Fate/Apocrypha Revival in the Interstice   作:梨央

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第9節 城塞の午後

機動聖都の一室にて。

 

すやすやと眠っているスガを、私は傍らで眺めていた。

思い出すのも正直ばかばかしいが、戻るまでのことを振り返る。

 

倒れ込んだスガに対し、彼女と一緒にいた二人は落ち着き払っていた。

啄木はいつものことだと言い、アメリアはしばらく寝かせれば大丈夫だと言う。

そんなわけないじゃないと一喝したレオの命令で、なし崩し的に連れてきてしまった。

……三人ともだ。

 

魔術的な治癒を施したレオによると。

スガの虚弱体質は天性のもので、根本的な治療はできないらしい。

世の中にはとんだデメリットスキルもあったものだと思う。

 

結果としてジブチでの件は、戦力の補充も有益な情報も得られなかったが。

こちらの損失も出さずに済んだと言える。

それに彼らの存在から確信できたことがある。

 

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戦場の只中にいてまったく動かないなど、そもそもがあり得ないのだ。

 

考えてみれば当然のことを、色々な条件が積み重なった結果忘れていた。

レオの地図は正確だったし、更新間隔も改善されている。それでも穴熊を決め込んでいるのは。

自分の陣地で戦うためなどではなく、戦う気がないか、あるいは他に動けない理由でもあるのか。

 

ずっとここにいてもしょうがない。スガの部屋を出て聖都を歩いて回る。

それにしても。これでこの城には私を入れて6騎、か。

いきなり大所帯になったものだ。

 

聖杯戦争は、敗れたサーヴァントの魂を大聖杯に取り込む過程が欠かせない儀式だと聞く。

両陣営合わせてもその半数近くのサーヴァントを戦闘させずに囲い込んでいるのだから、

もし仮に敵の目的が聖杯戦争の続行にあるのなら、私はそれを妨害していることになる。

 

アサシン二人ともう一人のキャスターは、まあ非戦闘員のようなものだ。

他のサーヴァントからすれば、いつでも倒せる存在に変わりはない。

彼らを保護することで直ちに狙われることはないとしても。

私の行動方針は、果てして本当に正しいものだろうか?

 

「ねえ城主さん。初めて会ったときから思ってたんだけど」

 

回廊で声をかけられる。噂のもう一人のキャスター、アメリアだ。

私は、なぜかこの人は苦手に感じる。

それにしても今までどこにいたのか。私が聞く前に彼女はつかつかと近づいてくる。

 

「あなた、仮にもこの城の主なんでしょ?それってつまり女王みたいなものよね。

ならそのみすぼらしい恰好は何?まるでカンザスの野鼠みたい」

 

今日は何て日だ。

相手がワラキア公ならまだ許せるが、会ったばかりのキャスターにまでダメ出しされるとは。

もとい、私の服を用意してくれるはずだった人はもういないのだ。仕方ないだろう。

 

「あら。そうだったの。へえ、ふうん」

 

アメリアは私の身体をしげしげと眺めている。

いや、まさか体格を測っているのか?

どっちでもいい。視線に耐えられなくなって、もう行ってもいいか問う。

 

「何言ってるの。ヴラドと言う人が用意した(マテリアル)があるんでしょ。

なら続きはあたしがやる。案内して」

 

有無を言わさぬ雰囲気に、つい彼の部屋まで連れてきてしまった……。

そう言えば、彼女は自分でデザイナーの英霊だとか言っていたような気もする。

 

「いい布。裁ち目もキレイ。きっと領主さんは良い腕だったんでしょうね」

 

知らない。本人に聞かせてやれば喜ぶかもしれないが、あいにくと私はヴラドじゃない。

なぜだろう。一刻も早く彼女のもとを離れたがっている。嫌な予感がする。

 

「女はね、生まれたときから自由なの。自由でなければならない。

司祭様(レオ)みたいな服もお人形さんみたいで可愛いけど、自由ではないわ」

 

あなただってそうよ、とアメリアは続ける。

はぁ、と我ながら間抜けな返事を返す。

 

「まあ職業服と私服は別だし、それはいいでしょう。

あたしが言っているのは、領主にはそれにふさわしい服装があると言う話」

 

裁ちばさみを持つ彼女の姿が、どこかヴラドと重なって見える。

おかしい。彼が裁縫をする姿は見たことないのに。

裁断された布が身体のパーツごとに分けられていく。

 

「あなたたちはあたしのことを三流サーヴァントだと思っている。

否定はしない。戦争は嫌いだし、あたしは戦いにおいては全く役に立たないでしょう」

 

でもね、とアメリアは続ける。

 

「戦場だけが女の華じゃないのよ。見てなさい、これがあたしの宝具。

針よ踊れ!我が勢威に慄け勇士(フェミニズン・リリー)!」

 

洋裁道具の隣に、黄色いミシンが現れ、柔らかい光を放つ。

すると切り揃えられた生地が瞬く間に服の形をとっていく。

……すごい。

 

「シャネルやサン=ローランには負けるでしょうけど。さ、着てみなさい。

それにしても、結構生地が余ってるわね。もう少し何か作ろうかな」

 

アメリアの仕立てたドレスを手に取る。

これは、ただの服じゃない。

ランクは決して高くないが、魔力を感じる。れっきとした魔術礼装だ。

 

「アメリア、ここにいたのですね。フリーダ様にも、先程はご迷惑をおかけいたしました」

「あら、スガ。起きたの。そうだ。あなたのキモノも仕立て直してあげる。

さっき血で汚れちゃったでしょう」

 

言われた通りに着てみる。

心なしか、魔術に強くなった気がする。もしかして宝具の効果だろうか。

うんうん似合ってる、などとアメリアたちが口々に言っているのが聞こえる。

 

「ねえフリーダ。次の行動目標についてなんだけど……わっ!」

 

レオだ。私の変わりぶりに驚いたのか。

本物のお姫様みたい!とはしゃいでいる。

……やっぱり恥ずかしい。こんなの柄じゃない。

 

「驚いた、キャスター。あなたこんな宝具を持っていたのね」

「アメリアでいいですよ、司祭様。あなたにも何か作りましょうか?」

「レオよ。あと司祭じゃなくてこれでも教皇サマだから。

そうねえ、せっかくだからオフ用の私服でも頼もうかしら……」

 

きゃっきゃっと女の会話を楽しむレオたち。

まったく、英霊が何しに来たのやら。戦争にオフの日などあるものか。

この部屋の喧騒に気付いたのか、男性陣もやってきた。

 

「フリーダ……お前……」

「ふむ、この城は美人が多いと思っていたが。やはり(われ)の眼に狂いはなかったな。

(さなぎ)から烏揚羽(カラスアゲハ)が出てきよった」

 

愉快そうに笑っている啄木と、あっけに取られているメフメト。

やめてほしい……。男性に見られるのはもっと恥ずかしい。

えーい、もうやけだ!せっかく全員集まったんだから、この場で軍議にしてやる!




次話投稿予定:26日0時
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