異形種商人ギルドも転移します   作:かのんベール

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5000文字弱あります


初の商談

一段落着いたところで街にでて食事をとることにした。まぁもう夕方なので昼食とも夕食ともなんとも言えない時間ではあるが……。今まで生きてきた世界とは何もかもが違う新鮮な街をあちこち見て回る。マジックアイテムを使って確認するのと、自分の目で確認するのとではやはり全く違うし、新たな発見もある。

 

高級料理店での食事もいいが、最初はいわゆる下町の食堂に行くことにした。先ずはこの世界での庶民の感覚を身につけることが先だ。飲食店の経営に手を伸ばすにしても、最初はファミレスやファストフード店がいいだろうし、将来の商売敵と顧客の下見も兼ねていることは言うまでもない。

 

食堂に近づくと拠点とした屋敷周辺とは雰囲気がだいぶ変わり、服装も冒険者が目立つようになってきた。

 

「ほげぇぇぇぇぇえええ!」

 

なんか今とてつもない女性の悲鳴というか……なんというか……

 

あの安そうな酒場兼宿屋からか。

 

「ちょっと野次馬するか」

 

入口から中を覗くと立派な鎧を纏った……最低ランクであるカッパーのプレートの冒険者が女性に詰め寄られていた。なんだこのカオスな状況は……。

 

「あんたのせいで私のポーションが割れちゃったじゃない!弁償しなさいよ!」

 

見ると男が投げ飛ばされた衝撃で机が粉々に……。あれ人間が出来る技なの?冒険者怖ひ

 

女性の言うところによると、倹約に倹約を重ねてようやく買うことが出来た一品らしい。うわぁ……凄く高そう。あの騎士風の冒険者も災難だな。金は持ってそうだし彼にとってはそうでもないのかもしれないが……

 

「金貨1枚と銀貨10枚よ?」

 

安っ!?いかん……やはりこの世界の感覚は随分と違うらしい。やはり商人として感覚の擦り合わせは急務だな

 

「あんたさぁ……ご立派な鎧着てるぐらいなんだから中のポーションぐらい持ってるんでしょう?現物でも構わないからさ」

 

あ……コイツが割られたポーションは多分下のポーションなんだろうなぁ

 

「持ってはいるが……」

 

やっぱりな。だがここですんなり出すほど常識なしではないようだ

 

「はっ!待て待て、分かった」

 

かと思うとすんなりと手の平を返したようにポーションを差し出した……。なに考えてるんだ?怪訝に思っていると警護の部下が耳打ちしてくれた

 

「あの騎士の連れと思しき女性が背後から切りかかろうとしていますね。しかもアレは威嚇ではありません。確実に殺る気でしたね」

 

この世界の冒険者という存在は血気盛んを通り越して狂人の集まりのようだ……。この場はさっさと退散することにしよう。巻き込まれるのはゴメンだ

 

しかし、中のポーションは見慣れた赤いポーションだが下のポーションは青なのか。むしろ私からすれば青のポーションなんぞ見たことないし逆にレアだな……。ポーションのランクとその精製方法、効能、値段が気になるところだな。明日にでもこの街で一番の腕利きを調べて尋ねるとしよう。

 

 

 

 

 

 

「この街で一番の薬師はリージー・バレアレという方の様です」

 

「アポは取れたのか?」

 

「はい。ですが薬草回収のため、孫のンフィーレア・バレアレが数日空けるようです」

 

「孫は薬師として有名なのか?」

 

「薬師としてはまだ見習いのようですが、この街で一番有名なタレント持ちのようです。なんでも、どんなマジックアイテムでも使用可能なのだそうです」

 

タレント……。たしか生まれ持っての特殊能力、才能とかいうものだったな。一番の薬師の孫が一番のタレント持ちか。この世界でも富の集まるところにはとことん集まるらしいな。資本主義はどの成熟度でも格差は産むが、この世界は文明が成熟していないにも関わらずなかなかにシビアで生きずらい世の中のようだ。

 

「到着いたしました」

 

「ご苦労」

 

