IS~傷だらけの鋼~   作:F-N

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オリジナル回『暴力だらけの日曜編』開幕。
三~四話の予定。
オリ主場面の前に一夏の場面を入れたんですが、何故か約8000文字も………。
対するオリ主場面は約6000文字、どういうことなの………。
という訳で前回の後書きで書いていた『家政婦』は未登場!
いや、マジでごめんなさい。
文字数足りなくてそこまで行けなかったんです………!許して………!


暴力だらけの日曜日
第二十四話


『灰鋼』の調査をした翌日の日曜日、正午付近。

一夏は以前提出した外出届によってようやくIS学園外に出られるようになり、二人の護衛を連れて無人となった自宅の様子を見に行った後、友人の家へ遊びに行っていた。

二月中旬にIS適性が発覚して以来、当然ながら中学時代の友人と遊ぶ機会など無かった為にその友人と再会した時は大いにはしゃいだ。

ここのところ隆道という同性は居たには居たが、殆どが女性に囲まれた生活をしていたのだ。なにかとキツい環境から解放された事もあって今現在の彼は凄く心地よく感じていた。

 

「で?」

 

「で?って、何がだよ?」

 

現在彼は再会した友人宅で中学時代からの友人───『五反田 弾(ごたんだ だん)』と格闘ゲーム対戦を楽しんでいる。

弾は中学の入学式当日に知り合い、幼馴染の一人である鈴音と揃って三年間同じクラスだった。

やたらと馬が合ったので中学時代はよく三人でつるんであれやこれやと楽しんだものだと弾を見る度に思い返す。出来る事ならずっとこのままが良いと考えはするが、叶わないであろうと彼はしみじみと感じていた。

 

「だから、女の園の話だよ。良い思いしてんだろ?」

 

「してねえっつの。何回説明すれば納得するんだ」

 

「嘘をつくな嘘を。お前のメール見てるだけでも楽園じゃねえか。なにそのヘヴン。招待券ねえの?」

 

「ねえよ馬鹿」

 

現在、一夏は『ISを使える世界で一番目の男』という肩書きを持ちIS学園へと強制的に在学中である。

『二番目の男』である隆道と、まだ出会った事のない男性用務員一人───計二人の男性を除いて生徒、教員、用務員を含め全て女性のIS学園で寮生活の真っ最中だ。

傍から見れば女性に囲まれた生活などさぞ楽しいだろうなと思う男性がいるであろうが、全員がそうではない。少なくとも彼自身は楽しいと微塵と感じた事も無いし、隆道に至ってはISに対する嫌悪と女性不信によって全力で拒絶している。

今となっては有り得ない話ではあるが、仮に弾もIS学園に入学して隆道と対面したらその辺りの認識が間違いなく変わるだろう。

 

「つか、アレだ。鈴が転入してきてくれて助かったよ。話相手本当に少なかったからなあ」

 

「ああ、鈴か。鈴ねえ………」

 

弾はニヤついた表情で彼を見据える。それは鈴音が彼に好意を寄せていると知っているからこその表情だ。

それを横目で見えてしまった彼はいったいなんだその顔はと不思議に思うが、その意味を知る日はまず来ないだろう。

 

「よっしゃ、また俺の勝ち!」

 

「おわ!きたねえ!そのやり口は無しだろ………」

 

「ははん、勝ちは勝ちだからな。………ところで、もう一人の………柳隆道?あ、三つ歳上なんだっけか。んじゃあ柳さん、か」

 

「そうそう。紹介したかったんだけど、向こうも予定があったらしく一緒に来れなくてさ」

 

そう、この場に隆道はいない。本当は一緒に出掛けて弾に紹介をしたかったのだが、既に隆道は予定を組んでいたとのこと。

昨日の夜に聞いた話では、隆道も自宅に戻って様子を見に行くと言っていた。場所もここより遠く、後の合流も難しいらしいので今回は断念せざるを得ない。

しかし、別に外出は今回が最後ではない。次回にでも誘って、その時に紹介するとしようと彼は考えた。

 

「メールでは殆ど触れて無かったが、どんな人なんだよ」

 

「顔にでっかい傷が二本あって殆ど表情を変えない人、かな。あとISと女性がすげー嫌い」

 

「え、なにそれ。大丈夫なのか?」

 

「大丈夫───とは言えねえけど俺ともう一人の幼馴染とは普通に喋ってくれるし、良い人だな」

 

隆道の事を聞いて弾は一気に不安に駆られたが、彼の感じからして本当に良い人なのだろう。

先程女の園で良い思いをしてんだろと言った自分を思い返して、隆道がいなくて良かったと安心した。もし本人の前でうっかり言ってしまったらブチギレ待った無しであったに違いない。

 

「 まあ、お前が言うんだから間違いなく良い人なんだろうよ。………ちなみにどれくらい女嫌いなんだ?」

 

