明日もリベンジします
何日もリージー氏の店を訪ね、細かいレシピを制作していく。そうしてようやく下のポーションを完璧に配合するレシピが完成した。なんでも、基本的なレシピはあるものの実際の調合は長年の経験で行っていたらしいから驚きだ。何グラムを何リットルで何分茹でるのかと聞いた時にはリージー氏も返す言葉がないようで、そもそもの薬師が何なのかを一から説明されてしまった。一言でまとめるならば大雑把が故に慎重さが求められる仕事であった。
「まさか数日で下とはいえポーションを精製出来るようになってしまうとは……」
だから大雑把だと言うのだ。しっかりとしたレシピを作れば猿でも作るだけなら簡単なはずなのに……。
「いえ、リージーさんの教え方が上手いからですよ」
「ンフィーレアは数ヶ月かかったがのう」
「彼にはタレントという素晴らしい才能が別にありますからね。それを生かして大成して欲しいものですね」
「そう言えば今日の夜に予定ならば帰ってくるはずじゃよ。良かったら会ってみてはくれんかの?」
「それは私としても嬉しい申し出です。街で一番有名なタレント持ちの方ですからね。一度お話をしてみたいと思っていたところなんです」
「そうか、それは良かった!ではお主がポーション作成を成功させた祝いに夕飯でも食べに行くとするかの」
「リージーさんのお陰ですからね、日頃の感謝を込めて奢らせて貰いますよ。私の行きつけのレストランがあるんです。きっとお気に召すと思いますよ?」
◇
本当に元の世界とは比べ物にならないほど美味しい食事をリージー氏ととってから、すっかり暗くなった街を帰る。
「何やら冒険者組合の方が騒がしいですね」
「もしかしたらンフィーレアが帰ってきたのかもしれん。お主は先に店に帰っておってくれ」
リージー氏から差し出された鍵を受け取って店へと帰る。
「なんかまた騒がしいな」
「中を見て参ります」
「頼む」
何やら店の中に誰か居るようだ。ンフィーレアさんかな?
「またお客さんかしら~?」
「逃げて下さい!」
中から間延びした声と緊迫した声が聞こえてくる。何やら様子がおかしいようだ
「冒険者と見られる者達が4名と近接職の女性が交戦中のようです。それから裏手にマジックキャスターが一名控えているようです」
「どっちが劣勢?」
「冒険者が圧倒的に不利です。相手の二人はこの世界においてはかなり上位の実力者かと」
これはこの世界の暗部との関わりを持つチャンスかもしれないな……
「閃光で視界を奪い、その間に冒険者をドッペルゲンガーとすり替えた後に即座に撤退」
「了解」
直後に店から眩い光が漏れだし、何人もの呻く声が聞こえてくる。光が収まる頃には馬車は屋敷に向かって出発していた。
◇
「ふざけた真似しやがって!この!この!」
魔法を使って店の様子を監視しているが、この女は狂人とかの域を超えてる気がする。なにせ、倒した敵をなかなか殺さずに痛ぶり続けているのだ……。
「その辺にしておけ。目撃者もおるのだ、それに目的のンフィーレアは既に確保した。これ以上ここにいるメリットがない」
「んもぅ、分かったわよ。じゃあとっととコイツらゾンビにしちゃってよ」
何やら魔法が行使されたようなので死んだふりをしているドッペルゲンガーをゾンビへと変異させる
すると入れ違いでリージー氏が店へと帰ってきた。しかも昨日のカッパーの冒険者まで引き連れてのお出ましだ。なんでこうなった…………。今からじゃドッペルゲンガーの回収は不可能。図らずして対立することになってしまった……。なんかジャンガリアンハムスター連れてるし。もうカオスとかそう言うレベルじゃないでしょコレ
しかもドッペルゲンガーも一撃で倒されてしまった……。なんだよあの力技。間違いなくプレイヤー確定だな。
「ンフィーレアは……」
「ここにはいない」
「ンフィーレア~!!」
「守ってやれ」
うーん。リージー氏を守るということは道徳心はありそうだが……。やっぱり人間種限定に対しての優しさかな?
「ん!?これはドッペルゲンガー……!誰だこちらを覗いているのは!」
ヤッベ……。やっぱりバレたか……。
「私の依頼を妨げるとはそれ相応の覚悟が出来ているのだろうな?」
不味い!
直後監視の魔法はキャンセルされ、こちらへ情報は一切入って来なくなってしまった……。
『メッセージ:ジルコ、聞こえるか?』
『はい。何用でございましょうか?』
『先の二人組は今どこにいる』
『墓地に居るようです。ンフィーレアと見られる少年は女性の言っていた通りマジックアイテムを装着され、アンデットの大軍を操っている様です』
『恐らくプレイヤーと思われる冒険者が先程保護した冒険者を追ってくるだろう。そこで保護した冒険者は意識を刈り取った上で墓地の安全な場所に放置して置いてくれ。万一に備えて警護も付けてやれ』
『了解しました』
「私は今から本部に戻る。アンデットの大軍の一匹に憑依して遠隔操作を行う」
これならば監視系の魔法と違って感ずかれることもないだろう
「転移門!」
何日かぶりの社長室へと戻る
「お帰りお待ちしておりました」
レニが出迎えてくれた。やはり帰って来たって感じがする。
「私はこれよりアンデットへの憑依を行う。その間の無防備となった私の警備を頼む」
「お任せ下さい」
精神支配系の魔法を使い、アンデットの一体に憑依することに成功した。周囲には俺と同じようなアンデットがひしめいており、中には上位のアンデットも多く混ざっている。恐らくは第7位階魔法〈死者の軍勢〉だろう。
そうしてアンデットとしての動きを真似ていると、前方にいた巨大なアンデットが剣の投擲により一撃で沈められた。なんだそれ……反則でしょ。心まですっかりアンデットの俺からするとあんな子供だましの攻撃すら恐ろしく感じられる……。冒険者怖ひ……
次々に投げ飛ばされていくアンデット達。空を見上げるとジャンガリアンハムスターをおんぶして浮遊する女性。やはりカオスだった
暫くするとナーベと呼ばれる女性はハムスターを木の上に放置して戦闘に参加してきた。あのモモン様とか呼ばれる冒険者も相当なものだが、まさか従者まで強いとは。一アンデットの身では最早対抗する手段すらない。そろそろ倒されるのが私の番となった所で、起死回生の一手に打ってでる
なるべく目立たないように、自然な流れで地面に横たわる。そう、死んだふりだ。アンデットに知能はないため、まさか死んだフリをしているなどと思う者はいないはず……
「ナーベよ。足元のアンデット、死んだフリをしているぞ?」
「……!?」
「どうやら雑魚共の中に大物が潜んでいたようだな……」
まさか見つかるとは……。俺は事件の行く末を見届けることなく精神支配を解くと、意識を社長室にある本体へと戻した。
まぁ彼らがプレイヤーであり、モモンとナーベとしてこの世界で冒険者をしていることは分かった。それとモモンが本当は騎士ではなくなにか別の職業であることも分かった。恐らくは力をセーブしているのだろう。彼らも身を隠しているのは我々と同じか……
サブタイ詐欺というか、その、まだ戦うのは早い希ガス
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