IS~傷だらけの鋼~   作:F-N

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第十四話

本日の全授業を終えて放課後。専用機持ちを除いた一組の生徒が筋肉痛によって撃沈している頃、隆道と一夏の二人はアリーナの隅っこにいた。ちなみに箒は日頃剣道をやっていたりと身体を常に動かしていたのでそこまでのダメージは無かった。現在は観客席で彼らを見守っている。

何故彼等が隅っこにいるかというと、理由は他の生徒───主に上級生が訓練に勤しんでいる為である。男性操縦者が二人もいるという事に周囲は注目しまくって訓練に集中出来ていない事は一夏には知るよしもない。

隆道は多数の視線───「興味」と「敵意」に気づいてるが、気にしても無駄なので無視していた。流石にこんな大っぴらの所でちょっかいはかけてこないだろうと。

そんな視線を余所に彼等は互いにISを纏っており、これから訓練に励む───と思いきやそんなことそっちのけで互いの機体について語っていた。

 

「はあ?武装は刀一本のみ?」

 

「そうなんですよ、後付武装が一切無いんです。それに拡張領域(バススロット)が空いてないんでナイフ一本すら量子変換(インストール)出来ないんですよ」

 

「何でだよ。たかが刀一本に全部容量食ってるってのか?」

 

拡張領域とは後付武装を格納するための領域であり、IS用の武装を量子変換することによって自由に取り出すことが出来る。

セシリアの第三世代IS『ブルー・ティアーズ』ですら拡張領域の空きはあるのだから本来ならば空きはあるはず。しかし一夏の機体『白式』は今までの第三世代とは違い過ぎた。

 

「武器がというより、恐らく単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)の方に容量を使ってるからかと」

 

「ワン………なんだって?」

 

「ワンオフ・アビリティーです。唯一仕様の特殊能力なんですって」

 

「そんなもん積んでるのかその機体は。………あ?ちょっと待て、単一仕様能力って確か………」

 

ふとその単語に見覚えがあるのを思い出したのか、隆道は予め持ってきた教科書を開く。今まで授業をまともに受けなかったり怪我などの関係で教科書など全く開いてなかったが今日から多少は授業を受ける事にしている。彼を支えると決めたのだ、いつまでも自分だけ何もしないわけにはいかない。

とはいっても、マシになったのはISに関する座学だけであり、普通授業は依然として放棄。座学も話を聞いたり教科書を見ているだけで、教員の事は変わらずガン無視である。

やっと授業に取り組んでくれると真耶は歓喜したが名指ししても無視されたので涙を流したのは言うまでもない。

 

「単一仕様能力………各ISが操縦者と最高状態の相性になったときに自然発生する能力。ISが第二次移行(セカンドシフト)した後の第二形態(セカンド・フォーム)から稀に発現する、か。『白式』の特殊兵装が第一形態にも関わらず使える単一仕様能力………てとこか?」

 

「俺もよくわからないんですけど、多分そうなんだと思いますよ」

 

「ますますよくわからねえ機体だな。んで、その単一仕様能力はどんなやつなんだ?」

 

「『零落白夜(れいらくびゃくや)』って言いまして、これですね」

 

彼は既に展開させていた雪片弐型を垂直に掲げると刀身が割れ、そこから青白いエネルギー状の刃が現れた。

 

「………ライトセイ───」

 

「ストップ柳さん。俺も思い浮かべたんですからやめにしましょう」

 

「ああ、悪い。んで、どんな効果あるんだこれ。まさか切れ味が上がるとかそんな単純なやつじゃねえだろうな」

 

「切れ味が上がるなんてもんじゃないですよ。能力は『バリアー無効化攻撃』でして、対象のエネルギー全てを消滅させるんです。エネルギー兵器の無効化───例えばセシリアのレーザーを打ち消したり相手のシールドバリアーを無視して本体に直接攻撃、その結果絶対防御を発動させるといったものだそうです」

 

単なる切れ味の向上だろうと考えていたが、彼から出た答えは隆道の予想を遥かに上回るものだった。

ISに欠かせないエネルギーを全て無視した攻撃。つまり当たれば大幅に、場所が悪ければ一撃で相手を倒せるということ。

 

「なんだそれ………。つか全エネルギー消滅すんなら絶対防御も貫通するんじゃねえの」

 

「流石にそれは危な過ぎるんで普段は競技用に制限掛かってるんです。直撃したとしても傷は付かないって千冬姉が言ってましたし」

 

「ほー。………それほど攻撃特化してんだ、何かしらのデメリットはあるんだろ」

 

大きなメリットには必ずそれ相応のデメリットが存在する。隆道の『鋼牙』が良い例だ。セシリアの機体のように第三世代に備わる特殊兵装のお陰でエネルギー効率が悪いなども揚げられる。

 

