遅れながらも明けましておめでとうございます。
(三週間遅れ)
かなり遅れた癖に今回の内容は大したことないですし、だいぶ短いです。
令和四年、六月十三日。
この日、第三アリーナで起きた騒動は隆道達に大きな傷跡を残した。
『お二人のISを確認しましたけどダメージレベルがCを超えています。当分は修復に専念しないと後々重大な欠陥を生じさせますよ。ISを休ませる意味でも、トーナメント参加は許可出来ません』
真耶から告げられた知らせ。セシリアと鈴音の二人はトーナメント参加の不許可を申渡された。理由の大体は機体の破損、ダメージレベルC超過故の修復である。
──IS基礎理論、蓄積経験についての注意事項第三──。
『ISは戦闘経験を含む全ての経験を蓄積する事で、より進化した状態へと自らを移行させる。その蓄積経験には損傷時の稼働も含まれ、ダメージがレベルCを超えた状態で起動させると、その不完全な状態での特殊エネルギーバイパスを構築してしまう為、それらは平常時での稼働に悪影響を及ぼす事がある』
ダメージレベルCを超えたISを完全修復するには通常二週間前後の期間を要する。パーツ等を取り寄せれば迅速に修復する事が可能であろうが、そう簡単に手に入れられる代物ではない。
それに加えて、彼女達は打撲等の怪我を負っている。安静という意味でも参加は不可能だ。
代表候補生でありながらも相手の挑発に乗り、私闘の末機体を大破させ、怪我を負う。その結果がトーナメントの不参加。恐らく、二人の立場を悪くする要因となるであろう。
事の発端であるラウラに関してはこれといったお咎めは無し。戦闘に関しては見た目に反して競技規定範囲内の攻撃であった為に処罰される事は無かった。
機体の損傷具合は修復が容易のダメージレベルB。本人も怪我はなく、トーナメント参加に支障は無い。連戦したにも関わらずこの程度で済んだのは彼女の実力か、はたまた運が良かったか。
一方、アリーナのバリアーを損傷させた一夏は処罰となった。とはいっても反省文提出という、非常に軽いものではあるが。
設備を破壊したその行為は厳罰に値するもの。しかし、隆道の応急措置による安全の確保、箒やシャルロットによる状況説明、そして──。
『あいつを咎める資格があるのかよ、私闘を止めもしなかった怠慢クソ教師共がよ。そんなに男を陥れたいか、それがてめえらのやり方か。あいつが厳罰なら……てめえらもだろうがっっっ!!』
──隆道による怒濤の言及。これ等が重なり、一夏に厳罰が下る事は無かった。
しかし、一夏本人は処罰を受ける事を望んだ。自分がやった事は到底許される事ではないと。
そうして下ったのが反省文の提出だ。しかし、その枚数──なんと十枚。中々の量に一夏は流石に引き面になったとか。
隆道は言わずもがな。戦闘だけでも大問題だというのに、最終的に錯乱してしまったのだから目も当てられない。暴走しなかったのが幸いか。
この日を機に、彼は許可無しの戦闘行為の一切を禁じられる。当たり前であろう。
そしてもう一つ。この騒動による一番の難題。そして同時に生まれる、ある暗黙の了解。
『篠原日葵に関わるな』
一見すると、特定人物を対象とした陰湿な苛めの様に聞こえるだろう。しかし、彼女に関しては話がまるっきり違う。
苛めというものは学校や職場で立場の弱い者をいじめる事を指す。彼女の場合は──その逆だ。あまりにも強く、そしてあまりにも危険だから。
教員を瞬殺出来る程の実力を持ちながらも相手を嫐る戦法を好む少女らしからぬ性格の持ち主。それに加えて誰であろうと態度を変えず牙を向くその姿は正に凶暴そのものだ。教員であろうと、同クラスの人間であろうと、上級生であろうと、多人数相手であろうと彼女にとってそんなものは関係無い、ただ嬲り殺しにするだけであった。
その強さと危険性が更に加速したのが代表候補生同士の私闘から始まった今回の騒動だ。二人を圧倒したラウラをへらへら笑いながらも一方的な状況に追いやる彼女の強さと危険性は、あの場にいた誰もが思い知ったであろう。
