Fate/Apocrypha Revival in the Interstice   作:梨央

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第11節b 巡礼の果て

「フリーダの奴!なーにが敵は俺と同じ砲手、だ。

雷を撃つアーチャーがいてたまるかっつーの!」

 

"青"のアーチャーの追撃を躱しながら、メフメトが愚痴る。

錫杖から放たれた巨雷はなんとか凌いだが、魔術盾に一度に魔力を使いすぎた。

もう一度は防げない。その前に何とか抑えこまないと。

 

皇帝(ツァーリ)の行軍を阻む、愚か者(カザーニ)どもがぁぁぁ!」

 

こちらから仕掛けた以上文句を言っても仕方ないが。

この通り、"青"のアーチャーは最初から交渉の余地などなかった。

彼の連れていた軍勢はあっという間に制圧できたが、

彼の武器はフリーダが予想した黒犬と大砲以外にもあったようだ。

……あの錫杖で操れる雷。桁違いの自然兵器。当たれば消し飛ぶのは間違いない。

 

「向こうはあんたのこと知ってるみたいだけど、知り合いなわけ?」

「知らねえよ!それよりちゃんと俺を守れ!」

 

アーチャーの砲塔が向きを変え、彼の周囲に展開されたメフメトの複製砲台を破壊する。

メフメトの砲台が機動力と応用力に優れる大砲なら、敵のそれは巨大な砲塔だ。

ただ1基だけでこちらの砲撃は全て相殺されてしまう。

 

こちらも風の魔法陣で迎撃するが、もう大きいものは作れない。

ダメだ。砲撃は防げても雷には砕かれてしまう。

それにしても。雷は本来神の御業。雷神(ユピテル)でもあるまいに。

あの英霊はこれだけの雷を神性もなしに扱えるのか。

 

砲撃の止んだ隙にメフメトがアーチャー本人に斬りかかるが、

王杖に防がれ、逆に強烈な蹴りを食らって吹き飛ばされる。

 

「ぐおおっ!」

「アーチャーっ!」

 

援護の火弾を飛ばすが、命中直前に雷によって阻まれる。

敵を過小評価していた。二人がかりでも一太刀浴びせるのがやっととは。

これは少々分が悪いか……?

 

遮蔽術式の違和感を感じ取って後ろに目を遣ると、見飽きた顔が駆け寄ってきた。

 

「キャスター!アーチャー!無事ですか!?」

 

フリーダだ。息は荒いが、服も身体もかすり傷一つついていない。

向こうのセイバーはどうした。まさか、無傷で倒したとでも言うのだろうか。

 

「懐柔に成功しました。今はアサシンが。それよりそちらの状況を!」

 

――まったく。始めはシャルル(カロリス)の隣で震えていたくせに。

相手のセイバーが弱かったのか。いや、違うな。彼女もそれだけ戦いの中で成長していたんだ。

 

「ご覧の通りよ!敵はあなたの計算より強かったようね!

まるでバーサーカーみたいに暴れ回ってて、私たちでも相手にならない。

私としては戦略的撤退を進言するけど、頭首サマのご判断は?」

 

フリーダは数秒敵を見た後、何かに気付いたかのように話し出す。

 

「それです!敵はイヴァン雷帝!苛烈にして敬虔な、()()()()

相反属性(アンビヴァレンツ)、矛盾精神の塊。キャスター、あなたなら彼を説得できる!」

「はぁ?!説得って、冗談でしょ!あの大男に私のありがたーい説教を聞かせろって言うの?」

「大正解です!私とアーチャーで彼の動きを止めます。その間に、()()()()の準備を!」

 

待って待って待って!

無理、無理、無理!絶対に無理!

