Fate/Apocrypha Revival in the Interstice 作:梨央
機動聖都・別動隊。
三人の皇帝を乗せた特別昇降装置は、マダガスカル島を目前に迫っていた。
「"ロードス"、応答せよ。こちら聖都。ツァーリは起きていますか?どうぞ」
「む……。余に用向きか。何事だ、フリーダ」
フリーダとイヴァンが何やら話しているようだが、今はこちらが先だ。
「ロイ、どうだ?敵の場所は突き止められそうか?」
「幸いにもこの島は亀が多いと聞きます。暗示さえ届けば偵察に支障はありません」
ロイが水がめに張った水の紋様に向けて何やら唱えている。
「スルタンよ。海岸に石の防塁を作るのは異国での慣例なのか?
このような小さき島にもあるとは……」
もう終わっていたのか。大した話ではなかったらしい。
外を見下ろしているイヴァンが俺を呼んでいる。壁だと?
……それにしても、図体の割には顔のパーツの小さい男だと思う。
あの目。寝てるのだか起きてるのだかわからない。もちろん今は起きてるわけだが。
彼に倣って見下ろすと、それはすぐに見つけられた。
島全体を外敵から守っているがごとき、"壁"。
高さは3mもないが、明らかにこの時代の建築物でないことはわかる。
この島は"青"のライダーが拠点にしていた場所だったから。つまりあれも、宝具か。
ムルンダバと言う都市の砂浜、海岸と都市の境目付近。
見える範囲だけでも何十キロと"壁"は延々と続いていた。
「"白"のアーチャー。サーヴァントの反応を探知できました。
敵は1騎。"白"のバーサーカーはここより北東におよそ400キロの地点にいます」
「よし、乗り込むぞ。念のため装置の高度を上げておこう。
なあに、機動聖都ほどじゃないが、タクボクの腕は確かだ。すぐに着く。
各自戦闘の準備をしておけ」
奴はこの国の首都、アンタナナリボにいる。
レオを殺した怪物。車輪の化け物。もはやヒトですらなくなったもの。
俺は、冷静さを取り戻すために慣れない
……俺の時代にはなかったものだが。不味い。不味いのに妙なクセがある。
後世の
ロイに分けてもらった水で消し、深呼吸をする。
俺がイラついてどうする。これはレオの敵討ちじゃない。ましてや聖杯大戦でもない。
フリーダの観測に必要なための手順。仲間を殺した凶暴な敵の排除だ。
そして俺はその指揮官。今回は強い仲間もいる。とっとと終わらせようじゃないか。
島の壁は一層だけではないようだ。
首都に近づくごとに、二層目、三層目、四層目と次々に壁が現れる。
ライダーは、よほど用心深い性格だったのだろう。
……待て。壁に、穴?
壁は、よく見ると至るところが破壊されている。
まるで、逃げる誰かを一直線に壊しながら進んだかのような……。
これだけの痕跡。なぜ間近に見るまで気付かなかった?