しかし、それだけで済む事は決して無かった。今回の騒動で一番の影響を与えたのは、機体が大破してしまったセシリアと鈴音でも、アリーナのバリアーに穴を開けてしまった一夏でも、錯乱してしまった隆道でも、事の発端であるラウラでも、一人勝ちした日葵でもない。
『篠原日葵がブリュンヒルデを倒した』
そう、一番の影響を与えたのは日葵を前にして倒れた千冬その一人である。
あの場にいた、隆道を除く全員が目を疑った。刀一本で世界を制した世界最強と名高いあの千冬が、日葵の一撃により地面を這いつくばる姿を。彼女を尊敬する者や崇拝する者にとって、それは衝撃的過ぎる光景であった。この話題は瞬く間に拡散、
勿論、千冬の敗北を認めない者達はいた。憧れの存在が一生徒如きに負けるなど有り得ないと。
目の当たりにした生徒達は偶然、機体のお陰だと決して認めず、耳にした者達は何かの間違い、デマだと全力で否定。外側では千冬の無敗伝説が揺るぐ事は無かった。
それでも、地面に這いつくばる千冬と一人高々に嗤う日葵がいた事は揺るぎ無き事実。それは誰が見ても勝者と敗者。千冬の敗北を認めずとも、日葵への恐怖は確実に植え付けられたであろう。
──しかし、魅了された者も存在する。
三組の内部事情を御存知であろうか。
彼女達の日葵に対する想い、それは恐れる者と崇める者。圧倒的過ぎる強さに震え、生まれた感情は恐怖だけでなく──感動と歓喜。心が揺れ、彼女に就く様になったのであった。
それと全く同じ状況が第三アリーナで起こったのだ。一部の生徒は絶対的な力を前に魅了されてしまい、彼女を崇拝する信者と化した。
彼女達は所謂『篠原派』。千冬に憧れを持つ『織斑派』とは違う、絶対的服従を誓った者達。
彼女達にとって日葵の言葉は絶対である。正に私兵、正に下僕、正に駒。
ここまで言えばもうわかるだろう。『篠原派』に属する生徒達は──日葵の『飼い犬』だ。
そこから始まるのは『織斑派』と『篠原派』の静かな対立。繋がりの無い他人が、友達同士が、意見の食い違いで口論となり、争いとなる。
人間はほんの些細な事で亀裂が生じる。それはこれまでも変わらず、これからも変わらない。今は口論だけで済むが、何れ大きくなるであろう。
全ては彼女の
日葵はあの場で千冬が来るのをわかっていた。あからさまな挑発をしたのも単に反抗していた訳ではなく、攻撃を誘う為。そして力を見せ付け、三組の生徒達と同じ者を生み出し、駒を増やす。
三組でやった様に徹底的にやる必要など無い。無敗である世界最強の膝をつかせるだけで良い。それだけで生徒達の心は簡単に揺れ動く。
その結果が『篠原派』の拡大。駒を増やす為に千冬は利用されていたのだ。まんまと彼女の罠にかかってしまったのである。
しかし、これは所詮ただの通過点に過ぎない。彼女の目的処か目標ですらない代物だ。
彼女が私兵を増やす、その意味とは。そして、最終的に目指すその目的とは。
嗤う狂人──篠原日葵。謎だらけな彼女の目的を知った時、隆道は何を思い、何を為すのか。
翌日。
カリカリとシャーペンを走らせる音だけが響く一組の教室。一切のお喋りが無いその授業風景は真面目の一言に尽きる。十代の青臭さはあれど、極一部を除けば誰もが高い倍率を潜り抜けて来た優等生。これくらいは当たり前、至極当然だ。
そんな優等生だらけの中、授業を受ける態度が微塵たりとも感じられない劣等生が一人。
「…………」
極一部の劣等生に該当する隆道は椅子に全身を預けて足を組むという、授業なんぞやる気ゼロ。ノート処か教科書すら開かず不機嫌であった。
実を言うと、教室内がこれ程までに静かなのも彼が絡んでいる。というより彼の不機嫌が殆ど。
あまりにも濃過ぎるのだ。それも教室内に充満してしまう程に。いつぞやのいざこざより圧倒的にマシではあるが、それでも居心地が良い環境とは決して言えなかった。その原因とは何か。
