「くそー!またアンタの一人勝ちかよ!」
「しっかりと相手の手札を覚えておかないといつまで経っても勝てませんよ?」
「そうは言ってもなぁ……」
「賭博は頭と手癖の勝負なんですから」
「それもそうか……」
バキッ!
「おい!今なんか音しなかったか?」
「客のあんたは奥に避難してろ、敵かもしれねぇ」
「頼みました」
「任せとけよ!」
「扉が錆びておりましたので少々強引に開けさせて頂きました」
ん?そんなに錆びてなかったけどな。まさか無理やり鉄の扉をこじ開けたんじゃ……
「化け物がぁ!」
「囲め囲め!」
暫く怒号と戦闘音が鳴り響いていたがそれも長くは続かず辺りに静けさが取り戻される。つまるところ侵入者が勝ったということだろう。面倒なことになったな……。取り敢えず奥に逃げるしか無さそうだ
一番奥まで逃げ込むと何やら戦闘音が2箇所から聞こえてくる。片方は多対一、もう一方は一対一のようだ。勿論やりやすそうな一対一の方へと突入する
部屋へと入ると金髪の青年が、見るからに人相の悪いフードの男を蹴り飛ばしたところで力尽きたようであった。一段落した所で良かった……
「コイツの仲間か!」
「どっちの仲間かはよく分からんが、この娼館の客だから多分そっちの味方だと思いますよ?」
「あら?あなた羽振りのいい新客じゃな〜い?」
なんだこのオカマ……
「えぇ、その認識で間違いないですね」
「外にコイツの仲間がいるはずだが?」
「あぁ。さっき見張りの従業員が全員やられたようですね。ですが残る敵は二人。私の護衛と合わせてこちらは10人と護衛対象の……」
「コッコドールよ」
「圧倒的にこちらが有利のようだ」
「それならこの坊やも連れて帰れるんじゃないかしら?」
「コイツらが強ければ、ですがね」
「ご心配なく。私の部下は優秀ですよ?嫌味ではなく、あなたよりも」
「言ってくれるじゃねぇか。じゃあこのガキを連れてさっさと逃げるか」
「おっと!それは勘弁してくれるかな?」
「お前の仲間か?」
「いや、恐らくガキの仲間だろう」
「クライムくん大丈夫か?傷を癒すアイテムを持っているか?」
「あり……ます……」
「そうか……ここからは俺が相手だ仇は取らせて貰うぞ」
「名前を聞いても?」
「ブレイン・アングラウスだ」
「なに……お前があの!」
「嘘!?本人なのぉ!?」
「今日出会った者の大半が俺を知っているというのは昔の俺なら嬉しく感じたのかもしれないが、今では何となく微妙だな」
誰だよ……。まぁ確かに今まで出会った人類の中では一番強いが、有名なのか?強いやつといえばガゼフ・ストロノーフや青の薔薇とかしか名前は聞かないがな……。
「な、なぁアングラウス。た、戦うのは止めにしないか?お前も俺たちと同じだ。力を!望んでいるんだろぅ?そういう男の目だ。ならば俺達の仲間にならないか?力を持つものにとって八本指は最高の組織だ。強力なマジックアイテムだって手に入る!高価な武器や防具もだ!」
よし!やはりコイツらは八本指か……。ならばここでこのアングラウスを倒し、仲間入りを果たすしかないな……
「つまらないな……。その程度の集まりか?」
「なに……!?」
「警告してやる。俺達の強さなど大したことは無い。そして、一つ知ったことがある。誰かのための強さは一人だけの強さを凌ぐ。少しだけなのかもしれない、それでも分かったんだ俺は……」
うーん、確かに君はさほど強くない。しかしそれをなぜ知っているのかが不思議だ。一体どこで敗北を知ったのか、俺にはそっちのが気になるけどね
「残念だよ、アングラウス。あのストロノーフと互角だった剣士をここで殺さなくてはならないなんてな!」
勝てないと思うよ?君一人じゃ
「お前に……自分のためだけに剣を振るうお前に殺れるかな?」
「あぁ殺せる!容易く殺せる!お前を殺し、その転がっているガキを殺す!」
ガキは殺すなよ。コッコドールさんが欲しがってるだろ。切り札になるんだとよ
「気を付けて下さい。サイモンは幻術を使います。目に見えるものが真実とは限りません」
「成程な、確かに厄介な相手だが……問題ない。一撃だ」
「なに!?」
「一撃で終わらせると言ったんだ」
「なら!殺って見せろ!」
幻術によってその数を増やしたサキュロントが一斉に攻撃を仕掛ける
しかし次の瞬間。アングラウスが剣を振るった直後
「グハァ……」
誰もいなかったはずの彼の背後からサイモンが現れ、そして崩れ落ちた
「俺の領域は不可視の存在も発見出来る。クライムくんを先に殺して守れなかっただろと言うとつもりだったのかもしれないが……相手が悪かったな。なぁ、一撃だろ?」
「お見事です!」
「それで?残りの君たちはどうする?」
「いや、中々に勉強になる戦いだったよ。対人戦の卑怯さだとか、生でみる武技だとか」
「随分と余裕そうだな」
「いや?今しがた気配を消して部屋へと入ったきた老人も只者では無さそうだし、余裕とまではいかないさ」
「なに!?」
「気付いておりましたか」
「セバス様!」
「彼が君たちの主人のようだね。やはり強いのかな?」
まぁ今回の警護担当二人掛りで勝てる位の強さか……
「私はただの老いぼれ故、そこまで強くはありませんが……あなたがたに遅れは取らないでしょうな」
「そうですか……ではその少年は諦めて我々は撤退させて頂くことにしましょうかね。コッコドールさん、構いませんね?」
「えぇ……仕方ないわ……」
「では道案内お願いします」
「逃がすとでも?」
「申し訳ありませんが、あなたがたのお相手は我々護衛の者が引受けさせて頂きますので」
「じゃあ後は頼んだよ。時間稼いだら離脱してくれ」
「了解しました」
後ろで始まった戦闘音をバックミュージックに俺はコッコドールの本拠地へと案内してもらった
「さて、あなたが八本指が一人、コッコドールさんで間違いありませんね?」
「えぇそうよ」
「今回倒された護衛が六腕の一人であるのは本当ですか?」
「彼も相当な実力者なのだけど、相手がアングラウスじゃ仕方ないわね……。それを相手にして無事に帰ってきたあなた達の護衛の方がよっぽど凄いけど」
そう言って後ろに控える俺の部下に視線を向ける
「我々の方が六腕よりも余程良い腕を持ってると思いますけどねぇ?」
「そ、そうみたいね……」
「良かったら我々を今度から護衛に付けてはいかがですか?強さはあなたが一番よくご存知でしょうし」
「でも報酬は余り期待されても困るわよ?」
「奴隷売買禁止法ですか……」
「あの忌々しいメスのせいでこっちは商売上がったりよ!」
確かに今まで合法だった仕事が突然禁止になったのだ。倫理観はともあれ、理不尽であることに変わりはないな。
「それと、もし良ければ彼の後釜に私の部下を六腕に加えて貰えるよう交渉して頂けたら嬉しいんですけどね」
「そうねぇ、口利きはしてあげるけどお眼鏡に叶うかどうかはあなた達の実力次第だし、私には保証出来ないわよ?」
「では明日にでもゼロとやらの屋敷を訪ねて見ますか。アポ宜しくお願いします」
「分かったわ」
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