツァのハザードが消え、一気に 全開加速が始まる。
てゐ 「 !! 」
フィールダーも間髪入れず、追いすがる。アルテッツァがギアチェンジで一瞬力が抜けた瞬間に差を詰める。
屠自古「・・・くっ!!」
すぐ三速に入り 引き離しにかかるアルテッツァ。まだトンネル内のストレートで 二台の咆哮がトンネル内に木霊する。
「バアガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
「ファガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
トンネルを出た先はゆるい左コーナー。スピードを落とさず突っ切るアルテッツァ。次のタイトな左コーナー入口でオーバースピード気味になる。コーナー途中の橋のつなぎ目で少し後輪を滑らしつつも踏みとどまるアルテッツァ。フィールダーが引っ付く。
「グアアァァァアガアアアアアアアアアア!!!」
「ギャギャギャギャガアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
コーナーの出口から全開で立ち上がるアルテッツァ。その次は右の緩いコーナー。フィールダーとの差が開く。
てゐ 「チィイッ!!」
その先にはきつい右コーナー。減速しつつも速度を殺し切らずにコーナーへ突っ込むアルテッツァ。フィールダーが接近する。だがしかし 重そうに機体を振りつつも 踏みとどまってS字コーナーを一気に駆けるアルテッツァ。フィールダーも食い下がるが、追いすがれない。やや差が開く。
「キュガアアアアッギャギャギャッガアアアアアアアア!!!」
再び現れる二連続目のS字コーナー。アルテッツァと車1台分開けながらも右タイトコーナーへと飛び込むフィールダー。ヒルトップになっているタイトコーナーで 前輪が一瞬グリップを失う。てゐの目にガードレールが迫る。
てゐ 「くはあっ!!!」
構わずアクセルを踏み足し立て直し、コーナーを切りこんでいくてゐ。次の緩やかな長い左コーナー。全開でぬけていくアルテッツァ。車二台分ほど間をあけてフィールダーが追う。
屠自古「 ・・・・・・ 」
ちらっと後方を確認する屠自古。緩い右コーナーを抜け、丘のような登りへと差し掛かる。全開のアルテッツァのメーターが140キロを超える。丘を越えるとストレートだが、下った先の緩い右コーナーが恐ろしく迫る。ブレーキランプを光らせるアルテッツァ。
「ガアアアアアアア」 「カクウッ」 「ガアアアアアアアアアア!!!」
減速したアルテッツァにフィールダーが迫るが、追いつけない。その先は長めのストレート。アルテッツァが一気に引き離す。
てゐ 「いや・・・・だめだな。 ここまでか・・・・」
ストレートの先、再びS字コーナー。大きくリードしたアルテッツァにフィールダーはブレーキングで追いつけなかった。その先はトンネルのストレート、右コーナーがあって再びトンネルのストレート。 結局、アルテッツァが最後の長い緩い左のコーナーに差し掛かり、再びハザードを出してレースの終了を宣言するまで てゐのフィールダーがアルテッツァに追いつくことはなかった。だがしかし、トジコは最後まで フィールダーがミラーから消え切ってはいないことを確認していた。
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屠自古「 ・・・・・・・・・・・・ 」
猿岸林道の 上側の入口の脇には鳥居野原公園駐車場という中規模の駐車場がある。夕方になると閉鎖されてしまう駐車場だが、バスロータリーのある一角だけは数台しか止められないが比較的遅くまで空いている。
屠自古は アルテッツァをその駐車スペースに停めた。続けてその隣にフィールダーを停めるてゐ。
てゐ 「いや、流石っすね。すいません追いかけてしまって。」
屠自古「 ・・・・・・・・・ 」
てゐには目もくれず、ボンネットを開け 中を覗き込む屠自古。銀色のタワーバーの付け根、車高調の根本にあるツマミに手を延ばす。