「……ボーデヴィッヒ、それと柳。その不機嫌をやめろ、空気が重い」
「失礼しました」
「…………」
そう、隆道との相性が最悪と化した、同じ様な不機嫌を醸し出すラウラだ。
先日の揉め事──私闘により互いは敵と認識、誰が見てもわかる程に険悪の仲となった。決着がつかず有耶無耶になってしまったのだから未だに対立してしまうのも無理はない。
千冬の指示によって表立って争う事は先ず無いであろうが、常に一触即発状態、正に爆発物だ。正直、非常に危なっかしい。
凄まじく近寄りがたい雰囲気を滲み出す両者。こんな空気にいる生徒達は堪ったものではない。
特に──。
((((い、居づらい……、苦しい……))))
──彼等の近くにいる生徒四人は。
一組の生徒数は現在三十二人。座席は横五列と縦六列となっており、今月追加された二つの座席は窓側に詰めている。シャルロットが窓側、その隣の席がラウラだ。これがどういう意味なのか、もうおわかりだろう。
彼は囲われているのだ。生徒五人に。
彼の真後ろにはシャルロットが、そして右斜め後ろにはラウラが。まさかの至近距離であった。最悪の中の最悪だ。
ちなみにだが、セシリアの出席番号は二十三番だ。何が言いたいかと言うと──。
(こ、これしきのこと、あの時と比べれば……)
──右斜め前はセシリアの席である。奇妙な事に彼の周囲には代表候補生が全員集まっていた。
誰だ、こんな配置にした人間は。彼を精神的に追い詰めるつもりか。
(だ、誰か助けてぇ……)
そんな四面楚歌と化している彼を余所に、後ろの席ではシャルロットが助けを念じていた。彼女も精神的に追い詰められていたのである。
真正面にはぶっちぎりに不機嫌な隆道が、右側には同じく不機嫌なラウラが。険悪ムードを直視せざるを得ない彼女に逃げ場など無かった。一組の中では一番可哀相ではないだろうか。
いったいいつまでこの状況が続くのか、今学期はこのままなのか、まさかずっとこの席なのか。男装問題も片付いていない状況でこんな調子じゃ擦り切れてしまいそうだと気分は次第に沈んでいき、マイナスの思考が加速していく。
たった一人で育ててくれた母親が病死して、会社のテストパイロットを強いられて、データを盗めと命じられて、無理矢理男装させられて。
いったい自分が何をしたのだ。悲劇のヒロインを気取るつもりは無いが、これはあまりにも不幸過ぎるのではないのか。もっと自由に生きたい、女の子らしい人生を歩みたいと、彼女はセンチな気分になった。
(……駄目だ。気をしっかり持たないと)
しかし、それも暫くの辛抱だ。男装問題は時間が解決する、そう聞かされてるのだから今の自分が出来る事は耐えるのみ。折角一夏や隆道が自暴自棄であった自分に手を差し伸べてくれたのだ、同じ轍を踏んでどうすると、彼女は拳を軽く握り締める。
(席替え、したいなぁ……)
とは言え、この現状は中々──いや、かなりのキツさがあると思う彼女であった。
シャルル・デュノア──もといシャルロット・デュノア。彼女の苦難はもう少しだけ続く。
重苦しい授業が午前中一杯続き、時刻は正午。
生徒達は昼食時間となった瞬間急ぎ足──競歩ばりに廊下へと出ていく。せめて昼食の時だけは逃れたい、癒されたいという一心で殆どが食堂や屋外へ雪崩れていった。
「「「「「…………」」」」」
未だに残るのは数名の生徒。じっと息を潜める一夏と箒、顔面が真っ青のセシリア、口から魂が見えそうな程にグロッキー状態のシャルロット、冷たい目付きで沈黙を貫くラウラ、そして今でも絶賛不機嫌中の隆道。静まり返ったその教室は、些細な音さえ響くであろう。
その沈黙が続く中、最初に行動を起こしたのはラウラであった。
「…………」
静かなその教室で一人立ち上がり、辺りを軽く見渡してそのまま廊下へと一直線。扉が閉まる音が室内に響き渡って数秒、隆道の機嫌は次第に収まっていく。
「っ、ふぅ……」
「「「はあああぁぁぁ………」」」