「どれくらい………?千冬姉ですら猛烈に反発するくらいだな」

 

「うっわ、筋金入りじゃねえか。あの人に逆らうなんて相当だぞ」

 

「まあ、そういう人もいるって事だ。………間違ってもあの人の前でIS学園の話はするなよ?二ヶ月経った今でも不機嫌な時が多いんだからな」

 

「ああ、それはさっき思ったところだっての………。まあ、その人の事は置いておこう。話は戻るが、鈴のことは───」

 

今この場にいない隆道の事はいずれまた聞く事にしよう。途中で切れた鈴音の話題に戻そうとする弾であったが、その言葉は突然の訪問者によって遮られた。

 

「お兄!さっきからお昼出来たって言ってんじゃん!さっさと食べに───」

 

吹き飛ばす勢いで扉を蹴り開けて入ってきた訪問者は五反田 (らん)。弾の一つ年下である妹で、有名私立女子校に通う優等生。()とは天と地ほどの差がある。どこで教育が違ったのであろうか。

 

「あ、久しぶり。邪魔してる」

 

「いっ、一夏………さん!?」

 

完全にプライベート状態だったのか、彼女は現在ラフな格好だ。肩まである髪を後ろで挟んだだけの状態でタンクトップにショートパンツ姿。

そこら辺の男性だったら目のやり場に困るであろう姿なのだが、生憎彼はIS学園で見慣れている。何せ、殆どの生徒が寮内では彼女の様に薄着やラフ着なのだから見慣れるのも当然であった。

しかし最近は暑くなってきたせいか、やたらと胸元が開いた服を着ている生徒が多い。彼以外の視線が無いからか殆どがノーブラ等の解放的な姿で過ごしている。

彼とて健全な高一男子だ。見慣れているとしても、そこまで開放的だと目のやり場に困る。ふと視線に気づいた生徒が胸を隠す時の気まずさは計り知れない。

ちなみに隆道は移動する時以外は滅多に自室から出る事は無く、寮内で他生徒と遭遇する事は殆ど無い。遭遇したとしても見向きすらせず、例え見たとしてもしかめっ面しかしない。隆道の事をよく知らないまともな思想を持った生徒達は『私って魅力、無いのかな………』と悲しい気持ちになったそうな。

 

「い、いやっ、あの、き、来てたんですか………?全寮制のIS学園に通っているって聞いてましたけど………」

 

「ああ、うん。今日はちょっと外出。家の様子を見に行った後寄ってみた」

 

「そ、そうですか………」

 

先程の態度はどこへやら、彼女はたどたどしい。昔からそうであったが、何故自分相手だとそのような感じになるのだろうかと一夏は不思議に感じていた。

 

「蘭。お前なあ、ノックくらいしろよ。恥知らずな女だと言われ───」

 

弾が言葉を言えたのはそこまでだった。

彼女に鋭い目付きで睨まれたのだ。某配管工が縮んでいくのを彷彿とさせるその様は情けないの一言に尽きるであろう。

 

「………なんで、言わないのよ………」

 

「い、いや、言ってなかったか?そうか、そりゃ悪かった。ハハハ………」

 

「………」

 

追撃するかの如く視線を再び弾に突き刺す。それは最早死体撃ちに近い。これではどっちが歳上なのだろうか。

 

「あ、あの、よかったら一夏さんもお昼どうぞ。まだ、ですよね?」

 

「あー、うん。いただくよ。ありがとう」

 

「い、いえ………」

 

彼女はその言葉を最後に顔を赤らめながらそそくさと部屋を出ていく。残されたのは男子二人と静寂のみだった。

 

「しかし、アレだな。蘭ともかれこれ三年の付き合いになるけど、まだ俺に心を開いてくれないのかねえ」

 

「は?」

 

「いや、ほら、だってよそよそしいだろ。今もさっさと部屋から出ていったし」

 

「………」

 

彼女もまた、彼に好意を寄せている。先程の彼女が取った行動もそれによってなのだが、この男『織斑一夏』は死ぬほど鈍感である。罪な男だ。

 

「………なんだよ?」

 

「いやー、なんというか、お前はわざどやっているのかと思う時があるぜ」

 

「?」

 

「まあ、わからなければいいんだ。俺もこんなに歳の近い弟はいらん」

 

本当は指摘するべきなのだろうが、そうすると先程の視線のように牽制され、酷い時は制裁を受けてしまう。それに、友人が家族になるなど弾にとっては御免だった。

 

「まあ、いいや。とりあえず飯食ってから街にでも出るか」

 

「おう、そうだな。昼飯ゴチになる。サンキュ」

 

「なあに気にするな、どうせ売れ残った定食だろう。じゃ、行こうぜ」

 

弾の自宅は食堂を営んでおり、昼食はそこで用意されている。

部屋を出て一階へ下り、一度裏口から出て正面の食堂入り口へ。多少面倒ではあるが、弾曰くこの構造のおかげで私生活に商売が入って来ないとのこと。

住みにくくないのかと以前は思っていたが、本人がそれ以上何も言わないのだから別に良いかと一夏はあまり気にしない事にした。

 

