Fate/Apocrypha Revival in the Interstice   作:梨央

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第4節? 戴冠前夜

自分で言うのも何だけど、私は頑張ったと思う。

 

貧しい家に育ったけど、いついかなるときも主を信じ、奇蹟を信じた。

聖職者として大成できたのも。女に生まれながらあり得ない教皇になれたのも。

きっと私が凄く頑張って、それを主が認めてくださったからだ。

 

もちろん男装技術とかも頑張って覚えたのよ。

もともと私は中性的な顔立ちだったし。

何?

まあ、主の御言葉より目の前に銀貨の落ちる音を喜ぶ愚か者には案外バレないものよ。

 

私はね、もちろん頑張ったから教皇になれたんだと思うけど。

もしかしたら、生まれつき不思議なことができたのも影響したかもしれない。

聖杯に与えられた知識によれば、私の持っていた力は――魔術。

 

偉大なるソロモン王が地上に降ろした神の奇蹟。

でも当時はそんな大仰なものだなんて思ってもいなかった。

西暦以前からある時計塔とか言うアングリアの魔術組織も、

教皇領ではきっとそこまで機能していなかったのね。

教皇が魔術師だって私が死んでからも気付かなかったんだから。

 

火はローマの臣民にとっても身近な存在だったし、

風を操れるからって、いつでも涼しいぐらいの利点しかないと思ってた。

炎属性なのに暑がりなのか、って?

疑うなら一度サン=ピエトロ大聖堂に行ってごらんなさい。本当に暑いから。

火と風の二重属性、って言うのでしょう。魔術師としてはわりと珍しいらしいわね。

 

教皇が女だって全くバレなかった訳じゃないのよ。

よりによってビザンツ帝国(東ローマ帝国)にバレたときなんか。

連中は私のことをよく思わない司教どもを焚き付けて、

あろうことか暗殺者を雇い、私を殺そうとした。

 

慰問で教皇領外れの宿場を訪れていたときのことよ。

教皇様の部屋だからって、すごく大きな部屋を与えられて。

今思えば、暗殺者にとっては楽な仕事だったのかもね。

居場所はわかってて。目立つ服を着てて。神のお膝元で罪を犯す人間などいないって信じ切って。

まともな警護すらついていなかったんだから。

 

風の異変に気付いて身体を起こそうとしたときはもう手遅れだった。

振り下ろされる刃を見て、私はここで死ぬんだと思った。

 

燃えた。

周囲が、全て。

炎に包まれた。

 

暗殺者は三人組だった。確か一人は女だったわね。

なんでわかるか、って?悲鳴が耳に焼き付いているからよ。

身体の燃える熱さなんて私にはわからない。

 

炎使いはね、自分の熱さが自分ではわからないの。

 

激痛と、憎悪と、怨念と、色々なものの混ざった叫び。

私はどうすることもできなくて、燃える部屋の中でがたがたと震えてた。

 

ここ笑うところよ?

民衆に傅かれる側の教皇サマが暗殺者を見事返り討ちにしたっていうのに、

自分は一歩も動けなくなっちゃったんだからね。

結局私は、教皇になれて得意になってただけの小娘に過ぎなかったのかもしれない。

せっかく生き残れたのに、このまま自分の炎で燃え尽きるんだと思った。

 

そんなときに手を、取られたの。

 

「私はフランク王カロリス。娘、ここは危険だ。さあ立て。外へ出よう」

 

私の司祭平服(スータン)を見て教会の者だと気付いたんでしょう。

 

「失礼、侍祭殿だったか。まあ話は後だ」

 

外れだ。

あなたがフランクの王なら、私だってカトリックの王なんだから。

そんなことを思いながら、男に抱えられ、私は崩れる宿場を出た。

 

他の宿泊客もほとんどこの王が助け出し、私の部屋で最後だったらしい。

王の仕事じゃないでしょうに。本当にバカな王さま。

でもそんなバカみたいな正義感と理想に生きていたから、

西ヨーロッパの統一なんて偉業を為せたんでしょうね。

 

私は自分が教皇であることを明かし、暗殺者を火だるまにしたことも話した。

彼は教皇が女であることに特に驚かなかったのは…なんででしょうね。

大物だったからじゃない?むしろ教会に貸しを作れて内心喜んでたかもよ?

 

彼は全て自分がやったことにすると言い、宿場の主人に火事の見舞金も払った。

そして私の力が魔術と呼ばれるものであることと、

彼の臣下にも魔術師がいることを教えてくれた。

私は彼の国に一時的に保護されて、彼の麾下の魔術師から魔術回路を制御する術を学んだ。

 

結局あれは生命の危機に自動で発動した魔術回路の暴走、と言うことになるらしいわ。

彼の臣下の魔術師のおかげで、二度とそれを起こすことはなかった。

私は私のまま、教皇を続けられた。

 

教皇領に帰ってしばらく経ったクリスマスの頃。

再び彼がローマを訪れると聞いて直接出迎えに行ったの。

 

教皇直々の出迎えに、事情を知らない臣下たちはびっくり仰天だったけど。

私は気にせず彼を大聖堂に案内した。

そう、さっき暑いってこき下ろしたサン=ピエトロ大聖堂よ。

 

たぶん彼は私が何をする気なのか薄々気付いてたけど、受け入れた。

もちろんそれが自分にとって今後有利に働くとわかってたからだろうし。

私も教皇として、教皇領の保護の要求と、私の方が優位だって示すためにやったんだから。

 

なーんて。きっとこれは極東の言葉で言うタテマエってやつね。

こればっかりは、エイレーネーに感謝しないといけないわ。

 

私は、私にできる最大のお礼がしたかった。

私を、私の炎から救ってくれてありがとう。

 

「フランク王カロリス。汝を神の御名を以て、教皇レオ三世がローマ皇帝と認める。

崇高なるパトリキウス。偉大にして平和なるローマ帝国のエンペラトール。冠を受けよ!」

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