「そのデメリットがデカ過ぎなんですよね………。何せ発動中は自分のエネルギーをおもいっきり消費してるんですから」

 

「は?つまり機体のエネルギーを攻撃に振ってんのか?玄人向け過ぎるだろ、素人が使っていい物じゃねえぞ。………織斑、今エネルギー残量はどれくらいだ」

 

「へ?………おっと危ない危ない」

 

隆道に言われてエネルギーがガリガリ減っている事に気づき、彼は直ぐに単一仕様能力を消す。気づかずに発動したままであったなら機体も強制解除されていただろう。

 

「高機動で機体そのものも燃費が悪いだけでなく、武装も燃費が悪い。それはここぞというときに使った方がいいな、なりふり構わず使ってたら直ぐ御陀仏だぞ」

 

「試合に集中してるとついエネルギー管理忘れてしまいそうですね、まだやったことないですけど」

 

「他のクラスだってそうだろ。まだ専用機を持ってる分アドバンテージも、練習量も此方にあるんだ。クラス代表戦まで期間はあるんだからそれまでにしっかりやれよ、クラス代表さんよ」

 

「俺がやると決めたんです、もちろんそのつもりですよ。俺の『白式』のことはこれくらいにして、柳さんの『灰鋼』………でしたっけ。色々教えて下さいよ」

 

『白式』の特徴は互いにおおよそ理解した、後は『灰鋼』である。彼はどちらかというと隆道の機体の方が気になって仕方がないのだ。

元は量産型だが一次移行により仕様もかなり変わってるはず。それに武装も二つほどしか見ていない。結構な数があると聞いてるのでぜひ見てみたいと彼は期待している。

彼も男の子なのだ。そういった物に興味を持つことはなんら不思議ではなかった。

 

「あんま面白いもんじゃねえぞ。あの意味不明なシステム───『狂犬』つったっけな。それを除けば性能は量産型の『打鉄』と変わんねえとさ。………そういえばもう一つあったな」

 

「アレ、『狂犬』って言うんですか………なんとまあ、的確と言いますか………。それにもう一つとは?」

 

「一次移行したとき、『狂犬』と一緒に発現したらしいんだが、これが文字化けしてて詳細処か起動条件もわからねえ。調べても何にもわからなかったんだと」

 

「なんだが、物凄く恐ろしいですね………なんで政府はこの機体を使わせるんでしょうか」

 

どう考えてもおかしい。普通こんな危険過ぎる機体を、ましてや数少ない男性操縦者に使わせるなどあり得ない。

嫌な予感がする、彼はそう思わずにはいられなかった。

 

「んなこと知るかよ、お偉いさんの考えてる事なんて俺らガキにはわかりゃしねえんだから。大方珍しい反応だの、機体に余裕が無いだのそんなんじゃねえの?」

 

「うーん、それだけじゃないような気がしますが………」

 

「考えたってしょうがねえだろ、どうにもならねえんだからよ。んなことよりほら、武装も見るんだろ?」

 

確かに隆道の言う通り考えた所でどうにかなるわけではない。そもそも政府からの指示はデータ採取の一点のみであり、それ以外は何も言われていない。

偶然にも一夏の予感の通り、『灰鋼』を使わせる理由はそれだけでなく悪意が練り込まれたものだがそれを知る術は無い。彼はひとまずこのモヤモヤは胸の奥にしまうことにした。

それよりも隆道の武装を見る事を優先だ。機体もそうだったが、武装も気になって仕方がないのだ。その心はプレゼントの中身を早く見たい子供と一緒であった。

しかしその感情を表に出すわけにはいかない。故に彼なりの全力ポーカーフェイスで言葉を返す。

 

「そういえばそうでしたね。結構な数があるって言ってましたけど何があるんですか?」

 

(すっげえ楽しみって顔してんぞおい)

 

隆道にはバレバレだった。

 

「………基本装備を含めて近接、射撃武装合わせて十種類だな。んじゃまあ手始めに基本装備から出していくか」

 

バレバレなポーカーフェイスには触れないことにして、隆道は基本装備である近接武装と射撃武装を各一つ出していく。射撃武装の方はセシリアと試合した時と授業中に見せた自動小銃『焔備』。そして近接武装は日本の武者鎧をモチーフとした打鉄に相応しい、日本刀を彷彿とさせる剣。

 

───近接ブレード『葵』───。

 

「やっぱりそれは入ってたんですね」

 

「元は打鉄だしな。つっても刀の振り方なんて知らねえぞ。せいぜい木刀かバットぐらいだ」

 

「………柳さん、ちょっと思いついたことがあるんで、それ貸してもらえます?」

 

一夏は何かを思いついたらしく、隆道の持つ『葵』を借りたいとお願いする。その表情は真剣そのものであり、それに対し不思議に思いつつも彼は渡す事にした。

しかし量子変換した後付武装は所有者以外使うことは出来ない。そのまま渡してしまうと粒子となって消滅してしまうからだ。他人に使わせるためには対象の機体を登録する必要がある。