「うげ」

 

「ん?」

 

「………」

 

食堂に入るなり露骨に嫌そうな声を出す弾。いったいなにがと一夏は後ろから除くと、そこには彼等の用意されてある昼食の他に先客が一人。

 

「何?何か問題でもあるの?あるならお兄一人外で食べてもいいよ」

 

「聞いたか一夏。今の優しさに溢れた言葉。泣けてきちまうぜ」

 

その先客とは、先程部屋を出ていった蘭であった。しかし、その姿はラフな姿は微塵も残っていない。

纏めていた髪も全て下ろし、服装は六月ということもあってか半袖のワンピースである。

 

「別に三人で食べればいいだろ。それより他のお客さんもいるし、さっさと座ろうぜ」

 

「そうよバカ兄。さっさと座れ」

 

「へいへい………」

 

弾は何かを観念したのか渋々テーブルに座る。本当に彼女の兄なのだろうか。実は彼女の方が姉なのではないかとたまに思う時がある。

 

「………蘭さあ」

 

「は、はひっ?」

 

「着替えたんだ。どっか出かける予定?」

 

「あっ、いえ、これは、その、ですねっ」

 

「………ああ!」

 

一夏は閃いた。漫画的表現を使うとすれば、頭の上で電球が現れ光ったことだろう。

 

「デート?」

 

「違いますっ!」

 

光ったところでそれが正解とは限らない。着替えた理由は彼自身に見て欲しいという思いからなのだが、彼の性格上それに気づくことは無いだろう。

 

「ご、ごめん」

 

「あ、いえ………。と、とにかく、違います」

 

「違うっつーか、むしろ兄としては違って欲しくもないんだがな。何せお前そんなに気合いの入れたおしゃれをするのは数ヵ月に一回───」

 

瞬間、突如として彼女が繰り出すアイアンクローは見事に弾の顔下半分を捕らえた。完全に口を塞いだ事によって呼吸を止めている。恐ろしい技術だ。

 

「………!」

 

「………!」

 

冷たく見据える彼女と許しを請う弾の二人が行う、二人だけに通じるアイコンタクト。その光景を見て彼は一言。

 

「仲いいな、お前ら」

 

「「はあ!?」」

 

「食わねえんなら下げるぞガキども」

 

「く、食います食います」

 

そのとき、厨房からぬるりと現れたのは八十を過ぎて尚も健在、五反田食堂を経営している五反田家の頂点である五反田 (げん)。長袖の調理服を肩までまくり上げ、剥き出しになっている腕は隆道ほどではないが筋肉隆々である。

彼は何度か厳に拳骨を食らった事があるが、それは姉である千冬に勝るとも劣らない威力だ。よって大人しく昼食を頂く事が賢明である。

隆道の拳骨を受けた事は無いが、恐らく一撃で意識は飛ぶだろう。そんなどうでもいいことを彼は考えていた。

 

「「「いただきます」」」

 

「おう、食え」

 

三人の食事様子を見て満足げにした後に厳は厨房に戻っていき、次の料理を調理し始めた。連続に響く包丁の音から察するに、二重の意味で五反田鉄板メニュー『業火野菜炒め』の注文が入ったのだろう。

 

「でよう一夏。鈴と、えーと、誰だっけ?ファースト幼馴染?と再会したって?」

 

「ああ、箒な」

 

「ホウキ………?誰ですか?」

 

「ん?俺のファースト幼馴染」

 

「ちなみにセカンドは鈴な」

 

箒と鈴音が聞いたら間違いなく鉄拳制裁が飛んでくるであろう。誰もその事を指摘しないので、彼が二人の前でその呼び名を言わない事を祈るしかない。

 

「ああ、あの………」

 

「そうそう、その箒と同じ部屋だったんだよ。まあ今は───」

 

「お、同じ部屋!?」

 

先程から彼の発言に対し気が気ではなかった彼女だったが、『同じ部屋』という部分によって完全に取り乱し立ち上がってしまう。

 

「ど、どうした!?落ち着け」

 

「そうだぞ落ち着け」

 

「い、一夏、さん?同じ部屋っていうのは、つまり、寝食を共に………?」

 

「まあ、そうなるかな。ああ、でもそれはこの間までの話で、今は別々の部屋になってる。当たり前だけど」

 

そもそも、男女が同じ部屋だったのがおかしかったのだ。何故初めから男女別にしなかったのかと思っていたが、その理由がかなり複雑であった事は彼は知るよしもない。

 

「い、一ヶ月以上同せ───同居していたんですか!?」

 

「ん、そうなるな」

 

「………お兄。後で話し合いましょう………」

 

「お、俺、このあと一夏と出かけるから………。ハハハ………」

 

