Fate/Apocrypha Revival in the Interstice 作:梨央
機動聖都の一室にて。
すやすやと眠っているスガを、私は傍らで眺めていた。
思い出すのも正直ばかばかしいが、戻るまでのことを振り返る。
倒れ込んだスガに対し、彼女と一緒にいた二人は落ち着き払っていた。
啄木はいつものことだと言い、アメリアはしばらく寝かせれば大丈夫だと言う。
そんなわけないじゃないと一喝したレオの命令で、なし崩し的に連れてきてしまった。
……三人ともだ。
魔術的な治癒を施したレオによると。
スガの虚弱体質は天性のもので、根本的な治療はできないらしい。
世の中にはとんだデメリットスキルもあったものだと思う。
結果としてジブチでの件は、戦力の補充も有益な情報も得られなかったが。
こちらの損失も出さずに済んだと言える。
それに彼らの存在から確信できたことがある。
戦場の只中にいてまったく動かないなど、そもそもがあり得ないのだ。
考えてみれば当然のことを、色々な条件が積み重なった結果忘れていた。
レオの地図は正確だったし、更新間隔も改善されている。それでも穴熊を決め込んでいるのは。
自分の陣地で戦うためなどではなく、戦う気がないか、あるいは他に動けない理由でもあるのか。
ずっとここにいてもしょうがない。スガの部屋を出て聖都を歩いて回る。
それにしても。これでこの城には私を入れて6騎、か。
いきなり大所帯になったものだ。
聖杯戦争は、敗れたサーヴァントの魂を大聖杯に取り込む過程が欠かせない儀式だと聞く。
両陣営合わせてもその半数近くのサーヴァントを戦闘させずに囲い込んでいるのだから、
もし仮に敵の目的が聖杯戦争の続行にあるのなら、私はそれを妨害していることになる。
アサシン二人ともう一人のキャスターは、まあ非戦闘員のようなものだ。
他のサーヴァントからすれば、いつでも倒せる存在に変わりはない。
彼らを保護することで直ちに狙われることはないとしても。
私の行動方針は、果てして本当に正しいものだろうか?
「ねえ城主さん。初めて会ったときから思ってたんだけど」
回廊で声をかけられる。噂のもう一人のキャスター、アメリアだ。
私は、なぜかこの人は苦手に感じる。
それにしても今までどこにいたのか。私が聞く前に彼女はつかつかと近づいてくる。
「あなた、仮にもこの城の主なんでしょ?それってつまり女王みたいなものよね。
ならそのみすぼらしい恰好は何?まるでカンザスの野鼠みたい」
今日は何て日だ。
相手がワラキア公ならまだ許せるが、会ったばかりのキャスターにまでダメ出しされるとは。
もとい、私の服を用意してくれるはずだった人はもういないのだ。仕方ないだろう。
「あら。そうだったの。へえ、ふうん」
アメリアは私の身体をしげしげと眺めている。
いや、まさか体格を測っているのか?
どっちでもいい。視線に耐えられなくなって、もう行ってもいいか問う。
「何言ってるの。ヴラドと言う人が用意した
なら続きはあたしがやる。案内して」
有無を言わさぬ雰囲気に、つい彼の部屋まで連れてきてしまった……。
そう言えば、彼女は自分でデザイナーの英霊だとか言っていたような気もする。
「いい布。裁ち目もキレイ。きっと領主さんは良い腕だったんでしょうね」
知らない。本人に聞かせてやれば喜ぶかもしれないが、あいにくと私はヴラドじゃない。
なぜだろう。一刻も早く彼女のもとを離れたがっている。嫌な予感がする。
「女はね、生まれたときから自由なの。自由でなければならない。
あなただってそうよ、とアメリアは続ける。
はぁ、と我ながら間抜けな返事を返す。
「まあ職業服と私服は別だし、それはいいでしょう。
あたしが言っているのは、領主にはそれにふさわしい服装があると言う話」
裁ちばさみを持つ彼女の姿が、どこかヴラドと重なって見える。
おかしい。彼が裁縫をする姿は見たことないのに。
裁断された布が身体のパーツごとに分けられていく。
「あなたたちはあたしのことを三流サーヴァントだと思っている。
否定はしない。戦争は嫌いだし、あたしは戦いにおいては全く役に立たないでしょう」
でもね、とアメリアは続ける。
「戦場だけが女の華じゃないのよ。見てなさい、これがあたしの宝具。
針よ踊れ!
洋裁道具の隣に、黄色いミシンが現れ、柔らかい光を放つ。
すると切り揃えられた生地が瞬く間に服の形をとっていく。
……すごい。
「シャネルやサン=ローランには負けるでしょうけど。さ、着てみなさい。
それにしても、結構生地が余ってるわね。もう少し何か作ろうかな」
アメリアの仕立てたドレスを手に取る。
これは、ただの服じゃない。
ランクは決して高くないが、魔力を感じる。れっきとした魔術礼装だ。
「アメリア、ここにいたのですね。フリーダ様にも、先程はご迷惑をおかけいたしました」
「あら、スガ。起きたの。そうだ。あなたのキモノも仕立て直してあげる。
さっき血で汚れちゃったでしょう」
言われた通りに着てみる。
心なしか、魔術に強くなった気がする。もしかして宝具の効果だろうか。
うんうん似合ってる、などとアメリアたちが口々に言っているのが聞こえる。
「ねえフリーダ。次の行動目標についてなんだけど……わっ!」
レオだ。私の変わりぶりに驚いたのか。
本物のお姫様みたい!とはしゃいでいる。
……やっぱり恥ずかしい。こんなの柄じゃない。
「驚いた、キャスター。あなたこんな宝具を持っていたのね」
「アメリアでいいですよ、司祭様。あなたにも何か作りましょうか?」
「レオよ。あと司祭じゃなくてこれでも教皇サマだから。
そうねえ、せっかくだからオフ用の私服でも頼もうかしら……」
きゃっきゃっと女の会話を楽しむレオたち。
まったく、英霊が何しに来たのやら。戦争にオフの日などあるものか。
この部屋の喧騒に気付いたのか、男性陣もやってきた。
「フリーダ……お前……」
「ふむ、この城は美人が多いと思っていたが。やはり
愉快そうに笑っている啄木と、あっけに取られているメフメト。
やめてほしい……。男性に見られるのはもっと恥ずかしい。
えーい、もうやけだ!せっかく全員集まったんだから、この場で軍議にしてやる!
次話投稿予定:26日0時
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