 

「?………ちょっと待ってろ、使用許諾(アンロック)するから。つか銃火器とかの兵器ならまだしも、なんでこんな仕掛けも無い近接武器ですら使用許諾しなきゃいけねえんだよ」

 

「試合中に武器を奪われるのを防ぐためじゃないですかね。俺もよくわからないですけど」

 

「考えれば考えるほどISってのはわかんねえな、理解なんてしたくもねえけどよ。ああもうめんどくせ、武装全部使用許諾してやる」

 

「え、いいんですかそんなことして」

 

「別に構わないだろ。装備を貸すななんて言われてねえし、織斑にだけ登録しとけば問題なんて無いしな。貸すなと言わない奴が悪い。………こんなもんか、ほらよ」

 

使用許諾を済ませ、『葵』を一夏に渡す。それを手に取った彼は突如ニヤリと笑みを浮かべた。

その『葵』を左手に持ち、空いた右手に武装を展開、『雪片弐型』を持つ。両腕を広げ、その両手に持つ二種の刀を垂直に構えると彼の表情は更に変わった。

それはまるで相手に勝ち誇った表情、誰がどう見てもドヤ顔だった。

 

「………ドヤ顔ダブルソードって言いたいのか」

 

「へへっ似合ってます?」

 

「下らねえことしてんじゃねえよ。………結構面白いじゃねえか」

 

どうやら隆道は気に入ったらしい。不思議と表情が多少和らいでいた。

彼はIS学園に来てからほとんど気を張りっぱなしだ。少しでもそれをほぐせないかと一か八か試してみたのだ。結果は成功だ、この調子で行けばきっと良い方向に向かうはず。そう確信した一夏だった。

 

「よし、満足しました。もう大丈夫です、ありがとうございました。早速次行きましょうよ」

 

「(もう隠す気無いだろこいつ)ったく………んじゃ次はコイツだ」

 

『焔備』と『葵』を収納し、次に現れたのは、あの暴力的な武装『鋼牙』。身構えずに前のめりでいたため、一夏は思わず驚き後退りしてしまった。

 

「うおわぁっ!?ちょっと柳さん、それ出すなら言って下さいよ!」

 

「うるせえな、いくらなんでもビビり過ぎだろ」

 

「いや、その、なんといいますか。………。結局それって何なんです………?使ったときはセシリアだけじゃなく柳さんも吹き飛びましたし」

 

「相手のシールドと装甲を一撃で破壊する為に開発されたんだとさ。反動が凄まじいからしっかり構えてても抑えきれないらしいし、弾倉が二つ付いてるが二発同時発射だから実質そんな撃てねえしよ。せいぜい三発、予め薬室に装填しても四発だな」

 

連射も出来ない、弾数も圧倒的に少ない、そして強すぎる反動、それらの代わりに得た強大な威力。それを聞いて一夏は戦慄を覚えた。

どう考えたって使いこなせない。まだエネルギー管理と剣術の心得があれば何とかなりそうな自分の機体や武装の方が遥かにマシだ。

 

「ええ………癖が強いなんてもんじゃないですよそれ………。なんか俺の『白式』や『零落白夜』なんか可愛く見えてきましたよ」

 

「確かにな。こんなのどう使いこなせっつうんだ。………ちょっと試してみるか」

 

「え!?今使うんですか!?」

 

「しっかり構えて踏ん張ってれば吹っ飛ばねえだろうし、物は試しだ」

 

困惑する一夏を尻目に隆道は腕を囲うようにある『鋼牙』のレバーを引くと重厚で鈍い金属音が鳴り響く。ただ装填しただけであるが、それだけで初見でも威力が想像出来てしまう位だ。

 

「そんじゃまあ………とりあえず一発っ!!!」

 

彼は殴るように腕を突き出した瞬間、まるで大砲のような爆破音と共に彼は後ろに吹き飛ばされ、その場には二つの巨大な空薬莢だけが残る。

 

「ぐおぁっ!?」

 

「柳さんっ!?」

 

彼は勢いよく吹き飛ばされるが、地に足をつけ踏ん張っていたおかげか五メートルほどでようやくそれは止まる。彼が元いた場所から今いる場所の間には足で削ったであろう二本の溝が出来上がっていた。

 

「かぁ~~~きっつ………。なんだよ、踏ん張ってもこれなのか」

 

「大丈夫ですか柳さんっ!」

 

「ああ、なんとか。………ほんとなんなんだよコイツは。考えた奴頭おかしいんじゃねえのか」

 

「地上ですらあれだけの吹き飛び様ですし、もしこの間のように空中で使ったら………」

 

「間違いなくどっかに叩きつけられるな」

 