「では夜に」

 

有無を言わせぬ口調で兄の退路を絶つ彼女。中等部生徒会長をやっている経験からか、妙に鋭いものを感じる。

 

「………決めました。私、IS学園を受験します」

 

「お、お前、何言って───」

 

「───っ!?」

 

彼女の唐突の宣言により弾は立ち上がってしまう。先程の彼女といい弾といい、食堂で騒ぎ立てた事によって厨房にいる厳の怒りは頂点に達した。

それによって厳が繰り出すは豪速球とも言えるおたまの投擲。それは一寸の狂いもなく弾の顔面に向かって飛んでいき───。

 

「………おお?」

 

「さ、サンキュ、一夏。助かった………」

 

「………」

 

───弾の顔面に当たる事は無かった。

とっさに飛んできたおたまを一夏は直ぐに捉え、すんでのところで掴む事が出来たのだ。

 

「………危ないじゃないですか厳さん。他のお客さんもいるんですからこういうのは投げないで下さいよ」

 

「………悪かったな。だが、あまり騒ぐなよガキども」

 

立ち上がって厨房入り口まで来た一夏からおたまを受け取って一言謝った後に、厳は厨房に戻っていく。小さな溜息を吐いて彼も席に戻る。

 

(………今までは見えなかったのに、なんで掴めたんだ?)

 

弾の顔面におたまが飛んでくる事は今回が初めてじゃない。しかし、今回は何故か目で追うことが出来、更に掴む事が出来た。

何故だかはわからない。もしかしてISの訓練をしてるからなのだろうかと考えたがどうも違う気がする。

しかし、考えても結論など出るはずもなく、まあいいかと彼は深く考えない事にした。

 

「すげえな一夏………。じーちゃんの投げたおたまを掴むなんてよ」

 

「お前もいい加減学習しろって………。ところでさ、受験するって………なんで?蘭の学校ってエスカレーター式で大学まで出れて、しかも超ネームバリューのある所だろ?」

 

彼にとってそこが謎であった。大学まで約束された学業を蹴ってまでIS学園を受験するなど、よっぽどISに関心が無ければするはずがないからだ。

 

「大丈夫です。私の成績なら筆記で余裕です」

 

「いや、でも………な、なあ、一夏!あそこって実技あるよな!?」

 

「ん?ああ、あるな。IS起動試験っていうのがあって、適性がまったくない奴はそれで落とされるらしい」

 

IS学園に入学するのだから、肝心なISに乗れなければ話にならないのだ。乗れない癖にIS学園に通うなど、何しに来たのだとしか言いようがない。

しかし、そんな二人を余所に彼女は余裕の表情を見せ、無言でポケットから紙を取り出しそれを差し出す。

 

「げえっ!?IS簡易適性試験………判定A………」

 

「問題は既に解決済みです」

 

「それって希望者が受けられるやつだっけ?確か政府がIS操縦者を募集する一環でやってるっていう」

 

「はい。タダです」

 

道理で余裕の表情だった訳だと彼は納得した。成績も優秀、適性も高ければIS学園に受かる確率は高いだろう。

 

「で、ですので………IS学園に受かりましたら、い、一夏さんにはぜひ先輩としてご指導を………」

 

「………」

 

「………一夏、さん?」

 

IFの話ではあるが、隆道に出会っていない彼だったなら恐らく安請け合いしたであろう。しかし、今の彼はそのようなことはしない。

 

『考えなしの発言はやめとけ、今後苦労するぞ。口は災いの元って言うしな』

 

IS学園に入学してから今日まで学んだ事は既に数多い。女性に対しては異常なまでに鈍感な彼であるが、それ以外の事は色々と学んで来た。そして何より───。

 

 

 

『悪いが、一次移行を終わらせてない織斑を出させる訳にはいかねえ。そんなに男のIS試合を見たいんだったら、俺が出てやるよ』

 

 

 

『ぐひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!!あははははははははははははははは!!』

 

 

 

しっかりと味わえライム女ぁっっっ!!!

 

 

 

『迎撃行動を再開』

 

 

 

『………なんでだよ………どうして』

 

 

 

『織斑一夏、セシリア・オルコット、凰鈴音。三名に迎撃行動を開始する。終了条件、最優先事項の達成』

 

 

 

『どうしてだあああぁぁぁっ!!!!!!!!』

 

 

 

───今のIS学園は、何が起こるかわからない。

 

(っ………)

 

自分と隆道の存在によって起きた二つの事件。どちらも主な被害を被ったのは隆道の方だが、そういった事が今後自分や他の人間に降りかからない保証なんて無い。

今の自分では何も出来やしないのに、物事を安請け合いするなど愚の骨頂だ。彼女のお願いなど、到底聞けるはずもなかった。

 

「………なあ、蘭」

 

「は、はいっ!?」

 

「蘭が決めた事に俺がどうこう言う筋合いは無いんだろうけど、さっきも言った様になんでIS学園を受けたいんだ………?」

 