第一声は一夏の小さな溜息。他の三人はそれに釣られ、大きな溜息をしてまう。ある者は椅子に全身を預け、ある者は机に突っ伏す。不機嫌を撒き散らした隆道とそれに耐えた一夏を除いた全員はとうとう力尽きた。
いつ喧嘩が勃発してもおかしくなかった。それ程までに彼とラウラから滲み出ていたものは濃いものであったから。二人が理性的な人間で本当に良かったと思う。短気であったなら教室は物理的な意味で荒れていたであろう。
一先ず様子を見なければと、一夏はその重い腰を上げ歩き出す。この少年、結構強い。
力尽きている皆を流し目で見つつ、一夏は何事も無かったかの様な素振りで彼に声を掛ける。
「柳さん」
「……うん?」
何処か物思いに耽っていたのか、彼は遅れながらも反応した。
どこまでも暗い瞳に硬い表情。頬にある二本の痛々しい古傷に、うっすら残る小さな傷の数々。表情を崩す事など殆ど無い彼にはこの世界がどう見えているのだろうか。
「昼ですよ昼。飯、行きましょう」
「……織斑、無理に構う事なんてねえぞ。こんなくそったれなんかより他の奴等──」
「行きましょう」
「…………」
遮る様に放つ一言は、彼を押し黙らせた。
これが今の自分が考え付く、自分に出来る事。彼が可哀相だからだとか、クラス代表だからだとか、同じ男性操縦者だからでは決して無い。
「一人になんてしません。俺がさせません」
力になりたい、助けになりたい、それだけだ。それは嘘偽りの無い、紛うことなき本心。
これが純白たる少年、織斑一夏の強さである。
「……俺は──」
「柳さん」
「……はあ、わーかったわかった」
「よっしゃ!」
一夏の強引さに彼は観念、両手を上げて降参の意思表示を見せた。この少年、やはり強い。
漸く一緒に昼食を取れる事に一夏は笑顔満開。直ぐに箒とシャルロットを誘い昼食へ行かねばと財布を取りに自席へ急ぎ足となっていた。
彼とセシリアを一緒のグループにするのはまだ早い。ふと、彼女に視線を向けるとぐったりとしつつも軽く手を振っている姿。一夏はその意味を直ぐに理解した。すまないセシリア、ありがとうセシリア。
「じゃ、屋上で決まりですね。購買に行ったこと無かったんですよ。何が売ってるのかな──」
「ああ、待て待て」
「はい?」
「そう、か。その方が見つけ易い……か?」
「柳さん?」
振り返ると、彼はまた何か考えに耽っていた。数秒が経ち、その表情は決意したものとなる。
そして一言だけ。それは全員を瞠目させた。
「……屋上は無しだ。食堂に行こうぜ」
本日の食堂はいつも以上の騒がしさを生んだ。
それもそのはずであった。そこには食堂に姿を見せる事のなかった人物が佇んでいるのだから。
「本当に良かったんです? 今からでも遅くないですよ?」
「ここまで来てまだ言ってんのかよお前は……。いつまでも屋上っつーのも、な」
食堂に並ぶ列。そこには一夏、シャルロット、箒、そして隆道の四人が。彼等は屋上へ行かずに食堂へとやって来たのであった。
しかも、提案者はあの隆道である。どういう風の吹き回しなのか。まさか気でも狂ったのか。
「しっかし騒がしいな。いつもこうなのか」
入学してから約二ヶ月半、彼が食堂へ来たのはこれが二回目。一回目は夜時に行ったクラス代表就任パーティー、昼時は初めてである。
「まぁ、いつもこんな感じですよ。今日は一段と騒がしいですけど……理由わかってますよね?」
「まあな」
昼時に初めて姿を現したのも勿論ではあるが、彼は高身長だ。他の誰よりも。
172センチの一夏を上回る、驚異の180センチ。平均身長が160センチに満たないIS学園では嫌でも目立ってしまう。目立つなという方が無理だ。
只でさえ一夏と男装のシャルロットと箒の三人ですら注目の的だというのに、そこに彼が加われば──言うまでもない。
「一夏、早く選ぼうよ。流石に視線が……」
「ああ、悪い悪い。柳さんは何を頼むんです? 何でもあるんですよここは」
「んじゃこれにするか」