地上ですらこれほどの反動なのだ。空中で使うものなら以前の二の舞になる事は確実。ISを用いた試合は主に空中戦だ。使う度に吹き飛ぶ様ではまるで役に立たない。

実は『鋼牙』を扱う際、ある事をすれば反動を抑制する事が出来、空中でも吹き飛ぶ事は無いのだが今の彼はその事を知らない。

 

「………ああくそったれ、次だ次。もっとまともなやつ………を………」

 

「………柳さん?」

 

「………」

 

『鋼牙』を収納し次の武装を模索していた彼は突如沈黙する。何かあったのだろうか、彼をよく見ると苦虫を噛み潰したような表情である。

 

「ど、どうしたんですか?」

 

「………『竜殺(りゅうさつ)』」

 

一夏は心配になりおそるおそる声を掛けると彼はそう一言呟く。すると今度は彼の右手に巨大な剣が展開される。その剣は一夏にも既視感があった。

 

「………大剣、ですね」

 

「………大剣だな」

 

それは剣というにはあまりにも大きすぎた。

 

大きく ぶ厚く

 

重く そして

 

大雑把すぎた。

 

それは 正に

 

鉄塊だった。

 

「………いや、これもう、どう見てもアレですよね。ベル───」

 

「やめだやめだ、これは絶対使わねえ。なんでこんなの入ってんだよ」

 

拡張領域を見た時からからずっと自己主張が激しいソレを見て見ぬふりをしていたが、展開してようやく確信する。

これはダメだ、使ったらいけない気がする。千冬に報告して別の物に取り替えて貰うか返品する事にしよう。そう思い直ぐ様収納して、この先不安を感じた彼はとうとう溜め息を吐いてしまった。

 

「………気を取り直して次行きましょう」

 

「………そうだな。アレは存在しなかった、いいな?」

 

彼の武装は残り六種類。御披露目会はまだまだ続く。

 

 

 

 

 

しばらくして日も暮れる時間。武装御披露目会が終わった頃には隆道と一夏は訓練をしていないにも関わらず疲労感だけが残っていた。

 

「これで………全部、ですね………」

 

「ああ………ようやく、な………」

 

拡張領域に積んである十種類の武装は全て出し切った。幾つかは一夏にも貸して試射させてみたりと時間を忘れてしまう程に夢中になったり。

怖いもの見たさで『鋼牙』も使ってみたいと借りた彼が、案の定吹き飛ばされた光景を見て隆道が笑い転げたのは良い思い出。

 

「種類は結構豊富でしたね。超長距離狙撃砲(スナイパーカノン)擊鉄(げきてつ)』に自動散弾銃(フルオートショットガン)轟鉄(ごうてつ)』、多銃身回転式機関砲(バルカン)豪雨(ごうう)』と擲弾発射器(グレネードランチャー)破砕(はさい)』。個人的には『擊鉄』と『豪雨』が好みですね 。残り二つは………その………」

 

「みなまで言うなよ。ったく………大型チェーンソーに加え巨大ペンチってなんなんだよ、全く用途がわかんねえぞあんなもん。アレも絶対使わねえわ、使ってたまるか」

 

銃火器は近距離から遠距離用まで豊富であり、どの状況にも応じる事が可能な点に関しては別に問題はない。だが近接武装に関しては問題だらけで文句しか出ない。

基本装備の『葵』に色々な意味でぶっ飛んでいる『鋼牙』、某狂戦士が振り回す『竜殺』。そして残りの二つは『竜殺』と大きさの変わらない大剣型チェーンソー『大百足(おおむかで)』にアホみたいに巨大なペンチ『鉄血(てっけつ)』。もはや意味がわからなかった。

 

「おかしいだろ、なんで近接武装だけこんなゲテモノ揃いなんだよ。基本装備の『葵』しかまともなのねえじゃねえか。『鋼牙』は百歩譲って良いぞ?他はどう考えてもいろんな意味でダメだわ」

 

「『鋼牙』もアレでしたけど、まさかそれを上回るとは思いませんでしたね………」

 

「………もう帰ろうぜ。変に疲れちまったよ」

 

「そうですね………」

 

既に時刻は夕食時間に近い。良い感じに腹も減っているため二人は手際よく空薬莢等を片付けて帰るが、一夏は何かを思い出したのかピットに戻りながら話を持ちかける。

 

「そういえば柳さん。夕食後って時間あります?」

 

「あ?いつも部屋に来るじゃねえか。今更言うことでもないだろ」

 

「いえ、そうじゃなくてですね───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅん、ここがそうなんだ」

 

隆道と一夏が訓練(武装御披露目会)を終えて、ほぼ全ての生徒が夕食を取ろうとする頃。IS学園の正面ゲート前に、小柄な体に不釣り合いなボストンバッグを持ったツインテール少女がいた。

 

「えーと、受付ってどこにあるんだっけ」

 

