Fate/Apocrypha Revival in the Interstice   作:梨央

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第10節 武力介入

機動聖都、進入口。

眼下に広がる熱帯雨林を見下ろしながら、私は今度の作戦を反芻する。

 

正体不明の"白"のランサーに挑むには、残念ながら未だ戦力が不足していると言わざるを得ない。

そこで、だ。

現在戦う意思のある、つまり移動を続けている他のサーヴァントにアプローチを試みる。

今回はその中の2騎。”白”のセイバーと”青”のアーチャーを狙う。

 

レオの地図の最新情報によれば、移動中の2騎の進路はある地点にて交錯する。

現在地ジブチより南西のコンゴ民主共和国に広がる熱帯雨林である。

この機は逃さず利用したい。

すなわち、まず間違いなく行われるであろう2騎の戦闘へ介入を図る。

 

2騎の予想進路にあたる森林内の各所には、レオの使い魔によって既に罠が仕掛けられている。

後は私の合図でレオが遮蔽術式を起動し、メフメトの砲撃も加え両者の分断と弱体を行う。

その上で私とスガがセイバーに、メフメトとレオがアーチャーに接触する。

当然戦闘は避けられないだろうから、短期決戦で無力化した上で2騎の協力的態度を引き出す。

 

この際に思わぬ苦戦を強いられた場合や、

更なるサーヴァントの乱入など、

計算外の事態が起こったら直ちに離脱すること。

当然リスクを伴う作戦だが犠牲を前提にはしたくない。

一緒に前線に出る3人には徹底してもらう。

 

残る啄木とアメリアは機動聖都にて待機だ。

啄木にはステータス補助のある詩集を、アメリアには自動治癒の護布を作ってもらった。

……自分で役割を決めておいて何だが。

宝具を目の当たりにしたアメリアはともかく、啄木のは本当に効果があるのだろうか……。

 

「フリーダ様は(わたくし)がお守りします。……ただ、あまりあてにもしないでくださいね」

 

アメリアの手によって新調された黒の和服をまとったスガの言葉を思い返す。

私と同じ黒髪で、同じ色の黒い服を着ているので、啄木には姉妹のようだとからかわれた。

……顔立ちや瞳の色も違うのに。

護衛を申し出てくれたのはありがたい。

かなり緊張しているようだが、こうして隣で見た限りでは最初に会ったときより元気そうだ。

 

「スガ、あなた本当に戦えるの?それに武器は?」

「アメリア、心配には及びません。(わたくし)にはこれが」

 

彼女は両腕を交差させ、手指の間に装着した柄から何本もの刃を作り出して見せる。

黒鍵。

聖書のページで作られた概念武装。生前聖堂教会と親交のあった彼女の武器だ。

さすがアサシンのクラスを得ているだけのことはある。もう一人の暗殺者(タクボク)も見習ってほしい。

これで一人で戦うより状況も改善されたが、病弱スキルがある彼女に頼り切りはできない。

 

「んで、もう一人のアーチャーを俺とレオで抑えるってわけだ。

おもしれえ。ようやく聖杯大戦らしくなってきたじゃねえか!」

「あんたね、相手を倒すことが目的じゃないんだからね。本当にわかってるの?」

 

拳を突き合わせて猛るメフメトを、レオが諫める。

この二人の強さは折り紙付きだ。

例えアーチャーが相手でも、二人がかりなら大丈夫だろう。

 

「ねえ。直接戦わないあたしには関係ないかもだけど。

邪魔しに行く二人のサーヴァントの真名や能力はわかってるの?」

 

アメリアが不安そうな顔で私を見る。

もちろんだ。何の勝算もないまま挑む訳ではない。

こちらにはレオの使い魔によってもたらされた、ある程度の情報がある。

 

帯剣の風貌とその魔力量から、セイバーは恐らくアジア圏の魔剣使いだ。

軍勢を率いているアーチャーとの交戦を見据えて進軍していることから、

対軍級の宝具を所持していると予想される。

数の力に頼らず、対人攻撃手段に優れる私たち二人の奇襲なら、

戦闘経験では劣っても多少有利な状況を作れるはずだ。

繰り返すように、短時間無力化しさえすればよいのだから。

 

一方の対峙しているアーチャーは、ヨーロッパ圏の砲撃手と推測される。

黒犬の姿をした兵士の軍勢を無数に従えていることと、

巨大な錫杖を持っていることから、彼もまた"王"のサーヴァントの可能性がある。

対城、対都市宝具を持つメフメトとレオなら敵の使い魔に遅れは取らないだろうが、

アーチャー本人の能力は未知数だ。

計算外の要素を減らすためにも、可能ならセイバーを早めに対処して合流したい。

 

――こんなところだろうか。

奇策・妙策ではないが、堅実な策ではあると思う。

リスクが皆無な訳ではないが、戦力不足を打開するにはこれしかない。

何よりも、最高の収穫と喜びは冒険的な選択でしか得られないのだから。

 

レオの使い魔から送られる視覚情報を見ながら、合図するタイミングを見計らう。

現在2騎は予想通りの進路を進んでいる。間もなく会敵するだろう。

熱帯雨林には中途半端に伐採されて視界が開けている場所が何か所かあるが、

そこを馬に乗ったセイバーが通り掛かる。奇襲を仕掛けるには悪くないポイントだ。

 

セイバーの周囲に複数の微小な魔力反応が蠢いている。

アーチャーの軍勢が一斉に動き出したようだ。

敵もまた襲撃の気配をうかがっていたのだろう。チャンスだ。この隙に罠を――

 

「お待ちくださいフリーダ様。あれを……!」

 

スガに制され、目視で状況を確認する。

セイバーが馬上で剣を高く掲げていた。まさか、いきなり宝具を解放するつもりなのか。

 

瞬間、深い蒼の光芒が、セイバーの剣を中心に広がっていく。

まるで湖の中から放たれたようで、見ていると心奪われていく……。

 

『おいフリーダ!決行するのか、しないのか!』

 

メフメトに怒鳴られて覚醒する。動きが止まっていたのは私だけじゃないようだ。

今にもセイバーに襲い掛かろうとしていた黒犬たちの動きが完全に停止している。

セイバーの宝具の効果なのかは不明だが。チャンスには変わりない。

 

――決行だ。

 

『了解!ちゃんと合わせないよ、アーチャー!遮蔽術式、『籠の鴎、檻の鳩(ラルス・コルビス)』!』

『おうよ!さあ、俺の砲を食らって立てるか!『鉄壁要塞陥落(サフィー・トゥフ)』!!』

 

比較的近くに迫っていたセイバーとアーチャーの周囲を、炎の罠が取り囲む。

対象には聖都からの砲撃も加えられている。今だ!

 

"青"のアーチャーは、メフメトとレオに任せて。

私とスガは降下装置に飛び乗り、"白"のセイバーの元を目指した。




次話投稿予定:27日0時
パライソちゃんは可愛い
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