ギルド拠点の隠密の魔法を解除すると、直ぐに発見してくれたようで、早速使者が訪問した。使者といっても完全に使い捨てを覚悟したレベルのモンスターであったが
後日、人払いの魔法を発動した上で先の戦いがあったカッツェ平野のど真ん中で再び再開することとなった。今回は会談の場を設けたいということで、お互いに戦闘行為は禁止との約束の上での密会となった
「本日は我々のお招きに応えて頂いたこと、深く感謝する」
「いえいえ、私の方こそナザリック地下大墳墓を警戒して、このような場所に呼び出してしまったこと、謝罪致します」
「我々は今敵対関係にあるのですから警戒するのは至極当然のことです。お気になさらないでください」
「そう言って頂けると助かります。それで本日のお話というのは?」
「私は商人では無いので話術は得意ではありませんので、単刀直入に要件だけ述べさせて頂きます。我々はあなたがたと和解をした上で同盟関係を結ばせてもらいたい」
やはりそう出るだろうな。こちらとしても和解には問題はない。問題は……
「和解は私たちとしても願ったり叶ったりです。これ以上互いに疲弊するのは賢明とは言えませんからね」
「では同盟に関しては?」
「それはできかねます」
「理由をお聞きしても?」
「我々はカルマ値が極善なんですよ。私が望むのは異型種と人間種が共存できる世界なのです。あなたがたの様に一方を見下し、武力で踏みにじる様な行為はおいそれとはできかねます。人を殺すなとは言いません。王都での食糧確保も仕方の無いことなのだと同じギルド長として理解はしているつもりです」
「あなたは誤解をしているようだ。我々の目的も同じだ。異型種と人間種の共存する国をつくる。その為に今回だってエ・ランテルを占領しようとしたのです」
「その為には必要な犠牲であったと?」
「その通りです。支配者ならばそうした取捨選択をしなければならない。私はナザリックの繁栄のために……」
「支配者だから残酷でなくてはならないと言うのは正直独裁者と似た思考回路を感じますね」
「なんだと?」
「なぜあなたがた死の支配としてのロールプレイにそこまで拘るのか理解に苦しみます」
「それには止むに止めれぬ事情があるのだ」
「それは何十万もの命を楽しんで屠ることが出来るほどの理由なのですか?」
「私は楽しんでなどいない!」
彼が僅かに動揺したようだが、淡い緑色に発光し落ち着きを取り戻す。精神をコントロールしているのか……
「私には人の命に対する思いよりも黒い仔山羊の召喚の成功への喜びのが非常に強く感じ取れましたよ?」
「それは……そんなことは決して」
「アインズ様は死の支配者であらせられますのでそれは当然のことかと」
「彼はデミウルゴスさんでしたね?」
「えぇ、私の優秀な部下です」
「それがロールプレイの原因ですか?」
少しだけ逡巡したように見えた。実際にはアンデッドなので表情はないが、それでも僅かな同様があった気がする
「お前達、耳を塞げ」
「しかしそれではアインズ様の身を守る任務に支障が!」
「これは命令だ!」
「申し訳ございません。かしこまりました」
「ふぅ……」
いきなりどうしたんだ……?
「だから私は嫌だったんだ!」
!?
「そもそも何故俺が世界征服などということをしなければならないんだ!」
まさか世界征服を目論んでいたとは……。しかも誰かに命令されているのか?
「部下は異様に忠誠心高いし、発言一つ一つを深読みしてくるし!いったい何時俺が世界征服するなんて言ったというんだ!カルネ村助けてあげただけじゃないか!」
一通り暴露すると再び淡い光によって精神が沈静化されたようだ
「カルマ村を救ったのは打算があってのことではなかったのですか?」
「ないな」
即答かよ!