彼女は上着のポケットからくしゃくしゃになった一切れの紙を取り出し確認する。それは校舎の案内用紙の一部で、結構雑に扱ってるが気にしない。彼女は大雑把な性格なのだ。

 

───本校舎一階総合事務受付───。

 

地図は無く、書かれているのはこれだけ。紙の内容も雑だった。

 

「………って、だからそれどこにあんのよ。………ああもう、自分で探せばいいんでしょ、探せばさぁ」

 

文句を言っても誰も聞いてるはずはない。多少の苛立ちを募らせながら紙をポケットにねじ込み足を動かす。

彼女は思考するよりも行動をする活発な少女だ。良く言えば『実践主義』、悪く言えば『よく考えない』。もっと悪く言えば『思考停止』である。一部の人間だったら『脳筋』や『アヘアヘ思考停止ガール』、更に容姿を見れば悪意盛り沢山な本人ブチギレ待った無しのあだ名を付けたであろう。

 

(ったく、出迎えが無いとは聞いてたけど、ちょっと不親切過ぎるんじゃない?政府の連中にしたって、異国に十五歳を放り込むとか、なんか思うところ無いわけ?)

 

と彼女は自身の出身国───中国の政府に文句を垂らしているが日本に来たのは別に初めてではなく、むしろ第二の故郷でもある。

 

(誰かいないかな。案内出来そうな人)

 

学園内を歩きながら人を探しているが、時刻は八時を過ぎている。当然どの校舎も灯りは落ちており、ほとんどの生徒は寮にいる時間だ。

 

(あーもー、面倒くさいなー。空飛んで探そうかなー)

 

彼女はセシリアと同じく代表候補生であり、専用機も所有している。ISを使って飛ぼうというふざけた発想が出てくるが学園内重要規約書を即座に思い出し踏み留まる。やはり脳筋であった。

 

『転入の手続きを済ませて無いにも関わらずISを起動させたら、最悪外交問題に発展するからそれだけは本当にやめてくれ』

 

(ふっふーん。まあねー、あたしは重要人物だもんねー。自重しないとねー)

 

ふと、日本に向かう前に何回も懇願していた政府高官の情けない表情を思い出す。大の大人がへこへこ頭を下げるのは気分がいい。多少機嫌が良くなった彼女は先程よりも足が軽くなっていた。

彼女は忘れているか知らないかは定かではないが、そもそも枠内を逸脱したIS運用をした場合は刑法によって罰せられる。

独断でISを使ってしまえば政府は勿論困る処ではないが、何より一番困るのは彼女だ。一生を棒に振る羽目になってしまうのだから。

自重などとんでもない、そのような事は決して許されない、許してはならない。

やはり彼女は脳筋処か思考停止なのかも知れない。

彼女は『歳をとっているだけで偉そうにしている大人』が嫌いであり、かつて子供の頃は『男というだけで偉そうにしている子供』が大嫌いであった。故に今の世の中は非常に居心地が良かった。

男の腕力は児戯、女のISこそ正義。彼女は決して女尊男卑思考では無いのだが、色々と優遇された結果少なからず男を下に見ている。───一部を除いて。

 

(元気かな、アイツ)

 

思い出すは一人の男子。彼女にとって、今回日本に帰ってくる最大の理由だ。

彼だけは他の男とは違った。男だからと偉そうにせず、むしろ対等に接して来た。

 

(まあ、元気なんだろうけど)

 

いずれここにいれば会える。早く会いたいと思っていた彼女であったが、ふとある事を思い出した。

 

(そういえば、男性操縦者は二人いるのよね。一人目はアイツ、二人目は………)

 

一人目は知っている。というより、彼女が日本にやってきた最大の理由である男子は奇しくもその一人目である。しかし二人目は知らない、三つ歳上としか聞かされていないのだ。つまり全生徒の中で一番の歳上ということになる。

 

(どんな奴なんだろ、どうせ歳上だからって偉そうにしてんでしょうね)

 

その時はあたしが思い知らせてやる。男だから、歳上だからといって偉そうにする奴は許さないと、彼女は意気込んだ。

 

 

 

その考えは直ぐに崩壊する処では済まなくなる。

 

 

 

「ですので………という訳で………」

 

ふと、声が聞こえた。その方向に視線を向けると、生徒であろう女子が出てくる。何やら他の人と話をしている模様。

 

(丁度良いや、場所聞こっと)

 

受付の場所を聞くか、良かったら案内して貰おう。声を声を掛けようとして、彼女は小走りで向かうが───。

 

「なので箒の言うように、柳さんは部屋で待ってて下さい。あ、リクエストあります?」

 

「とりあえず、やるっつうのもその理由もわかった。つか毎度言ってるけどよ、まだ缶詰残ってるんだから無理に持って来る事もねえって。………何でも構わねえが、強いて言うなら和食だな」