「え………。あの、えと、それは………」

 

「悪い事は言わない、よく考えた方がいい。自分の人生なんだからさ」

 

箝口令を敷かれた事によって、事件の事は言えない。今や何が起こるかわからないIS学園に、何も知らない彼女が来るのはあまりいい気持ちがしなかった。

ISに関心があるのならば来るなとは言わない。しかし、それ以外の軽い気持ちが理由ならば来るべきではないのだ。

故に、唯一出来る事は遠回しに来ない様に言うだけ。それでも来るのであれば止めはしない。その時は可能な限り出来る事をしようと彼は思った。

 

「そんな簡単に進路なんて変えちゃダメだ。よく考えて、行動するべきなんだ」

 

「一夏………」

 

「………」

 

彼はその言葉を最後に食事を再開する。五反田兄妹もそれに続いて食事を再開したが、三人は食べ終わるまで終始無言だった。

 

 

 

 

 

昼食を終え、一夏と弾は街へ出掛けていた。蘭は食事を終えるなり、一人で考え事をしたいと言って自分の部屋に戻った為近くにはいない。

ちなみに弾の家にいる際離れていた護衛達は二人の後ろに一定の距離を置いて付いてきている。

 

「意外だったな。俺はてっきり二つ返事するかと思ってたんだが」

 

「考えなしにあれこれ言わない様に気をつけてんだよ。悪いか?」

 

「いや、全然。良いことじゃねえか。誰かから教わったのか?」

 

「………柳さんのおかげさ」

 

今の自分があるのは隆道の存在があってこそだ。支えられたり、相談に乗ってくれたり、自分の身代わりになったりなど、本当に頭が上がらない。

 

「なんか、早くその人に会ってみてえな。次こそは誘えよ?」

 

「ああ、勿論さ。ところで、行く場所決めてないけどよ、どこにするんだ?」

 

「勝負しようぜ。………エアホッケーでな!」

 

「………!?お前、敢えて俺に十連敗中のものを………!?」

 

「中学のままの俺だと思うなよ、一夏!」

 

彼は、弾が燃える炎を背負った様に見えた気がした。

弾は本気だ、でなければ不得意とするもので勝負を挑もうとはしない。

彼は激戦の予感に僅かに震える左手を握り締め、弾と並んでゲームセンターへと駆け出した。

 

 

 

 

 

激戦になるかと思いきや、結局のところ弾が半分以上自滅点を叩き出した事により彼のエアホッケー連勝記録は十から十六まで伸びた。世の中本気になったところで勝負に勝つとは限らないのだ。

遠くで見ていた護衛達はその光景に苦笑いが絶えなかったそうな。

こうして、織斑一夏の充実した平穏な外出は無事に終わったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故、神は織斑一夏だけに平穏を与えたのだろうか。

 

 

 

 

 

何故、神は柳隆道に平穏を与えなかったのだろうか。

 

 

 

「ぐ、ぐお゛ぉ………。て、てめえ………やることが、無茶苦茶、過ぎんだろ………。危うく死んじまう、ところだった………じゃねえか………」

 

そのまま死ねば良かったのにな。つーか、てめえらこそ殺る気満々じゃねえか。関係ねえ人間を巻き込んだ癖に都合良い事言ってんじゃねえぞ。こんな物騒な物まで用意しやがって

 

 

 

彼には平穏なんてものは訪れない。

 

 

 

「あ゛あ゛………許ざねえ………殺じで、やる………!でめえは、絶対にぶっ殺じで、やる………!!殺じでやるよ隆道ぃっ!!!」

 

あ゛あ゛?それはこっちの台詞だくそったれ!殺れるもんなら殺ってみろよ!!死に損ないの飼い犬風情がっ!!!

 

 

 

『二番目の男性操縦者』という呪いを背負った彼には、どこまでも悪意が、暴力が付き纏う。

 

 

 

「ぐだばりやがれごの野郎がぁっっっ!!!」

 

くたばるのはてめえの方だぁっっっ!!!

 

 

 

雄叫びが、悲鳴が、凶器が、鮮血が飛び交う。

 

 

 

 

 

『有史以来、世界が平等であったことなど一度もないよ』

 

 

 

 

 

この世界は───どうしようもなく狂っている。

 

 

 

 

 

この世界は───残酷である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は午前十時付近、某県某市。

そこは都内と比較すると緑豊かな地域であり、コンクリートジャングルに長く住んでいる人間にとっては新鮮な光景だ。

駅そのものも都内と比べると小さく、人の出入りも決して少なくは無いがそれなりの人数だ。満員電車に遭遇する事など、せいぜい朝方と夕方くらいだろう。

通勤ラッシュも終え、多少は落ち着いた時間帯にその駅から出てきた二つの人影。その人影は、IS学園に教員として従事している女性であった。

 

「ここが、柳君の住んでいた………」

 