「ではあなたの世界征服を指示しているのは誰なのですか?」
「強いて言うならば部下たちだな……」
「は……?」
彼の独白を一通り聞くと、私は思わずこめかみを押さえた
「つまりあなたは部下に失望されるのを恐れる余り、オーバーロードとして支配者に相応しい行動を全力で研究ひ、部下達の勘違いを訂正せず、今に至っていると」
「その通りだ」
「偉そうに言わないで下さい。本当に情けなくなってきましたよ」
「そうは言っても私はあなたと違って元々はただの小市民のサラリーマンだったんですよ。いきなり担ぎ上げられてどうしろと言うんですか!」
「私だって同じ小市民ですよ。ただロールプレイが違ったのは幸いでしたが」
「現実でも人の上に立つあなたと私ではそもそも根本的な能力の差がありますよ……」
私も高々中小企業の専務ってだけなんだけどな
「どちらにせよ、あなたがやはり日本人だということは分かりました」
「理解して頂けて良かったです。いや、本当に」
「では私もその取引に腹を割って参加しなければなりませんね。君たちすまないが暫く耳を塞いでおいてくれないか」
「了解しました」
「うん。想像以上に私の部下も忠誠心高いかも知れませんから……失望されるのは防がなくてはなりませんからね」
「やはり知られたくない事があるんですか?」
「勿論。私はサドではないんですよ」
「どういうことですか?」
「かといってもノーマルでもない」
「……マゾなんですか?」
「如何にも!」
「誇らしげにそんなこと語られましても……。突然なんの話ですか?」
「実はこの会談の真の目的はですね……」
「真の……」
やはり私にも暫くの逡巡はあったが、やはり相手が腹を割った以上私も腹の内を晒さなくては無礼というものだろう……
「ナーベラルさんとお近づきになることです!」
相手の反応が中々返って来ない……
「……は?」
「いや、私は商人として直接物販を行うこともあるんですがね」
「確かに現地に立つことで得られる情報は多いですからね」
「冒険者のナーベさんに客引きで声を掛ける機会が何度かありまして……」
「あぁ…………」
「リアルであんな罵倒を受けたのは初めてでした!なるほど、自分は下等生物なのだなと!ナメクジだったのだと気が付きました!」
「ソウナンデスカ」
「はい!ですがナーベさんは余りお会いする機会がなかったので、ならば直接ナーベラルさんにお近づきになりたいなと思いまして!」
「ナルホド」
「アインズさん。いや、アインズ様!いや!お義父さん!ナーベラルさんとお近づきになることをお許しください!」
「ハイ」
「ありがとうございます!」
「はっ!?いや、ダメだダメだダメだ!貴様の様な変態に弐式炎雷んの作ったNPCを預けてたまるものか!」
あ、沈静化されたな……
「あなたが探している仲間のためにアインズ・ウール・ゴウンの名前を世界に轟かせたいという思いは理解しました。その為に建国が必須であることも。そしてエ・ランテルの住人を害すつもりもなく、英雄モモンを利用して平和的統治を目指していることも。私も商人としてエ・ランテルでは少なくない信頼を得ている。今回アンデットを使役した事でその求心力は多少落ちるでしょうが、市民の安全を保証する対抗勢力として、ナザリックの円滑な統治に貢献できるでしょう」
「待って下さい。エ・ランテルを占領するんですか!?」
「私が国王に打診しましょう。まぁ間違いなく反対する貴族など残っていないでしょうし、エ・ランテルは差し上げますよ」
「それは……ナーベラルが条件ですか?」
「会わせて頂けるならば嬉しいですが、別にそうでなくても構いませんよ」
「ではなにがあなたの望みですか?」
「同郷の友人かな」
「同郷の友人ですか……」
「あなたのことですよ」
「私ですか!?」
「私もあなたも本質では孤独なんですよ。私はこうして腹を割って話している今この時が非常に楽しいんです」
「それは……私もそうかもしれません」
「じゃあ決まりですね」
「本当にありがとうございます」
「こちらこそ」
お互いが固い握手を交わしたところで声がかかる
「アインズ様そろそろ耳を開けてもよろしいでしょうか?」
「社長、そろそろよろしいでしょうか?」
「そういえばそのままでしたね」
「また彼らには1から説明し直しですかね」
二人で苦笑しながら、お互いに部下への命令を解除した
無理やり完結させたという所が本音であり、自分でもこれはないなと思っています。が故に当初から感想欄で述べている通り、期待されると困ると。低評価になるだろうと。でも折角書いたから載せたかったんです。多分これ以上は自力では直せないから、感想とか貰って次回に生かそうと、思っていました。で、もしかしたら気に入ってくれる人も中にはいるんじゃないかな?とか思ってました。
思いつきで書き始め、大学を休み仮眠を取りながら徹夜で一気に書き上げた駄文に最後までお付き合い頂いたことに多大なる感謝をここに示します。「ありがとうございます」月並みの言葉でしか表せませんことお許しください。現在は「ようこそ実力至上主義の教室へ」を執筆及びプロット修正しております。今回の作品で指摘された点がどれだけ生かせるかがポイントだと思い頑張っております。今のところ納得のいく文であります。全て感想を下さった皆様のおかげです。重ねて感謝申し上げます。ではまたどこかの作品でお逢い出来ることを期待しています。その時は読者かもしれないし、筆者かも知れませんが……