 

その二人の男子の片方の声が耳に入り、不意を突かれたのかその足は止まる。その声は知っている。恐らく、いや間違いなく彼だと彼女の鼓動が高鳴る。

 

(あたしってわかるかな。わかるよね。一年ちょっと会わなかっただけだし)

 

自分に言い聞かせつつ、わからなかったら自分が美人になったからだと謎の超ポジティブ思考に切り替えて彼女は歩みを再開する。

既に彼女の目には彼しか映っていない。

 

「いち───」

 

思わぬ再会だったがそんなことどうだっていい。胸の高鳴りが最大になった彼女は彼───一夏に声を掛けようとした。しかしそれは女子の声で中断され、視界は元に戻る。

 

「じゃあ今度はホッケ定食にしますね。ところで一夏、蒸し返すようだが先程の吹っ飛び様は中々であったぞ」

 

「あのなあ、あんなの絶対抑え切れねえって。箒もやってみろよ、同じ事が起きるからさ」

 

(………誰?あの女の子なんで親しそうなの?っていうかなんで名前で呼んでんの?)

 

先程の胸の高鳴りは何処へやら、酷く冷たい感情と苛立ちが彼女を満たしていく。所謂嫉妬というものだった。

 

(それに………アイツが例の………?)

 

嫉妬と同時に冷静になったのか、視界が戻った彼女は女子と男子二人の後ろを付いていってる男子に目をやる。

 

(うわっ、一夏よりデカい………)

 

一夏より背が高い彼が二人目なのだろう。しかしここからでは表情は見えない。いったいどんな奴なのかと彼女はおそるおそる近づく。

 

 

 

 

 

そう、()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

「っ!?!?!?」

 

彼女は勘が鋭い。中国に帰国し、ISを学んでたった一年で代表候補生に上り詰めたのは持ち前の勘という要因もある。その勘によって隆道の奥底に眠る危険性をいち早く察してしまった。

今のところ彼は負の感情など出ていない。しかし、それは蓋をしているからであって決して消えた訳ではない。

以前、一組の生徒達に見せた『どす黒い何か』。

ソレが溢れていないにも関わらず、勘が鋭い彼女にはハッキリと見えてしまった。

ハッキリと見えるソレはやがて形となり、やがてある存在へと姿を現す。

 

 

 

その強靭な灰色の身体は所々が傷だらけで赤く血に染まり

 

 

 

その歪んだ口元からは鋭利な牙を剥き出しにし

 

 

 

その鋭い眼は憎悪と殺意に満ちている。

 

 

 

その様は歯向かう敵を必ず殺すかのような姿。

 

 

 

ソレは巨大な犬だった。血塗れで、あらゆるものを憎み過ぎて狂いに狂った狂犬。

 

 

 

ソレは鮮血を垂らしながら、ゆっくりと此方の方を向き───。

 

 

 

「───!?!?!?」

 

 

 

───目が合う前に彼女は逃げ出した。

 

 

 

 

 

「………柳さん?どうしたんです?」

 

「………いや、さっきからこっちを見てる奴がいてな。振り向いたら逃げやがった」

 

「私達を………ですか?それに逃げたって………」

 

「さあな。疚しい事があるから逃げたんだろ」

 

 

 

 

 

 

気づいたら彼女は総合事務受付に辿り着いていた。

先程目の当たりにしたもの。アレが何だったのかはわからない。しかし自身の勘が告げていた。

関わるべきではない。彼の事は忘れる事にしよう、でないとおかしくなってしまう。

そんなことより一夏の方だ。なぜ知らない女子と親しげなのだと不機嫌になる。胸が高鳴ったり恐怖したり不機嫌になったりと忙しい彼女である。

 

「ええと、それじゃあ手続きは以上で終わりです。IS学園へようこそ凰 鈴音(ファン・リンイン)さん」

 

愛想の良い事務員の言葉は彼女───鈴音の意識に届かない。既に二人目に感じた恐怖感は無くなり、一人目の事しか考えていない。彼女は不機嫌全開だった。

 

「織斑一夏って、何組ですか?」

 

「ああ、噂の子?一組よ。凰さんは二組だから、お隣ね。そうそう、あの子一組のクラス代表になったんですって。やっぱり織斑先生の弟さんなだけはあるわね」

 

一夏がクラス代表に決まったのは今日のSHRだが噂好きは女性の性、既に学園全体に広まっている。

その体現のような事務員を冷めた目で見ながら彼女は質問を続ける。

 

「二組のクラス代表って決まってますか?」

 

「決まってるわよ」

 

「名前は?」

 

「え?ええと………聞いてどうするの?」

 

彼女の様子が少しおかしいと感じたのか、事務員は少々戸惑いながらも聞き返す。

 