ああ、聞いてもいない。二人して行ってしまった。

 

「アーチャー、私が脚を狙います!あなたは彼の気を逸らしてください!」

「おう!にしても一端の顔になったな、フリーダ!」

「おのれ、小癪な逆賊どもが。まとめて灰にしてくれるわぁ!」

 

二人は、私の準備のために戦っている。

――やるしか、ないか。

深呼吸してから。裾の下で、アメリアにもらったお守りのハンカチを握りしめる。

戦闘で急速に失われた魔力が、ほんの少しだけ戻ってくる。

 

"小さき者、悩む者、迷える者。

私を見、私を聞き、私を求めよ。

私はあなたを助ける者。私はあなたを導く者"

 

フリーダが銃を構え、アーチャーの両脚を撃ち抜く。

地に倒れ伏しても、彼は叫びながら杖を振り回し、雷撃が飛び交う。

メフメトがその中の私への流れ弾を撃ち落とす。

 

"愛は悪を覆い、罪は洗われ、苦しみは歓びに変わる。

憎しみは消え、暴力は潰え、調和の鐘が鳴り響く。

救いをここに。主の御名の元に、教皇レオ三世が告げる"

 

「――世界に光を与えたまえ(ウルビ・エト・オルビ)

 

浄化の光が、狂える皇帝を包み込む。

混沌は秩序を取り戻し、暴君は在りし日の姿を取り戻す。

 

「余は、一体何を……。こんな筈は……こんな筈では……」

 

安全は確保され、フリーダがイヴァンの元に歩み寄る。

 

「落ち着かれましたか、"青"のアーチャー。

私はフリーダ。聖杯大戦の観測のため、英霊たちの力を集めている者です。

よろしければ、少しお話を――」

 

はぁ、はぁ………。

やれやれだ。ともあれ、これで当初の目的は果たした。

あとは戦後処理だ。帰還の準備を始め――

 

耳をつんざくような音と共に結界が破られる。

何かが空から降ってきた。二枚の車輪のついた()?いや、糸巻きか?

よく見ると、樽には人の顔がついていた。

 

まさか、あいつが、"白"のバーサーカー!

化け物は、人語とは思えない叫びを発しながら、車輪に装着した機銃をフリーダに向けている。

 

更なるサーヴァントの乱入時は、直ちに離脱じゃなかったのかしら。

交渉に気を取られてた?それとも連戦で疲れてた?

まあ、どっちでもいいか。やっぱりまだまだ甘いわね、フリーダ。

 

私は迷わず射線上に飛び出し、撃たれた。

二人が私を呼ぶ声が聞こえる。

 

いっ、たぁ…………。

治癒は……だめだ。もう間に合わないし、魔力切れだ。

とっくに大聖杯からの供給はオーバーしてた。せめて痛覚だけでも遮断しておこう。

 

フリーダが必死に私を揺すって何か言っている。

メフメトは怒り狂ってバーサーカーに突撃している。

 

フリーダに聖都の機動権を託す。

シャルルにもらったように。

操作方法を手取り足取り教える必要は、ないわよね?

 

こみ上がってきたものを咳込む。私の白の教皇服が真っ赤になっていた。

あーあ。やっぱり別のをアメリアに作ってもらえばよかったかな。

 

このままじゃせっかく仲間も増えたのに全滅だ。

それだけは、シャルルにフリーダを託された私が許さない。

キャスターらしく、最期まで足掻いてやる。

 

現界可能なギリギリまで霊核を削って、無理やり魔力を捻り出す。

教皇を撃ったんだから。煉獄で裁きを受けてもらわないと。

 

賊を連れて、聖都からも離れてどこか遠くへ。大規模転移。()()()()()()()()

そうだ、南東にマダガスカルとか言う島があった。

"青"のライダーが根城にしていたようだが、さっき地図を確認したときは誰もいなかった。

しばらく怪物を封じるにはちょうどいい。あわよくば自滅に巻き込めれば最高だ。

 

意識が薄らいでゆく。私は最後の魔術を司教杖(バクルス)に託す。

 

ねえ、シャルル。

私も、あなたみたいにカッコよかったかな?

 

 

 

 

***

フリーダ記録。

数時間後。教皇は、名を忘れた少女への慈愛を示して退去した。

私はこれを、"白"のサーヴァント一人目の脱落と定義する。




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次話投稿予定:1日0時

誤字をまとめて修正する予定なので(改)がつきますが
内容に変更はありません
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