Fate/Apocrypha Revival in the Interstice   作:梨央

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第7節 使い魔たちの饗宴

機動聖都広間。

集めた二人を前に、これまでの情報を整理する。

 

レオの地図によって他のサーヴァントのある程度の位置がわかった。

 

"白"と"青"のアサシン、そして"青"のキャスターはジブチに。

"白"のライダーは南アフリカに。"青"のバーサーカーはケニアに。

そして敵と認識させられた"白"のランサーはタンザニアにそれぞれ留まっている。

彼らはレオが地図を作成してから動いた記録がないと言う。

 

"白"のセイバー、"青"のアーチャー、"青"のライダー、

そして"白"のバーサーカーは常に移動している。

中でも"白"のバーサーカーの移動速度は通常のサーヴァントのものではない。

地図の更新間隔を考慮に入れても、異常な速さで大陸各地に出現している。

 

「動いているサーヴァント以外にも警戒は必要よ。

そこの皇帝サマみたいに他にも対城宝具を持ったサーヴァントがいるかもしれないし。

この高度なら何らかの飛行手段がない限り侵入は難しいと思うけど、

念のため霊体用の結界を強固なものに張り直したわ」

 

本当はシャルル(カロリス)の城に手を加えたくはないんだけどね、と呟く。

 

「んで、キャスターの頼みで城の防御装置に俺の大砲を追加しておいた。

今度俺の城を攻撃してきた奴がいたら、そいつごと吹き飛ばしてやる」

 

あなたの城じゃないでしょ、とすかさず口を挟むレオ。

ふん、と鼻を鳴らし鋭い目つきで続けるメフメト。

 

「それでフリーダ、誰から狙う?目的通り、手っ取り早くもう一人のランサーか?」

 

それも考えた。

キャスターの地図には、彼女の使い魔から得られたサーヴァントの特徴も記載されている。

だが、"白"のランサーの項目には何も書かれていない。

 

「なあ、あんたの使い魔って何だ?教皇様に縁ある動物っつったら、ハトか?」

「違うわ。カモメよ。悪い?」

 

鳥の使い魔。

ゴーレムやホムンクルスなどの魔法生物ではなく、

野生動物を利用することにはメリットがある。

例えば、製造の過程を飛ばして現地調達も可能なこと。

簡単な暗示で使役できること。魔力量が微弱なため感知されにくいこと。

 

中でも空を飛べる鳥の場合は、地上の移動に制限がない。

にも関わらず何の情報も得られないと言うことは、

敵はよほど用心深く自身の痕跡を消しているか、

使い魔の目の届かない場所で身を潜めている可能性が高い。

 

「ねえ、あなた皇帝なんでしょ?兵士を召喚する宝具とかスキル、持ってないの?」

 

レオに話を振られた途端、ぴくりと眉を動かすメフメト。

もしかして、触れられたく話題なのか?

今、彼の頬を伝ったのは…汗…?

 

「持ってるが、使いたくない」

「ふーん。この期に及んで皇帝サマは最大の協力を拒むんだぁ?」

 

レオの意地悪そうな上目遣いに、メフメトはばつが悪そうに答える。

 

「……ちっ。しゃあねえな。ほらよ」

 

メフメトが指を鳴らすと、テーブルの上に虎模様の猫が現れた。

小さく鳴いて、レオと私の前にとことこ歩いてくる。

かわいー!と少女のように声を上げるレオ。

 

「俺の使い魔だ。見りゃわかるだろうが戦闘能力も諜報能力もない。

ただまあ、城に置いとけば運気ぐらいは上がるかもな」

「これもあなたの皇帝特権ってやつ?それとも、もしかして生前宮廷で飼ってたとかー?」

「……うるせえ。どっちでもいいだろ」

 

眠いのかテーブルの上で丸くなった猫を、レオは嬉しそうに撫でている。

確かに可愛い。私も撫でたい……。

 

いけない。脱線した。

いずれにせよ、何の情報もないまま本命に特攻するのは無謀だろう。

いっそのこと、()()()間諜を利用してみるか。

 

「この国で三人固まってる連中ね。私も同意見だわ。

"青"のキャスターがアサシン二人を支配下に置いたか、同盟を組んだ可能性も考えられるけど。

私だって同じキャスターよ?気配遮断の術を持つアサシンを二人も従えて。

何の秘匿もせずに居所をバラすような真似をするなんて、矛盾してると思わない?」

 

まったくその通りだと思う。

もしかしたら彼らもまた異常事態に気付き静観しているのかもしれない。

つまり、交渉の余地が残されていると言うことだ。

 

「ま、仮に何かの罠だとしても三人で組まないと動けない連中なんぞ、

俺の敵じゃねえから何とかなるだろう。特に異論はねえ。だがよ、フリーダ」

 

メフメトは、真剣な眼差しで続ける。

 

「俺たちは事態の観測のために戦う。それはいい。

その場合の()()()()は、もう一人のランサーを倒すことか?

それとも大聖杯を確保するまで続けることか?どうなんだ?」

 

勝利条件、か。私もずっと考えていた。

事態の観測とは、どこまで介入することを指すのか。

そして私は、それに対する明確な答えをまだ持っていない。

 

「現時点では何とも言えません。言えることがあるとすれば……。

私のマスターだった人は、もう一人のランサーを異常事態の原因と推測していました。

それで何かが変わっても、変わらなくても。私は、私を送り出した彼女の判断を信じて行動する。

そしてその準備のため。二人のアサシンとキャスターを戦力として引き込むために会いに行く。

勝利条件ではなく、当面の行動指針に過ぎないですが……これだけでは、だめですか?」

 

二人は無言で首を振る。

 

「はん。頭首さまの初めての仕事にしちゃ上出来だ。なあに、敵を倒すだけが戦いじゃねえよ。

大事なのは、何で戦ってるかわからない状態が一番危険だってことだ。

フリーダにちゃんと目的があるって言うなら、せいぜい用心棒の務めを果たしてやるよ」

「聖都を落としたノリでマレヴィラ(ベオグラード)にも攻め込んで、

大敗北を食らった皇帝サマが言うと説得力あるわねえ」

 

彼の使い魔の猫を撫でながら茶化すレオ。

メフメトは怒りのこもった眼で睨みつけているが、反論できないようだ。

 

最初に相対したときのような、今にも殺し合いに発展しそうな雰囲気ではなく。

過去の出来事を乗り越えた偉人、英雄、英霊同士のどこか穏やかな――。

 

()()か。

私は人間だった頃。どんな道を歩んだ結果、英霊に召されたのだろう?

 

サハラ砂漠を抜けてジブチへ辿り着くまでは、まだまだ時間がかかりそうだ。

 

広間を出て、窓から大陸の空と大地を眺める。

自分の真名や過去も思い出せれば、彼らと対等に立てるのだろうか。

 

思いを巡らせている間にも時間は過ぎていく。

夕暮れも、夜も、朝も。聖都は風を切って東へ進んだ。




次話投稿予定:24日0時
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