「お願いしようかと思いまして。代表、あたしに譲ってって───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は進み、現在は夕食後の自由時間で寮の食堂にて一組の生徒達はある小さなイベントを開催していた。

 

「というわけでっ!織斑くんクラス代表おめでとう!」

 

「おめでと~!」

 

クラッカーが乱射され一夏の頭に乱雑に乗る紙テープ。生徒達は飲み物を手にそれはもうお祭りの様に盛り上がっている。

彼はちらりと壁を見ると、そこにはデカい紙がかけており、これまたデカデカと文字が書かれている。

 

『織斑一夏クラス代表就任パーティー』

 

確かにクラス代表は一夏に決まった。しかし、それもセシリアが辞退したからであり、その全貌もクラス代表を決める際のいざこざから始まった様々な要因によって起きた隆道とセシリアの事件とも言える試合の結果。本来はこのような明るいイベントなど出来るはずがない。

では何故このような事をしているのか。それは周囲を欺く為、所謂カモフラージュだった。

クラス代表を決めるために一夏とセシリアが試合をし、そこに隆道は一切関与していない。それが一組以外の生徒が認識している内容だ。

辻褄を合わせる必要があったのだ。注目の的である一夏がクラス代表になったというのに、イベント一つもなければ周囲は疑問に思ってしまう。一度疑われたら止まらず、いずれ真相に辿り着く。そうなってはまずい。

 

「いやー、これでクラス対抗戦も盛り上がるねえ」

 

「ほんとほんと」

 

「ラッキーだったよねー。同じクラスになれて」

 

「ほんとほんと」

 

相づちを打つ女子は二組の生徒。現にこのパーティーには一組以外の生徒も混じっており、一組の集まりにも関わらずクラスの人数以上に増えている。一組の生徒達は騙す事に悪いと思いつつも疑われないように、まるで一夏が活躍したかのように演技をするしかなかった。

彼女達は授業によって今も筋肉痛であるが、それを表情に出さずにする演技は見事である。彼女達はISより演劇で活躍出来るのかもしれない。

 

「む、胸がいてえ………」

 

「一夏、お前がメインなんだぞ。その本人がそんな顔をするな、疑われたらどうする」

 

「わ、わりい」

 

箒のお叱りを受けて一夏は気持ちを切り替える。正直言うと、彼はパーティーには乗り気ではない。戦ってもいないのにクラス代表になったのだから後ろめたさが半端ではないのだ。

それでもやらなければならない。いくら箝口令があれど女性の情報網は凄まじい、ちょっとしたことで何処かで崩れてしまう。それだけは避けたかった。

ちなみに隆道も参加しており、今は隅の方で彼等を見守っていた。これも辻褄を合わせる為であり、本人も納得している。

今までは昼は購買で済ませ、夜は買溜めした缶詰等を。怪我をしてからは一夏達が食事を持ってきたので、彼にとって今回が初めての食堂。周囲を見渡して、当然行ったことは無いがキャバクラみたいだなと思ったそうな。

 

「はいはーい、新聞部でーす。話題の新入生、織斑一夏君に特別インタビューをしに来ました~!」

 

そんな偏見を持つ彼を余所に、一夏の前に現れたのはボイスレコーダーを片手に持つ一人の少女。

 

「あ、私は二年の黛 薫子(まゆずみ かおるこ)。よろしくね。新聞部副部長やってまーす。はいこれ名刺」

 

名刺を渡され、彼は表情こそ出さないが戦慄した。いきなり強敵が現れたと。

 

「ではではずばり織斑君!クラス代表になった感想を、どうぞ!」

 

ボイスレコーダーを彼に向け、彼女は無邪気な子供のように瞳を輝かせる。悪意など一切無いので余計タチが悪い。

まずい。これは非常にまずい。下手な事など絶対言えないと彼は冷や汗を流す。周囲の生徒───特に一組の女子達は彼に注目し、じっと凝視していた。

 

───下手な事は言わないでね、と。

 

一組が団結してこのようなパーティー(カモフラージュ)をしてくれたのだ。やるしかないと彼は決意する。

とは言うものの言葉など用意してないので、当たり障りのない無難な言葉を言うことにした。

 

「まあ。なんというか、がんばります」

 

「えー。もっといいコメント頂戴よ~。俺に触るとヤケドするぜ、とか!」

 

「自分、不器用ですから」

 

「うわ、前時代的!」

 

なにやら言われ放題でむっとしたが、彼は表情に出さない。インタビューを受ける有名人の気持ちが少しわかった気がする。なるほど、これは鬱陶しいと。

 

「じゃあまあ、適当に捏造しておくからいいとして」

 

彼女はマスコミではなくマスゴミの方だったようだ。勘弁してほしいと彼は言いそうになるが、それをぐっと堪える。この手の人間は此方の粗探しが得意だからだ。

 

「ああ、セシリアちゃんもコメント頂戴」

 