「山田先生、気をつけてね。私達はここの人達に警戒されてるんだから」

 

「わかっています。大丈夫、です………」

 

一人はIS学園の時に着ている物とは違い胸元を隠している服装の真耶、そしてもう一人は───。

 

「まったく………一人でここに来るなんて無謀よ。私が聞いていなかったら準備もせずに行くつもりだったでしょ」

 

「う………、す、すみません………」

 

真耶に軽く説教をする彼女の名前は榊原 菜月(さかきばら なつき)。二十九歳独身。

生徒に優しく品行方正、容姿も悪くなく、真っ当な思想を持つ女性で隆道の事を気にかけている数少ない女性。以前保健室で大怪我をした隆道に押さえ付けられた人物でもある。

近年稀に見る存在で、今の狂った社会にも関わらず結婚していても不思議ではない───のだが、彼女は可哀想なくらい男運が無かった。

同性からも反応がよろしくない相手に惚れ、その度に痛い目に会いやけ酒をする事が年に数回。

今年で二十代も最後なので最近は実家が何度も農家とのお見合いを勧めて来るのが悩みだとか。

しかし、本人曰く燃えない相手では心が弾まないらしい。だからおかしな男に引っ掛かるのだ。本人も薄々気づいてはいるが、くたびれる結婚はしたくないとのこと。それに、彼女は今絶賛夢中になっている男性がいる。

そう、彼女は彼にぞっこんだ。入学前に見た顔写真で一目惚れしてしまったのだ。完全にホの字だった。そんな彼女を見た教員数名は『あっ、この子もダメだ………』という反応をした。

結果は案の定。まさか交際処か交流以前の問題だとは思わなかった彼女は入学式当日にやけ酒をしたという。

しかし、今回の彼女は一味違う。彼の事を諦め切れなかったのだ。今は無理でもきっといつの日かと今でも期待し、その日の為に影ながら彼のサポートをしていた。

彼は一切知らない事だが、彼をよく思わない生徒が未だにちょっかいを出さないのも、千冬や真耶だけでなく彼女も密かに牽制や根回しをしていたからだ。いつか彼が心を開く事を信じて。

といっても、彼女の行動が実を結ぶ事は無いであろうが。やはり彼女は男運が無い。

そんな事は置いといて、何故彼女達がこの場所にいるのか。事の始まりは四月の上旬まで遡る。

以前、政府から送られた隆道の黒塗りだらけな身辺調査書。これを見た真耶は自分自身で確かめる為に一度自ら政府に連絡を取ったが、調査書以上の詳細は話せないと情報提供を却下された。殆ど黒塗りなのはどういうことだと抗議したのだが、詳細は話せないとの一点張り。此方が折れる以外の選択肢が無かった。

その調査書が来る前にも学園関係者が現地調査を行ったが、彼の通っていた高校からは学園関係者と知った途端に追い出され、近所の住民は聞き込みを拒否をするなど非協力的な態度。

殆どの学園関係者が半ば諦めざるを得ない状況だったが、彼女は決して諦めようとはしなかった。

自分自身の目で確かめるべく、彼女自らが現地へ行くことを決意したのだ。この目で見れば何かわかるかもしれないと。

本来は四月の内に休日を使って現地へ向かう予定だったのだが、ここ最近は男性操縦者二人や超が付くほどの問題児の対応によって、その休日すらも学園から出る事が出来なかったのだ。

そんなブラック企業ばりの過労が二ヶ月近くも続き、六月になってようやく外出が出来る様になった。

他の教員に迷惑をかけまいと一人で行く予定だったのだが、これに待ったをかけたのは榊原菜月その人だった。真耶を一人で行かせるのは危険と判断したのだ。その為、渋る彼女を無視して同伴する事にした。

何故、危険と判断したか。その理由の一つとしては、この地域は何かと物騒な所であろう。

 

『女性は絶対に一人で出歩くな』

 

『夜道に気を付けろ』

 

『野良犬に注意!!』

 

この地域で、以前から言われている警告。夜道に気を付ける等の警告はどこでもそうだが、この地域はそれが一層強調されている。そして一番注目したものは───。

 

 

 

『髑髏に目を付けられるな』

 

 

 

───あまりにも不気味過ぎる警告だった。

 

「あの警告………『髑髏』って何の事でしょうか」

 

「調べてわかった事だけど、二、三年前からいる集団だそうよ。この周辺で起きる乱闘事件や傷害事件に殆ど出現しているって話」

 

「ら、乱闘………?それに傷害って………」

 

「詳しい事はわからないわ。わかっていることは全員が髑髏のフェイスマスクをしてるって事ぐらいだし」

 

 

 

───『髑髏』───。

 

