「いやー、ンフィーレアさんが無事で本当に良かった。私も中から戦闘をする音が聞こえましたので衛兵を呼びに行っておりましたので……モモンという冒険者がいてくれたのは幸運でしたな」
「なんでも、アンデットの大軍から孫を救い出して下さったらしくての、彼らには感謝してもしきれんわい」
「昨晩は事件が立て続けに起きましたからね……」
「アイアンクラスの冒険者が5人、ヴァンパイアに殺されたそうです」
「今日にでもミスリル冒険者の方が討伐隊を編成するようですから心配はいらないでしょう」
まぁこう立て続けに事件が起きると勘ぐるなという方が無理な注文なんだが……。直接調べるのは危険だ。やはり冒険者組合と仲良くすることで情報を仕入れるしか無さそうだな。
「私は冒険者組合との商談に向かいますので、ポーション精製に関しては私の部下をご利用下さい」
◇
馬車の中で報告を聞く
「本日、冒険者組合でヴァンパイア討伐隊の編成が行われました。向かったのはミスリル冒険者チームクラルグラと漆黒のモモンの2チームのようです」
ヴァンパイア討伐にしては少ないな……。
「それで、冒険者組合組合長のアインザック氏とのアポは取れたのか?」
「はい。リージー氏の名前を出したところ話は聞こうということでした」
まだポーションの大量生産には着手していないが、目処はたった。話だけでも通すことは可能だろう
「到着いたしました」
「ご苦労。私が直接受け付けに話しをしよう」
組合に入ると様々なランクの冒険者が寛いでいた。その中で警護を何人も連れた我々は少々注目を集めざるを得ないが仕方がない
「本日アインザック組長と面会を約束しておりますリージー製薬のホースと申します」
「お話は伺っております。組合長は二階におりますのでご案内させて頂きます」
「失礼します。リージー製薬の方がお見えになりました」
「入ってくれ」
受付が開けてくれた扉を通り、中へとお邪魔する
「本日はお忙しい中お時間割いていただき誠にありがとうございます」
「本当に忙しくてね……あぁ座って下さい」
本当に疲れ切った顔をしているな……
「本日はポーションの販売に関してのお話だとか」
「えぇ。現在我が社ではポーションの大量生産に着手しておりまして、それに伴うポーションの大量販売を組合に委託したいと思いまして、ご商談の機会を設けて頂きました」
「大量生産?」
「現在は下のポーションのみではありますが、その精製方法が既に確立しており素人であっても失敗することなくポーションを精製出来るようになりました」
「そんなことが……」
「今までは金貨1枚を超える高級品でしたが将来的には宿に1泊するような感覚でポーションを手に入れられるようになるでしょう」
「そうなれば冒険者の生存率も大幅に上昇するだろうが……そんなことが可能なのかね?」
「はい。少なくとも近いうちに今の半額の値段で卸せるようになるでしょう」
「それが本当なのであれば組合としても全面的に協力させて頂きたいが……その販売権を組合に渡す理由はなんだ?勿論無償という訳ではなかろう?」
「えぇ勿論。我社と致しましては冒険者組合で販売することで市場を独占出来ることは勿論ではありますが、組合から得られる情報を無償で譲って頂きたいのです」
「情報?」
「例えば今日のヴァンパイア討伐。何故二組しか選抜されなかったのでしょうか?」
「それは……」
「言って良いものか悩んでいますね?恐らくそうした情報は今後も沢山入ってくるでしょう。商人にとって情報以上に価値のあるものはありません。今どの冒険者が注目なのか、将来成長の見込みがある冒険者はどのチームなのか。そうした情報から私達は富を得ることが出来るのです」
「分かりました。我々の持つ情報を、開示しましょう。但し極秘任務などの情報をお伝えすることは出来ません。そこは組合の信頼に関わることですのでお譲りすることは出来ません」
「分かりました、それで構いません。それで宜しければ今朝の会議の内容をお聞かせ願いたいのですが」
「分かりました」
内容をまとめるとこうだ。
漆黒のモモンによるとそのヴァンパイアは「ホニョぺニョ子」とかいうふざけた名前で、相当に強いらしく彼と因縁のある敵らしい。報酬は最低でもオリハルコン。同行しても構わないが確実に死ぬと……。
真っ黒くろすけのマッチポンプじゃない?怪しい……滅茶苦茶怪しい……。もしかりにマッチポンプだとすればヴァンパイアは彼の配下もしくは仲間の可能性が高い。単に隷属させられていて、これから慈悲もなくランクアップの糧にされるかもしれないが……。もし前者であれば異型種に理解のあるプレイヤーかもしれない。
◇
結論から言えば、彼らは異型種を仲間としている可能性が高いということが分かった。共に討伐に向かったクラルグラは死亡。ヴァンパイアとの壮絶な戦いの跡は見られるものの、死体はなし。もし仮に隷属した奴隷なのであれば見せしめとしての死体がないのは些か疑問が残る。一番しっくりくるのはクラルグラを殺し、ヴァンパイアとの戦闘を偽装した後、仲間のヴァンパイアと共にギルドに帰還という流れだ。どちらにせよ異型種を仲間としている可能性が非常に高まった。しかしそれと同時に人間種を簡単に殺害したことから倫理観の危うい人物である可能性も少なくはない。将来的に接触を図るにしても、今はまだ慎重に動かざるを得ないだろう。
ポーションの大量生産はある程度軌道に乗った。お陰で組合からの信頼も厚く、最近ではかなり踏み込んだ内容の情報も流してくれるようになった。その中でも特に気になったのが八本指と呼ばれる犯罪組織だ。人身売買や娼館の経営、黒粉と呼ばれる麻薬の売買を行っている王国のガンだそうだ。たが我が社にとっては据え膳とも言うべき美味しい餌である。特に人身売買は労働力確保の上で非常に役立ちそうであった。しかしそれも過去形でしかない。つい先日決まった「奴隷売買禁止法」によって人身売買は表面上は禁止となったからだ。これまで慈善活動ばかり行ってきたラナー王女初ともいえる功績だそうだ。証券法も会社法も独禁法もないこの世界ならばやりたい放題だと思ったのだが……。こうして少しずつ正当な手段が絞られていくのか……!俺からすれば税金で贅沢な暮らしをする貴様らこそガンだ!
しかしそうなると落ち目となるのは奴隷商だ。近いうちに八本指は空席が出来るだろう。その後釜に入れるかどうかだな……。
「相当な犯罪を重ねている娼館の情報が入りました」
「よくやった。では私はそちらに向かうこととする。最悪の場合戦闘になる可能性もある。警戒を怠らないようにしてくれ」
「了解しました」
裏路地を進むと鉄で出来た扉を発見した。どうやら今回の目的地は警戒設備が十分に備わっているようだ。ますます怪しいな
扉を一定のリズムで叩くと中から従業員が出でくる
「あんたが新しい客か。相当羽振りがいいらしいじゃねぇか」
「まぁ、金はあるからな」
「それは羨ましいことで。悪いんだが今はお得意さんが先客でな。部屋が空いてないんだ」
「では中で待たせて貰いましょう」
「そんだったら俺らと賭博でもしねぇか?」
「それはいいですね!花札なんていかがですか?」
「花札ぁ?」
「えぇ、花札です……」
私は今、人の悪い笑みを隠せていないだろうな……
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