フリーダほどの観察眼はないので、上手く形容できないが。
壁は、
地上を進んでいれば、間違いなく俺たちにも何らかの負荷がかかっていただろう。
「見えたぞ、スルタン。あそこだ。
西方教会の聖者がこの島を選んだ理由、余は理解したぞ」
ああ、俺にもわかるよ。レオ。
お前は自分を囮にして俺たちを逃がし、ライダー本人に倒させるか、
ライダーの陣地を利用してこの島に閉じ込めようとしたんだろう。
アンタナナリボの都市に被せられた東洋風の城。
レオはここに逃げ込んで、火を放って自爆した。
炎くすぶる瓦礫となった城の下に、奴がいる。
それなりの損傷を受けたはずだ。トドメを刺してやる。
ロイと二人で装置を飛び降りる。
イヴァンは装置から砲塔と雷撃で支援してもらう。
ロイの魔剣による水の放出で火はあっという間に消せた。
用心深く城に近づいていくと、耳障りな機械音がする。……奴だ。
俺の砲で破片を軽く吹き飛ばすまでもなく、奴は自分から姿を現した。
しかし、レオめ。死にかけのくせにここまで暴れやがって。
どっちがバーサーカーなんだか、とか言ったら怒られるな。
敵はまだ火炎によるダメージが抜け切れていないようだ。
手筈通りに、俺たちはバーサーカーに斬りかかる。
奴の弱点が本体についた顔じゃないのは前回でわかった。
本命は本体を支える二つの
当然奴は自分の身体を爆破して抵抗してくるだろうが。
ロイは水の加護で相殺できるとして、俺はまあ、己の幸運を信じるしかないな。
ロイが右側の車輪を手際良く切断する。
敵は気持ち悪い叫び声を上げて抵抗しようとしているが、機銃さえ防げば大したこともない。
次は俺が左だ。さっさと斬り落として……。
「ぐ。ガ。オオオオオオッ!」
バカな。
本体についてたのは顔だけじゃなかったのか。と言うか生やしたのか。
「こんの……。デカ物が……!」
振りほどいて抜け出そうとするが。
こいつ、バーサーカーなだけあって力はめちゃくちゃ強い。
……仕方ない。こうなった場合のことももちろん考えていた。
俺は刀を逆手に持ち替え、左の車輪も斬り落とす。
当然爆炎のダメージを至近距離で受ける。
めちゃめちゃ痛いが、耐えられないほどじゃない。
「イヴァン、脚を奪った!できるのかは知らねえが、奴が再生する前に!やれ!」
「しかしアーチャー!あなたがまだそこに!」
「この野郎に掴まれてすぐには出られねえんだよ!気にするな。俺はしぶとい。
さあ
ロイが俺を掴んでいる奴の腕を斬り落とそうとするが、
がっちり掴まれていて簡単に外せそうにはない。
良いから行けと目で合図をすると、理解して離れていった。
……こいつは機械だ。完全に壊すなら、あの二人の力を合わせるのが一番だ。
大量の水を浴びせられる。魔剣の水だ。豪華なシャワーだと思えば案外悪くない。
あとはイヴァンの雷で、完全にぶっ壊してやる。
「ギ。が。グオオアアアアっ!!」
うるせえ。てめえが俺も巻き込む気なのはわかってんだよ。
なあ……レオ。お前も、こんな気分だったのか?
そいつは思ってたより、
そんなことを思いながら、落ちるべき雷を待つ。
「
いや、良い。貴様の矜持、
聖者殿への手向けだ。イヴァン四世の名の下に裁きを下そう。
煉獄へ堕ちるがいい、バーサーカー。雷槌よ。処断のときだ!」
装置から稲光が見える。
いよいよのようだ。
ここでくたばりはしない。もちろん策はある。
皇帝特権、スキル取得、戦闘続行――!
あばよ、バーサーカー。
次はもう少しまともな状態でまみえたいもんだな。
巨雷が俺と奴の本体を飲み込み、
バーサーカーの断末魔と俺の咆哮が城跡に響いた。
ぐ、あ、おおおおおっ!これは、あいつの蹴りよりも遥かに痛えな……。
だが、少し休めば、大丈夫のはずだ……。
あ、ロイの近くに、誰か来た……。まさか、城壁の主、いよいよのご登場ってか……?
悪いな、ロイ。そいつとの話は、任せた。最悪、俺のことは放って逃げろ……。
「"青"のライダー……あなたは……。いや、貴様は……!」
「ほう。朕の城をこうも丁寧に破壊して回るとは。
もっとも、これをやったのはそなたらではなさそうだが。
話ぐらいは聞かせてくれるのだろう?
小柄な剣士の少女と。イヴァンにも比肩する騎兵の大男。
どちらも
四人目の皇帝は、ロイの瞳に宿る意志を見極めるべく堂々と立っていた。
***
フリーダ記録。
狂乱の兵器は三人の皇帝によって破壊された。
私はこれを後に、"白"のサーヴァント二人目の脱落と定義する。
次話投稿予定:6日6時