てゐ 「 あ それ 車高調の減衰比を調節するツマミ・・・? 」
屠自古「・・・ああ。今走ってみてちょっと柔らかすぎたからな。」
屠自古の肩越しに、アルテッツァのエンジンルームを覗くてゐ。
てゐ 「ああ・・・やっぱエンジンカバーとかキレイだなぁ。やっぱりエンジンとかも 手 加えてるんですかねこれ・・・?」
屠自古「 ん? いいや。特にはやってないよ。マフラーは変えたけど。」
てゐ 「 え 」
アルテッツァのボンネットを閉める屠自古。
てゐ 「そんな・・・ あの、コンピューターチューンとかは? アルテッツァは重くてトルクなくて 弄らないとダメだって聞いてたのに・・・」
屠自古「そんなことしなくたって 足さえ決まれば十分速く走れるよ。さっきの程度にはね。私だって、ここで一番速いわけじゃないけど・・・ まあ、そんじょそこらの走り屋じゃあ追いつけないぐらい、腕をあげてきたつもりさ。」
顔をあげ、改めて てゐの車を眺める屠自古。
屠自古「また お前も変わった車乗ってるな。」
自分の車を見、一呼吸おいて話始めるてゐ。
てゐ 「ええ、そうですね。峠でこの車で走ってるヤツなんて多分いないでしょう・・・ 自分以外は。この車、オートマでワゴンだし、重いし馬力ないしブレーキ効かないし。結局カローラですもんね。」
屠自古「いや、私が言いたいのはそういうことじゃなくてだな・・・・」
ちょうどその時、3台ほど車がその駐車場にガタゴトと入ってきた。
一台は白いFD2型のシビックタイプR、物部布戸の車だ。その車に続いて二台、別の車が入ってきた。
神子 「やあ、トジコ。今日は随分早いじゃないか。」
一台はシャンパンゴールドの鋭い目つきのオープンカー、S2000。豊聡耳神子の車だ。
衣玖 「お疲れ様です。練習はもういいんですか?」
もう一台、4灯のヘッドライトを持つ、白いクーペタイプの丸目DC2インテグラから顔を出したのは 永江衣玖である。
屠自古「ああ、ちょっとサスが決まってなかったんでな。そんなことより・・・」
てゐの車の方へ目配せする屠自古。
屠自古「これを見てくれ。コイツをどう思う?」
布都 「すまぬ 屠自古・・・ 実は我、先日その車に負けてしまって・・・・」
屠自古「うん。そうだろうな。コイツ意外と速かったからな。お前じゃあ敵わないだろうよ。」
神子 「えっ これ 何?」
てゐ 「フィールダーです。カローラフィールダー。」
神子 「へぇ・・・・ カローラなんて 昔はこんな立派なイメージなかったのに」
衣玖 「エアロとかは多分純正ですよね。何かいじったりしてるんです?」
てゐ 「いえ、特には。買った時にTRDの 車高調じゃないダウンサス つけてもらってて。あとはタワーバーとホイールぐらいですかね。でもまあ、これオートマだし。」
神子 「ブレーキもノーマルでしょ。このニオイ、多分焼けちゃってるよ。後ろもこれ多分 独立懸架じゃないでしょう? トーションビームじゃないかな? 」
てゐ 「 あ え~と? 」
布都 「日本車で4輪独立懸架初めて採用したの どのあたりだったかの?」
屠自古「S30フェアレディZあたりなんだよなあ」
神子 「ほとんどのスポーツカーは4輪とも独立懸架って言って、ホイールが単体で上下するように作られてるんだ。でもファミリカーは大抵後輪の二つが横にバーで繋がってて 一緒に上下するようにできてる。ああ、あれだ。」
てゐの車を後ろから覗き込んだ神子が フィールダーのトーションビーム・バーを見つけた。
神子 「このテの車はスペースとお金の問題で 大抵 後ろっ側が繋がってるんだ。当然独立懸架のほうが乗り心地も運動性能もよくなる・・・圧倒的にね。FF車でも峠とばすなら ストラット式とか独立懸架入ってるハッチバックかスポーツカー乗った方がいいよ?」
てゐ 「あ~~。やっぱりそうなっちゃいますよねー。」
衣玖 「確かに ロールが酷くなったり 車両が路面の凹凸での対応に鈍くなるという点ではトーションビーム式は厄介ですね。でもアルトワークスとかトーションでも速い車はいるし、練習用としては十分楽しめると思いますよ?」
