Fate/Apocrypha Revival in the Interstice   作:梨央

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第5節 砂塵の征服者

「何よそれ。ずるい。こんなの……私には返せないじゃない……」

 

教皇…"白"のキャスター、レオは座り込み、泣いていた。

 

泣きたいのは私の方だ。

シャルルを、セイバーを失ってしまった。

これではキャスターにセイバーが倒されたのと変わらない。

彼の助けになれと、ヴラドに命じられたのに。

 

私は聖杯大戦の異常を観測するために送り出されたのではなかったのか。

だからすんなりと二人の協力を得られ、

こうして三人目の協力を取り付けに来たのではなかったのか。

 

いや、違う。

二人が協力したのは、あくまで彼らが英雄として、王として振る舞ったからだ。

シオンはそれを観測し、計算した上で、彼らとは手を組めると分析し送り出した。

私がその状況を活かせなかったから、シャルルは死んだ。

 

それでも、まだ終わっていない。

ここで歩みを止めてはならない。

まずは一刻も早くヴラドと合流して、今後の作戦を考え直さねば。

 

そうだ、機動聖都。あれはもう使えないのだろうか。

彼が退去の間際に私に何かした様子はなかった。

彼が使ってたように操作盤をイメージする。

……だめだ。私では呼べない。

となると、北へは徒歩で向かうしかないか。

 

教会を出て行こうとする私は、レオに呼び止められた。

 

「ちょっと。どこへ行くの?」

 

わかりきったことを。

今は一人になってしまった同盟相手と合流するのだ。

 

「一人で行く気?砂漠を徒歩で?死ぬわよ」

 

何を、言っているのだ。

移動手段を持っていた男は、たった今あなたが殺したではないか。

 

「待ちなさい。今呼んでみるから。ふうん……、詠唱はいらないのね……」

 

レオが杖で地面を叩くと、()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

まさか。シャルルは私ではなくこのヒステリー女に与えたのか。聖都の制御権を。

 

「何してるの、行くわよ。フリーダだっけ、ほら乗って」

「冗談じゃ…ない…!」

 

思わず私は叫んでレオに銃を向けた。

 

「あなたのせいで!セイバーは死んだ!あなたが最初から協力していれば!

私の話を素直に聞いていれば!シャルルは死なずに済んだんだ!

あなたがくだらない恋心の果てに自爆しようとするから――」

「黙りなさい!」

 

レオに杖を突き付けられ、あまりの剣幕に思わず後ずさる。

 

「誰が殺したくて殺したと思うの?

彼はそう言う人なの。カールでも、シャルルでも同じだった。

彼は人のために自分の命だって投げ出せる。私のような愚かな小娘相手でもね」

 

レオは顔を真っ赤にして、続けた。

 

「そんな彼があなたを助けろと言ったのよ。あなたは私に彼の献身を裏切れと言うの?」

 

そんな…でたらめな理屈があって…。

いや…私も冷静じゃなかった。

彼女もサーヴァント、英霊である前に、自我(エゴ)を持った存在なのだ。

今さら自分の意地で拒否してどうなるものでもない。

銃を下ろし、謝罪する。

 

「申し訳ありません。では教皇よ、改めて私たちに協力をしてくれるのですね?」

「何度も言わせないで。私だって動揺してるんだから。

ここは引き払う。彼の城とやらに着いてから続きを聞きましょう。ん――」

 

教皇が扉に目を向ける。

…誰かいる。もしやヴラドが遊撃に成功して合流しに来たのだろうか。

扉を開けて入ってきたのは、アラブ風の装束を纏った黒髪の若い男だった。

 

「取り込み中邪魔するぜ。聖騎士と少女ってのはあんたらのことか?」

 

男はレオと私を交互に見比べる。

 

「少女ってのはいかにもみすぼらしくてひ弱そうなあんたのことだろうが…。

あんたが聖騎士か?聖騎士(パラディン)ってよりは聖職者(クレリック)みたいな恰好だが」

「じろじろ見ないでくれる?私は"白"のキャスターよ。

ねえ、もしかしてこいつがあなたの同盟相手のランサーってわけ?」

 

違う。

この男は……。

 

「ランサーだと?」

 

男は、愉快そうに笑う。

 

「"青"のランサーなら俺が殺した。俺は、"白"のアーチャーだ」

 

私は悟った。

失った仲間は、一人ではなかったのだと。

 

「そ。それで?わざわざおしゃべりに来たの?アーチャー」

 

レオが私を庇うようにアーチャーの前に立ちはだかる。

 

「ほざけキャスター。約束は果たした以上、貴様らを殺し尽くして、俺は聖杯を獲る」

「あら。どこの英霊サマだか知らないけど乱暴なこと。

あいにくだけど今の私は機嫌が悪いの。戦いたいなら容赦はしない」

 

先程のように魔力の流れが変わる。ここはまだキャスターの工房内だ。

いかに対魔力を持つ三騎士と言えどキャスターの有利には変わらないだろうが、

それ以前に、アーチャーは聞き逃せない単語を口にしていた。

 

「待ってください。約束って……?」

「あの野郎が言ってたんだよ。聖騎士と少女の二人と話すまで貴様らに手は出すな、って――」

 

がくん、とアーチャーが急に膝をつく。

何か呟いている……?

 

()()()()()()()()()()()()()

このままでは強制(ギアス)が成立していないから、俺はこいつらのことを――。

 

「ふふ。私の魔力に圧倒された?なら逃げるように立ち去りなさ――」

「聖騎士はどこだ?」

 

レオを無視して、アーチャーは私を睨みつける。

私が何と答えるか考えるより前に、レオが言った。

 

「セイバーのこと?それなら……」

 

レオは、気丈に一つの事実をアーチャーに告げる。

 

()()()()()()()()

 

「なんだと……?」

 

驚愕を露わにするアーチャー。

 

「あら。キャスターが最優のセイバーを倒したことがそんなに意外かしら?

そんなにセイバーと戦いたいならもう一人いるはずだから自力で探しなさいな」

 

レオの軽口も、アーチャーは恐らく聞いていない。

シャルルがいなければならなかった理由があるのだろうか?

 

「おい、本当にここにはお前ら二人だけか?」

「疑ってるの?見ればわかるでしょ」

「……そうかよ」

 

ふーっ、と長い溜め息をつき、一人ごちるアーチャー。

 

「あの野郎、まさか知ってたんじゃねえだろうな」

「何よ?まだ言い足りないことでもあるの?」

「もういい、萎えた。元から女を殺すのは趣味じゃねえ。

お前ら二人だけじゃ荒野の旅は不安だろ。俺が用心棒になってやるよ」




次話投稿予定:23日0時
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