Fate/Apocrypha Revival in the Interstice 作:梨央
手元の通信機から、呼び出し音が鳴っている。
しまった。気を失っていたようだ。周囲には誰もいない。
と言うか、俺はこんなにボロボロなのに。よく無事だったな、通信機。
「
フリーダではない女の声に遮られる。
「ああ、スルタン陛下!大変です、フリーダ様が、フリーダ様が……!」
フリーダの護衛のアサシンか。ひどく慌てている。
どうした。何があったと言うのだ。
「それが、フリーダ様はずっと笑ってて、石川とアメリアは撃たれて、城の庭には狼が……」
「待て待て。何を言ってるのかさっぱりわからん。落ち着いて最初から話してくれ」
"青"のアサシン。管野スガ。俺は、彼女がどう言う人物なのかよく知らない。
いつもアメリアと一緒にいて、彼女の話に相槌を打っている。タクボクと同じ国の出身。
それからフリーダの護衛を買って出るほどには腕に自信がある。そのぐらいだ。
そのスガが、城での様子からは考えられないほど動揺している。
彼女の話は、確かに驚く内容だった。
南アフリカで出会った"白"のライダーは、助言の対価に"犬"の英霊を連れてくることを要求した。
"犬"の英霊とは"青"のバーサーカーのことで、キリマンジャロと言う山にいる。
そこにバーサーカーは宝具で拘束されていて、それを壊すためにタクボクとアメリアは自害した。
自由になったバーサーカーだがフリーダとしか意思疎通できず、今は城の庭園にいる。
そのフリーダが、急に気が触れたかのように城中に響く大声で笑い始めた。
やかましいので何とかしろと言わんばかりにバーサーカーはスガの部屋に現れたので、
フリーダの部屋に様子を見に行くと、彼女は銃を振り回しながら笑っていた。
動転したスガがとりあえず当て身で眠らせたが、
他に頼れる人もいないので俺に通信を入れてきた。
うーん。自分で口に出して確認したつもりなんだが、半分も理解できない。
どこかサーヴァントとしての生に刹那的だった啄木はともかく、
アメリアまでもが見知らぬサーヴァントのために自害を選ぶとは。
もしかして、フリーダは三人目のバーサーカーだったのか?
こんなときレオがいてくれれば、フリーダを診てもらうこともできたんだが……。
と言うか俺だってすげぇ痛い。アメリアにもらった護布の自動治癒だけじゃ足りねえ。
「なあ、フリーダは今は寝てるんだろ?聖都は大丈夫なのか?
宝具だからいきなり落っこちたりとかはしねぇと思うけどよ」
「その心配はありません。フリーダ様は様子がおかしくなる前に、
次はイヴァン陛下の書庫に向かうとおっしゃっていましたので。
城は今もそこに向かっているものと思われます」
イヴァンの書庫だと?そんなものが、この大陸にあったのか。
そう言えば、島に着く前に二人が通信で何か話していたのを思い出す。
……待て、そもそもイヴァンはどこだ。
ロイもいない。俺が気を失う前に見たもう一人のライダーらしき奴も――
「ようやくお目覚めか。
さっきのライダー!
隣にはイヴァンもいる。あれは……何の顔だ……相変わらず表情の読めない……。
「ここにいる
越南の王の代わりは朕が成ろう。将は変わらずそなただ。さあ指示を寄越せ」
待て。ロイは。ロイはどこだ。
「越南の皇帝は、そなたらのセイバーとしてではなく、一人の剣士として朕に挑んだ。
朕の弓術には及ばなかったが、朕の軍勢を蹴散らす獅子奮迅の見事な活躍であった」
ロイが、この男と一騎討ちを?
「ツァーリ……。まさかてめぇ。仲間が一人で戦うのを黙って見てたのか?」
俺は、静かな怒りをもう一人の仲間に向ける。
イヴァンが何か口を開こうとする前に、ライダーが続けた。
「それも違う。朕には彼の王と戦う意思はなかったが、彼の王の意思は固かった。
そなたは負傷していたし、ロシアの王は遠く離れていて迂闊な手出しはできなかった。
彼の王は今なら仲間の力を借りずに、朕と一人で戦えると思ったのであろうよ」
ライダーは続けて言った。
「朕は"青"のライダー。真名を、趙政。
秦の始皇帝と言った方が通りは良いかも知れぬが、まあ好きに呼べ。
狄の王よ。そなたにも英霊として、一度出会えばどうしても戦わなければならぬ相手が、
因果として一人や二人いるのではないか?彼の王にとって、朕がそうであったようにな」
串刺し公の顔が脳裏によぎる。
確かに、あいつのせいで俺は、今回の聖杯大戦を……。
「……スルタンよ。余を罰したいと言うなら、それでもいい。
だが余には、彼の皇帝の輝きを邪魔することはどうしてもできなかったのだ。
此度の大戦のサーヴァントはもう一人のランサーを除けば出揃った。
今は、そちらを優先すべきではないかと思う」
わかってるさ。ああ、わかってるとも。
くそ。大男どもが寄ってたかって、俺が
バーカバーカ!
「まだ聞いてるか、スガ!」
俺が怒鳴ると、はい、と泣きそうな声で返事される。
「俺たちも今からすぐに書庫に向かう。俺の直感では、”白”のライダーが鍵だ。
そいつなら多分フリーダを治せる、というか診てやれる。今それができるのは奴だけだ。
だから着くまでフリーダを眠らせたままで、バーサーカーも刺激しないように。
合流するまで持ち堪えてくれ。できるか、スガ?」
御意に、とか細い声で答える。
できるできないではなく、やらなければならないのだが。
ここで彼女を追い詰めても仕方ない。
ロイを失ったことは、まだ言わない方がいいだろう。
それにしても、あの昇降装置では移動に時間がかかる。
セレンゲティまでは2000キロ。昇降装置の時速は聖都より劣る。間に合うか……?
「足の心配なら不要だぞ。朕を誰と心得る」
そうだ。こいつは、
「
内地には二刻もあれば着くであろうよ。
皇帝特権とは実に便利な
ああ、そうだな。俺も何度も助けられた。
俺たちは装置に乗り込み、狂った少女、いや、
この言い方は、ちょっとお前っぽかったかもな。なあ、レオ?
瓦礫の炎が、未だにゆらゆらと煙を上げていた。