屠自古「・・・・・・・・・・」
衣玖 「FF車はアンダーステアが最も出やすい車ではありますが その分乗りこなせれば 車をブレーキで曲げる技術 というモノが見につきます。内装もけっこうカッコいいじゃないですか。」
てゐ 「あ。カギ空いてますよ。どうぞ座ってみて下さい。」
そそくさとフォールダーのドアをあけるてゐ。フィールダーはエンジンかけっぱなしで オーディオもつきっぱなしだった。
神子 「お、ユーロビートかけっぱじゃん。」
てゐ 「 え? 」
衣玖 「ふむ。ちょうどSpeedy Speed Boyですか・・・。シートもセミバケ風で案外ホールド感がありますね。これなら車体ふっても体安定するでしょう? あ。オーディオ操作ハンドルで出来るんですね。いいなあ。 」
神子 「『 この音楽は君に火を感じさせる そしてこの光は私を頂点へといざなう 』 私たちもユーロビート大好きなんですよ。このスピード感がね。」
てゐ 「やっぱ走り込んでる時は自分もずっとユーロビートですね。・・・・やっぱり皆さん、ここで前からずっと走り込んでるんですよね・・・」
神子 「ん? まあうん。日中は車多いから走れないけど この時間になれば結構集まるよ。」
てゐ 「実は前から ここで皆さんが集まってるのは知っていたんです あのアルテッツァとか ミラージュとか すごく速いの知ってて。」
屠自古「あ~~ あのミラージュかあ・・・・ 白いハッチバックのヤツでしょ?」
てゐ 「ええ。やっぱ知り合いにいます?」
神子 「まあね。・・・ここに通ってれば、彼女らとも会えると思いますよ。」
周囲が暗闇に沈む中、てゐはしばらく猿岸のメンバーと話し込んでいたのだった。
てゐ 「(やはり、もっと速いヤツがいるか・・・・ 私が初めて来た峠道がここ、宮の内湖なんだけどな・・・
・・・・全然、まだ速くなった気がしないや。でもそれでいいんだ。たまに来て また思い出そう。今はそれでいい。そう、それでいいんだ・・・・。)」
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鈴仙 「そう。じゃあてゐは今日こっち 来ていないのね。」
同時刻。D坂道のコンビニ。コンビニの灯に照らされる中、佇む鈴仙。表情は見えない。
響子 「マニュアル車買うって・・・ え じゃあ てゐさん車乗り換えちゃうんですか? まさか。」
鈴仙 「いいえ。乗り換えじゃなくて もう一台持つつもりみたいですよ。」
一輪 「もう一台って・・・駐車場とか維持費とかどうすんだか。」
鈴仙 「本人も費用気になるから、中古で小さいヤツにするって言ってたけど。重いヤツだと乗り方不安だしって。」
響子 「中古で小さいヤツ?コンパクトハッチバックか軽自動車ですかね?」
一輪 「軽トラとか持ってきたりしてw」
村紗 「・・・ウチ、軽トラに延々と煽られるのはヤだなあ・・・」
寅丸 「・・・・・・鈴仙、さん 」
鈴仙の方へ顔を向ける寅丸星。暗がりの中、純白の S15シルビアの前に佇む鈴仙。
寅丸 「 それで どうなんですか 新しく仕上がったシルビアの調子は? 」
鈴仙 「・・・・そうですね。単純に パワーが上がってる感じはしますよ。走っていろいろと調整しないといけない所もありますけど またすぐ 皆さんの一員として走れると思いますよ。」
鈴仙の目が 赤く光る。
鈴仙 「 その前に やっておきたいことがあるんです。 」
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村紗 「峠の走り屋用語講座その178!ジャムの人タスケテー。はい!」
チルノ「ジャムの人タッケテー」
布都 「ジャムの人タッケテー」
てゐ 「車がよく壊れる?そんなあなたにジャ〇カード。」
村紗 「ギャー。妖怪ハラグロウサギだーっ。」
布都 「ニげろー。ケツ掘られるぞーーっ」
てゐ 「誰が腹黒だっ!誰がっ!!」
寅丸 「次回。「 LUNATIC PARADICE 」です。」
鈴仙 「星さん逃げて。超逃げて。」