Fate/Apocrypha Revival in the Interstice   作:梨央

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第15節? それは渚のような

私は、それなりに幸福な人生だったと思う。

 

二度の世界大戦を祖国のために戦えたし、生き残った。

本もたくさん売れた。二人の娘も美しく成長した。

第六大陸で優雅な余生を過ごした。ああ、カーレースと言うのは実に面白いものだ。

 

良い、人生だった。

私は永遠の眠りについた。

 

――と思っていたが。

私は、どうやら死んでからも世界に役目を与えられたらしい。

英霊の座とか言ったか。私のような小説家に務まるとは思えないが、特に断る理由もなかった。

 

『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。手向ける色は、"白"』

 

自信に満ちた誰かの声が聞こえる。

もう出番とは。この前死んだと思ったばかりなのに。

 

『降り立つ風には壁を。

四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する』

 

現代は……2017年か。

なんだ、まだたった50年ちょっとしか経っていないじゃないか。

悠久の時を経た英雄たちよりも私のような人間を選ぶとは、物好きなマスターもいたものだ。

 

『――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ』

 

"座"は時空を超越する存在だ。

私はここで、先達たる偉大な文豪たちの魂を知覚できた。

シェイクスピア。デュマ。アンデルセン。

 

『誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者』

 

彼らは皆キャスターの霊基を与えられたそうだ。

きっと私もそうなのだろう。

私の文章(センテンス)が他の英霊を強化すると言うのも、それはそれで面白そうだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――』

 

――え?

 

『汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!』

 

私が鉄の身体になっていく。私が、私でなくなっていく。

やめろ。嫌だ。やめてくれ。これは、私が望んで作ったものではない。

あまりに高慢ちきで無能な、偉大なお偉方(パンジャンドラム)を皮肉っただけなんだ。

まさか、本当に作るとは思っていなかったんだ――!

 

「あは。あはは。あははははっ!

何その姿。自分で選んだ()が言うのもなんだけど。

やっぱり人間は愚かだ。2000年も本質は何も変わっちゃいない。

笑っちゃうよ!これが僕の守らなきゃいけない世界なんて!」

 

あ。

ガ。

ぐ……オ……。

 

「さあ、()()()()()()!お前は自由だ!

自由への越境者(パイド・パイパー)!お前の描いた世界の終末はもうすぐそこだ!

笑いながら敵を殺せ!お前は"王"の敵となり、存分に暴れ回れ!」

 

理知的な、されど狂気に満ちた青年の笑顔。

それが、私の理性の及んだ最後の記録だった。

 

 

 

 

 

街を壊した。

山を燃やした。

川を抉った。

 

足りない。足りナイ。タりない。

もっとだ。もっト。魔力の心配ハない。

 

殺せ。殺せ。殺せ。

いや、殺ス相手がいない。この国には人間ガイない。これでは殺せない。

 

サーヴァントを殺そう。

片端から大陸中ノ国をまわって、サーヴァントを殺そう。そうシヨう。

 

 

 

 

 

どこだ。どコだ。ドこダ!

いない。いナい。イなイ!

 

広すギる。この大陸はアマりに広すぎる。第六大陸の比でハない。

ワたシの機動力(ロケットモーター)をもっても、英霊ひトり見つケらレない。

 

どこかの森の空を飛んでいるとき。

現在地ヨり南に。

わタしの物ではない炎を感知する。

 

キヒ、キヒヒ、キヒヒヒヒッ!

誰かイる。それも複数ダ。ちょウドいい。

殺す!殺ス!殺すゥゥゥ!

 

 

 

 

 

上空から目標目掛けて着陸する。

何か当たったような気がするが、気のせいだ。

少女と大男。小娘と小男。4人モいル。殺シ甲斐があリソうだ。

誰でもいい。まずはあの少女からだァァァ!

 

もはやヒトのものではなくなった叫び声をあげて、少女に機銃を乱射する。

弾丸は少女ではなく、射線に飛び出した小娘に当たった。

 

チっ。

小娘は少女に介抱されている。

大男は茫然と突っ立っている。

小男が憎悪の表情でワたシ目掛けて突っ込んでくる。

 

顔を狙って小男の刀が振り下ろされる。

ムダだ。

私ノ顔は、モハや顔ではナい。

 

反撃に小男目掛けて掃射するが、大砲によって阻まれてしまう。

次に小男はわタしの車輪を破壊してバランスを崩そうとする。

 

ムダだ。ムダだ。ムダだ!

 

とある紳士の決戦兵器(パンジャンドラム)は、もハや我が身そノモのとナった。

ただ狂イ果てルマで、霊基砕ケルまで踊るノみ。

車輪を無クシた程度で、ワたシは止められない。

 

体内の爆薬を、斬りかかる小男と同時に爆破させようとしたところで。

 

一瞬にして景色が変わる。

ここは、巨大ナ城壁?

わタしの傍には、さっき撃ち損じた小娘しかいない。

まさかこイツがやったのか、この、ワたシの邪魔を――!

 

「うまく……いったみたいね……。ライダーは、やっぱりいないか……。

なら悪いけど、この壁、使わせてもらうわよ……!」

 

小娘が一人呟いている。

風を纏って、城壁を乗り越えて逃げていく。

 

バカめ。

パンジャンドラムが何ノタめに開発さレたノか知ラナいのか。

()()()()()()()

 

小娘の逃げた方向にある壁を爆破しながら、どこまでも追いかける。

まずはあの娘を始末してから、さっきの連中を追いかけて、皆殺しにしてやる。

 

 

 

 

 

おかしい。

壁は確かに壊れていくのに、()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

わたしの体が重い。

壁の破片が、どんどん私の車輪に付着していく。

私はついにその場から動けなくなってしまった。

 

血まみれの娘が私を見下ろしている。

 

「さあ、ポンコツ兵器さん。お祈りの時間よ。

教皇サマが助けてあげる。上手くいけばあなたは自由。失敗しても道連れ。

悔い改めなさい。私を――」

 

娘が何か言おうとしていたが。

 

私は壁の破片のまとわり付いた部分をすべて爆破する。

 

娘を蜂の巣にすると、ようやく動かなくなった。

どこまでもしぶとい奴だった。

 

まずは一人。

次は本土へと戻り、残りの英雄どもを――

 

()()()()

なぜだ。

エンジンの噴射ができない。城壁の破片は全て爆破したのに。

何度も何度も自身の身体を爆破する。結果は変わらなかった。

 

「言ったでしょ、失敗しても道連れだって。

――許しはここに。"地平にあまねく平穏を(パーチェム・イン・テリス)"」

 

娘が消えかけの身体で笑っている。

やがて娘は自らを薪に、わたしも城壁も燃やし尽くした。

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