扉を開けてもらって荷馬車から降りると、リージー・バレアレと思しき人物が直接出迎えてくれた。

 

「お主がカルサナス都市国家連合から来たという商人じゃな?」

 

 

「はい。本日はカルサナスと王国とのポーションの違いに関して知識の交換に参りました。と言っても私にはポーションの詳しい知識はありませんので、あるのは現物のみとなってしまいますが」

 

「構わんとも。さぁ中に入ってくれ」

 

アレは未知との遭遇が楽しみで仕方ない研究者の目だな……多分

 

「それでお主の持つポーションというのは?」

 

「こちらです」

 

「おぉ!これは!」

 

どうやら珍しい品のようだ。ユグドラシルではごく通常のものなんだがな……

 

「いやはやこう立て続けに龍の血に出会うとは……」

 

「これはそんなに珍しいものなのですか?」

 

「わしも薬師を続けて長いが赤いポーションを見たのは昨日が初めてじゃよ」

 

「昨日?」

 

「うむ。昨日冒険者が赤いポーションを持って鑑定を依頼しに来たのじゃよ。ほれ、これがそのポーションじゃよ」

 

「装飾も全く同じ、恐らく私と同郷の冒険者でしょう」

 

「カッパーに似合わぬ上等な鎧を身にまとった冒険者から譲り受けたと言っておったの」

 

十中八九昨日のフルプレートの冒険者だな……。こんな偶然が……いや、あの光景を見て今ここにいるのだから王国一と名高い薬師の元に珍しいポーションが集まるのは遅かれ早かれ必然か

 

「カルサナスでも出処は不明でしたが手に入れるのは金を積めばそこまで苦労はしなかったのですが……」

 

「そなたの里ではポーションの制作方法を確立した者がおるのじゃろう。しかし赤いポーションはポーションの完成系じゃ。各方面から命を狙われるのを恐れて身を隠しておるのじゃろう」

 

「では青いポーションは未完成の状態だと」

 

「如何にも。我々薬師の永遠の目標がこの赤いポーションだからの」

 

永遠って言っちゃったよ、いつまで経っても完成しないじゃん

 

「では未だかつて見たことの無いポーションの完成系が何故赤いとご存知なのでしょうか?」

 

「彼の有名なぷれいやーと呼ばれる者達が所持していたポーションが正しくこの赤いポーションだったそうじゃよ」

 

そうなるとあのフルプレートの冒険者はぷれいやー。つまり俺と同じユグドラシルプレイヤーの可能性が高いな……。

 

「そのプレイヤーという者達に関して詳しいお話をお伺いしたいのですが。なにぶんカルサナスではその手の類の情報は噂程度しか聞かなかったものですので……」

 

 

リージー氏の話によるとおよそ100年周期でプレイヤーと呼ばれる強大な力を持った集団が異世界からやってくるらしい。これは間違いなく俺と同じユグドラシルプレイヤーのようだ。この世界に存在する魔法を初めとしたものは彼らの影響を色濃く受けている。その最たる象徴がスレイン法国で、この国はプレイヤーによって建国された国家のようだ。プレイヤーの影響は良い方向に向かうこともあれば八大欲のように互いに争って混乱をもたらすこともあるという。

 

となれば、この世界にプレイヤーが今現在存在している可能性は非常に高い。それも複数人、あるいは俺のようにギルド丸々転移している可能性もある。互いに協力関係を築ければこれ以上のことはない。しかし、今のBI財閥のNPCはその大半が元紋STARの異型種によって構成されている。となれば、PKの対象とされてきた異型種に他のプレイヤーが難色を示す可能性は少なくない。プレイヤーと言っても中身は俺と同じ日本の小市民だ。その辺の最低限の理解は期待したいが……。最悪の事態、それこそ他のプレイヤー全員と敵対する可能性も捨てきれない。ここは相手の情報を少しでも多く手に入れることが先決だ。そのためにはこちらの存在を隠さねばなるまい……。

 

『メッセージ:レニ、聞こえるか?』

 

『はい、なにか御用でしょうか?』

 