二、三年前から隆道の住む地域に存在する謎の集団。髑髏のフェイスマスクが特徴であり、全員が身元不明。目撃情報では少年と青年らしき若人しか確認されてないとのこと。

ナイフやバット等の凶器だけでなくクロスボウなどで武装をしており、彼等が出現した場所では血塗れになった人間しか残らないという。

被害者は男性だけでなく、女性も例外ではない。あまりにも酷い惨状にも関わらず未だ死人が出ていないのは最早奇跡だとか。いや、もしかすると確認されてないだけなのかもしれない。

警察がどんなに早く現場に駆けつけても毎回逃げられるのだが、稀に恐ろしいものが残っている時がある。

 

 

 

()()()()()()が発見される時があるのだ。

 

 

 

この弾痕が発見された際、現場に残された被害者は肩や四肢といった所へ死なない程度に撃たれていた。その全員がその後の生活に支障が出ている。中には一生車椅子生活になってしまった人間もいるほど。

勿論このような物騒過ぎる事件は住民も耳にしている。普通だったらこの様な話を聞くと引っ越しなどでこの地域から離れようとするだろう。

しかし、以前から在住する人間はこの地域から離れた者はほとんどいない。それは何故か。

 

 

 

()()()()()からだ。『髑髏』の事を。

 

 

 

何故現れたのか、正体は誰なのか、標的は誰なのか、標的になる要因はなんなのか、住民は全て知っている。『髑髏』を知らないのは余所者と一部の人間だけ。

標的になるような事をしなければいいのだ。そうすれば女性が一人で出歩こうが夜道だろうが『髑髏』に狙われる事は無く、むしろ彼等は守ってくれる。

だから住民の皆は何も言わない。標的が自分達じゃないから、脅威に晒された時に守ってくれるから。

 

 

 

 

 

そう、警告は住民に対して発しているものではない。

 

 

 

 

 

余所から来た、何も知らない人間に対しての警告だ。

 

 

 

 

 

当然、彼女達は知らない。

 

 

 

 

 

自分達が標的の範囲にいるということに。

 

 

 

 

 

「な、なんか恐いですね………」

 

「だから用意をしてって言ったのよ。ほら、ちゃんと持ってるわよね?」

 

「………あの、本当に()()は必要なんですか?」

 

「あの柳君がいた所なのよ?物騒な話もあるし、護身用くらい持っておかないと」

 

そう言いながら、真耶は上着の内側にかけてあるソレを嫌そうな顔で見る。

ソレは小型の護身用拳銃だった。彼女としてはなるべく持ちたくは無かったが、何せここは一際物騒な地域。使わない事に越した事は無いが、万が一身を守る物は必要だと菜月が彼女に持たせた物である。ちなみに菜月も同じ拳銃を所持している。

 

「私だってこんなものは使いたくないわ。使わない事を祈りましょ?」

 

「は、はい………」

 

「元気出しなさいよ。人探しもあるんだから」

 

「そ、そうですね。えっと………」

 

鞄に手を伸ばし、そこから一枚の写真を取り出す。そこに写されているのは黒のセミロングヘアを靡かせるスタイルの良い女性───根羽田光乃の後ろ姿があった。

 

「根羽田光乃さん………彼女を見つける事が出来るでしょうか………?」

 

「流石にわからないわよ。まあ、とにかく行ってみましょ」

 

行動を起こさなければ何も分からず終いだ。まずは行動あるのみだと、菜月はたどたどしい彼女の手を取り住宅街へ向かうべく足を運んだ。

 

 

 

 

 

彼女達が住宅街へと向かう様子を影から見ていた青年が一人。彼は二人が見えなくなった所で携帯を手にし、あるところに電話をかける。

 

『もしもしぃ。お前さ、今どこにいるんだよ?今日は後輩達連れて皆と遊びに行く───』

 

「それどころじゃねえ。見慣れねえ女二人が住宅街に向かったぞ。以前まで彷徨いてたくそったれ共じゃねえな」

 

『………特徴は』

 

電話に出た相手は最初こそ陽気な声だったが、彼の言葉によってドスの効いた声に変わっていく。

 

「片方はよくわからなかったがもう一人は結構目立ったな。緑髪で眼鏡をかけてて、乳がデカイ。姐さんと同じくらいじゃねぇの?」

 

『………今日の遊びは中止だな。わかった、俺らも直ぐ戻る』

 

「もしかしたらこの間みたく姐さんを狙ってる奴かもしれねえ。その時は………あ?」

 

『どうした?』

 

何かを言おうとしたその時、彼は駅の方にある人物がちらりと見える。その人物には既視感があった。

 

「………おい、駅の奥に『飼い犬』がいやがるぞ。あの野郎、もう病院から出れたのか………!」

 

『………そいつがいるってことはだ』

 

「ああ………他の『飼い犬』の連中もいるだろうな。絶対何かを狙ってるぜ」

 

『………お前も直ぐ戻って来い。用意はしとく』

 

「あいよ、んじゃまた」

 

彼はそう言って電話を切り、急ぎ足で住宅街へと消えていった。

 