「わたくし、こういったコメントはあまり好きではありませんが、仕方ないですわね」

 

そう言いつつ満更でもない口調のセシリア。勿論これも演技である。代表候補生だけあってこの手の人間に慣れており、恐らく来ると予想していたのだ。既に言葉も予め用意してある。対策は万全であった。

 

「コホン、ではまず、どうしてわたくしがクラス代表を───」

 

「ああ、長そうだからいいや。写真だけ頂戴」

 

「さ、最後まで聞きなさい!」

 

対策が無駄になった瞬間である。流石にこれについて彼女は泣いていい。

 

「いいよ、適当に捏造しておくから。よし、織斑君に惚れたからって事にしよう」

 

「えっ………」

 

彼女は顔に出てしまうほど困惑した。それを見た一夏は、彼女の当然の反応に何故か悲しい気持ちになったという。

 

「んじゃあ最後は~」

 

困惑するセシリアと悲しげな一夏を置いて薫子はある人物の元へ向かう。

 

(((((!?)))))

 

彼女は食堂の隅にいる隆道にもインタビューをしようとしていた。

彼の事は既に聞いている。しかし、ジャーナリストを目指している彼女にとっては二人目も一大スクープの一つ。逃す訳がない。

そんな命知らずな彼女は彼にボイスレコーダーを向けてインタビューを始める。

 

「ではでは柳さん!色々と聞きたい事があるんですがまずは一つ!クラス代表になった織斑君に対して一言を!」

 

「………」

 

「あ、あれ………?柳さん?おーい」

 

彼は彼女と目を合わせているが、その目は氷の様に冷たく、一言も発せず黙ったまま。

彼女は微動だにしない彼に困惑するが、その時だった。

 

 

 

食堂に一定の間隔で鳴り響く電子音。それはタイマーのような無機質な音だった。

 

 

 

この音はなんだと周囲はざわめくが、それの正体にいち早く気づいたのは一組の生徒、その次に薫子。

 

「あれ、柳さん?なんか首輪が赤く点滅してますけど───」

 

「「「「「うわあああぁぁぁっ!?」」」」」

 

そこからの一組生徒達の行動は速かった。命知らずな彼女を取り囲み強引に隆道の元から引き剥がす。

 

「柳さんっ!ほんとに、ほんっとうにごめんなさい!!」

 

「この人の事は気にしないでください!!後で織斑先生に制裁を受けて貰いますので!!」

 

「え、ちょ、待って待って!?まだ彼にインタビューを───」

 

「貴女、いったい何を考えてるんですの!?先生方から何も聞いてないのですかっ!?」

 

周囲はぎゃあぎゃあと騒ぎ始め、煩いと思いながらも彼はそれを眺める。いつの間にか彼の首輪から電子音は消え、点滅も無くなっていた。

 

「何があった!?大丈夫か柳っ!?」

 

その騒ぎの中突如現れたのは、タブレットを片手に息を上げる世界最強───千冬である。タブレットに送信された彼のバイタルサインを見て速攻で走ってきたのだろう。

 

「先生!この人が柳さんにちょっかいを!」

 

「え、ちが、インタビュー───」

 

「ま~ゆ~ず~み~!!ちょっと此方に来い!!」

 

彼女は人から一変、修羅と変化し薫子の襟を掴み連行する。その迅速な流れを見て周囲は開いた口が塞がらない。一組一同は連行された彼女に同情すらしなかった。

 

「あ、危なかった………」

 

「全く………大丈夫ですか柳さん。すみません、私と一夏がいながら………」

 

「………俺は大丈夫だけどよ、ちと過保護過ぎじゃねえのか」

 

「いや、流石にこうなりますって………」

 

首輪の仕掛けについては一組は千冬から予め聞いていた。待機形態の状態で警告が発してもISが勝手に展開しシステムが起動することは無いのでそれについては安心だが、PTSDが発症してる事実は変わらない。これ以上彼の症状を重くする訳にはいかないのだ。

 

「まあ、いいや。ほら、周りの連中困惑してるじゃねえか、どうすんだこれ」

 

「な、なんとかしてみます………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『織斑一夏クラス代表就任パーティー』は多少のトラブルはあれど無事に十時過ぎまで続いた。

隆道は一夏達と別れ自分の部屋に入ろうとすると、扉の隙間に何かが挟まってる事に気づく。

 

「………?」

 

それは二枚に折られた紙だった。しかし彼は全く身に覚えがない。部屋に入り椅子に凭れかかりながらそれを開く。

その紙は新聞を切り抜いた怪文書。脅迫文かと思った彼だったが、それを読んで───。

 

 

 

「───」

 

 

 

───彼は目を見開き、固まった。

 

 

 

 

 

その怪文書にはこう記されている。

 

 

 

 

 

『篠』『原』『日』『葵』『に』『気』『を』『つ』『け』『ろ』

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