『我々以外にも多数のプレイヤーがこの世界に転移している可能性が出てきた。詳しいことは追って連絡するが、先ずはこちらの存在に気づかれないようにしつつ、他のプレイヤーの情報を集めたい』

 

『かしこまりました。こちらで人員を確保し、部隊を編成いたします』

 

『その際は魔法等の使用は極力控え、人海戦術のみを用いるように。また現在偵察を行っている高位のモンスターは一時撤収、今後使用するのは周辺のモンスターと同等のレベルのもののみとする。得られる情報は圧倒的に少なくなるだろうが、今は隠密を最重要課題として行動してくれ』

 

『了解しました』

 

『それから昨日連絡した、カッパーの冒険者がプレイヤーである可能性が高い。至急動向を掴んでくれ』

 

「それではリージーさん。ここからはBI財閥…………改めスター商会代表としてあなたと商談をさせて頂きたい」

 

「いいだろう。幾らが望みだ」

 

「私が望むのはそんな一時的な利益の交渉ではない」

 

「どういうことじゃ?」

 

「私はこのポーションを幾つも所持している」

 

追加で10個ほどのポーションが入ったケースを部下に開かせる

 

「これは前金だとでも思ってもらって構いません。あなたが研究のために必要な分だけご用意しましょう」

 

「な、なんと……」

 

「その代わり現在確立しているポーションの精製方法を我々の会社で独占させて頂きたい」

 

「なんじゃと?」

 

「具体的にはポーションの大量生産を手伝って頂きたいのです」

 

つまりは製薬会社として王国のポーションのシェア率を完全に掌握したいという事だ。世界の製薬会社のTOP10は毎年ある程度の変移はあるもののその大半をファイザーやメルクといったアメリカ企業が占めており、日本はかろうじて武田薬品工業がランクインを果たしたぐらいでその差は圧倒的だ。この世界ではそうした特許による薬品の独占はまだ行われていない。ならば今のうちに万能薬とも言えるポーションのシェアを獲得しておこうというのは当たり前の流れだ

 

「今のポーションが冒険者にとって高値となっている原因はなんだ?」

 

「それは材料となる薬草がこの辺ではトブの大森林でしか採取出来ず、その道中も危険を伴う。何よりも森には賢王と呼ばれる魔獣が住み着いておる」

 

「研究の費用のために暴利を掛けている訳ではないのだな?」

 

「当たり前じゃ!わしとてそこまで研究に倫理を奪われてはおらん」

 

「ならば我々は研究のサポートを全力で行おう。最終的には現在のポーションの大量生産を我社が行い、リージーさんには研究に没頭して頂く。報酬は今の収入と同じ金額を固定給。これでいかがですか?」

 

「それは願ったり叶ったりじゃが……そこまでの資金源がお主にはあるのか?」

 

「詮索は不要とだけお伝えしておこう。しかし大量生産をサポートして頂く以上、いずれ我々の本部に来て頂くことになるでしょうから、その時に全て解決するでしょう」

 

「本部?昨日購入したという屋敷ではなくかの?」

 

「そういうことですね。内緒ですよ?」

 

「分かった分かった。詮索は不要なのじゃろ?」

 

「物分りがよくて助かります。それではこちらが契約書になります。今後の報酬などに関しても書かれていますのでしっかりと目を通してからサインの方をお願いします」

 

「ふむ……」

 

そう言うとリージー氏はメガネを取り出して読み始めた

 

「この国ではメガネがあるのですね」

 

「あぁ、高価ではあるがわしでも手が出せるレベルの品物じゃよ」

 

よし、商人がメガネしていてもおかしくは無さそうだな。明日から付けよう。別に視力に問題がある訳では無いが、現実でメガネをかけていたから今の何も顔に付けていない状況は少し違和感があるからな……。

 

「早速で申し訳ないのですがポーションの精製方法をご享受願いたいのですが……」

 

あとはトブの大森林の生態系調査と飼育施設の建築だな。BI財閥改めスター商会の最初の事業は製薬になりそうだな




8:30投稿が目標だったのですがバイトの都合上こんな時間に……
次回からは投稿予約なるものを使ってみたいと思います
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