頼んだメニューは唐揚げ定食だ。購買の唐揚げは中々のものであったが、果たして食堂のはどれ程のレベルだろうかと楽しみに思う彼であった。勿論、顔には一切出さずに。
「あら、あんた! 漸く来たのかい!」
「……どうも」
最前列まで進むと、威勢の良い食堂のおばさんが勢いよくやって来る。それは親戚を出迎えるかの如くであった。
流石に笑顔全開の人間相手にガン無視するのは気が引ける。故に、彼は一応の挨拶をする。
「いつ来るかと待ちわびていたんだよ! ほら、あんたデカいんだからたんと食いな!」
「うおっ。……はあ?」
「「「え゛っ」」」
そう言って置かれた定食は、『デカ盛ッ!!』という名に相応しいものであった。
馬鹿みたいに積み上げられた唐揚げに、それに負けじと馬鹿みたいに盛られた白米。
正に『山』。富士山──いや、チョモランマ。
「す、すっげぇ~……」
「これは、ちょっと……」
「……見てるだけで満腹なのだが」
これには周囲の人間もドン引きした。明らかに標準量の三倍以上はある。
見るだけで胸焼けレベルな唐揚げの山。それは並大抵の人間では完食は不可能だろう。
「……良いのかよ。こんなに盛って」
「サービスさ、サービス。あんたなら食い切れるだろうと思ってね。流石に多過ぎたかい?」
「いいや? ……ありがとさん」
なんとこの男、嫌そうな素振りも見せずにそれを手に取った。しかも感謝の言葉も添えて。
「く、食うんですか? その量を? 本当に?」
「ああ、これくらいは全然食えるぞ。何なら追加しても良いくらいだ」
「えぇー……。まさか大食いだとは……」
「何呆けてんだよ。彼処のテーブル空いてるぞ」
「ああ、待って下さい。もうすぐ来ますから」
ズッシリと擬音が聞こえそうな程のデカ盛りを軽々しく持つ彼は何処か待ち遠しそうな様子だ。他三人も昼食を貰い、テーブルへと向かう。
「さ、て、と……」
「行儀悪いですよ。食べながら携帯いじりは」
席に着くなり彼は携帯を取り出した。これから食事だというのにこの男は何をしているのか。
流石にそれは見過ごせないと注意をする一夏であったが──。
「ああ、違う違う」
「……?」
携帯いじりとは言い難い、ほんの少しの操作。それを立て掛け、テーブルの隅に退ける。他三人には画面が見えない様にして。
「テレビですか?」
「まあ、そんなところ。さ、食おうぜ食おうぜ」
「は、はあ。……いただきます」
「「いただきます」」
「ん」
漸く実現出来た、男性操縦者同士の昼食時間。今は色々と問題を抱えてはいるが、この時だけは楽しくしよう。一夏はそう心に刻み、積極的に皆の会話を弾ませたのであった。
その一方で。
(どこにいる……)
隆道は会話の中で、一夏達に気づかれない様に周囲と携帯画面を一瞥していた。
(こいつは違う……。こいつも……)
彼の携帯画面に写るのはテレビではない。
(こっちを見たな。……ああ、それだ、
写るのは逆転した食堂の風景と生徒達。
(白か黒か……てめえはどっちだろうなあ)
それは──『鏡』であった。
三日前──。
『いったい何をするつもりだ……! 事を荒立ててしまえば……!』
『そうやって後手に回るのかよてめえは……! 起きちまってからじゃ遅えんだぞっ!!』
『この問題は我々が対処する……! お前が動く必要など何も──』
『現に今も見つけてねえだろうが!! いつまでも向こうが黙ってると思ってんのかっ!!』
『しかし……』
『良く聞けよ……! 向こうはそろそろ動くぞ、絶対にな。使えない人間、用済みの人間は間違いなく消される。もしもデュノアが死んじまったら織斑は自分自身を一生責めるぞ、あんたはそれを望むのか。これは織斑の為でもあるんだぞ』
『……どうやって見つけ出す、言え』
『はんっ。あんた等には一生わからねえし、絶対見つけ出せねえよ。『悪党の目』は、な』
『悪党の、目……』
『
もうちょっと長い方が良かったですかね。
参考までに言うと今までが一万文字超えに比べ、今回は約八千文字でした。