 

 

この地域は、一部の人間からはこう呼ばれている。その名も───。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───『野良犬の巣窟』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある街にある静かな道路。

その道に停まっているのは、場違いにもほどがあるほど目立ってしまう要人警護車が一台。そこから出てきたのは茶色のスーツを着こなす若い男性が一人と、灰色の半袖コーチジャケットに藍色のジーンズを着た私服姿の青年───隆道が一人。

二人が外に出たと同時に助手席の窓が開き、そこから運転していた中年の男性が顔を伸ばす。

 

「では、帰りの際は連絡を。君、彼の事をよろしく頼むぞ」

 

「了解です。柳君、どうかよろしく」

 

「………よろしくどうぞ」

 

二人のやり取りを見た後に中年の男性は頭を引っ込め、車は走り去っていく。周囲には誰もいなく、その場にいる人間は彼と男性のみになった。

 

「さてと、改めて紹介しよう。今回君の護衛を担当する事になった高岡 真吾(たかおか しんご)だ。好きに呼んで構わないし、敬語もいらないよ」

 

「………あんた一人なのか?」

 

「あそこの住民は政府や学園関係者を警戒しているからね、大人数で行くと刺激しちゃう事になるから今となっては顔を知られてない人間しか行けないんだよ。それが僕一人だけって訳。本当はあと二人いたんだけど、割り振りミスなのかその二人は織斑君の方に行っちゃってさ」

 

「ふーん、ご苦労な事で」

 

彼の護衛を担当する高岡と名乗る男性は見た目からしてかなり若い、恐らく二十代前半であろう。光を失った濁った目を持つ彼と違い、星の如く澄んだ目は眩しさを感じられる。

 

「こればっかりは仕方ないさ。それに、こんなところに降ろしてごめんね。これも刺激を避ける為なんだ」

 

「別になんとも思っちゃいないさ」

 

「そっか。ところで、さっきは訊かなかったけどその首輪が君の………?」

 

「ああ、これね………。別に必要ねえって言ったんだけどな………」

 

彼は首に手を伸ばし、『灰鋼』の待機形態に触れる。

実は彼に外出許可が出される以前、彼が学園外でISを所持するのは危険ではないかと一度は所持禁止案が出たのだが、最終的に自己防衛の為として持たせる事に決定した。勿論条件付きでだ。

 

『良いか、柳。防衛手段として展開は認められたが、あくまでも防衛だ。自分からは決して攻撃はするなよ?そうなってしまえばおしまいだ。二度と外へ出られなくなるぞ』

 

彼は未だに狙われている。護衛はいるにはいるが、数の暴力や武装した相手には無力だ。その事から所持は認められたが、それも防衛のみとなった。現在は後付武装の全てを外し『リカバリーショット』が二本のみ残されている。

武装は基本装備の『葵』と『焔備』のみとなったが、運用目的が自己防衛ならば十分だろう。

 

「まあ、そのISの事はいいや。僕が気にしてもしょうがないしね。………ああそれと、()()は忘れてないよね?」

 

「………ん」

 

高岡の言葉に反応し、彼は上着を捲る。そこにはショルダーホルスターが見え、拳銃が一つ収まっていた。

その拳銃は彼の体格に合わせてそれなりの大きさだ。装弾数は少ないが口径も大きくストッピングパワーも高い為、襲ってきた相手の動きを確実に止める事が出来るだろう。

 

「学園の連中はコレを知らないんだろ?さっきも言ったけど良いのかよ、こんなもの持たせて」

 

「車の中でも説明したけど、ISを展開されるよりそっちの方が都合が良いんだとさ。使わない事が一番だけどね。学園の方には上司が説明するって言ってたし、君は気にしなくても良いよ」

 

「そうかよ」

 

「そういうこと。んじゃ、早速向かおうか」

 

「ん」

 

確認を終え二人は向かう、彼の住んでいた自宅へと。

 

 

 

真実を知るべく訪れた『IS学園教員(真耶と菜月)』───。

 

 

 

縄張りに潜む謎の集団『髑髏』───。

 

 

 

悪意を背負って現れた『飼い犬』───。

 

 

 

そして、悪意によって狂った『狂犬(隆道)』───。

 

 

 

『野良犬の巣窟』に彼等は集う───。

 

 

 

───凄絶で血みどろな暴力は、目前に迫る。




◆『髑髏』
隆道が住んでいた地域に二、三年前から存在する謎の集団。人数は不明。
特徴は髑髏のフェイスマスクを被っており、身元は一切不明。目撃情報で確認されているのは、少年や青年といった若人のみ。
度々乱闘事件や傷害事件を引き起こし相手に重傷を追わせている。
被害者や事件現場の状態から刃物や鈍器だけでなく『クロスボウ』と『散弾銃』を所持してる模様。
正体や目的は不明と記録されてあるが、住民の殆どは彼等の全てを知っている。

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