Fate/Apocrypha Revival in the Interstice 作:梨央
アフリカ大陸東海岸。ジブチ。紅海とアラビア海を結ぶアデン湾に面する小国。
この国の首都ジブチシティにある軍隊の基地らしき場所に、
3騎のサーヴァントの反応が確認された。私たちはそこに向かっている。
うち2騎は、"白"と"青"のアサシン。
もう1騎は、"青"のキャスター。
レオの使い魔から得られた情報によれば、
3騎とも明確な脅威たりうる宝具の展開などは確認できないが。
――油断は禁物だ。
降下装置を帰還させる前に。
前回の反省も込めて、予備の操作盤をレオにもう一つ作ってもらった。
ここでまた何があっても、機動聖都は使える。
何も起こらないように二人とも連れてきたわけだが、用心に越したことはない。
二人を両脇に、基地のゲートに立つ。
人避けの結界が張られているようだが、レオの教会で見たものほど強固ではないようだ。
むしろ、キャスターが張ったにしてはすごく弱いような……?
「同意見ね。素人レベルよ、これ。私たちなら気付かれずに入れそう。
どうせ誰も来ないとたかを括って、皆で引きこもってたりしてね?」
「先入観は危険だ、レオ。罠の可能性を忘れるな。
結界を壊さずに入れるならそれでいい。アサシンに会おうってのに隠密行動とは笑えるがな」
そうだ。相手はアサシンで、気配遮断の術を持っている。
私だってサーヴァントだから、ある程度戦えるとは思っているつもりだが。
いつどこから暗器の類が飛んでこないとも限らない。細心の注意を払って進み――
「おんや、これはたまげた。一度に三人もの客人とは!
町屋には人っ子一人おらんし、やはり
東洋風の装束を着た青年が、一人で喋り続けている。
レオもメフメトも、どう反応していいのかわからず固まっている。
……私も同じだ。何なのだ、彼は?
「ご客人、立ち話もなんだし、みんなで茶でも飲みながら話そうじゃないか。
いやー、煙草でもやろうと外に出た途端のことで、びっくりしたわ。きっと女たちも驚くぞ」
まさかの歓待である。
それにしても、女たちとは?
ここにいるはずのもう2騎のサーヴァントだろうか。
基地内の食堂と思わしき場所に、半ば無理やり連れていかれる。
案内された部屋の中には、確かにもう二人いた。
「ちょっとタクボク!ここには他の人を入れないでって言ってあるはずよね?」
短い金髪の白人女性が不満気に文句を垂れる。
彼女がもう一人のキャスターか。
タクボク…?
「いや、入ってきたのはこの人らの方だ。そこに
見た所敵意はなさそうだし、まあ良いかと思って連れてきたが、まずかったか?」
「……………………」
もう一人の長い黒髪の東洋人女性は、こちらを一瞥したきりずっと黙っている。
彼女も青年に似た東洋の装束を着ているので、同じ地域の英霊かもしれない。
いろいろ予想外のことは起こったが、せっかく向こうから招き入れられたのだ。
私たちは、私たちのすべきことをしよう。
「突然押しかけた無礼をお許しください。私はフリーダ。
ここにいる"白"のキャスターとアーチャーと共に、
聖杯大戦における異常事態の観測のために動いている者です。
こちらには戦闘の意思はなく、真名を開示した上で協力する用意もあります。
よろしければ、そちらの事情も教えていただけないでしょうか?」
向こうの三人は顔を見合わせ、白人の女性が代表して話し始める。
「戦う気がないのはあたしたちも同じだし、構わないけどさ。
あなたたちの役に立つ情報はないと思うよ?」
彼女は"青"のキャスター。真名をアメリア・ブルーマー。
アメリカ合衆国の服飾デザイナーらしい。
らしい……と言うのは、私の聖杯に与えられた知識にはない人物だからだ。
ひいき目にも魔術師には見えないし、魔術師然とした魔力や雰囲気も感じない。
「帝国陸軍はいつか世界にも拠点を作るとか言っておったが本当だったな。
日本語の読める場所があって僥倖だ」
彼は"白"のアサシン。真名を石川啄木。
日本がかつて大日本帝国と称していた時代の詩人。
彼だけは聖杯の知識からも日本を代表する歌人として知覚できたが、
どう見ても暗殺者には見えない……。
「……
つまり彼女が"青"のアサシン。
彼女も全く知らない人物だ。聖杯の知識にもない。
念のためレオとメフメトに目を遣ったが、首を振った。当たり前か……。
二人のアサシン。啄木とスガは同じ頃にジブチシティで召喚された。
啄木に至っては聖杯大戦のルールもどうやらよく理解していなかったらしい。
何となく二人で街をうろついている間に、もう一人のサーヴァントに出会った。
アメリアのことである。
「ここが
なぜかは知らんが、生身の身体を得て
ここにいる美女が一緒とは言え、では何をすればよいかもわからん。
あれは確か服屋だった。そちらにいるメリケンの、これまた美女とお会いしたのだ」
"青"のキャスター、アメリアもまたジブチシティに召喚された。
彼女は二人とは違い聖杯に与えられた知識の活用方法も理解している。
そもそもサーヴァントは会話の意思疎通において本来困ることはない。
日本語しか読めないアサシン二人がおかしいのだ。
理解しているからこそ、彼女は早々に諦めた。
聖杯戦争だか聖杯大戦だか知らないが、生き残る術を持たないならどうしようもない。
聖杯にかける願いがない訳ではないが、彼女は固有の戦闘能力を持たないのだから。
このままいずれ他のサーヴァントによって討たれるぐらいなら、
せめて"座"に現代の服飾技術を持ち帰ろうと街を散策していたところ、二人に会ったという訳だ。
「あたしは別にどっちでもよかったけど。
タクボクが三人でいた方が安全とか言うから何となくついてっただけ。
ここに辿り着いたのも偶然。タクボクがここの文字なら読める、
きっとここは帝国の海外領土だろうって。
そんなわけないってあたしはちゃんと言ったんだけど。まあ、それからずっといるのよ」
期待してた戦力の補充にはなりそうもねえな、とメフメトが呟く。
同感ね、とレオも続く。
確かにその通りなのだが、私たちに気配を察知されるほどだ。
次にこの自衛隊基地へやってくるのが友好的なサーヴァントとは限らない。
ここよりは機動聖都の方が安全だろうし、
彼らを抱えることで酔狂なサーヴァントに狙われるリスクもないだろう。
ああ見えて、案外何かの役に立つかもしれないし。
共闘を提案しようと私が口を開く前に。スガが、やにわに立ち上がった。
「……あの。
彼女が何か言いかけたかと思うと。
咳込み、吐血し、倒れ込んだ。
次話投稿予定:25日0時
FGOイベント楽しみですね