Fate/Apocrypha Revival in the Interstice 作:梨央
『"座"にて、力強い声で呼びかける。
「応じよ、応じよ。一騎当千の英霊たち。
我が呼びかけに応じるならば。答えよ――」
再び裁定者が現れることはなく、大聖杯の管理者は旅立った。
人理の布はとっくに破れている。今さら穴が一つ増えた所で気付く者はいない。
集えるサーヴァントは14騎。依代たるマスターは
当然だ。
我が問答に、只人の干渉は不要なり。
――想定通り7騎の"王"が揃ったか。
素晴らしい。これ以上の条件が整うことはもはやないだろう。
さあ、我が問いかけを。人類原初の地にて始めよう』
やあ!こんにちは。
私はシオン。シオン・エルトナム・ソカリス。
そしてここは魔術協会の三大部門の一つ、アトラス院。
巨人の穴倉、禁断の兵器庫、生きる奈落。
私はそこの次期院長なんだ。
私が就任するまでに残ってればだけどね、アハハハハッ!
キミは私のサーヴァント。
今の所は私がマスターだけど、もうすぐ契約は切らせてもらう。
大丈夫、令呪三画分の魔力を譲渡するし、
私の計算だとその後も大聖杯から魔力の供給を受けられるはずだから。
ん?私の姿が見えないって?
これは私の得意技で、思考を七つに分割すると同時に、キミの意識に直接……
ああもう!この説明を含めるのは合理的じゃない。
実は、今は何度目かの世界が滅びるかどうかの瀬戸際でね。
この些末な特異点もどきが剪定前に
人手不足は魔術世界においても本当に深刻だ。
この件だけにウチの魔術師を派遣する訳にはいきそうもない。
私もこれが済み次第、次の仕事のために
だから、これは2017年のアトラス院としての精一杯の抵抗だ。
君が例えこれから赴く世界で何もなせなくても、それならそれでいい。
どうせこの地球は後少しで■■される。
これはこの事態のせいじゃないから安心していいよ。
本来はこの時代の人間の責任で解決すべきことを、
召喚したサーヴァントに全て押し付けるなんて前代未聞だよね。
聖杯戦争がルール通りに行われたことなんて一度もないけど、
それでも事態をただ見てるだけってのは非合理的だから仕方ない。
いいかい。キミに三つの大事なことを教えておくよ。
一つ、たぶん私のせいで忘れてしまうけど。君は人間じゃない、英霊だ。
お歴々のたっての希望で真名は伏せさせてもらったけど、
何、戦いになっても特に困ることはないだろう。
もともと君は戦場で武功を立てた英雄じゃないし、
なんたってアトラスの兵器の一つを貸し与えるんだからね!
二つ、敵は――恐らく"白"のランサーだ。
ああ、説明していなかったね。
これからキミが向かう場所には14騎のサーヴァントがいて、
それぞれ"白"と”青”の陣営に振り分けられている。
真名もある程度検討はついてるけど、ここで一人ひとり解説する時間はないな。
とにかく、これだけの大規模干渉を引き起こせるのは恐らく彼女だけだろう。
キミは15騎目のサーヴァントとしてこの事態を観測してほしい。
三つ、これはとても大事なことだからよく覚えておいてほしい。
キミは、キミの思うがままに行動しろ。
これも私の計算だが、敵を全て倒せば終わり、みたいに簡単な話ではなさそうだ。
さっきも言ったけど、どうにもならないならそれはそれでいい。
事態を解決してほしいわけじゃないからね。
ただ――何が起きているのかをヒトではない、英霊の眼で観測してほしい。
だから君を選んだんだ。
時間だね。
キミはこれから私が転送する城の中で目を覚ます。
そこで二人の王様に出会うはずだ。
大丈夫。
もちろん二人ともサーヴァントだけど、味方だよ。
……多分。
大丈夫だってば!私の計算を信用してくれ!
彼らの持つ情報と、私が話したことを元に当面の指針を立ててほしい。
ここから先、私から干渉したり支援することは不可能だ。
どういう結末になったとしても、この事態は英霊たちに託すしかない。
それがアトラスの、ううん、次期院長としての私の決定。
勝手なことばかり言ってごめん。
三画の令呪を束ねて我らが唯一の希望に道を示す!
11/27 一部表現を修正